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ライター 丸山瑠璃
編集・ 竹内 菜奈
ラグジュアリーブランドが韓国のK-POPアーティストや俳優をアンバサダーに起用するケースが増えている。ここでは、アンバサダーの仕事やブランドが広告塔の起用に力を入れる理由について触れながら、ブランドの“顔”を務めている著名人たちを紹介する。
アンバサダーの役目は現在多岐にわたる。広告ビジュアルに登場するだけでなく、雑誌の撮影や空港ファッション、ステージ、レッドカーペットなどでブランドのアイテムを着用するほか、フロントローやイベントを訪れたり、ときにはモデルとしてランウエイに登場したりしている。さらに、EXO(エクソ)のKAI(カイ)と「グッチ(GUCCI)」や、BLACKPINK(ブラックピンク)のLISA(リサ)と「M・A・C」のように協業したコレクションを発売することも最近は増えた。ブランドの顔であるアンバサダーとコラボコレクションを作るとなると、よりブランドと近いアイデンティティやセンスを持った人物の起用が大切になってくる。
ブランドが影響力のあるスターを起用するのは、アイテムをアンバサダーとしてエスクルーシブで着用してもらうだけでなく、圧倒的な知名度とファンの熱量に押し上げられて、より認知度の拡大を期待できるからだ。ファンは若年層が多く、ブランドアイテムの購入はまだできないかもしれないが、将来に備えてファーストタッチポイントを作ることが重要なのだろう。
また、話題やトレンドが日々めまぐるしく替わるSNSにおいても、K-POP・韓流スターの影響力が重視される。SNSでは、いいねやコメントなど、より多くのエンゲージメントを集めた投稿がユーザーのフィードに現れるアルゴリズムの採用が増えつつある。その中で爆発的なエンゲージメントを叩き出すK-POP・韓流スター関連の投稿は、ファンだけでなく、アンバサダーやブランドに将来的に興味を抱く人たちにもリーチできるのだ。また契約内容にもよるが、影響力のあるタレントをブランドアンバサダーに起用すると、競合ブランドがアンバサダーに起用できなくなり、スターを囲い込む動きが激しくなっているのも理由の一つだろう。
ここからは、各ブランドのアンバサダーたちをそのプロフィールと共に紹介する。
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K-POP界に“ガールクラッシュ”というジャンルを確立したBLACKPINKは、そのスタイルへの注目度が高く、メンバー全員が異なるブランドのアンバサダーとして活動している。ラップ担当のJENNIE(ジェニー)は、韓国生まれ。9〜14歳のときにニュージーランドに留学後、15歳で韓国に帰国しYGエンターテインメントの練習生になった。事務所の先輩、G-DRAGON(ジードラゴン)による2012年のシングル「That XX」のミュージックビデオに出演したことを機に注目を浴び、6年の練習生期間を経てデビュー。それから数年で「シャネル」のアンバサダーに就任した。空港ファッションや私服、ステージの衣装で同ブランドのアイテムを多く着用したり、ショーのフロントローに駆けつけたり、SNSで話題の的となっている。コロナ禍で渡仏できなくなった際には、世界のアンバサダーとともにショーのティーザー映像に登場した。21年にはスキーをテーマにした“ココネージュ(Coco Neige)”のキャンペーンに出演。
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タイ出身のLISAは、子どもの頃からダンスを習っており、14歳のときにYGエンターテインメントがタイで開催したオーディションに合格して渡韓した。5年の練習生期間を経て、BLACKPINKのメインダンサーとしてデビュー。LISAはファッション、ジュエリー、ビューティのジャンルでそれぞれブランドのアンバサダーを務めている。「セリーヌ」との関係性が深くなったのは18年ごろから。エディ・スリマン(Hedi Slimane)が同ブランドで初めて手掛けたバッグ“セーズ(16)”を、レディー・ガガ(Lady Gaga)やアンジェリーナ・ジョリー(Angelina Jolie)らと並んで初めて手にした一人に選ばれた。その後「セリーヌ」のショーを鑑賞した際は大きな話題となり、20年にグローバルアンバサダーに就任。私服や空港ファッションで多く「セリーヌ」のアイテムを着用しているほか、同ブランドのキャンペーンやランウエイモデルとして登場している。ジュエリーでは「ブルガリ」の韓国のアンバサダーを20年から務めており、イベントなどに来場するたびに大きな反響を呼んでいる。ビューティにおいても、「M・A・C」のグローバルアンバサダーに同年就任しており、21年11月にコラボコレクションを発売した際にはロゴからパッケージ、製品名まで彼女自身が手掛けた。
