海外で再発見される90年代日本語ラップ 「人間発電所」は次の「プラスティック・ラブ」になりえるか? – KAI-YOU

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人間発電所/BUDDHA BRAND(画像はAmazonより)
クリエイター
この記事の制作者たち
LiT
執筆
和田拓也
編集
海外発の「90年代日本語ラップ」プレイリストが続々と100万回再生を突破している。その視聴者層を占めるのは日本国外が圧倒的だ。この現象はLo-fiヒップホップやシティポップ・ブームの余波なのか?それとも何か新たな魅力が発掘されているのか?海外の日本語ラップ・プレイリスト投稿者たちへの取材をもとに、この不可思議な現象に迫る。
執筆:LIT_JAPAN 編集:和田拓也

目次

  1. 「日本語でラップするのは無理がある」
  2. 90年代日本語ラップは、誰に再発見されているか
  3. Spotify以降の潮流に加わる、新たなコンテクスト
  4. 90年代日本語ラップが評価される2つの文脈
  5. ニッチな「海外からの反応」の域から脱しているのか

「刀で敵を斬り殺す時に掛かるジャパニーズ・ラップ」。アニメ『サムライチャンプルー』から影響を受けたであろう、ある種のオリエンタリズムをかきたてるのには十分過ぎるタイトルだ。きっと斬撃音や琴の音がサンプリングされたビートが主体のトラップ・プレイリストに違いない。
しかし、再生回数は100万回を超えている。サムネイルをタップしてみる。ヒップホップ警察の出動だ。
―BUDDHA BRAND 『人間発電所』』
何百回も口ずさんで来た日本語ラップ・クラシックのイントロがいきなり流れてきた。即座にトラックリストを確認すると、BUDDHA BRANDMICROPHONE PAGERECDTOHJIN BATTLE ROYALEまで入っている。しかも、近年のLo-fi Hiphopの流行で再度注目を浴びている日本人プロデューサーnujabesの楽曲が1曲も見当たらない。
コメント欄は見渡す限り英語のみで、サジェスト欄には100万回再生を超える、また別の日本語ラップのミックス「90’s Hip Hop Classics – 日本語ラップ (Japanese Rap) 」が表示されている。こちらも投稿者は日本国外の人のようだ。
再投稿版。キングギドラの『大掃除』が著作権申し立てされたため、2020年6月に投稿され、100万再生を突破した動画から同曲だけが抜かれている。
一体何が起きているのか。そんな驚きと混乱とともに、ある懐かしい呪いの言葉が脳裏をよぎる。
「日本語でラップするのは無理がある」
いま思えば、これも新たな音楽ジャンルが輸入される際に起こる議論の典型に過ぎないのだが、 80年代から2000年代にかけて、日本語ラップという未成熟なシーンのプレイヤー及びリスナーのコンプレックスを刺激してきた。
2000年代半ば、当時国内で破格のスキルを誇っていたSEEDAでさえ「言葉の壁は高いが フロウはその上を越すことは可能さ」と、逆説的に日本語でフロウすることの難しさを指摘していたし、アメリカ人の友人たちがイチオシの日本語ラップのミックスを「なんかラップがカクカクしてる」と評する度に、筆者も唇を噛みしめていたのだ。
2010年代前半にKOHHがトラップを輸入したことで、そんなコンプレックスも解消され始めたし、ある時代以降のプレイヤーやリスナーは特に意識をすることもなくなっただろう。これは日本国内に限った話ではないし、トラップ以降は世界全体のヒップホップ・シーンにおける言葉の壁は格段に低くなった。
そんな時代になぜ、90年代の日本語ラップが海外から注目を浴びているのだろう?
このプレイリストを一体誰が投稿し、どの様なリスナー層が視聴しているのか。この現象に迫るべく、筆者はこれらの動画の投稿者たちに連絡を取った。
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