平井堅の音楽にある“キラーフレーズ”の数々 心を揺さぶるJ-POP名曲の言葉とともに紐解く – リアルサウンド

 2021年5月12日にリリースされた平井堅の最新アルバム『あなたになりたかった』。本作の歌詞には、現代だからこそのストーリーや、人間とは何かを考えさせられる問いかけ、社会風刺ともとれるフレーズが散りばめられており、ハッとさせられる。
 こうした、人々の目を醒ますような、心を揺さぶる言葉ーー「キラーフレーズ」とも言える歌詞は、いつの時代にも生まれ続けている。最近では、syudou作詞作曲、Adoが歌った「うっせぇわ」の歌詞もそのひとつと言えよう。
 〈正しさとは 愚かさとは それが何か見せつけてやる〉。タイトルもさることながら、冒頭から歌詞のインパクトが凄まじい。
 少し時代を巻き戻せば〈盗んだバイクで走り出す 行く先も解らぬまま 暗い夜の帳りの中へ〉と、尾崎豊が叫ぶように歌った「15の夜」の歌詞もまた、世の中に一石を投じた。
 彼らは、ある人にとっては痛快な代弁者であり、ある人にとっては聞こえないふりをして蓋をしたい存在。とはいえ、本当に聞いてほしい相手ほど、我関せずで通り過ぎたりするのだが。
 本稿では『あなたになりたかった』からいくつかの印象的なフレーズをピックアップ。そこから筆者がリンクした、名立たるアーティストの歌詞を併せて紹介したい。
 〈描いた夢は叶わないことの方が多い〉ーー冒頭から、現実を容赦なく突き付ける「ノンフィクション」(平井堅)。
 〈人生は苦痛ですか? 成功が全てですか? 僕はあなたに あなたに ただ会いたいだけ〉
 自己嫌悪を抱え、生きる意味や葛藤を誰にともなく問いかけながら「あなたに会いたい」というたったひとつの願いに着地する。現実から目を逸らすのではなく、辛いほど現実を受け止めた上での“会いたい”の言葉は、ずしりと重い。こうした人間的でまっすぐな欲望は、いつの時代にも共通するものだ。
 〈都会では自殺する若者が増えている 今朝来た新聞の片隅に書いていた だけども問題は今日の雨 傘がない〉
 1972年に井上陽水が歌った「傘がない」。センセーショナルな歌詞は〈君に逢いに行かなくちゃ〉と続く。そして1996年、THE YELLOW MONKEYが歌った「JAM」。混乱ばかりの世界、自分を見失いそうな夜……胸が苦しくなるほどの〈逢いたい〉が、何度も繰り返される。
 時代が変われど、世界が変われど、変わらない愛の歌だ。
 〈私はこの街が嫌い 国道沿い走りながら 赤信号も青信号も 私を通してはくれない気がして〉
 “あの子”や“みんな”へのコンプレックスを抱え、居場所と愛を探してもがく心を描いた「オーソドックス」(平井堅)。〈バカみたいに格好いい普通が欲しいよ〉という歌詞もまた、心に刺さるキラーフレーズだ。“この街”という狭い世界で繰り広げられる物語に、「ZOO」(ECHOES)のこんなフレーズを思い出した。
 〈僕達はこの街じゃ 夜更かしの好きなフクロウ 本当の気持ち隠している そうカメレオン〉
 「ZOO」は、動物園に見立てた街をやや風刺的な視点で見回しながら、その一員である自分の本当の姿を探す曲。
 そこには、白鳥になりたいペンギンと、なりたくはないナマケモノがいる。いつかいつか、なんでなんでと願うばかりの「オーソドックス」の主人公は、果たしてそのどちらなのだろうかと、ふと思う。けれど、人間とは結局どっちつかずなもの。平井は「そういうもの」である人間を実にうまく描くアーティストだ。鋭く、ときに悲しく。






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