シナリオアート | Skream! ライヴ・レポート 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト – Skream!

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LIVE REPORT
Japanese
Skream! マガジン 2022年09月号掲載
2022.07.23 @渋谷WWW
Reported by 宇田川 佳奈枝 Photo by なかきょん。(@kkkyooonnn)
フル・アルバム『Blue Smell』&アコースティック・アルバム『White Smell』の同時リリースを祝うツアーの東京ファイナル。昼は『White Smell』の曲を中心としたアコースティック、夜は『Blue Smell』の曲を中心としたバンド・セットの2部構成で開催された。その夜の部を今回はレポート。アンコール含め全20曲とボリューミーなセットリストでシナリオアートをたっぷり堪能できるワンマンであった。

約90分のステージの最初を飾るのは、アルバム『Blue Smell』のタイトル通り”青臭い感情”が刺さる「アイマイナー」。ゆっくりと歌い始めるハヤシコウスケ(Gt/Vo)の姿がスポットライトで照らされる。”楽しんでいこうや~!”とハヤシの掛け声で「サヨナラムーンタウン」へ。彼らの代表曲を序盤に据えることで、シナリオアートの物語のページをめくるように進んでいく。ハットリクミコ(Dr/Vo)のドラム・ソロに合わせてクラップが鳴る会場。ドラムを打つ力、歌声がいつにも増して力強い気がした。彼女のヴォーカリストとしてのパワー、ポテンシャルは計り知れない。

続く「エバーシック」は、廃品回収車のアナウンスをサンプリングした音作りが面白い。エレクトロニックな音に合わせて身体を揺らすハヤシ。煌めく、懐かしいあの頃を思い出させる「アオノリビドー」では、”二度と無い瞬間を/二度と無い現在を/光り輝けるように”と、まるで自分たちに言い聞かせるように歌う。ハイトーン・ヴォイスで歌いながら、隙間なく曲へのアプローチをし続けるドラム、繊細な音を奏でるギター、そしてヤマシタタカヒサの太く輪郭がはっきりしたベース。3人の音のバランスは、ライヴを重ねるごとにどんどん素晴らしいものへと変化をしている。

続く「ジンギスカンフー」では、”みなさんに恥ずかしがらずに試練を与えます。一緒に運動しようね!”とハットリによる”ウーハー”振付講座が行われ、会場の熱気も上がり、そのままの勢いで曲へ突入する。Aメロからサビのギャップに驚く曲だが、遊び心満載で、これほどまでに中毒性のある曲だったのかと再確認できた。序盤から飛ばす3人にフロアも必死についていく。

ツイン・ヴォーカルの美しさに魅せられる「ドリームイーツ」、エレクトロニックなサウンドと美しい音色が同居する「スペイシー」と、音楽でいろんな世界へ連れて行ってくれる。少しのMCを挟みながらも、ここまで7曲をほぼノンストップに進めてきた。”みなさん次で最後の曲です。嘘です”と勢い余って冗談を言うハットリ。MCになると、急にお茶目な一面が出るのも彼ららしい。”この作品を作るにあたっていろいろあった。明日、今の生活はまだ続いているのかな”と不安や閉塞感のある世界を書き残しておこうと作ったとハヤシは言い「トワイヴェール」を披露した。エレキ・ギターを置き、ハンドマイクで歌い始める。童歌「かごめかごめ」をサンプリングした前衛的なサウンドに、ヤマシタのメロディアスなシンセ・ベースが効いている。ステージがピンクの照明に包まれ、異様な世界へと誘う。

ポップなメロディに乗せ、東京生活での葛藤を歌う「トウキョウメランコリー」、彼らが音楽を通して伝えたいことは、昔から一貫して変わらないことを思い知らされる「ドリーミーラブストーリー」。この曲はバンド結成時に初めてレコーディングしたとのこと。まさにシナリオアートの”原点”だ。ツイン・ヴォーカルに目がいくところだが、ヤマシタの優しく支えるコーラスがいい味を出している。3人のバランスの良さを見せつける1曲だ。

