伊東ゆかり 70周年目前 あらゆるジャンルの“時代の歌“を歌い続ける … – Yahoo!ニュース


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1953年、6歳で進駐軍のキャンプのクラブで歌い始め、2023年に歌手デビュー70周年、レコードデビュー65周年を迎えるシンガー・伊東ゆかり。カバーポップス、カンツォーネ、歌謡曲、J-POP、シティポップなど、“時代の歌”を歌い続け、「小指の想い出」を始めとする数々のヒット曲を放ち、まさに“ポップス・クイーン”というべき存在のレジェンドだ。その集大成的な作品、シングル86曲を含める全138曲を収録したオールタイム・シングル・コレクション『ポップス・クイーン』(6枚組)が発売され、話題だ。日本の音楽史を辿ることもできる、時代を映し出す名曲の数々が収録されたこの貴重な作品について伊東にインタビューした。

「私たちの世代の歌手は下積みが長い人が多いから、60年、70年やってる方はたくさんいるんじゃない?」

70年というキャリアについて聞くと、笑顔で軽やかにそう語ってくれた。生き馬の目を抜くといわれる厳しい芸能界で数々のヒットを飛ばし、歌い続けて70年。ジャズ、アメリカンポップスやカンツォーネ、フレンチポップスなどのカバーポップス、昭和の職業作家が手がけたポップスや歌謡曲、シンガー・ソングライターの手によるニューミュージックやアダルトポップスetc…あらゆるジャンルの歌にチャレンジし続けてきた。

「歌ってきたというよりも、歌わせられたんですよ(笑)。私って器用に見えるみたいで、どんなジャンルの歌でも歌えると思われていたみたいで、それが一番困りました(笑)。だって本当は不器用で、何でもかんでも歌えないの(笑)」。

そう謙遜するが、やはりこれだけのジャンルの歌を自分のカラーを纏わせて歌い、評価され続けきたのだから器用なのだ。

「今思えば、レコーディングでは『こう歌って』『ああ歌って』という注文はあまりなかったです。私が不愛想だったからじゃないかしら(笑)。でも若い頃、カバーポップスを歌っていた時、作曲家の宮川泰先生に『あなたの声は、右から左に流れちゃうから、もっとパンチのある歌い方をしろ』と言われたことがあって。でも私には『パンチのある歌い方』というのがよくわからなかった。だからあの頃の『ヴァケイション』(1962年)や『ロコモーション』(〃)を聴くと、“ひっちゃき”(一生懸命)になって歌ってますよね。ただ力を入れて歌えばいいって思っていたんでしょうね」。

進駐軍キャンプで歌を歌っていた伊東に対して、伊東の父親は日頃から家で洋楽のレコードを一日中聴かせ、ラジオはFEN(在日米軍向けの極東放送網)以外は流さなかったという。当然伊東の音楽的な原風景は洋楽になる。ポップスを好んで歌い、中尾ミエ、園まりとの“3人娘”もカバーポップスで人気を集めた。しかしシーンの流れは徐々に歌謡曲へと移り、伊東は1967年「小指の想い出」で「日本レコード大賞」の歌唱賞を受賞し、同年の「NHK紅白歌合戦」でも披露した。<あなたが噛んだ 小指が痛い>という有馬三恵子が作った官能的な歌詞が印象的なムードのある歌謡曲だ。この曲の大ヒットに続き、翌年発売した「恋のしずく」も大ヒットし、伊東は国民的スターになった。しかし伊東は当初は「小指の想い出」を「歌いたくなかった」という。

「音楽番組『Sound Inn “S”』(TBS系)のスタッフに『ゆかりの歌は、英語で歌うと響くんだけど、日本語で歌うと流れちゃうな』って言われたのがものすごく悔しくて。日本人なのに日本語詞で歌って響かないというのはちょっとまずいなって思って、洋楽も積極的に日本語でカバーするようになりました。『小指の想い出』は最初に聴いた時に私にとってはあまりに“歌謡曲すぎて”違和感を感じて、あの頃、園まりさんがよく歌謡曲を歌っていたので『まりさんが歌った方がいいと思う』って駄々をこねて、スタッフを困らせました(笑)。あの曲自体が嫌いとかそういうことではなく、どう歌ったらいいのかわからなかったんです。『小指の想い出』が発売されて、周りから「ゆかりさん、今度の歌いいね」って言われて、それと同じくらい『でもすごくセクシーで色っぽいね」って言われるのが嫌でした(笑)』。
伊東は、2021年4月17、18日に行われた『ザ・ヒット・ソング・メーカー 筒美京平の世界 in コンサート』(東京国際フォーラム)に出演。エメラルドグリーンのドレスを纏い「ブルー・ライト・ヨコハマ」(いしだあゆみ)と、自身の「誰も知らない」(作詞:岩谷時子)を披露した。伸びやかな高音と上品な低音、感情過多にならない歌声はどこまでも伸びやかで、クールかつ深みを感じさせてくれた。「誰も知らない」は、1971年の作品で、筒美とタッグを組み、新境地を開き3年振りにトップ10入りした。当時の洋楽の流行を、圧倒的なセンスで楽曲に落とし込んでいた筒美が作る世界観と、伊東の感性がマッチし『ふたたび愛を~伊東ゆかり・筒美京平 LOVE SOUNDS』(1974年)というアルバムに結実した。

