アーティストの音楽履歴書 第42回 [バックナンバー]
X JAPANの衝撃、クラブミュージックの引力……音楽好きの青年が“記念受験”のバンダイナムコで名サウンドプロデューサーに
2022年12月24日 18:30 20
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アーティストの音楽遍歴を紐解くことで、音楽を探求することの面白さや、アーティストの新たな魅力を浮き彫りにするこの企画。今回はクラブミュージックをルーツに持ち、バンダイナムコゲームス社員を経て2021年にメジャーデビューを果たした
取材・
3歳の頃にピアノを始めたのが、最初に音楽に触れたきっかけです。母が音楽の先生で、父も音楽が好きだったので、家庭の中に自然と音楽があるような環境でしたね。それから6歳の頃にアメリカに行って、現地の幼稚園や小学校に通いました。人生初のライブは、アメリカで父親に連れられて行ったケニー・ロギンスのライブだったと思います。アメリカで音楽に触れた記憶はほとんどなくて、当時テレビで流れてた「ヒーマン」とかアニメの曲を聴くくらいでした。
1989年、アメリカにて。左端がTAKU INOUE。
アメリカの小学校のクラス写真より。
音楽をちゃんと聴き始めたのは、アメリカから帰国して日本の小学校に入ってから。当時は
小6のときに、当時NHKでやっていた「ポップジャム」という番組で
中学時代はLUNA SEAが一番好きで、
中2のときからバンド活動を始めて、LUNA SEAとかJUDY AND MARYをコピーしながら、オリジナル曲も作っていました。作曲を始めたきっかけは全然覚えていないんですけど、父親がコンパックの安いパソコンを買ってきて、その中にプリインされてた音楽ソフトを使ってデモを作り始めたんです。デモをメンバーに渡して「こんなん作りたい」って共有したりして。でも具体的に作曲をやりたいと思ったきっかけは全然覚えてないんですよ。
父の仕事の都合で16歳から1年ほどベルギーに行くんですけど、クラブミュージックにハマっていたこともあり、ベルギー行きが決まったときはかなりうれしかった記憶があります。「R&Sレコーズの本拠地に行けるじゃん!」って。ベルギーでは学校でクラブミュージックが好きな友達ができて、そいつの家に行ってレコードを聴きまくったり、オススメの楽曲を交換したり、いろんなレコード屋に連れて行ってもらったり、小遣いでレコードを買ったりして、めちゃくちゃ楽しかったですね。
ベルギーでハマった音楽で印象深いのは、
ベルギー在住時、遊びに行ったイギリス・ロンドンにて、The Beatles好きの父とアビー・ロードを歩くTAKU INOUE(左)。
ベルギーの学校のクラス写真より。
日本に戻ってきたのは、ちょうど「AIR JAM」がめちゃくちゃ流行っていた時期。
高校卒業後は大学進学で上京するんですけど、札幌のバンドも同時に続けていて、東京と札幌を行ったり来たりしてました。さらに大学の友達とがっつり打ち込みのバンドやろうということになって、applebonkerというバンドを結成したんです。applebonkerの活動はすごくがんばったなと今でも思います。ちゃんとした打ち込み機材がそろってきた頃、Sony Musicがオーディションをやっていて、「送ってみるか」とノリで音源を送ってみたら、受かったんですよ。それでCDを作らせてもらったり、
applebonker
就活する段階になって、ゲームミュージックを作る仕事があるというのを改めて認識して、選択肢としてアリだなと感じたんです。X JAPANと出会って音楽にのめり込んで以来、アニメからはわりと離れていたんですけど、ゲームは一貫してずっとやっていたので。「でも音大出身じゃないとダメなんだろうな」とか思いながら、記念受験のつもりで一番好きだったバンダイナムコゲームスにテープだけ送りました。それで結果的に入社が決まって、ゲーム音楽制作の仕事に就いたわけです。現代のゲームミュージックって普通の音楽と一緒というか。パソコンを使って、ポップミュージックと一緒の作り方をするので、「ゲームミュージックを作っている」という新しい感覚はあったものの、趣味がそのまま仕事になったような感じでしたね。
僕はもともとナムコの高橋慶太さんというプロデューサーの方が手がけた「塊魂」ってゲームが大好きで、最初に「塊魂」の制作チームに入れてもらったんです。そのチームで作った「のびのびBOY」というゲームの曲が、最初の仕事でした。それから、「RIDGE RACER」とか「鉄拳」の音楽を作ることになるんですけど、クラブミュージックが得意だったんで、その2つとは特に相性がよかったんですよね。周りからは「スカした感じの曲を書くやつ」って思われてたかもしれません(笑)。
