Interviews: 好奇心を形にするシンガーソングライター 甲田まひるが語る最新曲『夢うらら』について – HYPEBEAST

幼い頃からジャズピアニストとしての腕を磨き、2018年には石若駿、King Gnuの新井和輝を迎えたトリオ編成のジャズアルバム『PLANKTON』をリリースした甲田まひるが、2021年11月、1st Digital EP『California』を引っ提げてシンガーソングライターとしてデビューを果たした。Lauryn Hill(ローリンヒル)やA Tribe Called Quest(ア・トライブ・コールド・クエスト)など1990年代のR&B/ヒップホップに大きな影響を受けた彼女が制作した表題曲 “California”は、ヒップホップだけでなく、ロック、K-POPの要素を1曲の中で感じさせる、アカデミックな構築力が特徴だ。
そんな甲田氏が、2nd Digital EP『夢うらら』を9月16日(金)にリリース。今回も前作同様、さまざまな音楽ジャンルの垣根を飛び越えた独創的なサウンドスケープで構成されており、キラキラとしたイントロ、時折感じ取れるダークなサウンド、さらにはダンススタイルの1つであるヴォーギングをイメージしたドロップパートで、“夢”の側面を鮮やかに表現している。音楽はもちろん、俳優やダンスにも挑戦する彼女。好奇心の赴くままに活動する甲田氏に、今回の楽曲や、今抱いている“夢”に関してじっくりと語ってもらった。


HYPEBEAST:“夢うらら”はタイトル通り、キラキラとしたイントロと時折垣間見えるダークなサウンドが印象的でした。タイトルの“夢うらら”はどういった意味が込められているんでしょうか?
甲田まひる:この曲を書いたのが冬から春にかけての季節の変わり目だったというのもあって、これから新しい環境に飛び込んでいく人が多い時期だなと思って。不安とかがありつつも、前向きに背中を押せるような曲が書きたいなって思ったのがきっかけです。それと、自分の中で“目標”とか“夢”という言葉の存在が自分の中ですごく大きくて。今、自分自身もこれまでやってきたことを踏まえて、なりたい姿を描いている途中なので、自分にも対しても背中を押すっていう意味を込めて“夢”をテーマにしました。
夢に“うらら”を付けたのには何か理由が?
歌い出しのメロディが先にあった上で、“夢”っていうテーマを決めて、何か他のワードを付けたかったんです。そしたら、英語のOoh-la-laが頭に浮かんで。なので、“夢”にOoh-la-laをくっ付けて新しい単語を作りました。春うららっていう言葉もテーマに近かったので、英語のテンションでちょっと歌おうかなっていう感じで。
何かに向けて挑発しているような歌詞が印象的だったのですが、どういった想いが込められているんでしょうか?
すごくキラキラした世界でも、その世界に辿り着くまでの過程が辛かったりすることの方が多いなって思っているんです。それは自分が経験した上での想いでもあるんですけど、結局怒りとかそういう反骨精神みたいなものが原動力になることがすごくある。自分の中で、そういうちょっとネガティブな感情と、それでも夢を追いかけたいって気持ちが半々に共存している部分がすごく大きいので、自然とそういう歌詞になっちゃったところはありますね。
いつ頃からシンガーソングライターとしてのアーティスト活動をしたいと思っていらっしゃったんですか?
17歳の頃に出したジャズピアノのアルバム『PLANKTON』の制作時からずっと歌をやりたいと思っていて。自分の中である意味区切りをつけるじゃないですけど、次新しいことに挑戦するために今までやってきたことを1回記録に残すみたいな気持ちで録っていたので、17歳になった頃には「次は絶対」っていう強い思いがありました。
先ほどお話ししていただいた通り、これまではジャズピアノのイメージが強くあったんですが、全然違う音楽のスタイルに挑戦するにあたって影響を受けたアーティストがいらっしゃったら教えてください。
ジャズをやっている中で、ヒップホップとジャズを融合させている人たちとか、ネオソウルに出会った時期があってすごく新しいなって思って。自分もちょっとジャズだけじゃなくてそういうビートが違うものにジャズのエッセンスが入っている音楽をやりたいなって思ったんです。そこから偶然A Tribe Called Questに出会って、そこでQ-Tip(Qティップ)のラップに衝撃を受けて、1990年代のヒップホップに完全にハマってしまって。その後に『PLANKTON』を出したんですけど、そこでもジャズだけじゃなくてちょっとヒップホップっぽいものを生楽器でやりたいなって思って、自分の曲にもその要素を入れたりしてたんです。そして今では自分もラップをしています。
音源を拝聴して、ラップのクオリティがすごく高いなと思いました。ちなみにラップはどなたに1番影響を受けているとかはありますか?
