ネクライトーキー | Skream! ライヴ・レポート 邦楽ロック・洋楽 … – Skream!

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LIVE REPORT
Japanese
Skream! マガジン 2023年01月号掲載
2022.12.08 @渋谷CLUB QUATTRO
Writer : 石角 友香 Photographer:垂水佳菜
2022年は多くのバンドが対バン・ツアーを復活させた年だったように思う。コロナ禍におけるライヴのオペレーションは浸透してきたものの、出演バンドが増えるほどリスクが高まるのは当然のことだが、それでも今何がライヴ・シーンで起こり、どんな関係性が深まっているのかを確認するうえで、対バンというカルチャーが戻ってきたことは意義深い。

ネクライトーキーの対バン・シリーズ”オーキートーキー”は昨年12月以来で、比較的早い段階でリスタートさせたことは、ワンマンにはない化学反応をそもそも求めているバンドであることを実感させるが、今回は特にライヴハウス・シーンで活動する、メンバーに近いバンドにラヴ・コールしたフシがある。初日のWiennersに始まり、オメでたい頭でなにより、板歯目、突然少年、そしてファイナルのHump Back。ここではファイナルの渋谷CLUB QUATTRO公演を振り返る。

これほど渇望された対バンのキャパとしてはもったいないほどステージが近いクアトロ(渋谷CLUB QUATTRO)。後ろのドアまでぎっしり入ったその熱気自体が懐かしい。勢い良くステージに飛び出してきたHump Back。林 萌々子(Vo/Gt)いわく”平日の渋谷のライヴハウスに来るやつら”に捧げるように「拝啓、少年よ」でスタートした。これは2020年代のパンク・ロックだ。ぴか(Ba/Cho)はジャンプし、踊り、跳ね回るがボトムを支える演奏にブレはなく、美咲(Dr/Cho)のビートも安定している。冒頭から完全に勝ちに来ていると思った。対バンってそういうものだろう? と。

林が、自身の対バン・ツアーのファイナルは相手を選ぶことが困難でワンマンにしたほどだから、ファイナルに(対バンを)呼ぶことの重要性を噛み締めて挑むとMC。中でもネクライトーキーのもっさ(Vo/Gt)との繋がりを持ち込んだ、「番狂わせ」に入る前のトーキング・ヴォーカル調のMCは凄まじい熱量だ。バンドに目覚めさせてくれた存在が自分を勘違いさせてくれて、今ここにいる。勘違いのパワーほどロックンロールに必要なものはないのだと身を持って証明するナンバー「番狂わせ」は、林やもっさ、何者でもなかった彼女たちにとっても、そしてここに集まったオーディエンスにとっても人生に狼煙を上げる1曲に違いない。バンドっていいな、バンドをやりたいなと思った少年少女が少なからず増えたことを確信するような演奏を続け、ラストは彼女たちの地元の思い出を象徴する「星丘公園」で、ホスト・バンドに大きすぎる”果し状”を渡した。”さぁ、どうする? ネクライトーキー”と心拍が上がるような体験はなかなかないものだ。

果し状を受け取ったネクライトーキーはいつも以上にフロアに挑みかかるように登場早々、朝日(Gt)と藤田(Ba)がお立ち台から煽る煽る。もはやガレージ・パンク・バンドに変身を遂げたような「だれかとぼくら」でスタート。続く「北上のススメ」もBPMが上昇しているように思える、エネルギー勝負な演奏だ。それでいて、ネクライトーキーらしいブレイクやキメは寸分違わず鋭いアンサンブルが構築されているのは、カズマ・タケイ(Dr)のシュアなドラミングのせいだろう。しかし彼の表情も明らかに挑みかかる者のそれだ。石風呂楽曲は対バンごとに変えてきたところもあるようだが、この日は「魔法電車とキライちゃん」。朝日が冒頭から叫んで、さらにフロアを煽る。明らかにリズムが走り気味に感じられるのも、むしろ熱量を上げてくれた。それでも朝日ともっさのリフの応酬は確かなもので、5人のアンサンブルの強固さはいくらヒート・アップしても瓦解しない。そもそもネクライトーキーはそこに強みがあるバンドだと思うが、そのことをクアトロという近いキャパシティで確認できるのはまったく稀有な体験だ。また対バン相手のレパートリーを1曲カバーすることがこのツアーのお馴染みになっているなか、この日はHump Backの「LILLY」を披露。もっさのハイトーンに似合う選曲で、ネクライトーキーの中にあるフォーキーな部分ともよく呼応していたように思う。この時点でもっさは気丈に”Hump Backの「LILLY」でした。ありがとうございます”と、曲終わりに謝辞を述べていたのだが、実は内面は抑えきれない感情が爆発していたようなのだ。

