【インタビュー】Mura Masa 『Demon Time』 | パンデミックが終わった未来に向けて – FNMNL

英仏海峡に浮かぶガーンジー島のベッドルームからラップトップを通じ、若くして新時代のトップ・プロデューサーの座を獲得したMura Masa。デビューアルバム『Mura Masa』では独創的なダンスチューンでA$AP RockyやDamon Albernといったスターとのコラボレーションを果たし、セカンドアルバム『R.Y.C.』では面舵いっぱい音楽性を変え、パンクロックのバンドサウンドを披露するという、奔放な軌道でキャリアを築いてきた。
そして2022年、パンデミックの渦中、世界中の誰もがベッドルームの磁力に囚われる中で3枚目のアルバム『Demon Time』がリリースされた。前作から2年──つまりパンデミックの始まりから現在まで──、がらりと変わってしまった世界をMura Masaはどのように見てきたのか。『FUJI ROCK FESTIVAL』での来日に合わせてインタビューを敢行し、今作に込めた思いや制作について、そして未来というものと対峙する姿勢について、いくつかのキーワードとともに伺った。
取材・構成: namahoge
the faceのインタビューでも仰っていましたが、Mura Masaさんはパンデミックの状況下で音楽を辞めようとも考えていたそうですね。
Mura Masa – はは(笑)。すごく悲しい時期になっちゃったから落ち込んだし、音楽を作る気にもなれなかったので、たくさん寝たり、ゲームをしたり、料理をしたり、散歩をしたり……。このステイホームの生活のサイクルではインスピレーションが生まれなくて、大体6ヶ月ほどは音楽を作れなかったんです。
– その状況をどのように乗り越えたのでしょう?
Mura Masa – まずエクササイズを始めたのと、セラピーを受けるようにしました。パンデミックの状況でどのように戦うか考えたり、どうにか生き延びなきゃと悩むんじゃなくて、今は何もできないんだから仕方ない、現状を受け入れて何ができるかなって、そういうふうにマインドを変えることにしたんです。以前の生活と比較して大きな変化があったわけじゃないけど、結局、心理的な問題だったんですね。
– サードアルバム『Demon Time』はそのような心理的な変化が現れていますか?
Mura Masa – はじめは自分がいかに悲しんでいるかという、そのネガティブな感情を音楽にしようと思っていたけど、考え方を逆転させて、パンデミックが終わった未来に向けてアルバムを作ったんです。みんなが集まって、一緒に楽しい時間を過ごせるようになった時に聴くための、ハッピーな音楽を作ろうと。だから、今度のアルバムはすごくポジティブな精神がありますね。
– 反対に、パンデミックがきっかけで音楽を始めた人々──Mura Masaさんのようにベッドルームからキャリアを始めるアーティストが世界中で増えています。この状況について意見を聞かせてください。
Mura Masa – パンデミックはストレスフルだし酷いものだと思うけど、逆に言えば時間を与えてくれた期間でもあります。いろんなことを学べたり、自分が好きなものを追いかけたり、何ができるか考えられたり。そんな中で音楽を作るチャンスを得られた人がいることは嬉しいし、本当に素晴らしいことですよね。
– そんな新たなプロデューサーたちが作る音楽についてどのように考えていますか? たとえば「ハイパーポップ」というものがありますが……。
Mura Masa – はは、難しい質問ですね(笑)。ハイパーポップは新しい言葉でありながら、PC Musicの友人たちは2010年あたりから活動しているし、昔から存在していたものだと思います。でも新しい言葉で呼ばれることによって、よりシャイニーで楽しく過剰な方向に変化していったということ自体は面白いかもしれません。
– こと日本では、ある批評誌で特集が組まれるなど注目度が高いように思います。
Mura Masa – それは興味深いですね。イギリスやアメリカでハイパーポップを作っている人の多くが、実はJポップやJロックからインスピレーションを得ているんですよね。たとえばCAPSULE(※中田ヤスタカとこしじまとしこによるエレクトロニック・ユニット)のようなグループが西洋のプロデューサーにとって閃きの種になっていて、つまり日本の音楽から影響を受けている。そうしたフィードバックの循環が生まれているんです。
– アルバムの内容について、ダンスホールやバイレファンキ、ハイパーポップなども含めて、ワールドワイドでジャンルを横断するような作品となっています。それはMura Masaさんのキャリア初期からの特色であるかもしれませんが、今作においてはどのような意図があるのでしょうか?
