BABYMETAL初選出、AKB48不出場……『紅白歌合戦』がポップスターに求めるものとは 変化したアイドルのポジション – リアルサウンド

 12月31日に放送される『第71回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)の出場ラインナップが、11月中旬に発表された。初出場の顔ぶれや選出から漏れたアーティストに注目が集まるのは、毎年恒例の風景である。本稿が主題にするのは女性アイドルだが、今年に関して言えばBABYMETALの初選出やAKB48の不出場などが大きなトピックだった。
 これら選出にまつわる事柄が語られる際にしばしば論点となるのは、話題に上るアーティストがその年に目覚ましい活躍をしていたかどうかや、音楽シーン全体あるいは各ジャンルのトレンドの中心にいるかといった点である。もちろん、『紅白』側もそうしたごく現在的な時流を意識した選出を行なってもいる。2020年の女性アイドルであれば、出場決定時点でまだ正式デビュー前であったNiziUがそれにあたるだろう。
 とはいえ、毎年番組中の少なからぬパートに登場するアイドルグループの位置づけを顧みるとき、出場するアイドルが実質的に担ってきたのは、必ずしもごく現在形のアイドルシーンを代表することではない。
 民放で企画される他の音楽特番やアワードと放送時期が近いこともあって、『紅白』にもまたその年ならではの「顔」を選出するようなイメージが託される。しかし、これまでたびたび出場してきた常連グループが背負うのはより大枠の、「多くの人々が知る汎用的なアイコン」としての役割である。
 戦後日本社会の放送メディアにおいて『紅白』は、ながらく「国民的番組」としてのアイデンティティを持ってきた。それゆえ、音楽番組の体裁は保ちながらも、“年の瀬の風物詩”的景色を広範な層に届けるものとしての機能も大きい。文化の発現も受容もきわめて多様な今日、そうした国民的なるものが実質的にどの程度まで可能なのかはともかく、広い世代や属性を包摂するための「お茶の間」感の演出は、『紅白』において企図され続けている。
 このとき、著名な多人数アイドルグループは、何より皆の知る汎用的な存在としてたびたび召喚され、番組中の随所に登場し立ち回ってきた。2010年代の女性アイドルについて見るならば、グループアイドルシーンの活況を牽引したAKB48グループがその代表であり、近年では乃木坂46をはじめとする坂道シリーズが中心的な任を負っている。あるいは2000年代後半にさしかかる頃までの、モーニング娘。をはじめとしたハロー!プロジェクトも同様だったはずだ。
 これら高い有名性やキャリアが大きな武器となるグループの『紅白』選出は、その年に頭角を現したり、画期的な活動を見せたアーティストが選ばれるケースとはいくぶん異なる。求められるのは、いわばお馴染みの顔として、「お茶の間」感を託すための依代の役割である。
 この「お馴染みの顔」としての役目はまた、平素の活動が音楽に紐づいたものであると同時に、放送・出版等マスメディアから各種広告まで、さまざまな場でポップスターとして立ち現れて社会をとりまく、「アイドル」という独特の職能とも相性が良い。複数の所属グループが毎年出場することが常となっているジャニーズの果たす役割、またその中心として『紅白』の進行や番組全体のトーンに大きく影響してきたSMAPや嵐といった顔ぶれを参照すれば、『紅白』がこれら汎用的なポップスターに何を求めているかの補助線になるだろう。






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