ブルーノ・マーズ来日公演を総括、明日への活力となる究極のエンターテインメント – マイナビニュース

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ブルーノ・マーズ(Bruno Mars)の約4年ぶりとなる来日公演にして、初のドームツアー『Bruno Mars Japan Tour 2022』が10月30日、東京ドームでファイナルを迎えた。チケットは追加公演を含めて即日完売し、5公演で約21万人の動員を記録。音楽ジャーナリストの林剛による、10月26日・東京公演初日のレポートをお届けする。
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セキュリティ・チェックの長い列から解放されて会場に入ると、これからブルーノ・マーズが立つステージが眼前に現れる。パンデミック以降の自粛ムードも解けて東京ドームのような場所でワールドクラスのスーパースターのライブを観られるようになった喜びを、まずは噛み締めた。4年半前の来日公演(24K Magic World Tour)の時には抱かなかった感情だ。開演前、場内に流れていたタワー・オブ・パワー、アイザック・ヘイズ、アトランティック・スター、アース・ウィンド&ファイアー、クール&ザ・ギャングなどの曲、つまりシルク・ソニックがモチーフにしたような70〜80年代ソウル/ファンクの名曲に胸を躍らせて待機している時間から幸せな気分に包まれていた。
ライブ開催まで約1カ月という慌ただしさの中で発表された今回の来日公演だが、京セラドーム大阪での2公演、東京ドームでの2公演のチケットは瞬時にソールドアウト。東京ドームでの追加公演まで発表され、こちらもソールドアウトになるほどの人気ぶり。アンダーソン・パークとのシルク・ソニックのヒットでファン層を広げたこともあるだろうが、そうでなくても同じ結果だったと思う。今や一挙手一投足に注目が集まるブルーノ・マーズは、一度の来日でドーム公演を複数回こなしたことも含めて、往時のマイケル・ジャクソンに匹敵する存在だと言っていい。

(C) Bruno Mars

(C) Bruno Mars
大阪での2公演を経て、ブルーノにとって初めての東京ドーム公演となった10月26日(水)、「Moonshine」からスタートしたショウは、前回の来日公演の流れをベースにしつつ客演曲などを加えた”ベスト・オブ・ブルーノ・マーズ”といった内容。圧倒的な歌とダンスに様々なオマージュを散りばめたステージは、どのシーンもハイライトと言いたくなるほどで、今のブルーノにやってほしいことがほぼ全て披露された。
2曲目の「24K Magic」からクライマックスかと思うほど、ファイアーボールを爆発音とともにド派手にブチ上げてパーティーの開始が告げられる。主催者側からは事前に大声に対する規制もあったが、それを踏まえた上でブルーノは、「歌ったり踊ったりしたかったら盛り上がって!」と序盤のMCで客席との一体感を求めた。ライブ会場における声援に関しては、その是非をめぐって、いまだ意見が分かれるところだ。が、ブルーノの一言で、この数年間強いられてきた不自由や緊張から解放された気分になり、マスク越しの大歓声がドーム内に広がる。ブルーノの一言がなくても、ニュー・ジャック・スウィングな「Finesse」、ディスコ・ブギーな「Treasure」といったダンス・ナンバーが華麗なステップとともに繰り出される様を目の当たりにすれば自然に声が出て体が動いてしまうし、誰もそれを制止できないだろう。
音楽的背景と日本への愛情もアピール
時にステージ前方に躍り出てファンキーな快演でブルーノをサポートするのは、お馴染みのザ・フーリガンズ。しかも今回は、前回骨折のため来日できなかったブルーノの盟友フィリップ・ローレンスがサイド・ボーカリストとして復帰。ブルーノとフィリップの関係はジェイムス・ブラウンとボビー・バードを彷彿させるもので、この日もふたりのタイトな掛け合いを見ることができた。そのフィリップを含めてブルーノと横一列でステップを踏むのは、トロンボーンのキャメロン・ウェイラム、トランペットのジミー・キング、サックス/鍵盤のドウェイン・ダガー、そしてベースのジャマレオ・アーティス。キャメロンとジミーはフィリップとともにコーラスも兼ね、忙しい役回りを楽しげにこなす。ステージ前方で踊るメンバーの大半が足元をVansのスニーカー(オールドスクール)で揃えていたこともあり、西海岸のスケーター的な躍動感も視覚的に加味された。特にファンク系の曲をやる時の彼らは”ブルーノ・マーズ&ザ・フーリガンズ”と呼びたくなるほどのバンド感があり、モーリス・デイをフロントに据えたザ・タイムを見ているような気分にもなる。

