細野晴臣とシンガーソングライター | 細野ゼミ 9コマ目(中編) – 音楽ナタリー

細野ゼミ 9コマ目(中編) [バックナンバー]
ジェイムス・テイラー、ニール・ヤング、高田渡、小坂忠、西岡恭蔵……細野晴臣が出会ってきたミュージシャンたち
12
172
この記事に関するナタリー公式アカウントの投稿が、SNS上でシェア / いいねされた数の合計です。
活動50周年を経た今なお、日本のみならず海外でも熱烈な支持を集め、改めてその音楽が注目されている細野晴臣。音楽ナタリーでは、彼が生み出してきた作品やリスナー遍歴を通じてそのキャリアを改めて掘り下げるべく、さまざまなジャンルについて探求する連載企画「細野ゼミ」を展開中だ。
ゼミ生として参加しているのは、氏を敬愛してやまない安部勇磨(never young beach)とハマ・オカモト(OKAMOTO’S)という同世代アーティスト2人。さまざまなジャンルについてそれぞれの見解を交えながら語っている。昨年秋よりコロナ禍で休講していた本ゼミだが、半年ぶりに復活。第9回では“シンガーソングライター”について考えていく。全3回にわたる記事の中編では、細野が影響を受けたシンガーソングライターや、出会ってきた同世代の邦楽アーティストたちについて触れる。
取材 / 加藤一陽 / 望月哲 題字 / 細野晴臣 イラスト / 死後くん
──前回話に出てきたボブ・ディラン、ジェイムス・テイラー、ニール・ヤング、キャロル・キングといったシンガーソングライターについて、細野さんはそれぞれどんな印象を持っていますか?
細野晴臣 ボブ・ディランは前回話したように、最初は作曲家というイメージだった。友達がアメリカに行ってレコードを買ってきたんだよね。「The Times They Are a-Changin’」っていうアルバム。そこにいろんな人が歌ったヒット曲がたくさん入っていて、「なんだこれは!」と思ってびっくりしたね。しかもあの歌声だし、ぶっきらぼうな歌い方で。アレンジを変えるだけで、あんなにいい曲になるんだって驚いた。
ハマ・オカモト オリジナルを聴くことで、カバー曲のアレンジのすごさも体感されたんですね。
──そこがカバーの面白さでもありますよね。
ハマ ボブ・ディランのファンに怒られちゃいますけど、僕も最初に聴いたときはあまり心象がいい感じではなかったです(笑)。「え!?」みたいな(笑)。
細野 でも、みんなディランのぶっきらぼうな歌い方を真似しだしたんだよ(笑)。そのうちディランはエレキギターを持ち出して。僕は「Subterranean Homesick Blues」っていう曲が大好きで、コピーしていたね。別格だよ、ディランは。“ボブ・ディランっていうブランド”になっちゃった。神格化されすぎてるところもあるけど。
──ジェイムス・テイラーはいかがですか?
細野 ジェイムス・テイラーは「Fire and Rain」っていう曲が大ヒットして、よくラジオで流れてた。それを聴いてすごく新鮮だなと思った。ロック色が薄いし。はっぴいえんどの1枚目を作るか作らないかの頃だったんだけど、彼の低い歌声にはすごく影響を受けたよ。当時はロックバンドのボーカリストってみんな高い声を張り上げて歌っていたから。僕にはあんな高い声は出ないし。もしも高い声が出てたら、今頃The Beach Boysや山下達郎みたいに歌ってる(笑)。
ハマ すごい世界線(笑)。
細野 要するに、僕のような低い声の人にとってのお手本になったわけだ。そういうシンガーソングライターがいっぱい出てきた。ゴードン・ライトフットも声が低いし、トム・ラッシュも低い。逆に1人で歌うのに高い声だと情けないっていうか(笑)。
安部勇磨 ああ!
ハマ なるほど!
安部 僕は20代の半ばくらいに細野さんのインタビューを読んで、ジェイムス・テイラーを聴いてました。確かに声低いなって。
──ちなみに、安部さんの声も低いほうだと思うんですけど、ご自身ではどう自認していますか?
