YOASOBI、Ado…今だからこそヒットする音楽とは 亀田誠治・後編 – 日経クロストレンド

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コロナ禍によって、変革のスピードがより加速した音楽業界。新しいライブの形として、オンライン配信が当たり前となり、サブスクリプションサービスやSNS発のヒット曲が続々と生まれた。そこで、ここ30年、周囲の環境が変化する中でも変わらず数多くのアーティストをブレークへと導いてきた音楽プロデューサーの亀田誠治氏に、昨今の音楽ヒット事情を聞いた。
前編「『日比谷音楽祭』で音楽業界に新たなお金の循環を」はこちら

 コロナ禍で数々のライブ・イベントが中止に追い込まれたことから、オンライン配信という新しいライブの形が確立し、サブスクリプションサービスやYouTubeなどのSNSを中心に数多くの新たなアーティストがブレークするなど、今まさに転換期を迎えている音楽業界。椎名林檎、平井堅、スピッツなど数多くのアーティストの楽曲をヒットへと導いてきた亀田誠治氏は、今何を思うのか。この時代だからこそヒットする音楽の傾向について、業界のトップランナーとして走り続ける亀田氏に、率直な分析をお願いした。
――2020年は、YOASOBIの「夜に駆ける」、Adoの「うっせぇわ」といった、SpotifyなどのサブスクやYouTubeチャンネルからヒットした楽曲が多くありました。コロナ禍でリスナーの音楽の受け取り方はどう変化したと思いますか。
亀田 20年、サブスク発のヒットが多く生まれたのは、コロナ禍だけの影響ではなく日本の音楽業界がようやく世界水準に追いついてきたからだと思います。これまで、欧米ではすでに約85%の音楽がサブスクで配信されている一方、日本は15%ほどだった。しかし、これまでサブスクに楽曲を解禁していなかった日本のアーティストのみなさんが解禁したことで、今までCDを買って音楽を聴いていた人々もサブスクで音楽を聴き始める土壌が20年には作られました。
 その上で、外出自粛によるステイホーム期間などで家族との時間が増加し、家族の中で音楽に限らずエンタメが共有されていった。例えば、NiziUの「Make you happy」はコロナ禍のど真ん中(20年6月30日)に配信され、現在2億5000万回以上再生されています。最初は子や孫がNiziUに触れ、それを見聞きした親や祖父母が「子や孫がダンスを踊っていてかわいい」と家族の中で共有されていく。音楽ではないですが、アニメ「鬼滅の刃」の広がりも同じですよね。新しいエンタメの広がりが磨かれてきていると感じます。
 また、アーティストの一発撮りパフォーマンス動画を配信するYouTubeチャンネルの「THE FIRST TAKE」では、過去にヒットした音楽が今の形で戻ってきました。僕の長男夫婦は当時世代だったDef Techの「My Way」やYUIさんの「CHE.R.RY」のTHE FIRST TAKEを見て大喜びしていましたよ(笑)。コロナ禍は新しい音楽だけでなく、古き良き音楽を知る時間やツールが与えられた期間とも言えるのではないでしょうか。
――リスナーの受け取り方が変わったことで、音楽業界の楽曲制作にも変化はありましたか。
亀田 僕はSpotifyなどの洋楽チャートを毎日チェックしていますが、コロナ禍前からヒット楽曲のほとんどはコンピューターで制作されています。聴いていて気持ちのいいコード進行やグルーヴをループさせていくことが曲作りの土台となりました。昔のように音符を書く作業はかなり少なくなってきたかもしれません。
 感覚的に気持ち良い音を採用し、すてきなメロディーや、ポスト・マローン(編集部注:米国のラッパー。アルバム「Stoney」は、米R&B/ヒップホップ・アルバム・チャートにおけるトップ10獲得週数で歴代最多記録を持つ)のように今の若い世代に訴える詞、リル・ナズ・X(編集部注:TikTokから人気に火が付いた米国のラッパー。「Old Town Road feat. ビリー・レイ・サイラス」は、全米シングルチャートで19週連続1位という歴代最長記録を持つ)のように奇想天外な動画などを乗せていくことで、楽曲が作られています。
 日本の楽曲も同じです。歌えないぐらい早口で、息継ぎも難しいYOASOBIの「夜に駆ける」のような、ボーカロイドから派生された楽曲を人の声に置き換えた楽曲が増えました。クリエイターが頭の中で思い描いたことを、コンピューターのフィルターを1回通し、アーティストがそれをさらに人間としてフィードバックする。そうやってコンピューターの中を何度もろ過されて行き来した音楽がヒットしています。朝摘みの野菜をそのまま食べるのではなく、独自のレシピによって丁寧に調理された楽曲、そういう楽曲が多くのリスナーの元へ届いているのだと思います。
 さらに、ストリーミングでの再生回数は、30秒経過時点で1カウントされます。再生数が何百万、何千万回といくような楽曲を目指すには、30秒の中でどれだけ多くのドラマを作り「もう一度聴きたい」と思わせるかがポイントです。するとイントロ無しの楽曲や、30秒の中でサビがくる曲作りが主流になってきます。僕自身は誓って、このような基準で音楽を作ることはありませんが(笑)、曲の顔であるサビを最初に届けたり、リスナーにアーティストの思いをダイレクトに伝えたりするために、結果的にイントロ無しサビ始まりの楽曲や、サビが30秒でくる楽曲を今までたくさん作ってきました。
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阿部 裕華
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