佐藤竹善「シティポップは有機的で普遍的」礎となるカバーアルバムに込めた想いとは:インタビュー(MusicVoice) – Yahoo!ニュース – Yahoo!ニュース


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佐藤竹善(撮影=村上順一)
 Sing Like Talking(以下SLT)のボーカルを務める佐藤竹善が10月5日、カバーアルバムシリーズ『Cornerstones』の第8作『radio JAOR ~Cornerstones 8~』をリリース。70~80 年代を中心にした邦楽ポップスを取り上げ、全9曲を収録。アルバム全体が架空のラジオ局「JAOR FM Radio」の番組のように構成されている。また本作は、旧ファンハウスのプロデューサーであり、SLT/佐藤竹善の育ての親でもある、故 武藤敏史氏へ捧げた作品としても位置づけられている。インタビューでは、1995年からスタートした「Cornerstones」シリーズが始まった経緯、『radio JAOR ~Cornerstones 8~』に収録された楽曲への想い、レコーディングエピソードなど、話を聞いた。【取材・撮影=村上順一】 【動画】佐藤竹善の原動力 ■『Cornerstones』の始まり ――『Cornerstones』は今作で8枚目ですが、このシリーズが始まった経緯は?  SLTが5、6、7枚目と自分たちが形にしたいことがセールスなどにも表れ、オリコン1位になったり武道館でやるようになったりと、自分たちの中ではいい形ができた時でした。しかし僕の中ではその頃、このままでは自分の音楽的なレベル、そういったものが行き詰まる、もっともっと高い所を目指したいと思ったんです。  それまでポップスの目線で9割方自分の作る音楽を見つめていたのですが、段々そのルーツになっているジャズやクラシック、ゴスペルなど様々な音楽の様子が自分の中でどんどんクローズアップされてきました。そういうものをしっかりと身につけなければ今後のSLTも自分の音楽も煮詰まるだろうと思ったんです。SLTという目線だけではなく、一ミュージシャンとしてもっと色んな経験を積まなければいけないと思いました。何故かと言うと、僕らはアマチュア時代がほぼ宅録第一世代みたいなものでして。 ――これまでとは違った世代なんですね。  (山下)達郎さんの世代のようなミュージシャン同士がライブハウスで切磋琢磨し合う経験がなかったんです。それをやってきた方々の底力は素晴らしい。そういうスキルを改めて身につけなければいけないと思っていた矢先に、ちょうどアル・ジャロウが『Tenderness』というカバーばかりのスタジオライブアルバムをリリースして、それがグラミー賞を獲りました。それを聴いて衝撃を受けました。  アル・ジャロウは僕にとって非常に大きな影響があった人なんですけど、そのアルバムを聴いて僕は「これだ」と思いました。アル・ジャロウがエルトン・ジョンやセルジオ・メンデスの曲などを自分なりに解釈して、当時のアメリカの最高峰のミュージシャンで演奏してレコーディング、ライブをしたんですけど、この感じを僕もやってみたいと思いました。 ――タイトルの『Cornerstones』は礎や土台という意味がありますが、名付けたのは竹善さんが?  SLT7枚目のアルバム『Togetherness』から参加してくれたキーボーディスト・プロデューサーのキャット・グレイです。「こういうコンセプトで作りたいんだけど、アルバムタイトルはどういうのがいいと思う?」と相談したら、『Cornerstones』というタイトルを考えてくれたんです。 ――前作『Cornerstones 7』では40曲ほどの候補曲が挙がったと聞きました。今作では?  今回は前回ほど多くはなかったです。切り口がJ-POPのルーツ、昨今シティポップと呼ばれる邦楽と限定しましたから。今回は選ぶにあたっても、作った方たちが海外の音楽に憧れて一生懸命追いつこうと思って作ったものが、今回り回って、逆に海外から評価されているという要素にヒントに選曲しようと思いました。  最終的に決定打になったのは、僕らSLTを見つけてくれて、音楽的な土台を大きく支える柱になっていたプロデューサーの武藤敏史さんが亡くなったことで、彼を顕彰したいという思いがありました。作るなら武藤敏史トリビュート的なスタンスで絞っていこうと。シティポップ的なサウンドはいっぱいあるので、そこが焦点だった分比較的絞るのは楽でした。 ――そうだったんですね。  