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YGエンターテインメント随一の歌唱力を持ち、BLACKPINKのメインボーカルを務めるROSE(ロゼ)はニュージーランド生まれ。8歳で家族とオーストラリアに移住し、父の勧めでYGエンターテインメントがシドニーで行ったオーディションに合格して渡韓した。練習生時代から持ち前の歌唱力でG-DRAGONの曲「Without You」に参加するなどで活躍し、4年の練習生期間を経てデビュー。「サンローラン」とは、19年9月や20年2月にパリで行われたショーに来場するなどで関係性を深め、20年にグローバルアンバサダーに就任した。ジュエリー分野では、「ティファニー」のグローバルアンバサダーに21年4月に選ばれた。“ティファニー ハードウェア”のキャンペーンや、ブランド主催のイベントにも参加している。
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韓国で生まれ育ったJISOO(ジス)は17年にYGエンターテインメントのオーディションを受け、同事務所の練習生になった。BLACKPINKでサブボーカルとビジュアル担当している彼女は“女優顔”と称されることも多く、練習生時代からその美貌を生かし、CMやミュージックビデオに出演していた。「ディオール」とは、韓国でビューティアンバサダーを務めるなど以前から関係はあり、21年にファッション&ビューティのグローバルアンバサダーに就任。私服や空港ファッションで多く同ブランドのアイテムを着用しているほか、ショーにも駆けつけている。22-23年秋冬シーズンのパリ・ファッション・ウイーク(パリコレ)では、同イベントに関するSNS投稿でトップのメディアインパクトバリューを生み出した。アニャ・テイラー・ジョイ(Anya Taylor-Joy)らとともにキャンペーンにも登場している。ジュエリー分野では、22年から「カルティエ」アンバサダーに就任し、BLACKPINKのスタイル全方面における注目度の高さがうかがえる。さらに、21年にはディズニー+(Disney Plus)のドラマ「雪降花:snowdrop」にヒロインとして出演し、女優としての才能を披露した。
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13年にRM、SUGA(シュガ)、JIN(ジン)、J-HOPE(ジェイホープ)、JIMIN(ジミン)、V、JUNG KOOK(ジュングク)の7人で結成されたBTS(防弾少年団)は、メンバーが自ら作詞作曲、ダンスの振り付け、ミュージックビデオの構成などを行っている実力派グループだ。グラミー賞(Grammys)でのノミネートやパフォーマンスをはじめ、K-POPというジャンルを超えて世界を舞台に活躍している。BTSはユニセフとのパートナーシップや寄付、国連総会での演説、バイデン米大統領との面会など社会的メッセージの発信力が極めて高い。また彼らを支えるファン、通称“アーミー(ARMY)”の社会問題への関心も高く、音楽やパフォーマンスに留まらない社会的影響力を持っている。「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」とは、グラミー賞のレッドカーペットなどで同ブランドを着用したほか、2021-22年秋冬メンズ・コレクション発表前の告知映像に登場。21年4月にアンバサダーに就任した。また21-22年秋冬メンズ・コレクションのスピンオフショーに全員がモデルとして出演。その特別映像は公開から2日間で450万回以上再生された。22年6月にはグループとしての活動を一時休止し、個人での成長にフォーカスすることが発表されている。
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EXOのメインダンサーを務めるKAIは、小学生の頃からジャズダンスやバレエに励んでいたという。「グッチ」が韓国版「ヴォーグ(VOGUE)」「GQ」と共同制作した映像で、両親が幼くしてダンスに夢中になるKAIの夢を全面的にサポートしてくれたことを明かしている。14歳でSMエンターテインメントに所属。5年間の練習生期間を経て韓国を中心に活動するEXO-KおよびEXOのメンバーとしてデビュー。また19年からはSMエンターテインメントのボーイズグループから人気のメンバーを集めたSuperMの一人としても活躍している。18年ごろからミラノで行われた「グッチ」のショーを訪れた後、19年にグローバルアンバサダーに就任。21年3月には、KAIが愛してやまないというテディベアをモチーフにした「グッチ」とのコラボコレクションを発売し、アンバサダーとの新しい協業の先例となった。12月には広告ビジュアルにも登場している。ビューティ分野では、「ボビイ ブラウン」のアジア地域における初のブランドミューズとして21年3月に選ばれた。