というのも、長めのMCでもっさが”Hump Backがとんでもないライヴをしたから……貰ったものが多すぎて”と、大泣き。それを見守る4人の言葉や視線は温かく、ファンはむしろもっさと同じような感情だったのではないだろうか。話すと泣いてしまうもっさも演奏が始まると、むしろ冴え渡るギターとヴォーカルへスイッチできることにも感動を覚えるのだが……。

いつもなら余興(失礼)も多めの「許せ!服部」もグッとタイトにアレンジした演奏に。
リズムの技巧の面白さも明快に盛り込んでいて、「八番街ピコピコ通り」でのブレイクビーツや「深夜の街にて」でのハイハット・ワークなど、タケイのセンス楽曲が続く。特に「深夜の街にて」はこの日の流れの中では異色だが、TALKING HEADSを思わせるギター・バンドのソリッドなファンクが、満員のフロアを揺らしたのは見ものだった。一転、もっさのアカペラ始まりの「ゆうな」への飛躍も見事。スロー・バラードの旨味を朝日の泣きのギターが増幅させていた。

再びMCでは感情を抑えきれないもっさが、普段もしゃべれないが、Hump Backに素晴らしいライヴを見せられ、何も言わないわけにはいかないとばかりに言葉を絞り出す。こんな何もないやつがステージに立っている、と。だが、そんな何者でもない自分や友人が同じバンドに影響を受け、自分もバンドをやっていて、そのことに感動すると言った。期待と怖さがないまぜになりながら挑んできたもっさや、Hump Back、さらにあらゆるロックンロールバンドに、その言葉は無意識のうちに捧げられていたように思う。藤田がもっさの涙を見てタオルを差し出したりしつつ、前半同様、やはり優しく見守っている。”新曲やります!”というもっさの一声から、珍しくストレートで快活な2ビート・ナンバー。歌詞の一部に”誰かが”というワードが聴こえたが、早く全容を知りたい。

終盤は「ふざけてないぜ」から加速。朝日のギターが悪い音を鳴らし、もっさは小気味いいストロークを続ける。ネクライトーキーの魅力のひとつはふたりのギターの絡みだ。もっさの切れ味鋭いギターは進化の一途。イントロに反応してカウントダウンの声が上がる「オシャレ大作戦」は、もはや黙って観ているのが難しい。プリミティヴなライヴ運びの中でも、中村郁香(Key)のキャッチーなフレージングはアンサンブルの中で際立ち続ける。ラストは朝日も藤田もお立ち台から何度も煽り、ほんとにここはクアトロか? とうっかりキャパを忘れるほどの大音量のクラップが上がる「遠吠えのサンセット」。最後の最後まで、対バンに感謝してもし足りないもっさの感情は”かっこ良すぎてありがとう!”という叫びに似た言葉に集約されていた。初めてライヴハウスに足を運んだ人も、何十年ライヴを見ている人も同じように歓喜を表す、そんな本編が終了した。