安部 僕は中途半端な声だなと思ってすごい落ち込むんですよ。細野さんの歌を聴くと低くてふくよかで太い。僕は高くもないけど低くもないみたいな(笑)。
細野 ちょうどいいじゃん(笑)。
安部 どっちにもつかないという悩みがありました。細野さんとかテイラーさんとかいろんな人の歌を聴きながら。
ハマ 「テイラーさん」(笑)。ちなみにジェイムス・テイラーからの影響が「風をあつめて」とかに表れているんですか?
細野 もちろん。
ハマ ですよね。「高く歌わないといけない」みたいな意識があったら、ああいう歌い方になりませんよね。
細野 はっぴいえんどの1枚目はロックバンドっぽくやろうとして無理してたんだよね。2枚目はシンガーソングライターからの影響がすごく強かったから、1人ひとり曲を作るようになった。
安部 ほかのメンバーに「もうちょっと声高く張り上げてみたら?」とか言われなかったんですか?
細野 全然ない(笑)。勝手に自由にやってたよ。
安部 お互いの作品に立ち入ることってあんまりなかったんですか? それぞれの作風を尊重するというか。
細野 もっと共有感があったね。例えば大瀧(詠一)くんが「颱風」を作ってきたら、「この曲はトニー・ジョー・ホワイトでいくんだ」みたいな。
ハマ バンドっぽいですね。
安部 なんとなくみんなでイメージを共有できているんですね。
細野 そう。
ハマ でも高い声、低い声の話はすごく重要ですよね。ジェイムス・テイラーの歌声に細野さんが背中を押されたのと、藤原さくらさんが「低い声がコンプレックスだったけどノラ・ジョーンズを初めて聴いて『これでいいんだ!』と思った」というエピソードは同じことだと思うんです。ノラ・ジョーンズは「全世界の低い声の女子! 私がいるから大丈夫よ」とは思ってないと思うけど(笑)。
安部 本人がそう思っていなくても、結果誰かの背中を押してるというのは、すごく素敵なことだよね。自分がやりたいことをやってるだけだったのにさ。
ハマ うん。そういう気付きが、はっぴいえんどの2枚目を作っていた時期の細野さんにもあったわけで。ジェイムス・テイラーがヒットしていなかったら、ロックバンドのボーカリストは高い声のままだったのかな(笑)。
細野 もう1つ、ジェイムス・テイラーで言いたいのは、1枚目のアルバム「James Taylor」をThe Beatlesが設立したアップルレコードからリリースしているということ。あの作品にはポール・マッカートニーとジョージ・ハリスンが参加してるんだよね。
安部 ええ、そうなんですか?
ハマ 知らなかった。
細野 1曲くらいね。そのアルバムは、ピーター・アッシャーっていう有名なプロデューサーが付いてイギリスでレコーディングされたんだけど、ジェイムス・テイラーがアメリカでやっていたバンドのデモテープに入っていた曲が中心で、いい曲がいっぱいあるわけ。ソングライターとしては、すごくポップなセンスの持ち主なんだよ。あと、ギターがすごくうまい。ジェイムス・テイラーがギブソンのJ-50を弾いてたから、僕も同じギターが欲しいと思って買ったんだけど、間違ってJ-45を買っちゃった。ジェイムス・テイラーにはそれくらい影響を受けてるよ。
──ニール・ヤングは音楽的にどういうところが好きですか?
細野 Buffalo Springfield在籍時、ニール・ヤングの曲はだいたいシングルのB面だったんだけど、僕は彼の曲が大好きで、自分でもコピーしてよく歌ってたよ。
──ニール・ヤングは声が高いですよね。
細野 特徴あるね。そういえば、ニール・ヤングがソロデビューした頃、「歌わないほうがいい」って言われていたこともあった。実際、バンド時代は自分の声にコンプレックスがあったみたい。でも、ソロでは思いっきり歌ってるじゃん。名盤がたくさんある人だけど、僕は1枚目のアルバムが一番好き。
ハマ 根っからのファンなんですね。
細野 どうなんだろうな(笑)。でもBuffalo Springfieldはニール・ヤングがいなかったら、ちょっと寂しいバンドだよね。ニール・ヤングはシンガーソングライター的な資質が根っこにある人で、もう1人の中心メンバーだったスティーヴン・スティルスはもうちょっとポップソング寄りの人。それぞれタイプが違うんだよ。
ハマ それがいい効果を?
