神山羊 | Skream! インタビュー 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト – Skream!

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INTERVIEW
Japanese
2022年05月号掲載
インタビュアー:石角 友香
TVアニメ“ホリミヤ”OPテーマ「色香水」や、今年3月9日に先行配信され、TikTokでも話題のデジタル・シングル「セブンティーン」など、カッティング・エッジなトラックメイクと、個人の心象に刺さるリリックが印象的なヴォーカルが多方面で話題を呼ぶ神山羊が、インディーズ時代の「YELLOW」のリテイクなども含む、構想3年半(!)に及ぶアルバム『CLOSET』をリリース。ヒップホップやトラップ、エレクトロやインディーR&Bを、あくまでもJ-POPのフィールドで通用するキャッチーさに昇華した楽曲がどれも痛快だ。”CLOSET”というタイトルの由来や独特なアプローチの理由を徹底検証する。
-ストリーミング全盛時代の今、神山さんにとってフル・アルバムってどういう存在だと感じますか?
楽曲の価値みたいなのが、聴かれ方が変わったせいでどんどん変化していると思うんです。ひとつの楽曲に対して人が注目する時間の短さとか、熱の入り方の違いとか、そういうのが、僕がいちリスナーとして音楽に関わってたときと大きな変化があるなと感じてて。その変化の中でのアルバムは、ひとつの軸になるような、ひとつひとつの楽曲を束ねるものになるような存在っていうので、むしろ今重要なんじゃないかなと思っています。今回の『CLOSET』というアルバムは、楽曲ごとの世界をひとつに束ねるようなものになりましたね。
-神山さんが最初に投稿された「YELLOW」の歌詞に、”クローゼットで待った今日も”っていうフレーズがあるぐらいなので、やはり「YELLOW」から始めるべきだと思われたのかなという印象があります。
そうですね。「YELLOW」を作ったときからこの『CLOSET』というアルバムを作るつもりだったので、1曲目に置く必然性は高かったかなと思います。

-クローゼットっていういわゆる象徴的なものが、当時から神山さんの中でベンチマークとしてあったってことですね。
そうです。楽曲を制作する、最初にデモの状態を弾き語りで作るときに、いつも家のクローゼットの中で作るんですけど、クローゼットで生まれた曲たちが集まったのがこのアルバムの軸になってますね。
-押入れを改造して宅録できるようにしている人とかもいますけどね。
自分と向き合うための場所として必要だなと思っていて、デモの制作は必ずクローゼットで作るようにしてますね。
-しつこいんですが、マジなクローゼットなんですか?
マジのクローゼットなんです(笑)。
-比喩として創作するときにどこにいらっしゃるのか、社会の中でどこにいらっしゃるのかっていう意味なのかと思ってました。
楽曲制作とリンクしてくるかわかんないんですけど、東京に出てきてすぐ、すごく狭い4畳ない部屋で暮らしてたんです。そのときはトイレも風呂もない築69年とかのところに住んでて、防音ももちろんされてないし、とんでもないところで隠れるみたいにして曲を作って。それをインターネットとかを使って多くの人に届けるみたいなことが僕のルーツというか、音楽の始まりなんです。今は引っ越してそういう家に住んでいるわけじゃないんですけど、だからこそ自分のルーツの部分と向き合えるし、自分自身と向き合える場所だなと思ってそこを使ってます。
-なるほど。その話を聞くと、今回その「YELLOW」と「青い棘」「CUT」のリテイクが収録されたのはすごく理解できるんですけれども。今回これらの楽曲をアップデートしたかった理由はありますか。
一番は、いい意味で思ってるんですけど、当時と今でヴォーカリストとしてのスタンスやマインドみたいなのが、まったく変わってしまっているっていうところ。だから今ひとつの作品として束ねるときに、当時のまま入れてしまうと「YELLOW」だと投稿したのが2018年なので、今の人たちが聴く環境と、その当時聴いてた環境がちょっと違う気がしていて、今は前よりもさらにサブスク全盛になっていて、サブスクで聴いたときに気持ちいいような帯域の作り方とか、音の作り方みたいなのを意識しましたね。
-アルバムの楽曲との流れの良さもありますよね。神山さんがインディーズで登場された頃からずっと特徴として感じていたR&Bの部分が、アルバム全体で聴いたとき、ポップ・フィールドでやってるアーティストとしては振り切った内容になってるなと。
本当ですか? 嬉しいな。
-もちろん「色香水」もポップスの中でもエッジの立った曲だけど、サブスクでこの曲から入った人も多いと思うんです。そのイメージが強いリスナーも多いだろうけど、このアルバム自体はすごく実験してるところも多いと感じましたし。
多いですね。

-「群青」とか「仮面」って全然音像が違うじゃないですか。それらのタイアップ曲も含めて、アルバムとして束ねるとき、”CLOSET”というテーマ以外に何か工夫されたことってありますか?
