「推しは“遠い”から近くにいきたい」 SHOWROOM前田裕二が『smash.』で目指す、グローバルコンテンツの可能性(リアルサウンド) – Yahoo!ニュース – Yahoo!ニュース


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前田裕二(写真=鷲尾太郎)
 アイドル産業は国の垣根を越え、グローバルに拡大している。その中で注目されるのが、動画やVR(仮想空間)、AR(拡張現実)、またはNFTなど幅広いオンラインコンテンツを作る新しいデジタルの動きだ。特集「テックとアイドルのシナジー」では、こうしたアイドルとテクノロジーのシナジーについて、アーティストや開発陣への取材を通して、今後の可能性を深掘りしていく。 【写真】インタビューでメモを取る前田裕二  SHOWROOMが展開する『smash.』はスマートフォン向け動画コンテンツの可能性を広げるバーティカルシアターアプリだ。2020年10月にスタートしたアプリは、今年3月にアプリダウンロード数200万を超え、週間アクティブユーザー(WAU)も120万を突破した。  立ち上げ当初からHey! Say! JUMPやBTSなど国内外のアジア圏出身アーティストを起用し、プロ制作のコンテンツを配信している。特徴的な「PICK」機能で動画が拡散され、海外のユーザー数も伸ばしてきた。これまでのコンテンツやプラットフォームと異なる特色を持つ『smash.』、そしてグローバル視点から見るデジタルコンテンツの可能性について、前田裕二社長に話を聞いた。 <「アイドルとの一定の“遠さ”」「1:1で向き合っている感覚」を意識したコンテンツ作り> ――なぜ「バーティカルシアター」という新しい形のメディアを立ち上げたのでしょうか。 前田裕二(以下、前田):いま、世の中にある映像コンテンツにはスマートフォン(スマホ)の縦スクリーンと、テレビの横スクリーンの2つの形があり、さらにユーザーがコンテンツを上げてくる「プラットフォーム型」とプロがコンテンツを作る「メディア型」があります。メディア型の制作は基本的に、横スクリーンのコンテンツを作っているのですが、もしスマホで見ることを前提とした作品をプロが作ったら何が起こるのか、と思ったのが最初のきっかけでした。  2016~17年くらいから、メディア側の人たちがスマホ向けコンテンツを作るムーブメントがちょっとずつ始まって、この変化が気になりました。僕が最初に見たのは、プロの映像監督が作ったnever young beachさんの「お別れの歌」の縦型MVです。 ――コンテンツだけを作って既存プラットフォームに参入するのではなく、プラットフォームから作ったのはなぜですか? 前田:プロ制作のスマホ向けコンテンツが集まる場所が存在しなかったので、無いなら作りたい・挑戦したいと発想したからです。さらに『smash.』は、現在はプロコンテンツが多くの割合を占めるメディアでありながら、今後はより身近な一般コンテンツに触れることができるプラットフォーム性も持っているんです。  ライブ配信アプリの『SHOWROOM』を “メディア型プラットフォーム”と表現することが多いのですが、これが当社サービスをユニークな立ち位置にしていると考えます。『SHOWROOM』は乃木坂46のメンバーがレギュラー配信するなど、トップアーティストが番組を配信するというブランドを確立している一方、そこを目指している一般ユーザーの方々もこぞって配信しています。メディア性で場のブランド価値を高め、ユーザー獲得を実現し、プラットフォーム性で収益性を担保するという構造です。 ――『smash.』のコンテンツはアイドル関連のものが多いようですが、アプリのユーザー層はどういった人が多いのでしょう。 前田:ターゲット層は若年女性層に振り切っています。女性と男性でコンテンツの消費性向に違うところがあると考えていて、女性の場合はアイドルなど対象との一定の“遠さ”、距離感が必要になると考え、意図して作っています。 ――“遠さ”とは? 前田:『smash.』は作品性が紐づいている場で、見る側と見られる側という距離感ができます。また『SHOWROOM』と異なり、出演できる人も限られています。 ――ユーザーはどのように『smash.』を利用しているのでしょうか? 前田:当初は電車移動の一駅分、3分程度の空き時間で見られる想定でしたが、実際はよりプライベートな使い方をされています。例えばとある主婦ユーザーの方は家事が終わって一息というタイミングで、家族はテレビを見る中で、自分は自室に行ってスマホで『smash.』を開く……といった使い方をして癒されていると教えてくださいました。縦型のコンテンツは主観視点で、画面の中の人物と目の前で対峙しているような、一種バーチャルリアリティーに近い没入感があり、集中しやすいんです。 ――『smash.』のコンテンツ制作におけるこだわりを教えてください。 前田:現状は主観視点へのこだわりが強いです。より没入できるコンテンツとしてVR(仮想現実)が挙げられますが、まだやはり、ハードを体につけることへの抵抗が大きいと感じます。例えば女性がお昼休みに大きなヘッドセットをつけて、VRを楽しむというのは、メイクや髪型が乱れる観点でも、ちょっとイメージしにくいですよね。