【現代ポップ独立派】第18回 ヘヴンリー(Heavenly)発、ワーキング・メンズ・クラブ(Working Men’s Club)とケイティ・J・ピアソン(Katy J Pearson)のキャラの濃い新作2枚 – Mikiki

 

 工業都市として知られる英国シェフィールド出身のバンドといえばアークティック・モンキーズやデフ・レパードだが、この都市は70年代にキャバレー・ヴォルテールを輩出したインダストリアル・ミュージックの産地でもある。セカンド・アルバム『Fear Fear』をUKのヘヴンリーからリリースしたワーキング・メンズ・クラブもそんなインダストリアルの系譜にあるシェフィールド出身のバンドだ。
 アークティック・モンキーズの『AM』にも携わった同郷のロス・オートンを前作に続いてプロデューサーに迎えた本作でも、金属的なパーカッション、バリバリとした質感のシンセサイザー、気怠い低音のヴォーカル、陰鬱な気分の中に喜びを見い出す歌詞など、バンドのダークな魅力が全開である。“Widow”では〈惨めさこそ我が至福〉とまで歌っている。
 “Circumference”では耳殻をそっとくすぐる音のシークエンスが気持ち良いのだけれど、楽曲を先導して伸びていくシンセサイザーは音の高さが頂点に達する時、一瞬不穏なムードが醸し出される。最後の大作“The Last One”では反復の中で練り上げられた混沌としたサウンドの中に、すっと一筋の光が差し込まれる。
 全編を通して聴いていくと、インダストリアルな意匠だけでなく、初期テクノ的な電子音の響きに対する純粋な喜びと、『AM』以降のロックが持つモダンなサウンドデザインが合わさった、唯一無二のアルバムであることがわかる。
 同じくヘヴンリーから今月リリースされたのは、ケイティ・J・ピアソンの『Sound Of The Morning』。ブリストル出身の彼女は2020年のデビュー・アルバム『Return』で注目を浴びたシンガー・ソングライターである。音楽的にはカントリーの影響がよく挙げられるが、今作はそれに留まらない。
 冒頭の“Sound Of The Morning”は引き続きカントリー風だが、米国というよりは英国の田園的なイメージが提示され、フルートが柔らかなサイケデリアを生み出す。“Talk Over Town”はトゥワンギーなギターが特徴的なインディロックで、シンセサイザーが独特の浮遊感をもたらしている。“Howl”は機械的なシークエンスから始まり、ファンキーなホーンが違う扉を開け、エキゾチックな風合いを持ちつつも、絶妙なところでキャッチーに着地する。
 全体としては穏やかなムードに包まれたアルバムだが、歌の節々にキャッチーな取っ掛かりがあるので、まどろむ隙もなく驚きを与えてくれる作品だ。
 今回紹介した2作をリリースしたヘヴンリーというレーベルはその他にも、デヴィッド・ホルムスやセイント・エティエンヌといったヴェテランからジ・オリエルズやグウェノーなどかなり個性的な面々が揃ったレーベルなので、要チェック。
 
【著者紹介】岸啓介
音楽系出版社で勤務したのちに、レーベル勤務などを経て、現在はライター/編集者としても活動中。座右の銘は〈I would prefer not to〉。

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