Amorphis、Ihsahn、At The Gates……北欧エクストリームシーンを支える重鎮たち – Real Sound

西廣智一の新譜キュレーション 第4回
 ヨーロッパのハードロック/ヘヴィメタル(以下、HR/HM)シーンの中でも、特に活気づいているイメージがあるのが北欧。そう感じるリスナーは少なくないと思います。特にここ日本ではスウェーデン、フィンランド、ノルウェー、デンマーク、アイスランド出身HR/HMバンドの総称として「北欧メタル」というカテゴライズを使うことも多く、その中にはパワーメタルやゴシックメタル、ガレージロック寄りの爆走ロックンロール、そしてメロディックデスメタルやブラックメタルなど、一言では片付けられないほど広義なサブジャンルが存在しています。
 つい先日も、日本のフィンランド大使館が『フィンランドの「メタル音楽の都」を選ぶキャンペーンがスタート!』というお知らせを公開したばかり。この記事によると、フィンランドは「国民一人当たりのメタルバンド数が世界で最も多い国」とのことで、「10万人の住民ごとに53以上のメタルバンドがある。人口比率でいえば、世界トップの『へヴィメタル大国』」なんだとか。リンク先の説明にもあるように、日本でも人気の高いNightwishや Children Of Bodomもフィンランド出身です。
また、90年代初頭にノルウェーやスウェーデン、フィンランドではブラックメタルが栄え、特にノルウェーでは「インナーサークル」(Black Metal Inner Circle)と呼ばれる反キリスト集団が教会への放火や殺人事件など、社会問題を引き起こし話題になったこともあります。そういった点においても、北欧ではHR/HMが日常生活に根づいている……なんてことも言えるかもしれません。
 今回の連載では、そんな北欧HR/HMシーンの中でエクストリームシーンを支える重鎮たちの新作8作品を紹介したいと思います。内訳はフィンランドが3組、ノルウェーが3組、スウェーデンが2組となっています。
 まずは、ヘルシンキ出身の大御所バンドAmorphisの、通算13作目となるニューアルバム『Queen Of Time』から。1992年のデビュー当初はデスメタル/メロディックデスメタル色が強いバンドでしたが、次第にフォーク/トラッド的要素やゴシック/プログレッシブロックの要素などを取り入れ、独自のスタイルを確立。そのメランコリックで翳りのあるサウンドは、ここ日本でも高く評価されています。最新作『Queen Of Time』にもフォーク/トラッドのテイストが散りばめられた楽曲群がずらりと並び、攻撃的なデスボイスとメロウなクリーントーンを巧みに使い分けるトミ・ヨーツセン(Vo)の歌声からは、ある種のドラマチックさすら感じられます。
 2組目はKalmahの約5年ぶり、通算8枚目のアルバム『Palo』です。ペッカ(Vo, Gt)&アンティ(G)のコッコ兄弟を中心に、前身バンドAncestor名義を含めると25年以上にわたり活動を続ける彼らは、メロディアスなツインリードギターをフィーチャーしたデスメタルバンド。キーボードを織り交ぜたそのサウンドスタイルは、ダークさを伴いながらも非常にドラマチックで、“スワンプ・メタル”の愛称で親しまれ続けています。その“スワンプ・メタル”スタイルは本作でも健在で、ブルータルさの中にどこか民謡チックな親しみやすさを見つけることができます。また、全体をドラマチックに盛り上げるキーボード/シンセの役割も欠かせないものになっており、日本のHR/HMリスナーにはたまらないテイスト満載ではないでしょうか。
 フィンランド3組目は、本作『Hengen Pitimet』で念願の日本デビューを果たすMokoma。日本デビューとはいっても、これが彼らにとって通算10枚目のオリジナルアルバムであり、そのキャリアもすでに15年に及びます。また、2014年と2016年には日本でのCDデビュー前に来日公演も実現。特に2013年は5月のイベント『LOUD & METAL ATTACK』での初来日に加え、10月の開催された国内最大級のメタルフェス『LOUD PARK 13』にも初出演を果たしています。そんな彼ら最大の魅力は、母国語であるフィンランド語で歌唱している点。大半のバンドがフィンランド国外での活躍を念頭に置き、英語詞で歌うことが多い中、Mokomaは一貫してフィンランド語でスラッシュメタルやメロディックデスメタルを表現。そのメロディからは母国の土着的なメロディ要素も感じられ、フィンランド語で歌うことでそのカラーはより強まっているように感じられます。なお、Mokomaは5月25日にエストニアのメタルバンドTalbotとともに来日公演を行う予定です。






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