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aespa(エスパ)は韓国出身のウィンター(WINTER)、カリナ(KARINA)、中国出身のニンニン(NING NING)、日本出身のジゼル(GISELLE)の4人からなるグループで、20年にSMエンターテインメントからデビューした。韓国の大手事務所の一つであるSMエンターテインメントから6年ぶりにデビューするガールズグループとして期待されており、メディアへの露出からわずか4カ月で「ジバンシィ」のブランドアンバサダーに選ばれた。グループの世界観の作り込みもレベルが高く、仮想世界のもう一人の自我であるアバター、“アイ”が各メンバーに用意されているという近未来的なコンセプトで、ミュージックビデオなどもCGを多く取り入れた演出が多い。一方で、そうした現実離れした設定にも負けないほど、メンバー全員がボーカル、ビジュアル、ラップ、ダンスの全方位に強い実力を備え、世界最大級のフェス「コーチェラ(Coachella)」にも出演している。
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K-POPの存在感を世界的に押し上げた王者、BIGBANG(ビッグバン)のリーダーであるG-DRAGONは、「シャネル」と長年にわたって深い関係性を築いている。「シャネル」のアイテムをもともと愛用していたこともあり、14年ごろから同ブランドのショーをたびたび訪れていた。今では韓国スターがショー会場を訪れることが一般的になり、その宣伝効果も話題になっているが、G-DRAGONが先駆的存在といっても過言ではない。彼はそのカリスマ性とスタイルで多くのトレンドを生み出し、当時は今ほど寛容でなかった男性のメイクや、ウィメンズウエアの着用、「シャネル」のアイコンでもあるパールをいち早く身に着けるなど、男性のファッションの可能性を広げることに貢献。また、両者の友好関係が現在も継続していることにも注目だ。G-DRAGONは18年から兵役のため芸能界を離れたが、カムバックしてからも同ブランドのショーを訪れ、ティーザーにも出演している。両者の関係性の深さは多くのブランドやスターが憧れとしているところだろう。
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チャン・ウォニョン(Jang Wonyoung)は、日韓共同サバイバルオーディション番組「プロデュース48(PRODUCE 48、通称プデュ48)」で最終順位1位に輝き、IZ*ONE(アイズワン)のメンバーとしてデビュー。期限つきの活動期間が設定されていたIZ*ONEの活動は21年に終了したが、所属事務所スターシップエンターテインメントから、元IZ*ONEのアン・ユジン(An YuJin)らとともに22年にIVE(アイヴ)の一員になった。弱冠17歳ながら身長173cm、10頭身というスタイルとビジュアルでファンを魅了している。ファッション分野では21年から「ミュウミュウ(MIU MIU)」のアンバサダーに就任。私服でも同ブランドを多く着用しているほか、22年春夏コレクションのティーザー映像にも登場している。ビューティ分野では「イニスフリー(INNISFREE)」のアンバサダーを21年から務めている。
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ネットフリックス(NETFLIX)のドラマ「イカゲーム(Squid Game)」にカン・セビョク役(067番)として登場し、ブレイクしたチョン・ホヨン(HoYeon Jung)は、実はモデル出身。韓国で次世代トップモデルの称号を競うリアリティー番組「韓国のネクストトップモデル(Korea’s Next Top Model)」のシーズン2と4に出演し、シーズン4では2位に輝いた。16年に「ルイ・ヴィトン」17年春夏コレクションでショーのオープニングを務め、世界レベルのモデルとして活躍するようになる。「イカゲーム」では同作が演技初挑戦ながら、生死をかけたサバイバルゲームという極限状態を演じ切った。家族の再会のために命がけでゲームに挑んだ役柄は視聴者から大きな共感を集め、ホヨンのインスタグラムのフォロワーは約40万から約190万に急増。21年にモデル時代から関係が深かった「ルイ・ヴィトン」のアンバサダーに就任。22年3月に行われた2022-23年秋冬コレクションではモデルとしてショーのトップバッターを飾った。
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