ライヴも終盤へ差し掛かったところで、アルバムのタイトル曲にもなっている「ブルースメル」を披露。3人が飛び跳ねるように、幸せそうにサウンドを奏で、自由に音楽をする楽しさを見せつけてくる。シナリオアートが新たなフェーズへ進んでいることを示しているかのように思えた。「ブルースメル」のアウトロからそのまま「ホワイトレインコートマン」へ繋ぐ。変拍子が妙に心地よい「スーサイドスポット」では、最後の力を振り絞るかのように歌い上げるハヤシ。歌声に強い願いが込められているかのようだ。さらに「ナナヒツジ」と容赦なく畳み掛けてくるがフロアも負けじとクラップで応える。

ハヤシは”募る思いがありすぎて曲がたっぷりになっちゃいました。この場にみなさんがいてくれて心強いです。せめて、このシナリオアートという音楽だけは永遠にみなさんのそばで寄り添えるように、そう思いを込めていつも作ってる──青臭く、青臭く、まだ夢を見ていたい”とフロアみんなに伝え「アカシアホーム」へ。

本編ラストはハットリの透き通るような歌声で始まる「テンダーランド」。”ここは終着点”とこの物語(ワンマン)の締めくくりを語るかのように歌う。観客は思い思いにリズムをとり、身体を揺らしていた。シナリオアートが大好きだ、という気持ちがひしひしと伝わってくる。贅沢なほどボリューム満載の曲数を披露したシナリオアート。フロアを飽きさせないよう、テンポ良く進めていった様子はさすがとしか言いようがなかった。

アンコールでは多くを語らず「アオイコドク」、「フユウ」の2曲を披露。そこで、2022年12月に下北沢Flowers Loftにて”Scenario Home-live night-“、”Scenario Home-livingo-“を2デイズ開催することを発表。独立をしてから来年で5年の3人の中に芽生える気持ち、彼らの物語の結末はまだわからないが、不安に押しつぶされそうになったら少し立ち止まってみてもいいじゃないかと、気張らず、彼らの歩幅で音楽を続けていく未来が見えた気がした。シナリオアートの歌が今日も誰かを救っているのだろう。それが永遠に続くことを願っている。

“奇跡のようなステージに立っている”とハヤシは言う。独立を経て、コロナ禍でも足を止めず走り続けてきたシナリオアートゆえ、その言葉に重みがある。未来への不安を拭うことができない世の中だからこそ、惜しみなく、自分たちの気持ちを曲に表現しよう。一曲一曲に込められた、シナリオアートの音楽を聴いてくれる人への感謝、思いの強さがダイレクトに届いたステージだった。
[Setlist] 1. アイマイナー
2. サヨナラムーンタウン
3. エバーシック
4. アオノリビドー
5. ジンギスカンフー
6. ドリームイーツ
7. スペイシー
8. トワイヴェール
9. トウキョウメランコリー
10. ドリーミーラブストーリー
11. アンティークトロフィー
12. スワンテイル
13. ブルースメル
14. ホワイトレインコートマン
15. スーサイドスポット
16. ナナヒツジ
17. アカシアホーム
18. テンダーランド
En1. アオイコドク
En2. フユウ