そういったデバイスを使わず、スマホでも同じような体験ができるんじゃないか、ということを試したのが『smash.』です。アプリを開いたら没入して、アーティストと1:1で向き合っている感覚になれるということにこだわっています。  僕らは“コンテンツを見にいく場”を作ろうとしていたんですが、「アーティストのこの子が見たい」という“人を見にいく場”になったと感じています。なので今はジャンル問わず、誰かが見たいと思う人、という“人軸”でコンテンツを広げていっています。モノよりヒトという戦略軸です。 <成長を支えた「PICK」機能とスターコンテンツ> ――コンテンツに並んで特徴的なのが「PICK」機能ですが、どのように利用するのでしょう。 前田:「PICK」は画面を文字通り「つまむ」ことで、コンテンツの気に入った場面を切り取り拡散できる機能なのです。コンテンツ制作では監督やディレクターとお話して、ユーザーの皆様がついPICKしたくなるようなシーンを演出できるように細かい点にこだわっています。今後もファンの皆様がニヤッとできるような瞬間をたくさん作っていきたいです。 ――PICKされやすいコンテンツは? 前田:同じ“ファン”でも、熱狂度の高いファンが多いアーティストの方が「PICK」は増えます。また「PICK」は同時にコメントを投稿できるのも特徴で、その意味ではコンテンツ内にツッコミどころがあるというのも大事な要素です。アプリにはユーザーの「PICK」を集めたタイムラインがあり、ほかのユーザーはスタンプで反応できます。またユーザーが同時視聴を楽しめる「シアターポッド」という機能もあり、共通の趣味で繋がって関係性を作っていく事もできます。自分一人で孤独に応援しているというより、誰かと一緒に応援している感覚を味わえる場にもしたいと考えていて、今後はさらに深くユーザーの皆様同士で自然と交流できる機能を追加していく予定です。 ――「PICK」機能は動作もユニークですが、なぜこの形に? 前田:その動作が「空いていた」からです。拡大・縮小であの指の形を使う事はあっても、「つまむ」という動作は他になかったと思います。特にスマホでは習慣化するような直感に訴えかけるジェスチャーを押さえることがサービスの強みになると思っていて、PICKを開発しました。「このアプリではこの動作をする」というものがあると、無意識に記憶に残るものだと思います。 ――提供開始から1年半弱で200万ダウンロード、120万WAUを達成しましたが、ここまでの成長要因をどう捉えていますか。 前田:一つには絞れないですが、コンテンツのパワーはやはり大きかったです。BTSをはじめ強力なK-POPアーティストに参画いただき、日本ではジャニーズやBE:FIRSTなどの人気アーティストに独占コンテンツを提供していただきました。ただし単に出演だけではアクティブユーザーの獲得と継続利用には繋がらないため、UI/UXに合った動画作りができるコンテンツ制作体制や、翌週更新を楽しみにしてもらえる企画作りも成長要因だと考えます。いまではコンテンツ更新が遅れると「生きる楽しみがなくなる」と話してくれるファンの方もいて、こういう風に、まだ未熟な我々のサービスを温かく愛でてくださるユーザーの皆様に、いかに恩返ししていけるか、と考えて運営しています。 ――アジアで活躍するアーティストが出演したことによって、海外ユーザー数も伸びたのですね。 前田:BTSなどグローバルアーティストとの協業では、韓国やアメリカなどのCMを一切打っていない地域からの流入もかなりありました。スマホに特化したプロの作品が集まるメディアは世界を見ても例がない。『smash.』はむしろ海外で大きなチャンスがあると思っているので、虎視眈々とチャンスを見極めてグローバルに攻めていきます。VR体験のような没入感は言語を超えると思っているので、そこは仮説通りだったとは思います。「PICK」のつまむ動作もユニバーサルなジェスチャー。より海外の方も使いやすいようにできるとは思っている、進化の途中ですね。 ――海外進出にあたっては、どのような地域を狙っていくのでしょうか? 前田:まずは日本で地位を確立して、その後に海外ではアジア圏から広げていきたいと考えています。BTSも一国ずつ丁寧にアジア全域で支持が積み重なって、そこで地熱を作り、次第にアメリカにも火種を移していったという見方があると思いますが、まさにそのモデルを踏襲します。我々日本のコンテンツプレイヤーにとって、アジアのエンタメ市場はこれからどんどん面白くなっていくと思います。 <日本とアジアのエンタメ市場をどう見る?> ――前田さんは現在のアジアのエンタメ市場をどう捉えていますか? 前田:K-POP、C-POPの人気が出てきて、それらに日本が押されているという見方が強いですが、そこに良質な悔しさもありますし、変えていきたいと思います。やはりプラットフォームないしメディア『smash.』としてアジアで戦うというより、コンテンツフックで市場を取りに行かないと勝てないと思います。アジアで受けるヒットコンテンツの創出ですね。 ――「コンテンツフックでアジアに出て行く」というのはどういうイメージですか? 前田:たとえば「Weverse」(HYBE傘下のアーティストファン向けアプリ)は世界中にユーザーがいますが、BTSをはじめとしたHYBEのアーティストがアプリを使っていたことをきっかけに、グローバルに広がりを持ちました。