ここを聴き逃すな!宇多田ヒカル「BADモード」をマニアック解説 – KKBOX


宇多田ヒカルから3年8か月ぶりのフルアルバム『BADモード』が到着。2月23日リリースのCDアルバムリリースに先がけ先行配信がスタートした。「君に夢中」(ドラマ『最愛』主題歌)、「One Last Kiss」(映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』テーマソング)、「PINK BLOOD」(アニメ『不滅のあなたへ』主題歌)などに加え、新曲「BADモード」、「気分じゃないの (Not In The Mood)」、「Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー」の3曲が追加され、ボーナストラックを含む全14曲を収録。宇多田ヒカルの新たな進化が実感できる充実作に仕上がっている。このコラムでは、本作から6曲をピックアップ。“絶対に聴き逃せないポイント”をマニアックに掘り下げます!
はじめに聴こえてくるのは、ローズピアノの美しい音色、そして、吐息にも似たしなやかなフェイク。心地よくグルーヴするバンドサウンドも素晴らしいが、この曲の軸を担っているのは、まるですぐそばで語り掛けられているような、親密なボーカルだ。
出典元:YouTube(Hikaru Utada)
<わかんないけど/君のこと絶対守りたい><絶好調でもBADモードでも/君に会いたい>というフレーズが象徴的だが、こんなにも直接的に“君(=リスナー)”にコミットした歌はおそらく初めてではないだろうか? その背景にあるのはもちろん、コロナ以降の世界。アルバムのタイトル曲にして、本作のメッセージ性を象徴する名曲だと思う。
出典元:YouTube(Hikaru Utada)
映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』テーマソングとして話題を集めた「One Last Kiss」は、宇多田ヒカルの多彩な歌声を堪能できる楽曲でもある。<Can you give me one last kiss?>というフレーズからオクターブ下の声を重ね、重層的なハーモニーを描き出す。さらに楽曲の後半では<忘れられない人>というフレーズが様々な方向から聴こえてきて、<Oh Oh oh oh oh oh… >というラインでは高い声、低い声が有機的に絡み合う。このボーカルアレンジとエディットによって、すべてのジェンダーに響く多様性へとつながっていくのだ。
出典元:YouTube(Hikaru Utada)
“自分自身を肯定して生きていきたい”という思いを込めた歌詞の強さに圧倒される。あなたがつらい思いをしているのはあなたの責任ではない。外からの評価に惑わされず、生き方を自分で選ぶべきーーそんなメッセージを端的に表しているのが、〈王座になって座ってらんねえ/自分で選んだ椅子じゃなきゃダメ〉という一節だ。その背景には“#Me Too”をはじめとするフェミニズムの運動もあると思うが、言うまでもなく、“あなたはあなたのままでいい”というこの曲の核心は、あらゆる性自認、性的指向を越え、すべての人に響くはずだ。
出典元:YouTube(Hikaru Utada)
「Time」を聴いた時の“気持ちいい違和感”と言いたくなるようなフィーリング。そのポイントの一つは、独創的なビートのアレンジだろう。4拍目のスネアを限界ギリギリまで後ろにズラすことで、訛りのあるリズムに結びつけているのだ。この特徴的なビートに対し、音数を抑えたベースライン、あえてシンプルに構成されたコード進行を当てることで、快楽的でありながら、どこかに歪みがある音像に結びつけているのだ。このトラックを完璧に乗りこなし、言葉とメロディを一体化させるボーカルは、まさに彼女の真骨頂だ。
<真っピンクのテーブルに/パステルブルーのパイプ椅子>という冒頭のフレーズによって、鮮やかな色合いの情景が聴き手の頭のなかに広がる。描かれているのはおそらく、宇多田自身が暮らす街のカフェの様子。

まわりにはカップルや老人、そして、<私のポエム買って>と言い寄ってくる女性。まるで映画のワンシーンのような描写の美しさが、ポエトリーリーディング的な雰囲気と豊かなメロディが自然に溶け合い、彼女にしか表現できない音楽の世界へと誘ってくれる。アウトロにおける官能的なサウンドメイクも素晴らしい。

約13分に及ぶ宇多田ヒカル流のダンスミュージック。トライバルなエレクトロ系のビート、英語と日本語の韻を散りばめることで生じる、フロウとビートの有機的な絡みがとにかく気持ちいい。彼女にとっては当たり前にことだろうが、言葉、ビート、アレンジに優先順位がなく、すべてが美しく共鳴させ、聴き手の体を自然に揺らしながら<オーシャンビューの部屋一つ/予約 予約>というキャッチ—なラインに辿り着く構成も見事。30分くらいのリミックス・バージョンもぜひ作ってほしい。

聴けば聴くだけの発見のある『BADモード』。宝物のようなこのアルバムをひとりひとりのスタイルで感じて欲しい。

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