ポストモダン時代、到来 | 佐々木敦、さらにアイドルにハマる 第2回 – 音楽ナタリー

佐々木敦、さらにアイドルにハマる 第2回 [バックナンバー]
アイドルソングの未来を語る
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佐々木敦がアイドルについて南波一海と語り合うロングインタビュー企画の後編。今回はさまざまなジャンルやスタイルが出尽くした感のあるアイドルソングの現状と未来を2人が語る。
構成 / 望月哲 インタビュー撮影 / 近藤隼人 イラスト / ナカG
佐々木敦 ここ数年でシンガーソングライターやバンドの人がアイドルに楽曲提供することが普通になってきてるでしょ。
南波一海 そうですね。
佐々木 はっぴいえんど界隈の人がアイドルに曲を書くようなことは80年代からずっとあるわけだけど、ここ最近よりカジュアルになった気がする。あれって本人たち的にはどういう感覚なんだろう?
南波 曲を提供できてうれしいって人が多いですね。自分の作った曲が自分のファンとは違う層にも届くので。音楽家として腕の見せどころでもありますし。もちろんアイドル仕事は受けないという人もいると思います。
佐々木 もともとアイドルファンの人もいるかもしれないけど、そうじゃない場合もあり得るわけじゃん。
南波 2010年代初頭まではそうじゃない場合のほうが多かったかもしれないですね。ここ数年で変わった印象があります。
佐々木 素人質問だけど、あれってどういう流れになってるの? 運営が作家を見つけてくるの? それとも、もともと何かしらの関係があることが多いの?
南波 運営が作家にオファーする場合が多いと思いますけど、作家からの売り込みもあるし、作家が運営サイドの人という場合もあります。最近は相思相愛の場合も多いですよね。バンドの人とかがアイドルファンであることを公言することも増えてますし。その一方で、面白い作家を探すためにアンテナを張り巡らせてる運営もありますよね。でんぱ組.incのスタッフ陣は、いろんな人をチェックしているんだなといつも驚かされますし。
佐々木 確かに、でんぱ組.incの諭吉佳作/menのフックアップがあまりにも早くてびっくりした。
南波 実際、ネットレーベル周辺には面白い才能がいっぱいいますから。
佐々木 本人にしてみたら急にTwitterのDMにアイドルの事務所から連絡が来るみたいな話?
南波 そうそう。運営によっては、BandcampとかSoundCloudとか、めちゃくちゃチェックしてますよね。神宿ASOBOiSMに声をかけたのは早かったし。
佐々木 全然知らないんだけど、神宿の運営ってものすごく攻めてる印象があるよね。
南波 僕もそう思います。
佐々木 だって1曲ごとに全然違う曲調だし、それにメンバーがちゃんと対応してるのもすごい。
南波 こないだ出たアルバム(「THE LIFE OF IDOL」)なんか、かつての神宿の面影がまったくないですから。純粋に音楽的に素晴らしい。
佐々木 ほんの数年前とはもはやまったく違うアーティストになってるよね(笑)。明らかにスキルも上がっているし。やっぱりメンバーと運営の向上心の賜物なのかな。
南波 そのあたりの話もしたかったんです。今、コロナ禍でアイドルシーンが危機的な状況に陥っていますけど、今後大事になってくるのは、アイドル本人のモチベーションの持続じゃないですか。アイドルは「大人にやらされてる」とよく言われたりしますけど、受け身の人たちは活動を続けるのが難しくなっていくと思うんです。
佐々木 ああ、それはそうかもね。今後はアイドルの自主性が問われていくと思う。
南波 若くしてデビューした人たちがいつしか学生ではなくなって、部活感覚が取れて、“職業・アイドル”となったとき、自分たちのアイデンティティにどういう意識で向き合うのかという。例えば神宿は、今回のアルバムでメンバー全員が作詞に参加しているし、フィロソフィーのダンスも、メジャーデビューシングルは賛否両論ありましたけど、同じく本人たちが作詞に関わるようになっているんです。それはすごくいいことだと思っていて。運営にキャラクターや楽曲を与えられて、それについてインタビューで聞かれて、本当は意図を知らないのに手探りで答えるような状況が続くと……。
