INTERVIEW / 藤原ヒロシ – Spincoaster(スピンコースター)

藤原ヒロシが語る、日々のアップデートとノスタルジーの誘惑
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ファッション・デザイナーとして、また裏原系ブーム期のカリスマとして、80年代からの日本のストリートカルチャーを牽引してきた藤原ヒロシ。音楽家としては90年代よりソロ作品を発表し、以降はコンスタントに作品を発表。近年はSSWスタイルでの制作を行うほか、サカナクション主宰レーベル〈NF Records〉へ所属するなど、常に自身をアップデートし続けてきた。
今回は最新アルバム『SLUMBERS 2』、またリミックスを手がけたMANON「WORLD’S END feat.dodo (LUV STEP REMIX)」の話題を中心に、ストリート・カルチャーの系譜にまつわる種々のトピックを引き合いに出しつつ語ってもらった。
Interview & Text by ヒラギノ游ゴ
Assistant:aoi kaida
Photo by Takazumi Hosaka




――今作はアルバムのために楽曲を制作したというより、前作のリリース以降にできた曲をパッケージしたという感じでしょうか。
藤原:そうですね。作り方もそのときどきで、ひとりで楽器を触っている中でできた曲もあれば、他の人と一緒に作っていくこともあります。あと、ここ数年は月に1回くらいのペースで海外に出ていたので、その行き先で感じたことを曲にしているものもあります。ベルリンの壁を訪れたときのことを曲にした「BERLIN」、スイスのモンテべリタっていうエリアにインスパイアされて作った「PASTORAL ANARCHY」あたりがそうですね。

――曲名にある“アナーキー”は、藤原さんが10代の頃に大きな影響を受けたパンク・カルチャーにおいて重要なキーワードですね。
藤原:そうですね、アナーキーという言葉を上手に伝えられたらいいなというのはいつも思っています。それに、モンテべリタって街は元々アナーキストたちがコミューンを形成していたところなんですよ。20世紀初頭かな、産業革命に嫌気が差したアナーキストたちが移り住んだ街で、ユングやヘルマン・ヘッセをはじめ、有名な作家や詩人、思想家がいたところです。今もバウハウス建築のホテルやミュージアムが遺っているんですよ。でも、あんまり知られていないんですよね。僕もスイスの友達に連れていってもらって知りました。

――藤原さんといえば、世界各地にそういった好事家というか、カルチャーや芸術に精通するハイブロウなお友達がいらっしゃるイメージです。
藤原:そうですね。そういう友達はいろんなところにいますね。僕はファッション・フリーメイソンって呼んでるんですけど(笑)。
――でもきっと、本当にフリーメイソン並に何かを動かせる方々ですよね……。
藤原:いやいや、そんなことないですよ。そんな力はないけど、遊びにいくとご飯を奢ってくれるくらいの経済力はある人たちです(笑)。急に行っても泊めてくれるし。
――今回のアルバムの映像を手がけた制作会社、ODDJOBともお付き合いは長いのでしょうか。
藤原:そうですね、ODDJOBのシンゴくん(SHINGOSTAR/ODDJOB代表)は2〜30年前から知ってる仲です。彼は元ホフディランで、いわゆるLittle Bird Nationにいた人。スペースシャワーTVでレギュラー番組をやっていたときにシンゴくんも関係者としていて、その頃は毎週会ってましたね。
※ODDJOB:『水曜日のダウンタウン』オープニング映像をはじめとして、TV番組やCF、グラフィックデザイン、音楽など、多種多様なメディアを手掛ける制作・マネジメント会社。
※Little Bird Nation(リトル・バード・ネイション):スチャダラパーを中心として、TOKYO No.1 SOUL SETなどのグループや音楽仲間で構成されたヒップホップ・コレクティブ。

――今作はなんといっても全曲に映像が付いているところが特異な部分かと思うのですが、どういった経緯で「全曲作ろう」となったのでしょうか。
藤原:全曲映像をつけるというのもシンゴくんのアイデアです。元はアルバム制作中にたまたまシンゴくんに会ったのが始まりで、今彼が映像を作る会社をやってるって言うんで、ビデオを作りましょうという流れになり。映像一つひとつのコンセプトから彼らが決めてくれました。