Mura Masa – 特定のジャンルやサウンドにこだわらないで、「have fun」ということを一貫して考えています。僕にとってもみんなにとっても楽しい時間を過ごすためのサウンドトラックとして、いろんなものが混ざっている方がいいだろうなと。だからセカンドアルバム(『R.Y.C.』)のように全体的な一つの流れがあるというよりは、たくさんのアイディアが散らばっていて、心がどんどん移ろっていくような作品になっています。そう、友達と一緒に聴いてもらうことを想定しています。楽しめる環境で聴いてほしいですね。
– 今作も大勢のコラボレーターがいますが、Tohjiとは何度も共演されていますね。
Mura Masa – Tohjiは大好きですよ。2、3年前に日本でショーをやった時に、彼にサポートを依頼しました。そうすれば彼と一緒に遊べるんじゃないかと思って(笑)。とても刺激的な音楽を作るし、日本のシーンにおいて非常にユニークで素晴らしいアーティストです。彼は自身の本能や直感に従って音楽を作り続けています。なによりパッションがあるところが最高ですよね。ところで、日本では彼はどう思われているんですか?
– 私も好きですし、根強く熱心なファンが大勢いますよ。
Mura Masa – そうなんですね。僕にとっても今、すごくお気に入りのアーティストです。
– Tohjiとのレコーディングはどのように進行しましたか?
Mura Masa – ずっとInstagramでメッセージのやり取りをしていて。メッセージでアイディアの交換をしてから、彼が東京でレコーディングしたものを送ってくれました。
– 他にも多くのコラボレーターがいますが、どのように選びましたか?
Mura Masa – つまらない答えかもしれないけど、実際のところ、僕が好きなアーティストを選んだだけなんです。今回のアルバムでコラボしたアーティストはみんなエネルギッシュで、パーティのような良い時間を共に作ることができる人たちです。
– 今作のアートワークについても伺いたいです。Mura Masaさんの姿が魚眼レンズで激しく歪曲していて、インパクトのある写真になっていますね。これはどのようなコンセプトから生まれたのでしょうか?
Mura Masa – コンセプトというのは自分でもわからないんですけど、頭の中のイメージに従っただけなんです。僕にとって音楽というものは、連続的な自然の流れで生まれる、楽しいと思えるようなイメージを形にしてできたものなので、今回のジャケットも思いつきでいいと感じたものをそのままアウトプットしています。また直接のアイディアとしては、ソニック・ザ・ヘッジホッグの画像をもとにしています。
– SEGAのキャラクターのソニックですか?
Mura Masa – そう、青いハリネズミの。こういう、丸い感じ(ソニックのポーズをとるMura Masa)。
– (笑)。アートワークや音楽も含め、「Y2K」と表現されることもあるかと思いますが、いかがでしょう?
Mura Masa – うーん……世界観をよく表した言葉だと思うけど、正直、その言葉は好きじゃないんですよね。Y2Kという言葉が今注目されて好まれる理由って、みんながすごくポジティブでエキサイティングな未来を想像していた2000年代当時のいろんな可能性を思い起こさせるからですよね。でも今は未来が怖くなってしまって、つまらなくなってきている。マーク・ザッカーバーグとかイーロン・マスクとか、ああいう暗くてやるせないような、悪夢を見ているようで。だからこそ、みんながY2Kというアイディアを楽しんでいるんですよね。僕も未来に希望を持ってポジティブになろうとしていますが、Y2Kという言葉の扱われ方って、特定のイメージや美学と結びついてしまっているから、本当はもっと広がりのあるはずの可能性を閉ざしているように思います。
– 言葉にすることによって未来に対する想像力を狭めてしまっていると。最後に、未来活躍するであろう若いプロデューサーに向けてなにかアドバイスをいただけますか?
Mura Masa – えーと、こう言おうかな。他の人を真似するな。自分自身が面白いと思う音楽を作ってほしいですね。やっぱり若い時って自分が憧れるアーティストになりたいと考えるし、型にはめるように音楽を作ってしまうというか、いいものを作ろうと思うと他の人を追いかけることになってしまいます。でも自分自身をスペシャルにしてくれるものって、自分だけができること……たとえば、自分だけがとれる決断、他にないアイディア、歳を重ねるにつれてそういうものが必要になってくると思います。とにかく自分がいいと思う音楽を作ればいいと思いますよ。たぶん(笑)。
– きっと勇気づけられる人がいるかと思います。
Mura Masa – ヤバいね。ありがとう。
Info
9月16日 リリース
ムラ・マサ / デーモン・タイム  
価格:¥2,860 (税込)  
予約・購入はこちら:https://umj.lnk.to/MuraMasa_demontime 
▼トラックリスト  
1 デーモン・タイム feat. ベイリー  
2 ベイビー・ケイクス feat. リル・ウージー・ヴァート、シャイガール、ピンクパンサレス  
3 スロモ feat. マイダス・ザ・ジャガバン、トウジ  
4 トゥギャザー  
5 アップ・オール・ウィーク feat. スロウタイ  
6 プラダ (アイ・ライク・イット) feat. レイラ  
7 ホラバック・ビッチ feat. シャイガール、チャンネル・トレス  
8 ブレッシング・ミー feat. パ・サリュー、スキリベン  
9トント feat. イザベラ・ラブストーリー  
10 エ・モーション feat. エリカ・ド・カシエール  
11ブラッシュ feat. レイラ  
*日本限定盤はステッカー付 

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