Weverseというアプリだけが存在していて、K-POPアーティストがそこにいなければ、このサービスが世界で普及する過程でもっと苦労したはずです。『smash.』の場合も、アジアで支持されるコンテンツを日本で作るというのが最重要です。みなさんがよくご指摘するように、韓国コンテンツは初めから完全にグローバルを意識している。日本で全英語詞のトップアーティストは多くないですが、BTSは世界でヒットを出していく際に全て英語の歌詞を狙って歌っていますよね。歌詞は数多くある要素の一つに過ぎませんが、『smash.』もまず国内での収益性を高める中で、しっかりグローバル視点のコンテンツを作っていこうと考えています。 ――グローバル視点のコンテンツを『smash.』ではどう作るのでしょうか。 前田:たとえばHYBE LABELS JAPANのグローバルボーイグループのオーディション番組「&AUDITION – The Howling -」(7月開始)に先駆け、番組に出演するメンバーのオリジナルコンテンツを独占配信しました。アーティストがデビューするまでの過程を見せるドキュメンタリーをお見せするのですが、そうやって僕らの中にオーディション番組やリアリティショーの制作経験を蓄積し、今度は我々が独自に新規IPを生み出していきます。これを海外に向けても展開するのが、繰り返しですが長期の戦略視座です。 ――日本のエンタメがグローバルコンテンツになるために必要なことは? 前田:単純に売り上げの足のはやさだけ考えれば、海外のJ-POP好きファンに向けたコンテンツを作るほうがいい。しかしBTSのように、本当の意味でグローバルアーティストになるためには相当なリーチ力が必要で、別の戦略をとらねばならないと思います。日本の多くのコンテンツ戦略は後者のグローバルマス狙いではなく、「JPOP好き」など特定のコミュニティーで指示を得る “コミュニティーマス”戦略を自然ととってししまっていると思います。コミュニティーマスだと1つのIPあたり、大きくても約100億円くらいの売り上げでとどまるケースが多く、真にグローバルに通用するコンテンツを作る上では、その5倍、10倍以上を目指して戦略を切り替えねばならないのだと思います。『smash.』でも自分たちが持っているIPには、ニッチコミュニティ戦略だけではなく、マスに届くマーケ戦略を紐づけて戦っていきます。 ――マスになるだけでなく、その過程も重要ということでしょうか。 前田:演出の仕方によって全ての過程が重要なコンテンツになります。0からコミュニティーマスになる過程、コミュニティマスが本当のマスになる過程、ゆくゆく人気コンテンツになった時に特に「過程」は本当に大きな価値を持つので、これら全て映像でおさえておく事が重要だと思います。NiziUが生まれたサバイバル番組「NiziProject」や、BE:FIRSTのオーディション番組「THE FIRST」がまさにそれですよね。さらに、まだ人気がこれからだ、という時にもうまく過程を切り取って見せることで、目標に向けて悩み苦しむ、同じ人間だなぁという近さの感覚だけではなく、遠さが演出できるのもポイントです。オーディション番組に出ている候補者は、近いようで、自分の人生とはまた別のドラマを生きている遠い存在と感じられるはずです。 ――この“遠さ”がファンを生むと。 前田:まさに。たとえばジュノンボーイコンテストも、「ジュノンボーイ候補者」の肩書きや、合格までの過程が描かれる瞬間、そこに一定の遠さやブランドが生じる。特に男性コンテンツにおいては重要だと思いますが、初っ端からしっかりコンテンツで遠さを演出してブランドを形成する事を軽視してはならないと思います。「隠れているから知りたい」、「遠いから近づきたい」のですから。 ――一方で、ファンからすると、推しのことはなんでも知りたいような……。 前田:あるファンの方のインタビューを伺っていた時に、「推しの好きなラーメンが醤油なのか、しょうゆなのか豚骨なのか塩なのかをずっと友達と話している」と教えてくださって。確かに、「塩です」と答えが出たら、想像や妄想を楽しめないのかなと学びました。隠れているからミステリアスで惹かれることってあるのかもしれないです。  一方で、仰るとおり演者はファンに感謝もありますし、ファンにお礼を伝えたい、という観点で、つい身近に降りていってしまうもの。例えばツイートや配信を増やしたり、SNSでいいねしたりコメントを返したり、ということですね。それによって更にファンから反応がもらえるし、ファンも増えたようにも感じるので、一種の中毒性すらあると思います。しかし実際には遠さと近さのバランスを保つことが極めて重要で、継続的に多くの方に愛されるコンテンツたるためには、近づける・遠ざけるというのを交互に行わねばなりません。良い意味で遠ざける上で重要なのはオーディション番組やドキュメンタリーなどプロの手が一定かかったコンテンツやシステムであり、我々もそこにノウハウを更に蓄積して、もっと多くの人々の生活の中に、癒しや笑顔を作っていきたいと思っています。
臼井杏奈
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