一番は根本的にポップスであるところを絶対に大事にしてすべての楽曲を作っているので、カテゴライズしたときにロックに寄ってようが、クラブ・ミュージックに寄ってようが、ヒップホップに寄ってようが、全部必ずJ-POPであるっていう面構えをするようにはしたので。結構尖っているように聴こえるものでも、ポップなものとして完成するようにしてますね。

-なるほど。中間部にインストが入っていることで、前半と後半がすごく繋がる印象もありました。
そのインストもこのアルバムのコンセプト、一番重要なところでもあったんです。クローゼットの中の空間というか。この楽曲はスーパーファミコンの音をモデリングして作っているんですけど。子供の頃にリビングでゲームしてて、ゲームし続けて夕方になって、母親が帰ってきてみたいな。そのときの空気みたいなのが自分の中にずっとあって。それがすごくクローゼットの中にいるときと似てて、自分のルーツの芯みたいなのを真ん中に置きたいなと思って、その楽曲を置いた感じですね。
-原風景みたいなことなんですね。
そうです。ドラマ“着飾る恋には理由があって”の劇伴の音楽を去年作らせてもらって、TVドラマの曲を作ったんですけど、そのときにそのシチュエーションに合わせた楽曲の魅力に興味が出てきて。で、今回、『CLOSET』っていうアルバムの世界に対して音楽をつけるとしたらっていう意味で作った曲です。
-もう”CLOSET”という脚本がありそうですね。アルバムの新曲は全曲振り切ってると思うんですけど、「SHELTER」はかなりコアなベース・ミュージック的な部分もありますね。発想の大もとはどういうところでしたか?
大もとはテクノなんですけど、K-POP的なアプローチもすごく好きなので、どうしたらテクノを今聴いたときにポップに聴けるのかな? というところで組み合わせていったら「SHELTER」って曲になっていったって感じですね。
-神山さんのDAWの音選びとかの幅がどんどん広がってきてるのかなと。
嬉しいです。ありがとうございます。
-やっぱり新曲がアルバム全体を繋げてる部分が大きいなと思って。「セブンティーン」も「煙」も「CLOSET」も違う曲ではありますが、これらの曲はできた時期は近いんですか?
2~3ヶ月の間で全曲できているんで、わりと近いのかもしれないですね。
-「YELLOW」の次の「セブンティーン」ってハイティーンの曲なんで、時系列としてもなんかすごくきれいに並ぶ感じがします。ヒップホップやトラップのアーティストがロックのほうに寄るっていうのも、逆もどっちもあるじゃないですか。そういった楽曲の神山さんらしい消化の仕方をした曲かなと。
うん。この「セブンティーン」はメッセージの部分に結構重きを置いて作った曲でもあるので、歌の主人公がどんな人でどんな言葉で話し掛けたら届くかとか、そういうのをすごく考えましたね。もちろんサウンドも。
-じゃあ今の17歳のイメージですか?
