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TWICE 『Celebrate』
2022年7月、メンバー全員が所属事務所との契約更新を行なったことが発表されたTWICE。2015年のデビュー以来、韓国国内はもちろん日本をはじめ世界中の人々の心を捉え、K-POPシーンを代表するビッググループに成長した彼女たち一人ひとりの魅力を改めて捉えたい。本稿では、グループの“顔”にしてリードボーカルを務めるメンバー、ナヨンについて取り上げる。 【画像】全員揃っての再契約となったTWICE ナヨンの持つ魅力は、今年6月に彼女がソリストとして発表した楽曲「POP!」のタイトルに表されている。「POP!」と弾けるような爽快さ。ポジティブなエネルギー。躍動感。ワクワク感。そして“軽やかさ”。ナヨンの表現には軽やかさがあり、私たちのしがらみをほどいて、身や心を軽やかにする。 「POP!」のダンスはアイドルのみならず多くの人々によって盛んにコピーされ、TikTok上でバイラル化した。しかし実際に踊ってみると分かることだが、同曲の振付は誰しもがやすやすと真似できるほど容易ではない。忙しなく、手数も多く、リズムも複雑だ。それでも彼女が踊っているのを見ているとそのような印象を受けず、自分でもできるのではないか、むしろやってみたいと思わされるのだ。こうした、実際は複雑で込み入ったものをやさしく、シンプルに、愛らしく、親しみやすいものに変え、みんなのものとして大衆の心へ届けられることが、ナヨンというポップスターの持つ魔法である。 技巧より魅力の印象が先立つ、ナヨンの表現。それは、いち歌手として彼女が貫いている姿勢から来るものなのかもしれない。2019年12月、ナヨンはONCE（TWICEファンの呼称）へのクリスマスプレゼントとして「Santa Tell Me」（原曲歌手はアリアナ・グランデ）の歌唱動画を公開した。「Santa Tell Me」は彼女が練習生時代から歌っていた曲で、TWICEのデビューメンバーを選抜するオーディション番組でも披露していた。そんなゆかりの深い同曲について、彼女は「この曲は評価されている気分になるのであまり好きじゃないんです。上手く歌わないといけないという重圧を感じるから」と打ち明けながらも、「ONCEに聴かせてあげる前は、この曲と仲良くなかった。でも、こうして今回で私にとっていい記憶に変わった気がして、とても感謝しているんです」と話していた（※1）。 彼女にとって歌とは“歌い手と受け手の中間にあるもの”で、評価を受け手に一任するでもなく、歌い手が一方的に語りかけるでもなく、きっかりその中間に位置してこそ歌と「仲良く」なれると考えているのではないだろうか。このような発想を持つ表現者というのは、あまり珍しくはない。しかしナヨンが特異なポップスターであるゆえんは、例えそれがどんなテーマやコンセプトの楽曲であっても、彼女とオーディエンスからしてちょうど等しい距離にあるものとして歌い、受け手にもそう感じさせることができるというところにある。 ディスプレイの前にいる無数の視聴者、東京ドームの5万人の観衆、その一人ひとりと対話するように、彼女は歌う。いつだって必ず相手の居場所を探し出しながら、語りかけるとともに耳を傾けるようにして歌う。その精神とスター性は、ステージ上にいる彼女だけでなく、ステージの下でパフォーマンスを鑑賞しているオーディエンスにもスポットライトを当て、輝きをもたらす不思議な力を持つ。 だからこそ、TWICEの楽曲「ONE IN A MILLION」でこんなフレーズを歌いながら、コンサート会場を大きく見渡している彼女の姿が強く胸を打つのだろう。 〈그대는 masterpiece／있는 그대로도 완벽한걸요／One in a million／믿어요 그댄 특별한걸요（あなたはマスターピース／ありのままで完璧だということ／One in a million 信じて、あなたは特別だということ）〉 ※1：https://youtu.be/LG_dTjivZx8
菅原史稀
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