土岐麻子が語る充実の現在地。そして20周年を前に独立の道を選んだ理由とは – http://spice.eplus.jp/

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土岐麻子 撮影=SUSIE
──はじめに少し気の早い話題ですが、来年でソロ活動20周年を迎えられます。そこにはどのような思いがありますか。
20周年なので集大成をとか、これまでを振り返った総集編のような活動をしたくなるのかな?と、漠然と思っていたんですけど、いざなってみるとそんなことはなくてですね(笑)。20年もソロでやってきたけれど、まだまだ変化の途中という感じがしています。何かを成し遂げたとか、達成したような気持ちには、もしかしたらこの先30年40年やってもならないのかもしれないなって今は思っていますね。やりたいことがいっぱいあるし、これまでと同じように新しい挑戦をどんどんしてきたいと思っているところなので、20周年でファンの皆さんやリスナーの皆さんにどんな姿を見せるのかを考えた時に、特別なあらたまったことではなく、やりたいことや挑戦したいことに素直になって作った作品や舞台をお見せできればなと思っています。
──キャリアを振り返ったときに、ソロ以降と以前とは、土岐さんの中でははっきり分かれている感覚なんですか?
感覚的には全然違うものですね。Cymbalsをやっていたときはバンドに専念して、“3人でできること”だけを考えていたので。Cymbalsが解散してすぐに出たジャズのスタンダードアルバムでソロデビューみたいな形になったんですけど、そのアルバムを作っているときには解散になると思っていなくて、Cymbalsの活動と並行して全然違うものを、課外活動としてソロで出すのがバランス的に面白いかなと思って始めたものなんです。なので、本当の意味でポップスとしての自分の音楽を考える上でスタートを切ったのは、その後に出した『WEEKEND SHUFFLE』っていうカバーアルバムからかなと。自分の音楽原体験を遡ると、ルーツは山下達郎さんや吉田美奈子さんだなと思うんですけど、その当時はシティポップという言葉は世間的に出回っていなかったと思うんですよね。
──ニューミュージックという括りともどこか違いますしね。
そうそう。だから何て言うんだろうね?と思っていて。サウンドのジャンルでもないじゃないですか。あの時代のあのムードは何だったんだろう?とずっと思っていて、でもたしかにあの頃のムードやミュージシャンのアティチュードに影響を受けているから、そこにフォーカスしていきながら自分のやりたいことを探していこうと思った時に、そういうルーツになった曲たちを中心にカバーした『WEEKEND SHUFFLE』を自己紹介としてソロがスタートした感覚なんですよね。ただ、Cymbalsからだと20年以上、毎年コンスタントに作品を1枚以上をリリースしてきていて──
──そうなんですよね。見返してみてあらためて「多作な方だなぁ」と思いました。
怒涛の20数年(笑)。レーベルとの契約を更新するたびに出すペースは決まるのですが、ありがたいことにずっと契約を更新できていました。それがゆえに毎年新しいアルバムのことを考えながら生きるという感じでした。

