サブスクのヒット曲 発表年が古い順にランキングを作ってみると – 日経クロストレンド

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令和となって、ヒット曲が生まれる主戦場となっているのが「サブスク」こと定額制ストリーミングサービスだ(以下、「サブスク」と記す)。最近では、大滝詠一やB’z、矢沢永吉といった大御所も次々と解禁。ジャニーズやアップフロント所属アーティスト(一部を除く)、山下達郎、中島みゆき(ただし一部サイトでは解禁済み)、CHAGE and ASKAなどが未解禁ではあるものの、発表年の新旧に関係なく、ほとんどの曲が手軽に聴けるのがサブスクの大きな強みとなっている。
 では、発表から時間が経過した旧作(ここでは“懐メロ系”と記す)の中では、いったいどんな楽曲がサブスクでヒットしているのか。発表年の古い順に調べてみた。なお、ここでの「サブスクでヒット」の定義は、2022年6月までに日本レコード協会のゴールド認定を受けた、サブスク再生回数5000万回以上の楽曲とする。ちなみに、この「ゴールド認定」はCDシングルだと10万枚以上に相当する。
 上の表は、そのサブスクでヒットした曲の中から、2000年代までに発表された楽曲を選び、発表年が古いものから並べてみたものだ。再生回数が5000万回を超えている楽曲の中で、最も古かったのは1994年の「空も飛べるはず」、2位は1996年の「チェリー」と、スピッツがトップ2を独占する結果となった。令和となっても若い世代が彼らの楽曲をカラオケで歌ったりカバー動画を投稿したりするのを見聞きするが、サブスクでの強さはそれを裏付けている。やはり、時代を感じさせないエバーグリーンな魅力がサブスクで有利となるということだろうか。
 最大の注目ポイントは3位の椎名林檎「丸ノ内サディスティック」だ。本作は、椎名林檎の1stアルバム『無罪モラトリアム』収録のオリジナル曲。もともとライブでは人気のギターロックチューンだが、2010年代後半になって、その疾走感から若い世代によるカバー動画から火がつき、各種サブスクチャートで急上昇した。椎名林檎本人も2019年のベスト盤の発売時期にテレビ番組で幾度か披露したことも人気に拍車がかけ、サブスクでは1億回突破、ダウンロードでも25万件を達成した。椎名林檎の楽曲中では「本能」「ギブス」「罪と罰」などCDセールス50万枚以上のヒット曲を差しおいて、サブスクではダントツの人気だ。
 参考として、懐メロ系サブスクヒット全17曲のCDシングルやダウンロードでのヒット実績も示したが、大半の楽曲がシングルとして発売されCDやダウンロードで50万枚/件以上売れていることが分かる。これは、YOASOBI「夜に駆ける」やAdo「うっせぇわ」などCDの発売がないままサブスクでヒットするのが大半となっている令和のヒット曲とは対照的だ。言い換えれば、懐メロ系におけるサブスクならではのヒットは、「丸ノ内サディスティック」以外はまだ出ていないということだ。
 4位の「カブトムシ」は、aikoのサブスク解禁が2020年2月と比較的遅かったのだが、わずか2年足らずで5000万回再生を突破。ちなみに、本作はaikoの実家では年中カブトムシを飼っていたことから冬の虫と勘違いしたことで冬にリリースされヒットしたが、現在は、カブトムシの本来の季節である夏うたとしても定番化している。つまり、夏冬双方で数字を伸ばしたことで、ハイペースでのサブスクヒットにつながったようだ。同じことは5位のサザンオールスターズ「TSUNAMI」にも言えるだろう。本作も2000年1月の発売で冬に大ヒットしたが、今や夏うたランキングの上位に必ず入っている。
 7位と9位にはスキマスイッチがランクイン。いずれもCDシングル自体は10万枚前後だがダウンロードでロングヒットとなり、ともに50万件を超えている。「奏(かなで)」はカバー動画の投稿がとても多い定番バラード。また「全力少年」のほうも、近年CMソングや映画『2分の1の魔法』の日本版エンドソングに起用され、ともにサブスクでもヒットしている。
 ただ、長く愛されている楽曲がヒットしているとはいえ、最も古いのが1994年の楽曲で、昭和のサブスクヒットは皆無となっている。昭和時代に音楽に最も触れていた50代以上は、まだまだサブスクに抵抗が大きいのかもしれない。
 しかしながら、昭和の懐メロのサブスクヒットの予兆は各方面で現れている。
 まず、アナログレコードでは、令和になって大滝詠一のアルバム『A LONG VACATION』や竹内まりや「プラスティック・ラブ」などの旧作が1万枚以上のヒットとなっている。
 また、海外では、その「プラスティック・ラブ」がサブスク解禁以前にYouTubeで5000万回以上再生され、サブスクでも松原みき「真夜中のドア~stay with me」(1979年)や、ザ・ウィークエンドの「Out of Time」(2022年。亜蘭知子の1983年発表の楽曲「MIDNIGHT PRETENDERS」をサンプリングしている)が1億回再生を超えるなど、いずれも日本では発売当時大ヒットしていなかった楽曲が注目を浴びている。
 こうした国内外の動きから、昭和の名曲が国内のサブスクでもヒットするのは時間の問題だろうし、サブスクによって懐メロ系全体が発掘されることは、ますます活発になりそうだ。
 なお、筆者は“おとラボ”というプロジェクトで1970年代から2000年代を中心に、プレイリスト(楽曲再生リス)の選曲企画に携わっている。主催するポニーキャニオンによると、研ナオコ、松山千春、岩崎良美、西田ひかる、CoCoなどの懐かしいヒット曲や、城南海(きずき・みなみ)や、つるの剛士によるカバー曲が、プレイリストの人気によって、累計再生回数がそれ以前の2倍から5倍ほどになっている。これまでのところ『夏うた!海の山の想い出よみがえる平成J-POP』や『絶品! 絶唱! このカバーがスゴい! 名曲COVERS』、『穏やか気分のドライブソングス~リラックス系J-POP』などがロングヒット中とのこと。
 このようにサブスクのプレイリストでは、懐かしい楽曲から意外な隠れた楽曲までそろっている。気軽に楽しみながら、次のサブスクヒットを探してみてはどうだろうか。
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臼井 孝
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