歌い方とかで影響を受けた人はほぼいなくて。KREVA(クレバ)さんとかQ-Tipとかすごく聴いているので、同じようにはできないんですけど、フローやリリックからはすごく影響を受けています。すぐその人だってわかる声質、ユーモアがある感じが憧れますね。
どちらも男性のラッパーですが、フィメールラッパーの雰囲気がすごく感じられました。
もともと楽曲が好きっていうのもありますが、Cardi B(カーディ・B)やNicki Minaj(ニッキー・ミナージュ)、Bhad Bhabie(バッド・ベイビー)のちょっと悪そうな歌い方がかっこいいなと思っています。
毎回EPに楽曲だけでなくジャズピアノの音源も収録されていますが、そこへのこだわりはありますか?
意識的に入れたかった訳ではなかったんですけど、やっぱり今までやってきたことを応援してくれていた方もたくさんいらっしゃるので、そういう方たちにもちゃんと届けたいなってすごく思っていたんです。ってなった時に、1作目の時は自分の歌をピアノにアレンジするっていうのがすごく筋が通っているというか、歌を始めるタイミングとしてもすごくいいのいかなって思って。今回は、自分で“夢うらら”を作っていく中で、ピアノで弾いたらすごいいい曲そうだなって思ったので入れました。結局、制作時にピアノで考えるっていう部分がすごくあるので。
そもそも楽曲を制作される際はピアノを使っていらっしゃるんでしょうか?
前回もなんですけど、基本DTM(Desk Top Music: パソコンを使用した音楽制作)なので、パソコンを使ってビートとかを作るんですけど、その時にMIDIキーボードを目の前に置いて作っているので、コード入れるってなったらピアノを弾くんです。なので完成していくにつれて、なんとなくその曲を弾けるようになっちゃうんですよ(笑)。だからどうせならこれもインストとして入れようかなって思って。
前作からK-POPの要素もかなり感じられたんですが、特に好きなアーティストとかいらっしゃいますか?
詳しくはないんですけど本当に色々聴きます。もともと入り口になったのはRed Velvet(レッドベルベット)なんですけど、その奇抜なサウンドに惹かれて好きになって。BLACKPINK(ブラックピンク)、IU(アイユー)、ZICO(ジコ)、とか楽曲が本当にかっこいいので大好きです。新しいグループも常にチェックしてますね。
MVにもダンスシーンがあったりとか、K-POPの要素を感じました。
自分の曲を作る上では全然意識していないんです。見せ方はすごく好きなので、踊っている時はできるだけそういう風に見えたらいいなと思って踊っていますけどね(笑)。
素敵です。中盤のドロップパートがヴォーギングに着想しているとのことですが、それももともとダンスシーンを入れるために組み込まれたんですか?
ヴォーギングの存在は知ってはいたんですけど、ダンスレッスンを受けていた時に実際に教えていただいて、動きも音楽もすごくかっこいいなって思って好きになって。その時に、こういう踊りをしたいからヴォーギングの曲を作ろうって思って、家に帰ってすぐにちょっと作ったんですよ。それもそれで別曲としてデモがあったので、どうせなら“夢うらら”にそのセクションを入れようかなって。そこから始まったので、ある意味“夢うらら”より先にヴォーギングやりたいみたいなのがありましたね。
そうだったんですね。では歌詞も後からつけられて?
そうですね。もともとあった歌詞からタイトルを決めて、その後に細かい部分を書いていった感じですね。
ダンスはいつ頃からやられているんですか?
ダンスは本当に最近ですね。今まで習ったことはなかったんですけど、個人的に2カ月くらいダンススクールに通っていたことがあって。でも3〜4年くらい前なので、全然それ以外は未経験な感じで(笑)。ちゃんとレッスンを始めたのは1年経ったくらいですかね。
基本的にヴォーギングをやられているんですか?
全然やったことがなかったんです。今回ちょっとジャズダンスの先生のレッスンを受けていた時に、こういうのもあるんだよみたいな感じでヴォーギングを教えてもらって、そこで初めてやってみて、すごく面白いなって思ったのがきっかけです。普段はヒップホップとかジャズとかを習っています。
1つのジャンルじゃなくてさまざまなものに挑戦されているんですね。
そうですね、でも本当ここ何カ月かで他のジャンルも挑戦しようと思ってヒップホップとかも習い出したところなので、歴的には全然経っていないんですけど。
色んなことに挑戦されていると思うんですが、いつもどういったタイミングで行動に移すんでしょうか?
