本能によって掻き立てられるラッパー・RAqの創造力。枠組みから解放 … – BIG UP!

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今年から隔週リリースを続け、プレイリスト上で存在感を放っているラッパー・RAq。彼はネット発のラップアーティストが頭角を現し始めた2010年代前半に、現役東大生ラッパーとしてデビューした。
フットワークの軽さでさまざまなアーティストと繋がりながら成長してきた彼にとって、“フィーリング”は何よりも重要なものだろう。楽曲の聴き心地の良さ、気の合う仲間、創作への欲求、そのどれもが感覚的だ。それは自らが囚われていたHIPHOPという枠組みから解放された証なのかもしれない。そんな彼の現在までを振り返りながら、言葉にし難い感覚の部分を紐解いてみた。

ー最初に音楽に興味を持ったのはいつ頃でしたか?
3歳からピアノを習ってたんですけど、その頃は単に習い事という感じで、聴くものとして音楽に興味を持ち始めたのは中学くらいからです。国内だとRADWIMPS、洋楽だとGreen Dayなどのバンドの曲をよく聴いていました。といっても幅広く聴くタイプではなかったし、人並みに音楽を聴くくらいだったと思います。でも、高校1年の時にたまたまキングギドラの「最終兵器」を聴いて、HIPHOPを漁るようになったんです。
ーキングギドラを聴いたきっかけは?
小兄が音楽好きで海外のバンドにも詳しい人だったんですけど、ある日「すごい面白い音楽見つけた」って言って友達に借りたキングギドラを家で流してたんです。それを聴いて「なんだこれ?!」ってなって。日本語ラップの韻を踏む面白さに惹かれて、それからは高校の近くにあるCDレンタル屋さんで、毎週4枚ぐらい気になったアルバムを順番に借りてiPodに入れてっていうのを繰り返してました。
ーその中で刺さったアーティストはいましたか?
高1の時はキングギドラの流れからKダブシャインさん、DJ OASISさんを聴いていて、高2からはSEEDAさん、BESさんみたいな当時のスキルフルなラップを聴いてました。さらに、そういう人たちは海外のラップスタイルを取り入れていることを知って、海外HIPHOPも聴き始めたんです。Nas、Eminem、Jay-Z、Kanye Westといったメジャーどころを聴いていきました。
ー国内外のさまざまなHIPHOPを聴くようになった中で、1番影響を受けたアーティストは誰でしたか?
Kanye Westは大きかったですね。当時まだイナタいHIPHOPが多かった中で、すごく聴きやすくてスタイリッシュだった。歌詞も自分のエゴみたいなことを歌うのが新鮮で、こういうHIPHOPもあるんだってハマっていきましたね。すごく影響を受けたと思います。
あとは、Soulja Boy。当時YouTubeにどんどん曲を上げてアメリカでブレイクした人で、僕と同い年なのにそんなスターになる人がいるんだ!って衝撃だったんです。世界観もすごくポップでキャッチーだし、インターネットをきっかけに売れていったのも面白くて、そこから自分もラップをやろうと思いました。元々日本語のリリックは書いてたんですけど、実際に曲を作ってみようっていう気持ちになったんです。
ー最初はどうやって活動を始めたんですか?
いろいろ調べていたら日本にもインターネットで曲を作るコミュニティがあるのを知ったんです。当時はニコニコ動画に『#ニコラップ』っていうタグでトラックをあげてる人たちがいて、それを借りてラップを乗せ始めたのが大学1年の頃でした。
それと、『ニコラップ避難所』っていうニコラップをやってる人のための掲示板があって、“みんなでマイクリレーしましょう!”っていうスレッドに参加したこともありました。その後、曲をアップしている人達とだんだんTwitterで繋がり始めて、「この人あの曲あげてた人だ」ってさらに広がっていくんです。そうやって繋がった人に「曲作りましょう」って声をかけたり、かけられたりするようになりました。
ーそうしてネットラップコミュニティの一員になっていくんですね。
当時はネットラップのイベントも多かったので、そこに行くと「あの曲の誰々さんですよね?!」ってオフ会みたいな感じになってましたね(笑)。
ー今は2週に1曲というペースで定期的なリリースをしていますが、昔から曲を作るペースは早かったんですか?
そうですね。いろんな曲を聴いてると「こういう曲を作ってみたい!」ってなるんですよ。多い時は1年で50曲ぐらい作っていて、曲を作るってこと自体にハマっていたんだと思います。
ー現在の定期的なリリースを始めたきっかけは?
BIG UP!さんで配信を始めたところ、プレイリストに入るようになって再生回数が伸び始めたんです。するとプレイリストに入った曲は大体2週間で消えるものが多いことが分かったので、2週間ごとに出せば常に入ってる状態になるなと。あと、過去にYouTubeで1週間毎に1曲上げる挑戦をした時はどんどんクオリティが下がっていったので、2週間なら無理のないペースかなと思いました。
ーそれだけハイペースで作れるのはなぜだと思いますか?
宅録だからですかね。人のところに行って録らせてもらってたら、こんなに続けてなかった気がします(笑)。
ー宅録のスキルや知識もネットから?
そうですね。最初はスカイプのマイクで録っていたんですけど、「音質悪い」「マイク買え」ってコメントに書かれたんですよ(笑)。それでマイクを変えたら「音質良くなった」って褒めてくれる人もいて。ミックスに関しては思うような音にならなくてずっと迷走していたんです。でも、始めた頃からずっと使っていたフリーソフトを2019年ぐらいにLogic Pro X に変えたら、一気にミックスの感覚が掴めはじめて。単にケチって上手くならなかっただけだったっていう…(笑)。
ー確かに、ここ2、3年の作品でぐっと音がよくなって、サウンド作りを楽しんでいる感じがしていました。
ここ数年でサウンドに対しての意識は高まっている気がします。前はHIPHOPが好きだから、ちゃんとHIPHOPを作らなきゃいけないと思っていたんですよ。2012年頃はKendrick Lamarのようなメッセージ性があって、アルバム1枚で映画みたいなアルバムが流行っていて、そういう作品を作らなきゃってずっと悪戦苦闘していました。それでしばらく曲が作れない時期もあって。でも、SKOLORくんという韓国の友達と遊びで作った「Timeflies」が、思っていたよりもたくさんの人に聴いてもらえたので「こういう感じでいいんだ」って気づいたんです。

