STEREOPHONICS – Skream!

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FEATURE
Overseas

ライター:山本 真由
今年、結成30周年&デビュー25周年を迎える、STEREOPHONICS。UKを代表するロック・バンドのひとつとして長年高い支持を経てきた彼らが、通算12枚目となる新オリジナル・アルバム『Oochya!』をリリースした。タイトルになっている”Oochya! (ウーチャ!)”とは”よっしゃあ、やろうぜ!”というような意味で、STEREOPHONICSがメンバー間で使用している掛け声なのだそう。今作は、そんな彼らの活動の節目となる記念的な作品という立ち位置なだけでなく、パンデミック下で長らく混乱した音楽シーンや、息の詰まるような世の中に対してのポジティヴな宣誓となっている。

STEREOPHONICSは、その佇まいも音楽スタイルも、”まさにUKロック”というような、シンプルでストレートで、キャッチーでクールなバンドだが、もちろんすべてが単純でまっすぐの道程を歩んできたわけではない。彼らには、困難もあり音楽的な模索もあったが、それでも長い年月第一線で活躍してこれたのは、音楽への情熱という芯の強さがあったからだと思う。
南ウェールズの小さな町で生まれ、ご近所同士の幼馴染だったKelly Jones(Vo/Gt)とStuart Cable(Dr)は、10代の頃に自宅のガレージで音楽活動を始め、そこに友人のRichard Jones(Ba)が加わる形となってSTEREOPHONICSの原型が生まれた。学生時代に脚本家を目指していたという、Kellyが描き出す独特の世界感は、インディーズで活動していた頃から注目され、ヴァージン・グループ会長のRichard Bransonが1996年に設立したレコード・レーベル”V2 Records”の、第1弾アーティストとしての契約、デビュー・アルバムの『Word Gets Around』(1997年)がリリースされる。そして、ブリット・ポップ以降の新たなUKロックの担い手として、順調にキャリアを積んだ彼らは、2ndアルバム『Performance And Cocktails』(1999年)から立て続けにUKチャートで1位を獲得。しかし、そんななかでオリジナル・メンバーのStuart Cableがアルコールやドラッグなどの問題で活動に支障をきたし、脱退して(しかもその数年後に亡くなって)しまうという困難に直面する。それでも、バンドは新たな仲間を獲得し、とどまることなく音楽を作り続け、5thアルバム『Language. Sex. Violence. Other?』(2005年)、続く6thアルバム『Pull The Pin』(2007年)と、チャート1位をキープしていく。幅広いリスナー層にリーチする彼らの魅力は、ハード・ロック・ファンからも愛されるようなアグレッションがあれば、アメリカン・ロックのルーツも感じさせるブルージーなトーンもあり、それでいてブレないブリット・ポップのグッド・メロディが根本にあるところだ。だからこそ、作品ごとにスタイルが変わったとしても、変わらず支持されているのだろう。7枚目の『Keep Calm And Carry On』(2009年)で少し角が落ちたようなポップ・センスを見せると、時代の変化もあってセールス的には落ち着くが、自身のレーベル”Stylus Records”を立ち上げ、移籍1作目となる通算8枚目のアルバム『Graffiti On The Train』(2013年)では、アーティスティックでメロウな一面をのぞかせ、自分たちのやりたい音楽を貫くという信念を見せつけた。そんな彼らの姿勢は、多くの大物ミュージシャンたちからも支持され、また深みを増して進化したバンドをファンは快く受け止めた。そして、そのあとの『Keep The Village Alive』(2015年)や『Scream Above The Sounds』(2017年)では、さらなる表現の広がりを得て、よりスケール感の増した大人のロックという雰囲気を纏っていく。また、前作『Kind』(2019年)では、そこからさらにSTEREOPHONICS節を極めたシンプルなロックを表現し、ここでひとつの完成形を見いだしたのではないかと思う。