佐々木 「なんで私たち、アイドルやってるの?」ってなっちゃうよね。
南波 それが露呈したのがこの半年くらいだと思うんです。制作に関わるのがいいんだという話をするつもりもないし、なんならさらりと辞めるのも全然問題ないと思っているんですが、続けるうえでは何かしらのやる意義は必須ですよね。
佐々木 そういう「アイドルであり続けることのアイデンティティ」問題って、もちろんもともとあったんだろうけど、コロナ禍で一気に加速したんだろうね。アイドルグループから卒業が相次いでいることの答えがそこにあるような気がする。でも逆にこういう状況になったからこそ、新たなクリエイティビティが生まれてくるような気配も感じている。
南波 それは僕も感じています。
佐々木 自粛期間中にBEYOOOOONDSが1人1芸みたいな動画を毎日アップしてたこともそうだし、アイドルたちが、それぞれ“私にできること”に向き合い始めてる気がする。今まで歌詞を書いたことなかった子が「えー、私に書けるかな」とか言いながら挑戦してみたら1曲書き上げることができたとか。しかも「メンバーが作詞しました」という体でお送りしてますってことじゃなく、本当に本人が書いてる。プロの作詞家に比べたら技術的には拙いかもしれないけど、そこも込みでその子なんだからね。これはアイドルに限らず、なんらかの理想形や雛形みたいなものに近付けていくんじゃなくて、その人にしかできないことができればいいわけなので。そういう意味で、まさに神宿なんかは本当に覚醒したんじゃないの?
南波 本人たちに直接取材したわけじゃないからわからないですけど、作品を聴いたりインタビューを読んだりする限りは明らかにこれまでとは違うモードですよね。
佐々木 だってファッション的な打ち出し方も今までとは全然変わってるし。メンバーが自分でやりたいことをやろうとしているんだろうなということがはっきり伝わってくる。神宿というグループは今まで“顔面偏差値”がどうこうみたいなところで語られてきた部分が多かったけれど、今の彼女たちからは、そうじゃない部分で勝負しようとしてる感じが伝わってきて、すごくリスペクトできる。
佐々木敦と南波一海
南波 今の神宿のビジュアル展開って、なんと言ったらいいか……従来のオーソドックスなアイドル像を求める保守層には、もしかしたらあまり響かないかもしれないですけど、今の若い人や同性にはフィットするのかなと思うんです。
佐々木 女の子受けしそうだよね。僕はおじさんなので、若い女性の感性なんて未知の世界すぎて想像するしかないんだけど、結局アイドルが生き残っていくための1つの要因って、いかに女性ファンに支持されるかだと思う。
南波 先日、渋谷のLOFT9でやったイベントで佐々木さんたちとトークしたときも、K-POPをそのまま真似しても仕方がないという話が出たんですけど、今の神宿はK-POP的な現在進行形の音楽に対する自分たちなりの回答をいい感じで見つけられてるような気がするんですよね。まだ模索中ではあると思うんですけど。もうずっと言われていることですけど、アイドルシーンでは、同性とか若い人が憧れる存在に、いかにしてなれるかということも重要で。
佐々木 男性が考える“カワイイ”と女性が考える“カワイイ”は全然違うみたいなことがよく言われるよね。特に日本の場合、切り崩せない壁がまだまだあると思うんだけど、ある意味では、壁があったままでもいいと思う。つまり男女どちらの“カワイイ”があってもいいわけじゃない。
南波 そうですね。
佐々木 自分と同じくらいの年の女の子たちがカワイイとかカッコいいって思うものが、どういう感じなのかっていうのはアイドル本人が一番よくわかってるんじゃないかな。そしてそれをどうやって男性ファンの気持ちとうまくリンクさせていくのかっていうのが運営の腕の見せどころだと思う。
南波一海 @kazuminamba
後編です! これが序章的な位置付けで、次回からはゲストをお招きしてあれこれ話していく連載がスタートする予定です。
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