命短し、恋せよ、少女 「ゴンドラの唄」初出誌発見 静岡県立大・細川教授 100年の謎解明|あなたの静岡新聞 – あなたの静岡新聞

2022年4月29日(金)

社会部 大須賀伸江
 静岡県にもゆかりがある歌人吉井勇(1886~1960年)が大正初期に作詞し「命短し、恋せよ、少女(おとめ)」の歌詞で知られる「ゴンドラの唄」の初出誌が、静岡県立大国際関係学部の細川光洋教授(日本近代文学)によってこのほど発見された。時代を超えて唱えられてきた曲の出自である「底本」はこれまで100年以上見つからず、吉井がどの漢字を用い、どこに句読点を振ったのかなどは不明なままだった。
 ゴンドラの唄は、森鴎外が訳したアンデルセンの「即興詩人」の一節を基に、吉井が作詞。1915年4月25日、28歳の時に芸術座の舞台「その前夜」の劇中歌として女優松井須磨子が披露した。脚本には「命」と「いのち」、「血汐」(ちしお)と「血液」(同)など表記にばらつきがみられ、長らく「底本未詳」とされた。
 細川教授は、底本を長年探してきた研究者の一人だ。別件の調査で同劇の上演前に発売された総合雑誌「新日本」4月号に目を通していた際、偶然見つけたという。作品には「近く上演される劇で歌われる」と説明が添えられていたが、目次欄に掲載はなかった。同誌の編集長は吉井に歌詞制作を頼んだ脚本家であることから、細川教授は「校了直前に1ページ差し込んだのでは」とみる。吉井が用いた漢字が特定されたことで「来歴研究も広がる」と期待する。
 「命短し―」の一節は黒沢明監督の映画「生きる」で使われたほか、昭和末期以降はJポップやCM、アニメ、平成になるとバーチャル歌手などジャンルを問わず引用されている。
 「ゴンドラの唄」が後世に及ぼした影響を研究する山形大の相沢直樹教授(ロシア文学)は「音韻の心地良さ、『今を生きよ』という詩想の普遍性から、100年以上人々の心を捉え続けてきた希有(けう)な曲」と話す。初出誌の発見は「吉井自身がこれと生前認めたものがようやく出てきた」と評価する。
 細川教授は「吉井は静岡に縁があり数々の名作を残した。その魅力が広まるきっかけになれば」と話す。
 
 <メモ>ゴンドラの唄の作詞から18年たった1933年、吉井勇は別居中の妻のスキャンダルをきっかけに旅に出た。手塚忠告ら静岡市内の後援者により37年末から数カ月間、同市駿河区に滞在。同区の中田地区に「迷悟庵」を設けた。富士山に関する作品などを120首以上残している。手塚が建設した同市葵区梅ケ島の旅館(現ホテル)「梅薫楼」には、全国初とみられる歌碑が残る。
 
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