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医療現場に立つ看護師たちは、日々、難しい場面に遭遇します。迷い、悩む看護師たちの姿から学べることは何か。聖路加国際大学教授の鶴若麻理さんが、医療の現実と生命倫理について、読者とともに考えていきます。 【イラスト】糖尿病の人が陥るリスクがある「重症低血糖」とは？
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中学3年生の女子生徒。4月の学校健診で尿糖陽性（血液中の糖が尿中に排泄されていること）が指摘され、さらなる検査が必要となった。7月に近隣のクリニックから病院に紹介され、母親と外来受診。ヘモグロビンA1c（過去1～2か月の血糖値を反映する値）が17％（通常は6％以下）で、入院が必要な状態だった。そのことを医師から伝えられると、本人は診察室で「入院したくない。帰る」「学校に行く。部活に行く」と繰り返し号泣しながら、診察室から出ていこうとする。糖尿病療養指導士の看護師も説得を試み、母親がなだめては連れ戻すことを繰り返し、本人は興奮して泣きやまなかった。
とにかく血糖値が高く、主治医は今すぐにインスリンの注射による治療開始が必要と判断し、「入院はしなくていいから、まずは治療するのが大事。外来で治療しよう」と伝えた。看護師からも「治療しないと学校に行けないし、好きなこともできない」と声をかけられ、1時間近く号泣していたが少しずつ落ち着いてきた。女子生徒は中学入学後、ダンス部に所属し、秋に全国大会があるという。また高校受験も控えていた。 別室に移り、看護師は「自分で注射して、血糖を自分で測定する。それができないと、部活もできないから」と患者と母親に説明し、手技を丁寧に教えた。自己血糖測定器は腕にセンサーをつけて血糖を測定する。本人は落ち着きを取り戻し、「これはどうやってやるの」「お菓子食べると血糖が上がるけど、アイスクリーム食べていい？ 何を食べると上がるの？」などと質問してきた。3日後に外来予約を入れて、その日は自宅に帰った。 3日後、本人は見違えるように落ち着いており、血糖値も下がっていた。夜中に何度もトイレに行かなくなった、のどの渇きがなくなったなど、体が楽になっていることを実感したようで、「どれくらいにならなくちゃいけないの」と、血糖の値についても質問してきた。インターネットでも色々調べていることがうかがえた。食事前の血糖は150程度であるが、部活後は食事量が多いため300ほどに上昇し、部活の後は下がる状況で、主治医はコントロールが難しいと考えていた。
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