もちろん作り始めるときは”今の17歳とかハイティーンに届いたら一番いいな”、”今、僕が言える言葉で届いたらいいな”と思ってたんですけど、自分の経験してきた17歳とか高校生活とかっていうところが出てきて、結局自分らしい感じにはなっちゃいました。この言葉で届いたらいいなと思いながら作りましたけどね。
-マインドとしてはちょっと苦しいんだけど見ないふりをしているとこもあるとか。
うん、そうです(笑)。
-こんなはずじゃなかったっていうもやもやした感じとか怒りとかも感じるんですけど。
基本、怒ってますからね(笑)。
-創作のエンジンっていうのが、何か嫌だというもので。でも前向きに変えるっていうよりは、それがカッコいいトラックに乗っていて、すごく今のものになっていると思います。
嬉しい。
-だからJ-POPの中でやってらっしゃるわけですけど、限りなく尖ったヒップホップの世界にいる人と近いっていうか、共振するところもあるなぁって。
自分がヒップホップを好きっていうのももちろんあると思うんですけど、ポップスって人から与えられる音楽だと思うんですよ。わりと自分で探していかなくても、人がキャッチする音楽だと思っていて。そういうフィールドで求心力を持つ言葉とかって決まってくると思うんですよ。わりと誰もが共感できる言葉とか音楽性になってると思うけど、そういうフィールドに自ら行って、自分がめちゃくちゃやっても、それがそのフィールドだから正解になっちゃうっていうことをやりたくて。自分はもともとインディーズでロックをやってた人間だから、もっとめちゃくちゃしたいし本当はできるけど、共通言語のポップスでコミュニケーションして、自分の音楽にたくさんの人を巻き込んでいけたらいいなと思ってますね。
-面白い。現代詩みたいな表現とか、読みとくのがものすごく難しい歌詞では、自分から掘って掘って探す人にしか届かないっていうのがありますよね。
そうなんですよ。
-ニュアンスとしては最近の(sic)boyとかも近いかもしれない。
そうですね。(sic)boyさんもそういうことしてますよね。
-神山さんは、ポップスを聴いてる人にサブスクがオススメするような曲の中に、いくらでも入ってくるわけで。
そういうふうになれたらいいなと思いながら生きているので。
創作の発端が生まれる場所としてのクローゼットを起点として、ポップスに昇華された楽曲を短編集のように編み、ラストのタイトル・チューンで再び起点の場所に戻ってくるような、パーソナルを極限までキャッチーにアンプリファイしたニュアンスが刺激的な、記念すべき1stフル・アルバムだ。神山の名前を一躍世に知らしめたインディーズ時代の「YELLOW」は、現在のバージョンにリテイク。10代へのメッセージである「セブンティーン」のロックとトラップ双方の尖った部分の融合、インディーR&Bとネオ・ソウルがハイパーに混交した「Girl.」などから、原風景を表現したインストを経て、グッと生音のアレンジが立った「仮面」で意外性を感じつつ、再びダーク・ポップな内面を覗くような展開へ。エッジと共感性の見事な結合。(石角 友香)
自身2作目のアニメ・タイアップとなった表題曲「色香水」は、前作のギター・ロックっぽさから一転、ファンタジックでどこか物悲しげなミディアム・ナンバー。歌メロが美しく聴きやすいからか、さらりと聴いても十分胸に迫る切なさがあり、そういう点ではアニメのオープニングにもってこいと言える。しかし、よくよく聴き込めば聴き込むほどにトラックの作り込みが繊細で楽しく、その奥の深さはまるで角度を変えるたびに違った色の光を放つステンドグラスのよう。哀愁漂う旋律はカップリングの「生絲」にも共通しているが、当然ながらこちらもまったく違った表情だ。この2曲を聴くだけでも、神山羊というアーティストのレンジの広さ、そしてジャンルにとらわれない自由さと懐の深さを存分に感じられる。(五十嵐 文章)
ヒップホップのトラックメイク的なニュアンスのあった1stミニ・アルバム『しあわせなおとな』、ギター・サウンドなど生音のエッジも見受けられた2ndミニ・アルバム『ゆめみるこども』を経て、よりバンド・アンサンブルを感じさせる音楽的なレンジの広さが際立つのがこの「群青」。印象的なピアノ・リフとエモーショナルになったヴォーカル、J-POPマナーに則ったメロディ・ラインと、ダンス・チューンとしても成立するボトムの太さがステージアップを予感させる。アニメ”空挺ドラゴンズ”の全体像をこの曲が描くとすれば、「スタンドバイミー」は旅の途中の1日や、登場人物の誰か=聴き手にフォーカスしたイメージ。いずれも人の奏でる有機的な音像が今後のライヴ・パフォーマンスを期待させる仕上がりだ。(石角 友香)
ポップスのフィールドに自ら行って、自分がめちゃくちゃやっても、それがそのフィールドだから正解になっちゃうっていうことをやりたくて
自分がJ-POPをやることで世の中に面白いものを出していきたいと思ったのが、音楽を作るきっかけになった
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