細野 そうそう。バンドとしてのバラエティが生まれて。スティーヴン・スティルスの近況はあまり聞かなくなっちゃったけど、ニール・ヤングは今も現役でやってるからすごいよね。
──ローラ・ニーロに関してはいかがでしょうか?
細野 最初に知ったのはThe Fifth Dimensionの「Stoned Soul Picnic」というヒット曲。その曲をローラ・ニーロが書いていて、すごくいいなと思った。その後、彼女がソロアルバムを出したら、その曲が入っていて、オリジナルのほうが全然よくてびっくりした。
──ローラ・ニーロもカバーを先に聴くパターンだったんですね。
細野 うん。だいたいヒットチャートに入ってくるような曲しか聴いてなかったんだよね、僕は。ただ、当時のヒットチャートは本当にいい曲ばっかりなんだよ。つまらない曲が入ってこない。正直な世界だったから、それを聴いているだけでいろんなことがわかった。
読者の反応
tatami 図書之介@猫さまキングス @tatamixcom
細野さん、エンケン(遠藤賢司)さんとの出会いなどについても語られています。
細野晴臣とシンガーソングライター | 細野ゼミ 9コマ目(中編) https://t.co/mJ5m0fRddE
細野晴臣のほかの記事
松本隆が高妍の最新コミック「緑の歌」にコメント、第1話に「風をあつめて」が登場
細野晴臣が思い出の地・埼玉でトーク、新作も準備中「僕にとって音楽は楽しいもの」
細野晴臣とシンガーソングライター
細野晴臣が大阪中之島でライブ開催、ゆりやんレトリィバァら出演
タグ
「ジャニフェス」DVD/BD化が決定
HYBE JAPANオーディション番組の公式サイト開設
EMPiREが解散、3日後のラストライブを生配信
BoA、日本デビュー20周年「私、日本に来てよかった」
NEWS増田貴久「anan」で“運命の男”に
鼠先輩「六本木~GIROPPON~」から14年、デビュー記念日に新曲3曲同時リリース
鈴木愛理「ハートはお手上げ」MV撮影のメイキング公開、楽曲のエピソードも語る
Juice=Juice稲場愛香「私のアイドル人生は本当に幸せでした」約9年の思い込め笑顔で卒業
乃木坂46のパネル展が東京タワーで開催、メインデッキでデビュー9周年ライブ映像を上映
坂口有望のライブ人気曲「XL」が待望の音源化
SKE48須田亜香里が9月に卒業「新しい自分に出逢ってみたくなった」
BugLug主催の恒例イベント「バグサミ」開催、今年は秩父ミューズパークで
MACO、アコースティック&ポップスアレンジの2部制で魅せたツアー終幕
正体不明プロジェクトGoat、DUSTCELLのEMAをゲストボーカルに迎えた新曲配信
春のチャレンジ達成!東名阪ワンマン終えたHaze「伝えたいことがあるからステージに立ちたい」
細野晴臣とシンガーソングライター
「若者がギターソロ飛ばす問題」が提示するものとは?
K-POPとJ-POPの振り付けの明確な違いは?