ピアノとか歌とか演技とか、全部表現のうちの1つだと思うので、自分の中では結構すごく自然なことで。特に「これやってみよう」っていう特別な思いがある訳ではないんです。表現をする上で映像になったらどう見えるんだろうなとか、ピアノだけでなくそこに歌詞が乗ったらどう伝わるんだろうなとか、表現の幅を知りたいなって思って違う分野にも挑戦している感じなので、すごく自然に沸き起こってくる衝動ですね。 Interviews: 好奇心を形にするシンガーソングライター 甲田まひるが語る最新曲『夢うらら』について mahiru coda yume urara release interviews カップリング曲の“ごめんなさい”も挑発的な歌詞がすごく印象的だったんですが、この曲へ込めた想いがありましたら。
この曲はタイトルが“ごめんなさい”なんですけど、実際は「ごめんなさいって言いたくない」っていう意味を込めているんです。今回はちょっと恋愛に置き換えて歌詞を書いたんですけど、精神的な部分で強い女性っていうのが自分の中の理想で。気を使って謝るとか、そういう場面に疑問を感じて、自分を大切にしたいという思いで書き始めましたね。
先ほど強い女性が理想像とおっしゃっていたと思うんですけど、ロールモデルや具体的なイメージはありますか?
精神的な意味での強さとかでこの人っていうのはほぼいないんですけど、歌を歌いたいきっかけがLaryn Hillだったので、ずっと憧れています。自分の中で言いたいことが言える強さが必要だなと思う瞬間が日常であるっていう感じですかね。強い見た目に憧れているとかではないんですけど、人にはわからないような領域の、自分の心の中で強くいたいなっていう感じですね。
“ごめんなさい”のサウンドは“夢うらら”とは打って変わってラテン音楽のようなサウンドが特徴的でした。
もともとラテンがすごく好きなのでよく聴くんです。自分でもそういう曲がずっと作りたいなと思っていて、これまでも中東系のサウンドとか、デモとか色々作っていたんですけど、なかなか形にならなくて。今回こそと思って作った曲なので、ラテンっていうのを最後まで意識して作りました。
K-POPでよく耳にするしゃくりのようなメロディラインも印象的ですよね。
ちょっとビートは攻め攻めでも、歌っていう感じのメロディの方が心に入ってきやすいのかなって思ったので、歌い方とかもちょっと語尾をあげたりとかをすごく意識しました。
今回のEPはどういった方々に聞いて欲しいですか?
どっちも自分の中ではポジティブな曲というか、前向きになる曲だと思うのでそんなメッセージを受け取って欲しいなって思いますね。聴いて勇気をもらったよとかそういう存在の曲になれるとすごくいいなと思います。
ずっとジャズピアノをやられてきたと思うんですが、楽曲制作段階で取り入れているエッセンスはありますか?
今まで好きで聴いていた音楽は自然に自分の中に入ってきていて、アウトプットにもつながってるとは思います。ジャズでいうと、その時学んだコードの知識や、セオリーが役に立ってくれてるのかなって感じですね。やっぱりできるだけみんなが聴いたことがないサウンドを作りたいなって思っているので、意識的に何かを取り入れるっていうことは普段からしないですね。
甲田さんの音楽は場面場面で違うサウンドを感じるので、そうやって作られているのかと思っていました。
よく言われるんですけど、自分はJ-POPを作っている気持ちでいつも曲を作っているので、それ以外はあまり意識していないですね。
先ほど1990年代のヒップホップに強く影響を受けたとおっしゃっていたのですが、最近の音楽は聴かれたりしますか?
そうですね、やっぱりヒップホップを中心にめっちゃ聴くんですけど、いっぱいいるので改めて誰かって言われると本当難しくて。ヒップホップって言われても1990年代が本当9割で。あとの1割はKanye West(カニエ・ウェスト)とかDrake(ドレイク)とかKendrick Lamar(ケンドリック・ラマー)とかその辺はもう大好きなので。気持ちを上げたいときに聴くんですけど、そうしてると自然と制作意欲が湧いてきます。
最後に、今回の楽曲は“夢”がテーマとのことですが、今甲田さんが抱いている“夢”はありますか?
アーティスト活動を始めてまだ全然経っていないし、ライブもしたことがないので、とにかくリリースとライブをどんどんやっていきたいんですけど、今まで自分がやってきたことの中で、やっと自分のやりたかったことができているなっていう状況なので、納得する音を作っていくのが1番の夢ですかね。あとは、今まで一緒にやったことのない方たちと楽曲を作ったらどんな感じなんだろうなっていうのをすごく楽しみにしています。
Interviews: 好奇心を形にするシンガーソングライター 甲田まひるが語る最新曲『夢うらら』について mahiru coda yume urara release interviews

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