この20数年の間に『Cornerstones1』を作ってからカバーアルバムがブームとなるくらい肯定的に捉えられる時代になり、たくさんの方が作るようになりましたよね。だからこそ自分独自の切り口が必要だなと改めて思いました。ブームの時は通常ヒット曲が中心で、どう料理するかとなるものですが、その次の段階をと考えました。シティポップ的な今の切り口がありながらも、そこから見る佐藤竹善の『Cornerstones』(土台)があるものという切り口が僕らしいかなと。そこには、シティポップの立役者で恩人でもある武藤さんへのリスペクトも込められるといったところです。 ――武藤さんは竹善さんにどんな言葉をかけてくれる人でしたか。  隅々まで丁寧に粋なことをやるのが大事で、その上でヒット曲を目指そうと。素晴らしいサウンドとアレンジと音楽的なことをしっかりした上で、良い作品が売れるということが彼にとっての大きな矜持でした。武藤さんが手がけた作品で、その金字塔が「ルビーの指環」なんです。収録されている『Reflections』というアルバムは、ミュージシャンがオタク的に聴いても一般の人が聴いても、どの角度から攻め込んでも隙のない作品なんです。それは、武藤さんのまさに理想の実現となりました。 ■アレンジへのこだわり ――本作収録曲の原曲も聴くと、原曲に対してのリスペクトを感じました。今作の制作はどのように進んでいったのでしょうか。  『Cornerstones』の3、4の時は、原曲のイメージをひっくり返すくらいのアレンジでやったりもしたんです。あの時代はまだカバーをやっている人があまりいなかったので。ジャズなどでは普通なのですが、冒険的なチャレンジで原曲に挑むという。昔はクラシックの曲にジャズミュージシャンが挑戦することもありました。ポップスでもそういうのはいっぱいあります。原曲とまるで違うけど、凄くいい曲になっているよねと。そういうチャレンジ的なことを3、4ではやりました。 ――でも、今作はそういう考え方ではなくて。  この10年くらいの間にカバー曲が当たり前になり、アイドルから演歌の方までカバー曲というのは普通になりました。その中での自分の独自の色はなんだろう、現代的でナチュラルなアプローチはなんだろうと。今作に収録したSHOGUNの「LONELY MAN」でも、イントロの始まる瞬間は歌メロと同じくらい曲としてインパクトがあります。ということは、あれは編曲ではなく、もはや「楽曲」の柱のひとつであるというようなアンサンブルはポップスでもたくさんあるんです。「ルビーの指環」のイントロのフレーズもそうですし、ディープ・パープルで言ったら「Smoke on the Water」のリフと一緒です。  変えることで表すオリジナリティーから変えないことでの表現も、同じぐらい重要な時代に入ったかなと。それを今回の4人のアレンジャーに話してみたら彼らも全く同じことを考えていました。特に坂本(昌之)君は、アレンジャーとして演歌、歌謡曲、アイドル、ポップスと様々な人たちと年中仕事して、当然カバーの仕事もたくさんしている中で同じことを今感じていたんです。 ――どんなやりとりをアレンジャーの方とされたのでしょうか。  その上で、今度は矛盾するようですが義人君にはあえて「大胆に変えてもいいよ、でもここの部分は残してほしい」と、綿密に打ち合わせをしました。逆に坂本君がアレンジした「LONELY MAN」は、「こことここは完璧に同じで」と、なるべく原曲に近い形でお願いしました。ただ、エンディングに関しては、オリジナルはフェイドアウトなんですけど、ドラマ『探偵物語』(エンディング曲)での終わり方が印象的だったので、「ドラマのように終わりたい」と、リクエストしました。  オフコースの「青春」は隅から隅まで完璧に同じです。今回演奏してくれたミュージシャンたちはそんなことやるのは中学校、高校以来でしょう。「あえて同じでやりたい」と伝えて、みんなが「それは面白いね」となってできた曲でした。 ――新たな発見もあったのでしょうか?  シティポップが30数年以上経って海外でもブームになっているのが凄くわかるんです。僕は最近の洋楽を聴くタイプなのですが、それと並べても音楽としての響き方、メロディの独自性、サウンドの面白さは全然古さを感じない。今聴いても、とても有機的で普遍的なんです。  あの時代のアーティストたちが曲やメロディだけではなく、「ドラムをどういう音で叩いてどう録音しているのか」「ギターはどういうフレーズを弾いているのか」など、サウンド面でも、純粋に洋楽を研究チャレンジしまくっていた頃ですから、それが今でも魂として活き活きと残るんでしょうね。 ■気軽に楽しんで聴いてほしい ――さて、他の収録曲とはカラーが違うKANさんの「カレーライス」と、コーヒーカラーの「人生に乾杯を!~Merry Christmas To You Version~」を収録した経緯は?  まず、その2曲を初めて聴いた時に絶対いつかカバーしようと思ってたんです。「カレーライス」がドラマ『銭湯の娘!?』の主題歌で流れていて「いい曲だな」と思ってシングルを買いに行きました。「人生に乾杯を!~Merry Christmas To You Version~」は、コーヒーカラーとFM802のイベントで一緒になった時に、初めて聴いて凄く感動したんです。それで「いつかカバーしていい?」と聞いたら、メンバーのパリなかやま君が「いつでもしてください」と言ってくれたので、タイミングをずっと待っていたんです。 ――温めていた曲でもあって。  選曲する中で、「武藤さんだったらどういう選曲をするだろうか?」と考えたんです。武藤さんは洋楽的な音楽を追い求めていても、洋楽にかぶれちゃダメなんだということをよく言っていたんです。だとしたら、今はシティポップブームだけど、シティポップの流れだからといってそういう曲ばかり探すというのは武藤さんが最も嫌うことだなと。  そういう分野に通じていながらも、音楽的な高さに満ち溢れているものであるならば、一見違うものでもやってみるのはいいぞ、と言うだろうなと思いました。武藤さんも関わった稲垣潤一さんの1stアルバム『246:3AM』の中に、最後の1曲に「日暮山」というちょっとフォークっぽい白い蛇の歌があるんです。他の収録曲は完全にシティポップサウンドなんですけど、武藤さんに「この歌、何で入っているんですか?」と、昔聞いたことがありました。すると「これが入っているからこのアルバムはいいんだよ」と話してくれて。その意味合いが段々なんとなくわかってくるんです。 ――際立ちますよね。  『Cornerstones 8』を作るにあたっても、どんなに切り口がシティポップやAORだったりしたとしても、基本は良い曲で歌いたいと思った曲で、一般のイメージが違う曲であっても、それは音楽的ハイセンスな部分がなかったら絶対に出来上がらない曲だと感じられる曲も選びたかったんです。例えば「カレーライス」は転調から何から、エルトン・ジョンやビートルズやポール・マッカートニーなどが80年代前後くらいの時に彼らが出していたようなハイセンスな音楽的観点がなかったら、絶対書けない曲なんです。 ――「人生に乾杯を!~Merry Christmas To You Version~」はどのように感じていますか。  コーヒーカラーに関してはストーリー、歌心の素晴らしさです。背景にはシャンソンを感じます。パリなかやま君は、今は流しをやっていて、酒場の人間模様がよくわかっている人です。それはビリー・ジョエルの「ピアノ・マン」と通じる世界でもありますし、ストーリーを追っていく感じ、心の模様というのはアル・スチュワートの「Year of the Cat」というAORの名曲として歴史に残っている楽曲との共通性も感じられます。それが感じられるということは自分にとってはAORであり、シティポップでもあるんです。シティポップ好きでも、こういうタイプの曲も聴いてほしいという思いで収録しました。 ――本作には山下達郎さんの「潮騒 (THE WHISPERING SEA)」も入っていますね。  中学生の頃からずっと聴きたおしていて、高校の文化祭でもやった曲です。僕が達郎さんのツアーをコーラスで回っていた時もこの曲をやっていますし、ずっと時代時代で思い出が詰まった曲です。それは達郎さんもよく知っていますから。だからカバーの許可も出たんじゃないでしょうか。 ――最後に、アルバムを通してラジオっぽくなっているのは竹善さんのアイディア?  ちょっとした遊びで、気楽に聴いてほしいというのが筆頭にあるんです。過去にも、山下達郎さんが『COME ALONG』という、小林克也さんがDJをやっているアルバムを出したりしていますが、そんな感じで面白い力が抜けた感じになればと。  いろいろ話してきましたが、リスナーにはゆるく聴いてほしいです。単純に「こんな曲があったんだね」だけでドライブで聴いたりする作品になるのが実は最高なわけです。そんな感じでああいうラジオっぽいような感じにしました。あと、ジングルは、実は自分で作って僕が歌っているんです。これが意外と気づかれないんです(笑)。 (おわり)

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