「私自身、音楽は何かしながら聴くのが好きだから、あんまり『歌ってますよ』って主張したり、『聴いてください』って押し付けてくるような歌い方が好きじゃないんです。これまで筒美先生のような職業作家の方の曲も、来生たかおさんや矢野顕子さん、尾崎亜美さん、竹内まりやさんといったシンガー・ソングライターの方の曲も歌ってきましたが、できあがってくる曲については、そんなに違いは感じませんでした』。

そんな曲達、全138曲を収録したオールタイム・シングル・コレクション『ポップス・クイーン』の中で、「小指の想い出」や「恋のしずく」といった大ヒット曲以外で、特に印象に残っている曲は?という難しい質問をぶつけてみた。

「幼い頃から洋楽しか聴いてこなかったので、やっぱり洋楽のカバー曲はどの曲も愛着があります。オリジナル曲の中では、私も出演したドラマ(TBS系『金曜ドラマ・もういちど春』)の主題歌になった『強がり』(作詞:なかにし礼 作曲:林哲司 編曲:前田憲男/1981年)です。前田先生のアレンジがすごく好きなんです」。

「強がり」はなかにし礼が作詞、作曲は林哲司、前田憲男のジャズフュージョン的なアレンジが上質なAORを作り上げている。この“昭和歌謡ミーツAOR”とでもいうべき一曲を、伊東が繊細なボーカル、圧巻の表現力で聴かせてくれる。1982年の伊東のアルバム『ミスティー・アワー』は林がプロデュース。作家陣は竹内まりや、EPO、かまやつひろし他、ミュージシャンは井上鑑、林立夫、松原正樹、斎藤ノブら、当時の若手トップミュージシャンで構成されたバンド・パラシュート人脈が集結した、シティポップの名作として人気だ。

伊東は数々のドラマやミュージカルへも出演し、役者としても活躍していた。

「何かのドラマに出演した時に、共演した役者さんに『ゆかりさんのような歌手の方は、たった3分の間に一人でスポットライトを浴びて、拍手をもらえる幸せな職業だと思う。僕たちは、主役の人にしかライトが当たらない。それも、ゆかりさんみたいにあんな強いスポットライトじゃなくて、ぽんやりしたライト。だからゆかりさんのような歌手は、僕たちの憧れの職業なんです』って言われたことを覚えています。その時改めて『確かに3分の間に注目を集めて、拍手ももらえる幸せな仕事かもしれない』って思いました。役者を経験したことで得た表現力は、その後の歌に役に立っていると思います』。

コロナ禍で「やっぱり自分は歌うことが好き、仕事が好きだということを改めて感じました」という伊東。ますます意欲的に歌に取り組み、長女の歌手・宙美(ひろみ)さんと『デュオで親子でライバルで』と題したコンサートを行なったり、『BIGBANDTAN LIVE TOUR 2022』にゲスト出演し、ビッグバンドをバックに美しい歌を披露するなど、お客さんの前で歌える喜びを噛みしめている。

「テレビで歌うのも好きだけど、やっぱりカメラに向かって歌うより、生でお客様の顔を見て歌って、拍手をもらうと鳥肌が立ちます。あの感覚は一度経験するとやめられないんです。それで歌い終えて、楽屋でお化粧を落としたときに感じる達成感、解放感も最高なんです(笑)」。
来年の70周年には“古希”コンサートを「絶対にやりたい」と意欲的だ。生涯一歌手としての矜持を貫き、歌を届け続ける。
otonano『POPS QUEEN〜オールタイム・シングル・コレクション〜』特設サイト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。
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