そして、今作『Oochya!』。アルバムの冒頭「Hanging On Your Hinges」が、イントロからキレッキレで”そう来たか!”と思わず手を叩いてしまう。初期のグランジ・テイストでスリリングなロックの片鱗が見えるアップテンポな楽曲で、ヒリヒリとしたスリリングなロック・サウンドにテンションが上がらずにはいられない! 続く「Forever」は、2010年代以降の彼らの温かで伸び伸びとしたメロディが身にしみる1曲。そのあとも、オルタナっぽい雰囲気と壮大なスタジアム・ロックが入り混じった楽曲が続き、優しいだけじゃないSTEREOPHONICSを求めていたファンにとっては、嬉しい展開だ。かと思えば、「Right Place Right Time」のようなノスタルジックでグルーヴィなナンバーもあり、「Close Enough To Drive Home」の爽やかなポップ・ロックもあり、またブルージーでハード・ロッキンな「Running Round My Brain」でワクワクさせてくれる、というふうに目まぐるしく様々な顔をのぞかせる。他にも、ブルースやカントリー、ゴスペルなどのルーツ・ミュージックを感じさせる楽曲や、伝統的なUKロックの泥臭さが出たクールな楽曲など、息つく暇もないゴージャスな内容だ。特に、ルーツっぽい楽曲はKelly Jonesのスモーキーなヴォーカルが際立って心地良く、耳に残る。進化し続けてきたロック・シーンの中で揉まれ、身につけてきたタイムレスなポップ・センスと、音楽への情熱。そのすべてがこの1枚に凝縮されている。デビュー・アルバムから25年、駆け抜けてきたSTEREOPHONICSというバンドの芯の強さを感じることができる作品だ。
彼らが、今この時代に”Oochya!(よっしゃあ、やろうぜ!)”と声高に宣言するのは、もちろんバンドとしてひとつの節目を迎え、”これからも俺たちは変わらずやりたいことをやっていくぜ!”という気持ちもあるだろうが、先の見えない不安な世の中にふさぎ込んでいる人々へ、”前を向いていこうぜ!”と肩を叩いているようにも感じられるのだ。そういう意味でも、力強い作品だと思う。


▼リリース情報
STEREOPHONICS
12thアルバム
『Oochya!』
Stereophonics_Oochya.jpg
NOW ON SALE
SICX 175/¥2,640(税込)
amazon TOWER RECORDS HMV

※歌詞、対訳、解説付

1. Hanging On Your Hinges
2. Forever
3. When You See It
4. Do Ya Feel My Love?
5. Right Place Right Time
6. Close Enough To Drive Home
7. Leave The Light On
8. Running Round My Brain
9. Every Dog Has Its Day
10. You’re My Soul
11. All I Have Is You
12. Made A Mess Of Me
13. Seen That Look Before
14. Don’t Know What Ya Got
15. Jack In A Box

配信はこちら
UKを代表するロック・バンドのひとつ、STEREOPHONICS。これまで作品ごとに様々な顔を見せてきた彼らだが、12作目のオリジナル・アルバムとなる今作は、そんな彼らのロックのすべてが盛り込まれていると言っていいかもしれない。初期のグランジ・テイストでスリリングなロックの片鱗が見えるアップテンポな楽曲、そして彼らの根底にあるブリット・ポップのグッド・メロディ、ロックンロール・リヴァイヴァルを経た英国ロックのスピリット、進化し続けてきたロック・シーンの中で揉まれ、身につけてきたタイムレスなポップ・センス。そのすべてがこの1枚に凝縮されている。デビュー・アルバムから25年、駆け抜けてきたSTEREOPHONICSというバンドの芯の強さを感じることができる作品だ。(山本 真由)
ウェールズ出身のロック・バンド、STEREOPHONICSの8作目のフル・アルバム。とにかく生真面目にキャリアを築いてきたバンドだが、前作までのリリース元であるV2 Recordsから離れ、自身のレーベルであるStylus Recordsを設立しての第1作目ということもあってか、本作は、今までのアグレッシヴさよりも、むしろキャリア相応の渋みと貫禄を感じさせるアルバムに仕上がっている。もちろん、ハード・ロックを主体とし、ブリットポップ的な大仰さも兼ね備えた骨太なサウンドは相変わらず。だが本作では、フォークやソウルも飲み込んだKelly Jonesの多彩なソングライティングが一層の洗練を見せているところが、何より興味深い。常に第一線にいたバンドだが、どこか肩の荷が下りたような清々しさが、そこに宿っている。(天野 史彬)
2008年にベスト・アルバムを発表し、オリジナル・アルバムとしては約3年振りとなSTEREOPHONICSの通算7枚目の新作が届けられた。プロデューサーにKASABIANなどを手掛けるJim Abissを迎え作られた今作は、前作『Pull the Pin』にあった様な、STEREOPHONICS節とも言えるメロディアスな側面を全面に押し出したアルバムだ。力強く大きなスケールで描き出されるバラードやピアノをフィーチャーした瑞々しくアップテンポなナンバーまで今の彼らの充実ぶりを象徴するように響いてくる。テーマは10代の頃の自由と言う様に、今作でSTEREOPHONICSは新たなスタートを切ったようだ。(遠藤 孝行)
20年以上、UKロック・シーンをリードし続けてきたSTEREOPHONICSが、今ここから再び"やってやろうぜ!"と宣言する意味とは――
軽々と新しいチャレンジに臨む彼らを支えるのは、自分を信じる気持ち、自分のよかれを信じる気持ちなのだ
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