ーSKOLORさんとはどんな出会いだったんですか?
TwitterでSKOLORくんのMVをツイートしたらDMをくれて、そこから「今度日本行くんでよかったらご飯食べませんか?」という話になったんです。それで実際に何人かのラッパー友達も集まって一緒にご飯食べて、そのままSKOLORくんのMV撮影にちょっと参加したりして。それから日本に来るたびに遊んでました。彼は、とにかく一緒に曲を作りやすいんですよね。お互いどんどん曲を作るタイプだし、そういうフィーリングがすごく合うんです。
ーなるほど。国内のアーティストだと、ORIVAさんと何度かコラボされていますよね。
ORIVAくんはものすごく器用で、フロウの引き出しの数が多いんです。歌詞もいろんな情景描写を引っ張り出してくれる。自分でここのバースを埋めるのは違うなって感じた時に頼むと、いつもいい感じにしてもらえるんですよ。
ーコラボする方はどうやって選んでいるのでしょう?海外のアーティストとのコラボも多いですよね。
海外のアーティストはレーベルからお願いされることが多くて、頼まれて渡したら曲が出てる…みたいな感じです。いろんな人と作った方が面白いから、頼まれる相手にはあんまりこだわりはないですね。でも、自分から声をかける時は、その人なりのスタイルを持ってる人とやりたいなって思います。
ー先日リリースされた「Summer Days」のNOPPALさんはどんなきっかけだったんですか?
NOPPALさんは、2013年にとあるフリースタイル企画で一緒だったDKXOさんという方が当時されていたクルーにいらっしゃったんです。当時、彼女の「スタイリースタイリー」っていう夏曲をめっちゃヘビロテしていたので、夏の曲を作りたいなって思った時にNOPPALさんにバースを蹴ってほしいなと思って連絡しました。声に個性があるし、リリックもHIPHOPっぽさと日常っぽさがきれいに融合していていいんですよね。