(C) Bruno Mars
ライブでのパフォーマンスがスタジオ録音のバージョンと同じクオリティであるとも言われるブルーノだが、「Perm」ではイントロがマイアミ・ベース調(トリーナの「Pull Over」だとの声も)だったりと、ライブならではのアレンジが加えられた曲もあった。ハワイ出身のブルーノらしいジャワイアン(ハワイアン・レゲエ)な感覚が際立つトラヴィー・マッコイへの提供曲にして客演曲「Billionaire」は、背後でラスタ・カラーのライトを点滅させ、原曲よりも少しダビーな雰囲気で演奏。また、「Thats What I Like」では、”Im talkin trips to Puerto Rico”と歌う部分をサルサのリズムに変えるなど、ブルーノの人種的、音楽的バックグラウンドをさりげなく伝える芸の細かさも心憎い。
アルバム『24k Magic』の2曲目に登場するミッド・グルーヴのR&Bチューン「Chunky」は、憧れのマイケル・ジャクソン『Thriller』における「Baby Be Mine」的な機能を持つ。スタジオ録音版と同じく軽快に歌われたこれを聴きながら、ブルーノが普遍的なポップ・シンガーにして優れたR&Bシンガーであることにも改めて感じ入った。とりわけ、グッチ・メイン/コダック・ブラックとのコラボ曲「Wake Up In The Sky」に続くカーディ・Bとの共演曲「Please Me」でシャウトを交えて猛烈に歌い込む姿は、この曲の着想源であるはずのシルク「Freak Me」やR・ケリー「Sex Me」を思い出さずにはいられない。実際に今回のライブでは、曲終盤で「Freak Me」の”Baby,dont stop”というフレーズを交えた熱いフェイクを披露。今では名前を出すことも躊躇われるR・ケリーからの影響についてはブルーノも公言しないだろうが、90年代R&Bに思い入れがある彼らしいセクシャルで濃厚な歌世界の再現は見事で、観ているこちらも思わず力が入る。
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ダンスの列には混ざらずバックで黙々とギターを弾いていたのが、ブルーノの来日公演には初参加となるマテウス・アサトだ。SNSでの演奏動画で人気を集めた彼は、沖縄にルーツを持つ日系ブラジル人ギタリストで、トリー・ケリーやジェシー・Jのツアーへの参加歴もある28歳の才人。彼がビブラートを効かせて弾く神秘的なギター・ソロを導入部にした「Versace On The Floor」は、今回のライブで最もロマンティックなシーンだろう。ドームを埋め尽くす観客がスマホのライトを点灯し、満天の星を見上げるように歌うブルーノ。80年代のハッシュ・サウンドを思わせる懐かしいフィーリングを湛えたR&Bバラードをスウィートかつ力強く歌い上げる姿もたまらない。この流れで「キミヲトテモアイシテル(君をとても愛してる)」と日本語で歌った小品は、フィリップたちとハーモニーを奏でるドゥーワップ調。これを聴きながら、かつて父親が日本から持ち帰った山下達郎(同日にNHKホールでライブが行われていた)の『ON THE STREET CORNER』をカセットで愛聴していたという話を思い浮かべた人もいるかもしれない。そんな歌からの「Marry You」への流れがこれまた見事で、このポップで爽やかな甘さと言ったらない。
ドラムはブルーノの実兄エリック・フェルナンデス。ガッツリとタトゥーの入った太腕でボトムを支える彼のドラム・ソロも披露され、「Runaway Baby」へと続いていく。ここでのブルーノは、セクシャルな腰使いも含めて最愛のアイドルであるエルヴィス・プレスリーに迫るロックンローラーぶりで、過去の公演同様、足を踏み鳴らし、拡声器で叫ぶなど、ハイテンションで動き回る。途中で音をミュートし、スポットライトでマイケル・ジャクソンのようなシルエットを浮かばせれば、ホーンのリフとシンクロするようにジェイムス・ブラウンのようなリズミカルな足捌きで前後にスライドもする。「ガッタガッタ」というシャウトはオーティス・レディング、エキサイティングな熱唱はジャッキー・ウィルソンへのオマージュとも受け取れ、ロックンロールのルーツはリズム&ブルースにあるとでも言わんばかりだ。故郷ハワイで幼い頃から観光客相手にパフォーマンスをしていたショウマンシップが最も色濃く滲み出たシーンだろう。いったい彼の体の中には何人のレジェンドが宿っているのか。
明日への活力となる、ブルーノの歌ぢから
過去に提供した曲や客演曲などをひとりピアノで弾き語り、観客が続きのパートを歌えるか試す”ゲーム”も本ライブを忘れ難いものにした。公演日によって歌われる曲は若干違ったようだが、シーロー・グリーンに提供した「F**k You」、スヌープ・ドッグ/ウィズ・カリファと相見えた「Young Wild And Free」、B.o.Bとの「Nothin On You」、自身の「Talking To The Moon」は固定の曲。坂本九の「上を向いて歩こう」は完全に日本向けで、ワンフレーズだけ歌った後、ダブルピースを頬に当てて「Kawaii(可愛い)」とおどけてみせるブルーノは愛嬌たっぷり。加えてこの日は、Dマイルと組んで嵐に提供した「Whenever You Call」も歌ってみせた。こうした選曲や所作からも、彼らしいショウマンシップが窺える。ピアノ弾き語りの締めは、今回多くの人が期待していたであろうシルク・ソニックの「Leave The Door Open」。ブルーノのパートだけではあったが、伸びのある美声を生で聴き、合唱しながらウットリしてしまったのは自分だけではなかったはず。一方でシルク・ソニックが一曲だけという寂しさもあった。が、今回はあくまでソロ公演。あれだけ話題になったシルク・ソニックも、多数のヒットを持つ彼にとってはキャリアの一部にすぎないということなのだろう。これはこれで潔かったと思う。