アンコールに応えて登場したメンバーを代表して、朝日が”突き抜けたHump Backにバンドの美しさを見たと思った次第で。それを受けてのネクライトーキー、いかがでしたか?”という問い掛けに大きな拍手が起こる。また、もっさは手書きの告知事項を読み上げるのだが、年明けのワンマン・ツアー(”ネクライトーキー「ゴーゴートーキーズ!番外編 ~泣いても笑ってもアンケート順に演奏ツアー~」”)はリクエストに準じてセットリストを組むという。1曲目がスローなバラードということも大いにあり得る、予測不可能な内容である。来年の楽しみを残して、「君はいなせなガール」、「ティーンエイジ・ネクラポップ」で全力を出し尽くしたが、ダブル・アンコールに応えて「明日にだって」で幕を閉じた。”オーキートーキー”は今すぐにでもバンドを始めたくなる、音楽好きにとってかけがえのない対バン・ツアーであり続けそうだ。
[Setlist] ■Hump Back
1. 拝啓、少年よ
2. LILLY
3. ひまつぶし
4. 犬猫人間
5. チープマンデー
6. 番狂わせ
7. ティーンエイジサンセット
8. クジラ
9. きれいなもの
10. 星丘公園

■ネクライトーキー
1. だれかとぼくら
2. 北上のススメ
3. 魔法電車とキライちゃん
4. LILLY(Hump Backカバー)
5. 許せ!服部
6. 八番街ピコピコ通り
7. 深夜の街にて
8. ゆうな
9. 新曲
10. ふざけてないぜ
11. オシャレ大作戦
12. 遠吠えのサンセット
En1. 君はいなせなガール
En2. ティーンエイジ・ネクラポップ
W En. 明日にだって
朝日(Gt)のボカロP名義 石風呂楽曲には、彼が若かりし頃の鬱屈や、同胞と呼べる少年少女の心の内を現在より解像度高く表現したものが必然的に多い。その石風呂楽曲をネクライトーキーがセルフ・カバーした第2集だ。ネクライトーキーのライヴでもおなじみの「魔法電車とキライちゃん」、「壊れぬハートが欲しいのだ」や、春の野音公演で披露した「君はいなせなガール」をはじめ、カズマ・タケイのドラム・センスが表出し、オリジナルとの差異も面白い「深夜の街にて」のファンク・テイスト、普遍的なロックンロール・ナンバーに素直な本音がにじむ「サカナぐらし」、待望の音源化となったバンド人生のアンセムと呼べそうな「だれかとぼくら」など全8曲。勝ち負けで言えば負けがちな君の隣で一緒に前を向いたり俯いたりしてくれる。(石角 友香)
荒唐無稽だけど、どこかほっこりする漫画原作のアニメ”カノジョも彼女”に書き下ろした新曲。原作に沿っているようで恋愛もしくはバンドについて歌っているようにも受け取れる歌詞、何より面白くてキャッチーと称されつつ、メンバーはストイックそのものなスタンスが、曲タイトルにも表れていると言ったら朝日(Gt)は笑うだろうか。表になったり裏になったり不意打ちを喰らうビートの面白さ、5人の音の抜き差しを計算し尽くし、音数少なめでも快楽指数高めのアレンジが癖になる。c/wは”徒然なるトリビュート -徒然草の再解釈-“企画の参加曲「波のある生活」。マーチング・リズムやアイリッシュ風なメロディでありつつ、ごく日本的に聴こえるのは「続・かえるくんの冒険」のサビにも通じるニュアンスだ。(石角 友香)
もっさのフロントマンとしての成長物語もすごいが、さらに、それを超えるこのバンドの自由さや、時代に対してものを言える強さが詰まったアルバムになった印象。4ビートのようなそうでないような不思議なリズムと展開の多さに、初っ端から驚く「気になっていく」、タイトル1行の破壊力そのままに大事なことが歌われる「大事なことは大事にできたら」、もっさの作詞作曲曲「踊る子供、走るパトカー」は、匿名の暴力への反感をにじませながら曲のムードは寛容というユニークなバランスを持ち、ゲーム・ミュージックからの影響をシンセ・サウンドのみならず、朗々としたサビのメロディにも反映した「続・かえるくんの冒険」など、どこを切ってもネクライトーキーならではの音楽的なワクワク、自分や他者に対する素直さや誠実さが詰まっている。(石角 友香)
