Mrs. GREEN APPLE、yama、SixTONES ……ヒット曲のブラスアレンジ、2022年の傾向を考察 編曲家のキーマンも – リアルサウンド

 ポップミュージックでブラスを主体とした音楽と言えば、日本でも四半世紀以上馴染みのあるスティーヴィー・ワンダーの「Sir Duke」(1976年)やEarth, Wind & Fireの「September」(1978年)や「Fantasy(宇宙のファンタジー)」(1977年)など枚挙に暇がない。そこには昨今の80年代回帰のトレンドも含まれている。さらに言えば高校野球の応援で聴かれるJ-POPヒット曲の吹奏楽アレンジは日本では最も馴染み深いブラスアレンジかもしれない。それぐらい身近に取り入れられてきたブラスアレンジだが、2022年のJ-POPシーンにおける傾向はどうだろうか。
 まずトレンドの一つとして、80年代のシティポップや、その構成要素のフックでもあるシンセサウンドと並んで浸透してきた音像としてのブラスアレンジが挙げられるだろう。バンドシーンで言えば、ロングヒットを記録している緑黄色社会の「Mela!」(2020年)はバンドにとって初のブラスアレンジを導入した楽曲で、ラテン調に跳ねるビートと長屋晴子(Vo/Gt)の歯切れのいい歌唱をさらに上昇させる役割が顕著だ。またこの3月にフェーズ2を開幕したMrs. GREEN APPLEの新曲の中でもヒット中の「ダンスホール」はビッグバンドとモータウンソウルが融合したような普遍的なエンターテインメント性に溢れ、従来のコア層以外に訴求したことでロングヒットになった可能性が高い。それぞれ、楽曲が求めた結果のブラスアレンジであることは間違いないが、生音の合奏、しかも吹奏が醸すアップリフティングな効果をリスナーが新鮮に感じ、長く愛されるヒットに繋がった印象だ。
 では、作曲やアレンジの構造上、生音から遠いと捉えられがちなDTMクリエイター(ボカロPも含む)の楽曲はどうだろうか。Adoは新作『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』で、中田ヤスタカや大森元貴(Mrs. GREEN APPLE)、Vaundyら多彩なヒットメイカー/アーティストからの楽曲提供を受けているが、その中でもジャズとトラップを行き来する「ウタカタララバイ」ではシンセブラスとサックスが効果的なアレンジが聴ける。提供者のDYES IWASAKI(from FAKE TYPE.)自身がサックスプレーヤーであることでツボを押さえたアレンジが可能になった印象だ。Adoのこれまでの楽曲で言えば4つ打ちとファンクが融合した「阿修羅ちゃん」(2021年)や、ジャジーな「レディメイド」(2020年)もブラスアレンジが効果的な楽曲と言えるだろう。
 4月にリリースされたずっと真夜中でいいのに。の「ミラーチューン」は従来、ピアノリフで押していく印象の強かったアレンジに、サビでサックスが絡むことでアダルトなニュアンスを加味していたり、3月にリリースされたyamaの「MoonWalker」はジャズファンクのテイストによりフックをもたせる意味合いでブラスアレンジが施されている印象だ。ちなみに同曲をニト。とコライトした宮田“レフティ”リョウはOfficial髭男dismのライブでマルチプレイヤーぷりを発揮しているほか、SixTONESの「Curtain Call」をスウェーデンのソングライターとコライトしている。
 これらの情報量が多く、スキルフルなボーカルが特徴的な楽曲でのブラスアレンジは必然的に高速でカットアップ的に用いられることが多く、DTMクリエイターならではの“耳楽しい”要素でブラスアレンジそのものをアップデート。それでいて楽曲の方向性はマイナーキーのジャズやファンクで、ビートは16分音符の横ノリが多く聴かれることから、踊れるアダルトな楽曲を構築するための定番のセオリーも踏襲していることが理解できる。



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