“持病”という意味の造語を冠した3年ぶりのフル・アルバム。この世界で生きづらさを抱える人、それをカモフラージュしつつ”普通に”生きる人を指すという。つまり、多くの人にとって感じるものがある作品なのではないだろうか。しかしながら、押しつけがましくはなく、むやみに刺々しいわけでもない。だからこそ、言葉にできない思いにそっと寄り添ってくれる。この3年の間に独立し、自由になったシナリオアートだからこそ描ける、パワフルにもシリアスにも振り切れる豊かな音像。そこに誠実に日々と向き合って生まれたであろう嘘偽りのない言葉が乗り、それをあくまでも平熱の歌声で届ける。曲順の妙も含め、聴き手の気持ちの整理を見守ってくれるような、音楽とリスナーへの愛情たっぷりの力作。(稲垣 遥)
今のシナリオアートのチャレンジングな部分が曲構成にも現れた2曲(「アダハダエイリアン」と「オンリーヒーロー」)、「ホワイトレインコートマン」にも似た、バンドにもファンにとってもこれぞシナリオアートな「アカシアホーム」という、3曲が現状報告の意味も担っている独立後初のシングル。ポスト・ロックと物語的な楽曲の両面を感じさせる構成の多彩さが自由で、6分近い大曲「アダハダエイリアン」。ロックンロール・リヴァイヴァル調でありつつ、ベースはドラマチックという彼ららしさが加味された「オンリーヒーロー」。柔らかなハヤシコウスケのヴォーカル表現や透明感のあるギター・サウンドが、まさに”ホーム感”満載の「アカシアホーム」。驚きと安心感の両方を封じ込め、バンドの状況の良さを伝える好盤。(石角 友香)
アルバム『Faction World』での壮大な音楽の旅を経たシナリオアートのニュー・シングルは、ワクワクするような地メロの助走からサビでパッと解放され、後半にはテクニカルでカオティックなセクションも登場するという、まさに彼らの王道が今の力量で発揮されたナンバー。失うつらさが、ただ切ないだけではなく、そこにそれでも人を愛する力強さが溢れる歌詞も新しい。また、2曲目の「ハローグッバイ」は珍しくギター・ロック色の強いストレートなナンバーでありつつ、そこにお馴染みCHRYSANTHEMUM BRIDGEのドリーミー且つスペイシーなエレクトロ・サウンドが融合しているのも新鮮な聴感をもたらす。加えて、表題曲のハヤシコウスケ、ハットリクミコとの男女ヴォーカル気分が味わえるインスト2トラックも収録している。(石角 友香)
楽器やブランケット、双眼鏡やランタン……それらすべてが”地球柄”で彩られたジャケット写真のアートワークが示唆しているように、生身の3人が旅をしながら空想も現実の世界も力強く表現していく、そんな頼もしい新境地を開拓した2ndフル・アルバム。世界に合わせて命を落とすぐらいなら、こっちから見限ってやる! と言わんばかりの内容でありながら、曲調は限りなく明るい「ジャーニー」。チャイルド・コーラスが祝祭感を盛り上げる「サンライトハーモニー」、「パペットダンス」のあとには、どこか世界と隔絶されたムードが漂うSF的な「コールドプラネット」に現代のリアリティを感じる。全編が旅の途中のような移動感と、時折覗く無国籍感であっという間にラストの「エポックパレード」へ。時間や気持ちの変化を体験できるアルバムだ。(石角 友香)
イントロが鳴った瞬間、これまでのファンタジックなシナリオアートとも、内省的なシナリオアートとも違う人肌感が響き、まず驚かされる。さらに、セカンド・ラインの陽気なビートにも驚かされる。そして新しい旅立ちを彩るような生の管楽器やストリングスは、彼ら3人だけじゃなく、関わる人を楽しく巻き込んでいく”パレード”を表現。しかもそのパレードはむしろ特別な日だけのものじゃなく、些細な喜びを発見し続ける日常こそ、新鮮なものとして祝福しようと歌われるのだ。去年のシナリオアートからはまったく想像できないオピニオン! 加えてチャイニーズ風のメロディと響きの楽しさがループする歌詞がこれまた意表を突くカップリングの「ジンギスカンフー」も、今のバンドのタフさを印象づける。(石角 友香)
自身の精神世界への”潜水”。プロローグとなるエレクトロニックな「シンカイへ」からコンセプチュアルな作品性に引き込まれる。実質的な1曲目である「シニカルデトックス」は3人の演奏が目に見えるほど削ぎ落とされた音像、タイトだがテクニカルなアンサンブル、そしてゴスかラウドか?と思しき後半の展開まで、どす黒い感情が完成度の高いアレンジで表現される凄みがある。また、生身のファンクネスとシナリオアート流グランジが一体化した「プライドモンスター」も凄まじい。怒涛の展開を経て、ハヤシのモノローグに乗せて訥々と歌われるアウトロの「センカイへ」のあたたかさがアルバム全体を光の差す方向へ束ねていく。タフさと繊細さを同居させた、今のシナリオアートの必然が鳴っている。(石角 友香)
