Ms.OOJA、歌の言葉を伝える本物の歌手の姿 10年の貫禄よりも“まだまだやりたいことがある”という若い情熱が見えたバースデーライブ – http://spice.eplus.jp/

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Ms.OOJA 撮影=Masanori Naruse / 成瀬 正規
10月28日、毎年恒例、Ms.OOJAのバースデーライブの日がやってきた。一昨年は名古屋、昨年は札幌と、ツアー形式で場所を変えながら開催されてきた大切な記念日の、今年の舞台はZepp KT YOKOHAMAだ。3月に初の日本武道館公演を成功させ、9月にはカバーアルバム『流しのOOJA 2』を出したばかり。充実の1年を振り返りながら次の1年の活躍を誓う、それはMs.OOJAとファンとの約束の日。

ツアーTシャツにグリーンのロングスカート、長い髪をポニーテールに結んだナチュラルな出で立ちで、手を振りながらステージに現れた瞬間から満面の笑みが隠せない。明るい華やぎの中、4ピースのバンドと2人のコーラスが奏でる力強いグルーヴをバックに、11年前のデビュー曲「It's OK」、そして「JEWEL」と、懐かしめの楽曲を連ねてオーディエンスの心をぎゅっとつかむ。フロアは着席スタイルだが全員がクラップと手振りに参加して曲を盛り上げ、いくつものペンライトがにぎやかに振られる。ほかのライブとはちょっと違う、バースデーライブにしかない独特のあたたかい祝福ムードが楽しい。

「みなさんこんばんは。Ms.OOJAバースデーライブへようこそ。みなさんにお祝いしていただこうと思うんですが、逆に私からも感謝を込めて、たくさん歌を届けて行きます。楽しんでいってくださいね」
この日のライブは、9月に生まれ故郷の四日市で開催された『TADAIMA LIVE』と同じく二部構成。一部は新旧取り混ぜたオリジナル曲を披露する場で、キーボードが奏でるホーンの音色とワウギターをフィーチャーしたファンキーなシティポップ「Cold Kiss」、明るく激しくロックテイストを効かせた「あなたが決めた今日なら」「Footprint」と、聴き手を励ますメッセージ性の強い曲を連ねてぐいぐい進む。Ms.OOJAのライブでの歌唱力はただただ圧巻で、強烈なパワーと繊細な技巧、説得力と包容力を兼ね備えた上にとても伸びやかで自然体。あらためて、すごいシンガーだ。

ここから3曲はぐっとスローでメロディアス、せつなさとあたたかさを織り交ぜてしっとりと聴かせる。静かなスローテンポからバンドがだんだん熱を帯び、クライマックスのギターソロから美しいミラーボールの演出へと展開する「鐘がなる」。悲しみに満ちた失恋ソングを希望の歌へと昇華させる、生命力みなぎる歌に圧倒される「30」。分厚いバンドサウンドとエモーショナルな歌声、リズムに合わせてまたたく劇的な照明が、壮大な歌詞の世界観を演出する「HIKARI」。何もかもがドラマチックで映像的だ。

「2022年は私にとって特別な1年です。3月27日に初の日本武道館公演ができました。みなさんのおかげで10年やってこれて、その集大成として最高の景色を見せていただきました。その武道館ライブで最初と最後に歌った曲を2曲お届けします」
どちらもスローで壮大な曲調の「Open Door」と「はじまりの時」は、デビュー10周年の集大成として武道館公演に臨んだMs.OOJAの決意を伝える2曲。それはR&B、ヒップホップ、クラブミュージックのシーンから、J-POP、歌謡曲の世界へも活動の場を広げてきたMs.OOJAの存在証明だ。《今 手を伸ばせば 繋がる 未来があるだろう》。ドラマチックな曲調に込めたメッセージが力強く届く。

およそ10分間の休憩を経て始まった第二部は、『流しのOOJA 2~VINTAGE SONG COVERS~』を、曲順通りに全曲披露する特別企画だ。髪をほどいて鮮やかなワインレッドのロングドレスに着替えたOOJAが、ミラーボールの下で荻野目洋子「六本木純情派」と竹内まりや「プラスティック・ラブ」を歌う。80年代アイドルポップとシティポップ、スタイルの違いを超えて歌に同化する、まさに“流し”の貫禄たっぷりの見事な表現力。
「70年代、80年代の楽曲を、愛を込めてカバーしています。タイムスリップしたような気持ちで、『流しのOOJA 2』を楽しんでください」

次のセクションはさらにジャンルもサウンドも多様化するが、“Ms.OOJAの歌”という絶対の信頼感は揺るがない。ノスタルジックなフォークソングの品格をたたえた村下孝蔵「初恋」、J-POPバラードのクラシックと言える小林明子「恋におちて-Fall in love-」、アッパーなラテンのグルーヴがかっこいい八神純子「みずいろの雨」、どこか北欧めいたメロディで哀愁のイメージをまとう小泉今日子「木枯しに抱かれて」、そして70年代歌謡ポップスの傑作「木綿のハンカチーフ」。どんな時代のどんなジャンルも歌いこなす、Ms.OOJAの歌のうまさは自分のためではなく、歌の言葉を伝えるためのうまさだ。「恋におちて-Fall in love-」の主人公のせつなさといじらしさが、「木綿のハンカチーフ」の男性の勝手さと女性の純真さが、色鮮やかな物語として目の前にくっきりと浮かぶ。数えきれないほどにカバーされてきた有名曲たちが、元の形に戻ってみずみずしく輝きだす。
「みなさん楽しんでますか? 声を出せないから、誕生日おめでとうという声は聞こえないけれど、みなさんの拍手やまなざしやペンライトが、おめでとうと言ってくれてる気がします。最高に幸せです」

中森明菜「飾りじゃないのよ」は、大人の女性のかっこよさ全開に。五輪真弓「恋人よ」から松田聖子「瑠璃色の地球」、そしてテレサ・テン「時の流れに身を任せ」のスロー/ミドルテンポ3曲は、時に激しく時にけなげに、主人公の感情に寄り添いながら。亜蘭知子「MIDNIGHT PRETENDERS」は、シティポップ再評価の波に軽く乗りながら、ミラーボールの下でせつない歌詞の風景をなぞるように軽やかに。聴き惚れるだけで時が過ぎる、『流しのOOJA 2~VINTAGE SONG COVERS~』の12曲があっという間だ。

「それじゃ最後の曲を」と紹介してバンドがイントロを奏で、予告なしに始まった「Happy Birthday to You」のコーラスは、バンドからMs.OOJAへのうれしいサプライズプレゼントだ。観客全員が手拍子で後押しし、OOJAが笑顔ではにかむ、とても幸せなシーン。「40代の10年も、さらにいい歌をみなさんにお聴かせできるように頑張っていきます」――そして本当のラストチューンはやはりこの曲、10年前にMs.OOJAの名を世に知らしめた大ヒット「Be…」だ。その後のMs.OOJAの歩みを決定づけた、生きる勇気と明日への希望をメッセージする力強いバラード。10年経っても色あせない、むしろ生命力を増して聴こえる、それが名曲の名曲たる所以。
晴れやかな笑顔でバンドメンバーと手を繋ぎ、鳴りやまない拍手に応える姿から、10年の貫禄というよりはまだまだやりたいことがあるという若い情熱が見える。歌の言葉を伝える本物の歌手として、Ms.OOJAの存在はとても貴重だ。この歌ももっと長く深く聴いていたい。秋の夜長、しみじみとそう思わせる素敵なバースデーライブだった。

取材・文=宮本英夫 撮影=Masanori Naruse  / 成瀬 正規

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