それから2、3年後に「アイドルマスター」の仕事が入ってきて、最初は作詞を担当しました。そのときにハッチャケた内容の歌詞を書いたら、「あ、こういうのもいけるんだ」と周りから思われたらしく、アイマス関連の仕事が増えていって。最初に手がけたのは「THE IDOLM@STER 2」だったんですけど、初代「THE IDOLM@STER」の存在は知らなかったんですよ。ただ昔、ゲームショップに行ったときにアイマスの「shiny smile」という曲が流れていて「なんていい曲なんだ」と衝撃を受けたのはめっちゃ覚えていて、それが作詞の仕事が来たときにつながった感じでした。「そういえば、ここに『shiny smile』を作った人がいるんだ……」と感動しましたね(笑)。アイマスで最初に作曲したのは「アイドルマスターシンデレラガールズ」という派生コンテンツのキャラソン。ナムコはいろんなラインの制作を同時にやることが多いので、「鉄拳」「RIDGE RACER」「塊魂」チームの仕事と並行しつつ、たまにアイマスもやるという働き方をしてましたね。音ゲーのディレクターをやらせてもらったりもしたんですけど、僕は1つのチームに所属するというよりも、いろんな仕事をちょいちょいつまんでやらせてもらう立ち位置でした。
バンダイナムコゲームス社員時代の写真。
会社の仕事と並行して個人での音楽活動もやっていました。ライブの頻度はすごく減っていたけど、友達とスタジオに入ったり、DJのオファーをもらったり。「ゲームミュージックでDJやってください」「アイマスの曲でDJしてください」みたいな依頼が増えましたね。
2015年にMOGRAの箱イベに呼んでもらってからは、MOGRAによく出入りしてました。僕はいわゆるインターネットミュージックには疎くて、なんならMaltine Recordsも全然知らなかったし、ボカロもまったく通ってこなかった人間だったんです。でもMOGRAのイベントに出るようになってから聴くようになりました。内容はクラブミュージックだったりするし、普通に選択肢の1つとして触れるようになって。あとはMOGRAでボカロ界隈の人とかインターネットレーベル周りの人と話す機会が増えて、それこそひさびさにtofubeatsくんと「実は『WIRE』に出てたapplebonkerのメンバーなんです」みたいな再会を果たしたりもしました。ここをきっかけに友達も増えたし、音楽の選択肢も増えたし、インターネットミュージックはずっと面白いシーンだなと思っています。
個人の仕事を受けている中で、
トイズに入った当初は「受託もいいですけど、アーティストとしてもやってくださいね」と言われてたものの、最初はアーティスト活動のほうに全然興味が湧かなくて(笑)。のらりくらり受託仕事ばっかりやってたんですけど、2021年の頭くらいに、10年後のことをふと考え始めて、「10年先も受託があるのかな」とか急に考え込んじゃったんですよ。「新しいことに挑戦しなくちゃいかんな」という気持ちになって、去年「3時12分」という曲を作りました。なんで急にそんなことを考え始めたのかはわからないんですけど、仕事の山場を越えた直後で、やっぱり暇になるとよからぬことを考え出すというか(笑)。DJをやっていたので今さら人前に出てドキドキすることはありませんでしたが、自分の名義で曲を出すというのはひさびさだったので緊張しましたね。今年
流行は常に追いかけています。「東京トップヒッツ」みたいなプレイリストをめちゃくちゃ聴いて「最近はこういうのがウケるんだ」と思ったり。ポップスも大好きなので普通に楽しく聴きながら、そういうアンテナは常に張っていますね。僕は作曲における一貫したテーマなどが特にないんですよ。「そのときに楽しいと思うものを楽しく書く」というのが唯一の決まりごと。イヤイヤ作って人に響くものはできないと思うので、そこだけは意識しています。
サウンドプロデューサー / コンポーザー / DJ。「アイドルマスター」シリーズや任天堂とCygamesによるアクションRPGアプリ「ドラガリアロスト」などゲームの楽曲をはじめ、DAOKO、Eve、ナナヲアカリ、STU48、月ノ美兎、HOWL BE QUIETといったアーティストのサウンドプロデュースや楽曲提供を担当する。2021年にTOY’S FACTORY内のレーベル・VIAより「3時12分 / TAKU INOUE&
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TAKU INOUE @ino_tac
ナタリーの【アーティストの音楽履歴書】、今までの音楽人生についていろいろしゃべりました‼
恥ずかしい写真もまあまあ出しましたが、ご興味ある方はぜひ読んでみてねhttps://t.co/pGH9RHAn0t
影響受けまくった曲のプレイリストも作ったのでそちらもぜひ聴いてみてくれッ
https://t.co/ooSb7piDrf https://t.co/fTAYhmL0UB
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