CDの形態が複数あるのを承知で、できればこのスプリットに収録されているトータル6曲すべて聴いて欲しい。それぐらい両バンドとも楽曲クオリティと新たな挑戦を体感できる。KANA-BOONの「talking」はファンクネスすら感じる16のグルーヴやラップ部分にロック・バンドのケレン味を感じるし、アニメのエンディングにそのヒリヒリした世界観がハマる。シナリオアートの「ナナヒツジ」で聴けるソリッドで急展開する構成も新しい。また2曲目(KANA-BOON「ぬけがら」/シナリオアート「トワノマチ」)にどちらも各々の色合いでセンチメンタリズムを喚起する楽曲を配しているのも聴き比べてみると面白い。そして”すべてがFになる”裏メイン・テーマとも言えそうなKANA-BOONの「PUZZLE」での楽器隊の豊富なアイディアとテクニカルなプレイは嬉しい驚きの連続だ。(石角 友香)
遂に完成された1stフル・アルバム。幽玄且つ煌びやかなアトモスフィアを産むエレクトロ・サウンドに、あたたかみとチャームを加える生楽器の音色、男女混成ハーモニー、さらにはファンキーなほどに肉体的なバンド・グルーヴが組み合わさることで産まれる、聴き手を現実と切り離された夢の中へと誘うような音世界は、もはや圧倒的な完成度。そして本作のタイトルがインディーズ時代からの代表曲「ホワイトレインコートマン」の歌詞から取られていることは、彼らが一貫して掲げ続ける変わらない理想を示している。哀しみの雨からあなたを守る”幸せの傘”――いつだって、彼らは目の前にいるあなたに手を差し伸べる。本作最大の魅力は、雨の止んだあとにあなたが踏み出す最初の1歩を見届けようとする、その優しく大らかな視線にこそある。(天野 史彬)
シナリオアートの音楽には常に”記憶”というモチーフがある。本作においてそれは”死”、あるいは”子供時代への憧憬”という形で表れている。SEKAI NO OWARIを手掛ける制作チーム”CHRYSANTHEMUM BRIDGE”をプロデューサーに迎え、煌びやかなエレクトロ・サウンドや疾走感のあるシューゲイズ・ギター、そして躍動感のあるダンス・ビートをも飲み込んだサウンドは、彼らの描かんとする”痛みの伴う幻想”を、格段に上がった明度で聴き手の前に映し出す。生きることとは醜く老いること。生きることとは孤独と共にあること。しかしその中で、かつて出会った人やかつていた場所に思いを馳せることは生きるうえでの力になりうる。だって僕らは常に記憶と共にあるから。たまには思い出して、そしてまた戻ってこればいい。(天野 史彬)
関西出身、男女ツイン・ヴォーカルを擁する3Pバンド、シナリオアートのメジャー・デビュー・ミニ・アルバム。冒頭を飾る「ブレーメンドリームオーケストラ」で歌われる”ここじゃない どこかへ すばらしい 世界へ ぼくと 抜け出そう”というライン。これが本作を、ひいてはシナリオアートというバンドのステートメントを端的に表していると言っていい。何かを振り払うように加速するビート。ギターだけでなく、シンセやストリングスなども多用したサウンドスケープ。すべてが甘美で幻想的。だが、これは単なる逃避主義の音楽ではない。この世界は哀しみに満ちているというシビアな現実認識が根底にあるからこそ、このバンドは想像力と創造力で現実を超えようとする。理想主義で現実に抗う、痛快な新世代の登場だ。(天野 史彬)
思いついたことはなんでも挑戦して、”面白い”と思ってもらえることができている感じはあります
「サヨナラムーンタウン」は自分たちのシナリオアート観に立ち返った曲
ただ空想に逃げるだけじゃなく、いろんな現実と向き合うなかで生まれた”Faction”というテーマ
あるものに気づけることは、ないものに逃げるより “今の時代に合った幸福論なんじゃないか”と思うんです
聴く人と共に戦いたいし嘆きたいし、それで解毒してもらえたらいいと思う
今の状況を切り開いて行きたいって気持ちもこの曲には乗っています。
“お前を救ってやる!”じゃなくて、そっと隣に寄り添って雨を遮るヒーローでありたい
教室の隅で悶々と考えてる奴が、実は世界を変えるんじゃないかって確信してるんです
“逃げてもいい”っていう道を僕らが示せたらいいなって思いますね
Skream!×HMV presents "ROCKのススメ VOL.2" スペシャル対談
2022.07.23 @渋谷WWW
2022.04.01 @下北沢Flowers Loft
2020.05.31 @Online Streaming
2019.12.15 @代官山UNIT
2019.07.03 @下北沢LIVEHOLIC
2017.06.09 @下北沢LIVEHOLIC
2017.05.07 @EX THEATER ROPPONGI
2016.12.03 @渋谷Galaxy
2016.07.14 @EX THEATER ROPPONGI
2016.03.10 @赤坂BLITZ
2015.02.13 @ 渋谷 WWW
2014.09.18 @代官山 UNIT
2014.03.14 @TSUTAYA O-Crest
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Skream! 2022年08月号

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