(C) Bruno Mars
エルトン・ジョンやビリー・ジョエルといった全方位型ポップ・シンガーの系譜を継ぐ存在でもあることを示すバラード「When I Was Your Man」での、ドームの天井を突き破るような歌唱も凄まじい。ここでのプレイが光ったジョン・フォシットの荘厳なピアノ独演も上々で、中盤で飛び出したドクター・ドレーfeat.スヌープ・ドッグ「Still D.R.E.」のリフに反応した人も少なくなかった。ジミ・ヘンドリックスばりの直情的なギターを弾きながら歌った「Grenade」を経てのエッジーなポップ・ロック「Locked Out Of Heaven」、お約束の大合唱となった「Just The Way You Are」で多幸感に包まれながら迎えたクライマックス。最も有名なブルーノの客演曲と言っていいマーク・ロンソンの「Uptown Funk」でダメ押ししたアンコールまで、賑々しく駆け抜けた約2時間のパーティーはエンターテインメントの塊であった。これ以上、何を求めようか。
レーザービームやファイアーボール、スモーク、紙吹雪などの演出/特効もあったが、それが殊更に強調されることもなく、音楽そのもので魅せることに徹したステージ。もちろんキモとなるのは、ブルーノのボーカルだ。あれだけ激しく動き回っても、いわゆる口パクもなく、巨大なドームを掌握してしまうほどの歌ぢからがある。終演後、「最近、気持ちが沈んでいたけど元気が出た」という参加者の声も聞いた。明日への活力となるようなパワーを持つブルーノの音楽とパフォーマンスは、世代、性別、人種、国籍、そして音楽知識の有無などに関係なく、あらゆる垣根を越えて人々の心を掴み、皆を笑顔にしてくれる。24カラット並みの輝きに満ちているのだ。
最後にシルク・ソニックについて少しだけ。先頃ブルーノは、2023年のグラミー賞にシルク・ソニックのアルバム『An Evening With Silk Sonic』をエントリーしないと発表。ユニット始動直後に同授賞式でパフォーマンスし、今年は受賞の栄誉にも浴しただけに、もう十分ということなのか。エントリーすれば受賞はほぼ確実という自信の裏返しでもあるが、だからこそ空気を読んだのだろう。ドアを開け放って登場したシルク・ソニックは、ドアの閉め方まで完璧だった。
現在、ブルーノはこうしてソロ・ツアーを行い、アンダーソン・パークは先日、ナレッジとのノーウォーリーズでH.E.R.を迎えた新曲「Where I Go」をストーンズ・スロウからリリースした。ふたりは今、それぞれのホームに戻って再び自分の道を歩んでいる。その次には、またも驚くような展開が待っているのかもしれない。

(C) Bruno Mars
「Bruno Mars Japan Tour 2022」
東京ドーム公演Day 1 セットリスト
01. Moonshine
02. 24K Magic
03. Finesse
04. Treasure
05. Perm
06. Billionaire
07. Chunky
08. Thats What I Like
09. Wake Up in the Sky~Please Me
10. Versace On the Floor
11. Marry You
12. Runaway baby
13. F**k You~Young Wild and Free~上を向いて歩こう(坂本九)~Whenever You Call(嵐)~Talking to the Moon~Nothin On You~Leave the Door Open
14. When I Was Your Man
15. Grenade
16. Locked Out of Heaven
17. Just the Way You Are
(アンコール)
18. Uptown Funk
ブルーノ・マーズ、アンダーソン・パーク&シルク・ソニック
『An Evening With Silk Sonic』
再生・購入:https://SilkSonicJP.lnk.to/AEWSSPu
ブルーノ・マーズ
『24K MAGIC(デラックス・エディション)』
再生・購入:https://brunomarsJP.lnk.to/24kmagic_dxPu
ブルーノ・マーズ 日本公式ページ:https://wmg.jp/brunomars/
本記事は「Rolling Stone Japan」から提供を受けております。著作権は提供各社に帰属します。
※本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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