──ただそういった中でも、ここ数年は特に、他のアーティストとのお仕事や音楽以外の活動も積極的にされている印象がありました。
そうですね。最近はありがたくも色々な方から、作詞の面でこれまでより多くオファーをいただくようになって。やっぱり必要としてくれているところには赴く意味があるというか、最初は「なんでわたしなんだろう?」と思ったとしても、名前をあげてくれた以上はフィットする何かがあるんだと思って、お受けするという信念でずっと来ています。たとえば、去年BSフジのミステリー作品のナレーションがあって、ご指名だったので喜び勇んで行ったんですね。そうしたら、わたしが普段出している声とは全然違うものを求められて、それがすごい面白かったんですよ。ちょっと低くて淡々とした、おどろおどろしい感じにしてくれって言われて。普段の喋っている声は低いですけど、CMのナレーションとかではわりと明るい感じの声を出していたので、「もっと暗く、もっと暗く」って(笑)。監督はどうしてわたしの声の要素の中にそれをイメージできたんだろうか?っていう、そういう面白さはありますよね。
──たしかに。
あとはV6の井ノ原(快彦)さんのご指名で「PINEAPPLE」っていう曲の作詞をするにあたって、ラップパートがある曲だから、ラップを書いたこともラップをしたこともないのに何故わたしにこの曲を!?って、最初はすごくビックリしたんですけど、でもK-POPを聴いていたしとても興味はあったからすごく嬉しくて。そういう自分でも思ってもみなかったようなところに引っ張っていってもらうようなキッカケが多いので、オファーをいただいた仕事はいつもワクワクしながら引き受けてます。
──では、ここ最近になってそういう仕事を増やそうと動いたというより、声のかかるケース自体が増えてきたと。
増えてきたんですよね、不思議なことに……何故なんですかね?(笑)
──それこそキャリアの積み重ねによって、いろんな世代やジャンルの方がそれぞれ土岐さんのイメージを持っていらっしゃるのではないかと。
やっぱり20年やっているとそういうことになるんでしょうかね。
──でもそれによって新たに得ることも多いですよね?
はい。たとえば最近ですとDeep Sea Diving Clubとのコラボでフィーチャリングのお話をいただいて、もともとは作詞と歌唱というオファーだったのですが、わたしが歌うパートに関しては「メロディメイクもやってみますか?」という提案があり。これまでわたしはほとんど作曲をしてこなかったので、「え、どうしよう」と思いましたが、最近はトラックとメロディを分担して作る方達も多いからか、トラックメイカーから「土岐さんなりにアレンジしてメロディを変えてみてください」と言われることが増えて。そう言ってくれるならちょっとやってみようかなと(笑)。そして、作ってみたらすごくしっくりきたというか。喜んでもいただけたし、自分の中からこういうメロディが出てくるんだなということに驚いたりもして。​
──なるほど。
そういうメロディメイクというか作曲に関しても、勉強したいなと思いながら20年来たんですけど、期せずしてそうやって一緒に作業をする方からチャンスをいただくようなことも増えてきて、面白いですよね。今までは作曲というと、コードとメロディの両方を作るというイメージを自分の中で固めてたんですけど、先にトラックがあるところにメロディをフェイクするように作っていけると、スキャットしている気持ちで浮かんでくるので、この作り方はけっこう自分にあっているなと。

──即興で歌を当てていく感覚に近いんですね。
はい。あと、Shin Sakiuraさんとも自分のアルバム(『Twilight』/2021年)でご一緒したんですけど、Sakiuraさんにも同じように2番のメロディを任せてもらったり。なので、年下の世代の方から学ぶ機会があったというか、いろんな世代の作り方があるし、それによって土岐麻子というシンガーの見え方も見方も変わってくるから、幅広い世代の人と一緒にやるのは楽しいなって思いますね。
──その2組にしても世代としてはかなり離れてますもんね。
そうですよね。Cymbalsのことも知ってくださってたんですけど、絶対にリアルタイムではないから(笑)。最近そういう20代くらいの方から「Cymbals知ってます」とか「コピーしてました」とかいうふうに声をかけてもらうこともあるのですが、サブスクやYouTubeの恩恵なのか、あんまり時代とか関係なくランダムに、自分の好きな音楽を取り入れているのかなと思います。
──その一方で、もっと大御所のような方とも一緒にお仕事をされているという、結構特殊な立ち位置だと思うんですよね。土岐さんは。
そうですよね。若いときは上の世代の方が仕事に誘ってくれていたんですけど、だんだん自分が中堅になってくると、逆に自分が年下の世代の人を誘って一緒に音楽をやる機会も増えてきて。でも、最近はまたシティポップというカテゴリーのものが多く求められているので、そういった括りで、シティポップの系譜の大先輩と一緒にお仕事をさせていただく機会もすごく増えた気がします。本当にありがたいですね。
──先日はSKYEともライブで共演されてましたね。
すごかったですね。圧倒されましたけど、フェスやイベントでは自分が一番年長という現場も増えてきてたので、久々に大先輩の現場に行ってフレッシュな……若者の気持ちになれたというか(笑)。緊張もしますけど、そういう刺激も贅沢ですよね。
──シティポップの系譜でいうオリジネイターの方々とも、いまリバイバルを牽引している世代とも関われている立場というのは貴重だと思います。
たしかに。世代的にちょうど中間というのもあるかもしれないけど、いま振り返ってみると、そうやって年1以上のペースで作品を出してきたりとか、そういうことのおかげかなと。もうちょっと2~3年とかブランクが空くと一気に……なんというか、棚の上に置かれる感じというか(笑)。そういうのはあるかもしれない。

>>次ページへ 「もうちょっと自分にチャンスを与えたいなという気持ち」
風間大洋
1982年生/埼玉県出身/O型/SPICE音楽ジャンル編集長/ライター/たまに撮影/ 学生時代にTMGEやBJCの洗礼を受けてロックの沼に嵌り、UKロックを縦断したのち雑食化した動物好きの滝マニア。一時は会社員として過ごしていたものの見事に道を踏み外し、無事戦線から離脱。音楽雑誌の編集を経て今に至る。モットーは格好良いものの格好良さをちゃんと伝えること。実はフリーランスであることはあまり知られていない。
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