Spotify、2022年年間ランキング分析 J-POP/グローバルポップミュージックシーンに生まれる新たな広がり – Real Sound

 オーディオストリーミングサービス・Spotifyが、2022年の音楽シーンを振り返るランキングを発表した。本稿では、そこから見えてくるJ-POPとグローバルなポップミュージックシーンの動向について考察したい。
1. 死ぬのがいいわ / 藤井風
2. 夜に駆ける / YOASOBI
3. The Rumbling / SiM
4. 廻廻奇譚 / Eve
5. 紅蓮華 / LiSA
6. 残響散歌 / Aimer
7. Tokyo Drift(Fast & Furious) – From “The Fast And The Furious: Tokyo Drift” Soundtrack / Teriyaki Boyz
8. 悪魔の子 / ヒグチアイ
9. Black Catcher / ビッケブランカ
10. unravel / TK from 凛として時雨
1. YOASOBI
2. Eve
3. 久石譲
4. LiSA
5. 澤野弘之
6. Aimer
7. Nigo
8. ONE OK ROCK
9. Ado
10. SiM
 まず大きなトピックとして挙げられるのが、藤井風「死ぬのがいいわ」が「海外で最も再生された国内アーティストの楽曲」ランキング1位になったことだろう。数年間このランキングをチェックしてきたが、これまでは基本的にはアニメ主題歌がランキング上位に並ぶのが常だった。今年も「The Rumbling」と「悪魔の子」は『進撃の巨人』、「廻廻奇譚」は『呪術廻戦』、「紅蓮華」と「残響散歌」は『鬼滅の刃』と、昨今の人気アニメの主題歌がグローバルに支持を獲得している状況が見て取れる。そんな中、アジアで生まれたTikTokのバズをきっかけに世界中に広まっていった「死ぬのがいいわ」の“現象”は、2022年の特筆すべきトピックと言っていいだろう。結果的にこの曲はSpotifyのバイラルチャートの対象74地域すべてでランクインを果たし、23の国と地域で1位を獲得。11月には国内アーティストとして初めて月間リスナー数1000万人を突破した。藤井風のアーティストとしてのポテンシャルを考えれば、この先のさらなる広がりも期待させられる。
 「海外で最も再生された日本のアーティスト」ランキング1位は2年連続でYOASOBIが獲得。「夜に駆ける」も「海外で最も再生された国内アーティストの楽曲」ランキング2位となった。「怪物」(『BEASTARS』)などアニメ主題歌も手掛けているYOASOBIだが、そういった曲ではなくノンタイアップのデビュー曲が上位にランクインしていることも興味深い。おそらく楽曲だけでなくアーティストとしての支持が広がっているということだろう。YOASOBIは12月4日にインドネシア・ジャカルタで開催された88rising主催の音楽フェス『HEAD IN THE CLOUDS』に出演、初の海外ライブを実現させた(12月9日には同フェスのフィリピン・マニラ公演にも出演)。公式のTikTokに投稿されたジャカルタ公演の模様、「たぶん」や「あの夢をなぞって」で大合唱が巻き起こっているその光景も衝撃的なものだった。
#YOASOBI #たぶん #tabun #HITCJAKARTA
♬ たぶん – YOASOBI

#YOASOBI #あの夢をなぞって #HITCJAKARTA #88rising
♬ あの夢をなぞって – YOASOBI

 藤井風のワールドワイドなブレイク、そしてYOASOBIの88rising主催フェスでの熱狂は、J-POPを代表するアーティストがアジア圏の文化的な連帯と共に世界に存在感を広げている2020年代の新しい状況を象徴する出来事と言えるのではないだろうか。
1.バッド・バニー
2.テイラー・スウィフト
3.ドレイク
4.ザ・ウィークエンド
5.BTS
1.As It Was/ハリー・スタイルズ
2.Heat Waves/Glass Animals
3.STAY (with Justin Bieber)/ザ・キッド・ラロイ
4.Me Porto Bonito/バッド・バニー
5.Tití Me Preguntó/バッド・バニー
1.Un Verano Sin Ti/バッド・バニー
2.Harry’s House/ハリー・スタイルズ
3.SOUR/オリヴィア・ロドリゴ
4.=/エド・シーラン
5.Planet Her/ドージャ・キャット
 一方、グローバルなランキングを見ると、まず語るべきはプエルトリコ出身のラッパー/シンガー、バッド・バニーの圧倒的な人気だろう。「世界で最も再生されたアーティスト」の1位を3年連続で獲得し、今年5月にリリースされた3rdアルバム『Un Verano Sin Ti』も「世界で最も再生されたアルバム」1位となり2冠を達成。世界のトップスターとしての揺るぎない存在感を示した。2010年代後半から数年にかけてラテンポップがグローバルで盛り上がってきていることの背景には、中南米の音楽市場がストリーミングサービスの定着を経て大きく成長していること、レゲトンとトラップが象徴するようにラテンポップとアメリカのラップやポップミュージックの潮流が接近していること、スペイン語圏と英語圏の音楽市場の壁がなくなってきたことなど、産業においても文化においても構造的な背景がある。そのことを踏まえても驚くべき結果だ。
 そして「世界で最も再生された楽曲」1位はハリー・スタイルズ「As It Was」。『Harry’s House』も「世界で最も再生されたアルバム」で2位となった。旧来のファン層だけでなく幅広い音楽リスナーから支持を集め、世界的なスーパースターとしての人気と作品の評価を両立させた彼が2022年の音楽シーンの“顔”となったことは間違いない。
 興味深いのは、ハリー・スタイルズ(イギリス出身)、Glass Animals(イギリス出身)、ザ・キッド・ラロイ(オーストラリア出身)、バッド・バニーと、「世界で最も再生された楽曲」上位に並ぶ面々にアメリカ本土出身のアーティストがいないこと。もちろんテイラー・スウィフトやドレイクといった北米出身のグローバルなポップスターの人気は健在なのだが、ここ数年で顕著なアメリカのラップやポップミュージックのヒットソングのローカルな“内向き”傾向がこういうところにも反映されているのかもしれない。

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