韓国ドラマと音楽の密な関係
NiziU、TOMORROW X TOGETHER、IVE、aespa、HOSHIらのダンスに注目すべき理由
モーニング娘。「LOVEマシーン」
Juice=Juice稲場愛香、約9年の思い込めた卒コン
MACO、アコースティック&ポップスアレンジで魅せたツアー
春のチャレンジ達成!東名阪ワンマン終えたHaze
寺島拓篤がアニバーサリーライブ大阪編で伝えた感謝
超とき宣が横浜武道館で見た景色
鼠先輩「六本木」から14年、新曲3曲同時リリース
乃木坂46のパネル展が東京タワーで開催
坂口有望のライブ人気曲「XL」が待望の音源化
正体不明プロジェクトGoatがEMAを迎えて新曲を配信
YUTO & DopeOnigiri「ASOBI」リミックス配信、
コミック
「ストーンオーシャン」とNEW ERAのコラボキャップ
音楽
「ジャニフェス」DVD/BD化が決定
音楽
HYBE JAPANオーディション番組の公式サイト開設
音楽
EMPiREが解散、3日後のラストライブを生配信
コミック
舞台「Dr.STONE」千空役は木津つばさ!全キャスト発表
このページは株式会社ナターシャの音楽ナタリー編集部が作成・配信しています。 細野晴臣 / OKAMOTO'S / never young beach / 松任谷由実 / 吉田美奈子 / 大貫妙子 / 遠藤賢司 / 岡林信康 / 小坂忠 / 高田渡 の最新情報はリンク先をご覧ください。
音楽ナタリーでは国内アーティストを中心とした最新音楽ニュースを毎日配信!メジャーからインディーズまでリリース情報、ライブレポート、番組情報、コラムなど幅広い情報をお届けします。
澤野弘之×JO1・河野純喜&與那城奨 新たな出会いで広がった世界
BoA特集|7組のアーティストが選ぶマイベストBoAプレイリスト
BoA 日本デビュー20周年特集
「THE CAMP BOOK 2022」サイトウ“JxJx”ジュンインタビュー
高田夏帆×阿部真央|「風の唄」に込めたお互いへの信頼とリスペクト
ドラマ「あなたに聴かせたい歌があるんだ」音楽的見どころを紹介
=LOVEが歌う息が苦しくなるほどの失恋
GANG PARADE新メンバー加入で13人に!変革期の今を追う
ヒーラーガールズ、美しいハーモニーで癒し届けるユニットの魅力
THE YELLOW MONKEY アーティスト15人クロスレビュー
THE YELLOW MONKEYメジャーデビューから30年の軌跡とその魅力に迫る
MAN WITH A MISSION、閉塞する時代に立ち向かう5匹の意思表明
マキシマム ザ ホルモンの“うま味”をインフルエンサー3人が語る
AMEFURASSHI、2ndアルバムで示す最新モード
tofubeats「REFLECTION」特集|さまざまな変化と向き合い、自分自身を観察した日々の記録
ももいろクローバーZ玉井詩織&佐々木彩夏が語る「祝典」
Abu×池内ヨシカツ|eスポーツと音楽の架け橋を目指して
NCT 127の東京ドーム公演が絶対見逃せない理由
ジェニーハイ×吉岡里帆×中村倫也座談会|「ハケンアニメ!」主題歌の制作秘話
WOWOW「HI-FIVE」特集|Kroiが語る、アーバンスポーツへの憧れとシンパシー
米津玄師「シン・ウルトラマン」主題歌「M八七」インタビュー
瑛人×四千頭身|“因縁”の2組が「NexTone Award 2022」で対面
THE YELLOW MONKEYメジャーデビュー30年史
WOWOW「INVITATION」スタジオライブでたどる倖田來未のヒストリー
AKB48「元カレです」本田仁美、向井地美音、村山彩希インタビュー
“スピルバーグの教え子”森崎ウィンが語る「ウエスト・サイド・ストーリー」
ももいろクローバーZ百田夏菜子&高城れにが語る「祝典」
EMPiRE
Creepy Nuts
仲村宗悟
ENHYPEN
Juice=Juice
劇場アニメーション『犬王』グッズ
アニメ「サマータイムレンダ」グッズ
「ハケンアニメ!」グッズ
ナタリー公式アプリ「マイナタリー」無料配信中!
© Natasha, Inc. All Rights Reserved.

source

最新情報をチェックしよう!
広告
>すべての音楽情報をあなたに・・・

すべての音楽情報をあなたに・・・

インターネットで情報を探すとき、あなたはどうやって探しますか?いつも見ているページで情報を得る?検索エンジンで好きなアーティスト名を検索してでてきたものを見る?本当にそれであなたの欲しい情報は手に入れられていますか?

CTR IMG