現メンバーでライヴを重ね、アンサンブルのスキルやアイディアが磨かれてきたことが明らかに反映されたアルバム。ファンクなAメロから急転直下、QUEEN的なロック・オペラ感に転じる先行配信曲「ぽんぽこ節」、コミカルなのに洒脱なコードで捻りの効いた「夢みるドブネズミ」、淡々としたムードの演奏の中に乾いた諦観と少しの前向きさが描かれる「深夜とコンビニ」、エレクトロからグランジまで、サウンドとアレンジがシュールに変化していく「渋谷ハチ公口前もふもふ動物大行進」、唯一のもっさ(Vo/Gt)作詞作曲の「夏の暮れに」の、ギター・バンドらしいストレートな曲の良さ。11曲が別の方向を目指した多彩なアルバムだが、歌詞には大人になって気づくことから去来する寂しさがどこか共通して現れている。(石角 友香)
朝日(Gt)がボカロP”石風呂”名義で発表してきた楽曲を、バンド・サウンドでセルフ・カバーした今作。リード曲「音楽が嫌いな女の子」や石風呂の代表曲「ゆるふわ樹海ガール」など、ライヴでも人気の楽曲たちが、待望の音源化となった。かき鳴らすようなロックを無機質でフラットな機械が歌う温度差も魅力のひとつだった石風呂のボカロ曲は、一度聴けばクセになる、もっさ(Vo/Gt)の歌声によって新たな命が吹き込まれ、生身の人間らしい感情と熱量が感じられるものに。その熱はライヴの光景も彷彿させ、バンドとしての色も強く打ち出している。ボカロ曲とのキーやアレンジの変化を聴き比べるのも面白く、バンドからボカロ、またその逆と、聴き手の音楽の入り口を広げるきっかけを作るものにもなりそうだ。(三木 あゆみ)
サポートのキーボードも含め、ギター×2、ベース、ドラムの音の抜き差しで構成される隙間の多さ、そしてそこに詰め込まれた多ジャンルの深度が聴けば聴くほどに楽しいネクライトーキーの1stフル・アルバム。ゲーム・ミュージックとポスト・ロックが邂逅したような「レイニーレイニー」に始まり、コロコロと展開が変わりつつ基本的には四つ打ちでダンサブルなリード曲「こんがらがった!」や、タイトルから何気にイメージできるユニコーン的なスキルの高さとユーモアを感じる「許せ!服部」、注目される契機になった「オシャレ大作戦」など、朝日(Gt)のソングライティングとアレンジ力が発揮された曲の数々。加えてミディアムの大きなグルーヴを持つヴォーカル、もっさによる楽曲がいいフックになっている。 (石角 友香)
10代の子たちはネクライトーキーの曲とはまた違う、身近さを石風呂の楽曲に感じてるのかなと思ったりします
テレビ・アニメからギター・ロックが聴こえてくるのを体験してほしいというか。 悪くないもんだよって気持ちで作りましたね
曲もすごく考えたんですけど、今回は結局歌詞に一番心を割いたかもしれないです
人が開けた宝箱、人が行ったダンジョンに行きたくない――誰も行ったことのないとこに行きたいじゃないですか
気楽に聴いてて”いいな”と思ってたら、急にナイフが現れるような音楽です(笑)
注目バンドが続々とデビュー。期待の女性ヴォーカル・バンドを紹介
2022.12.08 @渋谷CLUB QUATTRO
2022.04.10 @日比谷公園大音楽堂
2021.09.30 @豊洲PIT
2020.09.27 @日比谷野外大音楽堂
2019.09.23 @マイナビBLITZ赤坂
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Skream! 2022年12月号

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