米津玄師『POP SONG』の魅力は、その見事な歌い出しに詰まっている(月刊レコード大賞・2月度)(スージー鈴木) – 個人 – Yahoo!ニュース – Yahoo!ニュース


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東京スポーツ(東スポ)紙連載「オジサンに贈るヒット曲講座」と連動して、毎月毎月「レコード大賞」を選んでいく企画、2月度の発表です。

連載で毎年発表している年間ランキングでは、米津玄師の作品を高く評価しています。2018年の1位が『Lemon』、翌19年の3位に『馬と鹿』、翌20年は『感電』が4位、そして昨年は『死神』が3位。2016年に始まった連載ですが、6年間のMVPを聞かれたら、私は米津玄師だと答えるでしょう。

立派だと思うのは、ある曲調や作風にこだわらず、様々な側面を見せながら、高水準な曲を次々と発表しているということです。言い換えると「米津節」がない、というか、様々な「米津節」を持っている。

そして、今月も彼の曲を選びます。というか、選ばざるを得ないと思います。2月7日に配信リリースとなった『POP SONG』です。まずは、その丁寧に作られたMVをご覧ください。

ゲーム機のCMソングとして話題になっていますが、私がいちばん驚いたのは、歌詞とメロディ、リズムの関係です。驚くほどピッタリと合っている。

米津玄師の曲は、歌い出しが印象的です。『Lemon』の「♪夢ならば」(作詞・作曲:米津玄師)、『感電』の「♪逃げ出したい」(同)なんかは、決して忘れられないインパクトで、聴いている者を曲の本編にぐっと引き寄せました。

そして、今回の歌い出し「♪ちゃらけた愛を歌ってるベイビー」(同)も素晴らしい。何が素晴らしいって、歌詞とメロディ、リズムがスクラムを組んで、聴き手に迫ってくるところ。

――っていうか、ちょっと歌いたくなりません? 物まねしたくなりません? そして、歌ってみたら気持ちよくありません?

歌詞とメロディ、リズムの相互作用を、周到に計算して作っているのでしょう。また、さらに聴き手を惹き付けるべく、歌い方にも細心の注意を払っているはずです。

『感電』の「♪逃げ出したい」をよく聴いてみてください。無理矢理に表すと「♪nげだsたーぃ」という感じで歌っています。そんな特異な歌い方によって、弾けるようなグルーヴを生み出している。だから強く印象に残る。

実は私、『POP SONG』を最初聴いたとき、サザンオールスターズを思い浮かべたのです。具体的には、『東京シャッフル』と『EMANON』という1983年=約40年前の曲。

桑田佳祐という人も、ロックのリズムに日本語をどう乗せてどう歌うかに知恵を絞り、そして一応の完成形を作った人でした。桑田の前には、はっぴいえんどの大滝詠一やキャロルの矢沢永吉が土壌を作り、また桑田の後には、佐野元春や桜井和寿が、その方法論をさらに発展させたのですが。

そして今、米津玄師がさらに発展させて、さらなる完成形に近付いているのです。また、先人たちにくらべて、日本語の歌詞が、よりすーっと耳に入ってくるところも「さらなる完成形」と評するにふさわしい。

ボカロP出身ということで、「新世代の音楽家」として語られることの多い彼ですが、桑田佳祐、ひいては大滝詠一や矢沢永吉からの流れに位置付けて見てみると、さらなる発見があると思います。

さて、今月、もう1曲だけ挙げるとすると、2月23日にCDリリースされたVaundy『裸の勇者』。弱冠21歳、私にとっては息子のような世代の音楽に惹き付けられるのは驚きでもあり、快感でもあります。

サブスクリプションの浸透が、Vaundyのような若い音楽家に、知恵と刺激を送り込んでいるのでしょう。私たち世代が想像もできないようなスピードで、過去の音楽遺産を吸収して、そして多様な楽曲を一気に吐き出している。

色々言われがちなサブスク、ひいてはネット社会ですが、そのおかげさまで、Vaundyのような新しい才能が、どんどん輩出されるのであれば、これほど素晴らしいことはない。では、次は3月にお会いしましょう。
音楽評論家。ラジオDJ、小説家。1966年大阪府東大阪市生まれ。bayfm『9の音粋』月曜日に出演中。主な著書に『EPICソニーとその時代』(集英社新書)、『平成Jポップと令和歌謡』『80年代音楽解体新書』(ともに彩流社)、『恋するラジオ』(ブックマン社)、『イントロの法則80's』(文藝春秋)、『サザンオールスターズ1978-1985』(新潮新書)、『1984年の歌謡曲』(イースト新書)など多数。東洋経済オンライン、FRIDAYオンライン、東京スポーツ、週刊ベースボールなどで連載中。
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