ー7月27日にリリースされた「See U Later!」でコラボしたCuffboiさんはどうですか?
彼はSoundCloudで聴いてめっちゃ良いって思ったんです。深夜に聴いてたんですけど、そのままメッセージ送ったらすぐ返ってきて。一目惚れ的な感じで、今僕の中でホットな人です。
ー本当にご自身もコラボする方もみなさんフットワークが軽いですよね。
予定決めて一緒にスタジオ入ろうってなると「ウッ!」てなっちゃうんですよね(笑)。音源渡して、しばらくしたら返ってくるみたいな人たちが一緒に作りやすいです。だから、曲を作る時点で会ったことない人は全然いますし、コロナ禍でも平常運転で影響はほとんどありませんでした。
ー今後のリリース予定はいかがですか?
定期的なリリースを続けつつ、9月くらいにEPを出そうと思ってます。
ーやはり一つの作品として作るとなると、挑む姿勢はいつもと変わりますか?
僕、今後まとまった作品を作るのかな?って思うんです。毎回これが最後になるかもしれないって。また、サブスクではシングルより上に表示されるから、僕を新しく知ってくれた人はまず一番新しいアルバムを聴くだろう。そう考えると、シングルより作り込み度合いは高くなりますね。
ーEPに関して今話せる情報はありますか。
これまでのシングルを2曲、新しく作ったものを5曲入れた7曲入りにしようと思っていたんですけど、6月にリリースした「After」がすごくたくさんの人に聴いてもらえてるし作品のテーマ的にも合うので、それを入れた8曲にするか迷ってます。

ー「After」はかなり反響があったんですね。
そうなんです。たくさんの人に聴いてもらえたことで、自分でも好きになった曲ですね。自分のやりたかったことをもう1回考えながら作ったんですけど、EPもそんな感じで聴きやすい曲が並ぶと思います。
ー最近は「聴きやすさ、聴き心地のよさ」をすごく大切にされているように感じますが、どういう音を目指しているんでしょうか?
う〜ん……難しいですね。僕はHIPHOPを聴くけど、ゴリゴリのトラップよりはMac Millerみたいな聴き心地の良いものを好んで聴くので、HIPHOP方面ではそういうのを探している人達に聴いてほしいです。それと、聴き心地の良さという共通点で言うと、ポップス方面のシティポップが好きな人にも聴いてもらいたい。そういう人たちに刺さる曲を作れたらいいなって思います。
ー活動当初はラップスキルが注目されていたと思いますが、現在のラップに対しての意識はどうですか?
僕は今でも自分のラップスキルは高いと思っています。でも、スキルが高いからって、そういう見せ方をしなくてもいいのかなって思うので、聴き心地のいい、トラックに合うものにしています。でも8月にリリース予定の曲は、ガッツリラップ曲なんですよ。ラップ曲は全て「〜〜 Flow」というタイトルにしようと思っていて、ある程度集まったらそれをEPにまとめて出してもいいかなって考えています。
ーなるほど。これだけたくさんのリリースを重ねられるのって、やはりそれが自分にとって必要なものだからだと思うんですが、ご自身の中で音楽ってどういう存在でしょう?
基本制作は仕事のない土日にやってるんですけど、自分の中で占める割合はめちゃめちゃ大きいです。僕は飽き性だし、いろんなことをやりたがるし、何かしらアウトプットすることが好きだから、音楽じゃなかったらブログをずっと書いたりしてると思います。でも、音楽は作るだけじゃなくて聴き心地のよさも含めて楽しいし、関わる人もみんな面白いから特別なんだと思います。
ー制作すること自体が自然な行いなんですね。だからたくさんの曲を生み出せるという。
ここ数年特にそうなってきた気がします。曲が出来たときの爽快感が好きなんですよ。
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