ロンドンで「韓流」展開幕(若月美奈) – 繊研新聞

2022/10/04 06:00 更新
ヴィクトリア&アルバート博物館(V&A)で韓流展「Hallyu! The Korean Wave」が始まった。韓国のポップカルチャーを紹介する初めての大規模な展覧会であることはもちろん、世界最大級の美術工芸博物館として知られるこの博物館で開催されているということが興味深い。
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19年の「着物展」や現在同時開催されている「アフリカファッション展」、「アレキサンダー・マックイーン」や「ディオール」の展覧会など数多くの衣装展、服以外の美術工芸の特別展を開催している同博物館は、作品を見せることが主眼。もちろん、作品を通じて文化を紹介することがその根底にあることは大前提だが、文化や社会現象に着目した「マンガ展」を開催する大英博物館などとは一線を画している。「不思議の国のアリス展」のような無形芸術もあるが、初版本を展示するなど、過去から現在へと繋がる歴史的な背景を紹介するものだった。
1990年代後半に始まった韓流は、アジアではすでに20年以上の歴史があるとはいうものの、ヨーロッパでは現代の社会現象であり、見どころは映画やドラマ、音楽で博物館に並ぶ有形のクリエイションとは違う。V&Aがこの展覧会の開催に踏み切ったということ自体が、韓流の世界的な影響力と共にポップカルチャーにおける芸術としての認識の向上を印象付ける。

前置きはさておいて、展覧会の内容を紹介したい。

会場は大きく4つのセクションに分かれているが、最初は「瓦礫からスマートフォンまで」。第二次世界大戦後、さまざまな歴史を経て2000年までに主要な文化大国へと変貌を遂げた韓国の歴史を簡単に紹介した序章のようなセクションだ。
そしていよいよ本題の韓流の紹介が始まる。まずは「ドラマと映画」。

日本の韓流ブームの火付け役となったテレビドラマ「冬のソナタ」の懐かしい映像から、オスカー受賞映画「パラサイト 半地下の家族」の半地下のバスルームの再現、ネットフリックスシリーズ「イカゲーム」の衣装がさまざまな映画やドラマの映像とともに紹介されている。

3つ目は「K-POPとファンダム」。ビッグバン、NCT、ブラックピンクのミュージックビデオと共に、さまざまなアイドルたちの衣装が展示されている。
熱狂的なファン現象を紹介する一環として、インタラクティブなK-POPダンスのチャレンジコーナーもある。大きな画面を前に映像を見ながらPSY(サイ) の「ザットザット」のダンスを真似ると、反対の部屋から見るその画面には、正面を向いて堂々とダンスを踊っている様子が映るというもの。
そして最後は「ファッションとビューティー」。ドラマへの登場やアイドルたちの推薦によって韓国のビューティー産業がどのように世界的知名度を拡大していったのかを探り、パッケージデザインの進化やLEDライトマスクといった最新テクノロジーが展示されている。
 ファッションのコーナーには、伝統的な韓服、今の時代に合わせてデザインされた韓服風のファッション、新進デザイナーの服が並ぶ。K-POPのアイドルたちが着用した、韓服を今の時代に蘇らせた衣装を展示し、伝統がどのように受け継がれているかを丁寧に紹介している。
日本の着物同様に、斬新な着こなしに対して伝統を無視しているという否定的な声もあるそうだが、前世紀末には結婚式など特別な場でしか着られなくなってしまった韓服が今再び、若い人たちにとってより身近な存在になっている。
デザイナーの作品としては、長年パリコレクションで活躍した「イ・ヨンヒ」やセントラル・セントマーチン美術大学を卒業したばかりの「パク・ソヒ」のドレスなどが展示されている。もっとも、この展覧会を訪れた前日、ロンドン・コレクションにショーデビューした「ビムウィエ」がないのは少々残念だった。
といった展覧会なのだが、やはり服がたくさんあるという印象を受ける。映画やドラマ、アイドルを紹介する展示としては衣装は欠かせない。ファッションのセクション同様に他のセクションでも服が見どころになっている。
もっとも、それ以上に印象に残ったことがある。
展覧会のタイトルである「Hallyu」って何?、に始まり、「Hanbok」などの見慣れない英単語が、「K-Drama」「K-Fashion」などと混じって使われている。日本人は韓流(かんりゅう)や韓服(かんふく)といった具合に日本語読みするが、英語はあくまで韓国語読みのため、「ハルリュ」、「ハンボク」になるのだ。韓国では「韓」はハンと発音することから、日本でも一部で「はんりゅう」という呼び名も広まっているとはいうがやはり「かんりゅう」が一般的だ。
では、「Hallyu」にはなぜ、「n」がないのか。ハングルで表記した時、「l」の前の「n」は無声音となりハルリュとなる。つまり英語表記したときはそれが脱落するためこの表記になるらしい。
展覧会のファッションのコーナーには「チマチョゴリ」という言葉がほとんどない。「イ・ヨンヒ」の上着をとったスタイルのドレスの説明に登場するくらいだ。ちなみに、「チマチョゴリ」は「チマ」(スカート)と「チョゴリ」(上着)を合わせた言葉だが、「チョゴリ」があのラップフロントのクロップ丈のトップという特定のアイテムを指す名称であるのに対し、「チマ」はスカート全般を指すらしい。
早速、若い韓国人の友人に確認すると、「チマチョゴリ」は韓服の中の1つの女性服であることは知っているが、ほとんどこの言葉は使わないという。すべて「ハンボク」だそうだ。
さらに話が弾み、日本人も大好きな韓国風のお好み焼き「チヂミ」の名称を出すと、「それは釜山の方言で、ソウルではほとんど通じない。」という。韓国では一般的に「ジョン」(チョンに近い発音)や「プチムゲ」と呼ばれているという。釜山がある慶尚道は日本に近く行き来が盛んだったことから、その地域の言葉が日本で定着しているという。
韓流はもちろん、韓国の今をさまざまな角度から改めて考える良い機会となる展覧会だ。23年6月25日まで開催。
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あっと気がつけば、ロンドン在住が人生の半分を超してしまった。もっとも、まだ知らなかった昔ながらの英国、突如登場した新しい英国との出会いに、驚きや共感、失望を繰り返す日々は30ウン年前の来英時と変らない。そんな新米気分の発見をランダムに紹介します。繊研新聞ロンドン通信員
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