――Little Bird Nationというと、90年代の都心のストリート・カルチャーに憧れのある人間からしたら、伝説の存在という感じです。
藤原:みんなどうしようもないダメ人間なんだけど(笑)。でもシンゴくんは本当にピュアな人ですよ。素直というか正直というか、ひたすら好きなものに没頭している人。そこは安心できるというか。今はシンゴくん含め、その辺のみんなとのLINEグループがあって、いつも色々な音楽を教えてくれます。
――「TERRITORY」のMVにはイラストレーションでKYNEさんが入っています。そういった人選も含めODDJOBさんのディレクションで?
藤原:KYNEくんには僕からお願いしました。女の子を主体にした画が欲しいねって構想はあって、そこからイラストの女の子でもいいんじゃないか? となって、じゃあKYNEくんだと。それで直接相談させてもらいました。
――KYNEさんは2010年後半にストリートの文脈から現れて、今まさにどんどん認知を広げていっているアーティスト。そんな最前線の人が、90年代ストリート・カルチャーを牽引した藤原さんと組むというのは、何か胸が熱くなるコラボレーションです。
藤原:ありがとうございます。KYNEくんの場合は僕の友達が仲良くて、福岡に行くことがあれば会いに行ってました。最近は作品作りに集中してるのかな? 外からのお仕事はあまり受けていないと聞いたけど、一緒にやってくれました。今回は最高のタイミングでできたのかなと思います。



――90年代にはファッションから聴く音楽、観る映画と、若者がこぞって藤原さんのライフ・スタイルを真似たと言います。そして藤原さんは今も新しいカルチャーを摂取し続けていると思うのですが、そういった情報収集、インプットの作業に当たることは、意識的に取り組んでいるのでしょうか。それともごく自然に? お話している限りの印象だと、後者かとは思いますが。
藤原:そうですね、敢えてすごくチェックするって感じではないですね。普段の暮らしの中で常におもしろいものを探してる感覚があるような気はしています。それに、さっきのLINEグループもそうですけど、周りの人からどんどんおもしろいものが入ってきて、勝手にアップデートされていってるところはありますね。インスタなんか見てると、友だち経由で流れてくるものの中に、素直にいいなって思えるものがありますから。それがたまたま若い人の作ったものだったりすることもあるというだけで、あまり世代というのも意識してません。
――インプットしたものをアウトプットすることは必ずしも必要じゃないのでしょうか。それともインプットしたからにはアウトプットしていきたい?
藤原:アウトプットはしていきたいんだと思います。こういったインタビューやラジオみたいなアウトプットの場もあるし、アウトプットすることによって自分の中の感覚のコントロールもできるというか。ラジオで古い曲ばっかりかけていてもおもしろくないし、最新のものばかりでもヒットチャートをなぞる感じになる。上手く混ぜて相乗効果を出せるように、アウトプットしながら調整していきたいって感じですかね。昔の音楽ばっかり聴いている人には新しい発見があって、古い音楽を聴かない人には昔の音楽をディグるきっかけとなるような、そういう見せ方をしたい。
――新しいものを日々摂取してアップデートしていこうという意欲はあっても、ノスタルジーの誘惑はやはりとても甘美なものかと思うのですが。
藤原:いやあ難しいですね。やっぱりね、歳をとるとノスタルジーが甘すぎて。YouTubeでも気付いたら古いのばっかり観ていて、マズいマズいと思いながらも抜け出せない時もあります。ノスタルジーって、とても魅惑的なんですよね。一度強く揺さぶられたものだから安心できるし、そのおもしろさを共有できる人もたくさんいる。ただ、その時間はなるべく早く終わらせないと次にいけないんですけど。
――藤原さんは10代のうちに海外に出て、帰国後も都心のクラブ・カルチャーを最前線でリードしてきた。人一倍濃密にノスタルジーを喚起する思い出があるかと思います。
藤原:もちろんノスタルジーから得られるものもあるんですけど、そうですね、「それよりもっと美味しくて甘いものがあるんじゃないか」という思いで切り替えて、あまり浸り過ぎないようにしてると思います。あと、これはよく思うんですけど、自分が進化しないとノスタルジーって増えないんですよね。
――というと?
藤原:今の僕が何十年か前に聴いた音楽にノスタルジーを感じているんだから、今聴いているものだって10年後くらいにはノスタルジーを感じられるものになるわけですよね。つまり、同じものを聴き続けていたら、ノスタルジーを感じられるものが増えていかないわけじゃないですか。
――ああ……なるほど、同じ音楽ばかり聴いていると、人生をトータルで見たときにノスタルジーを感じられるものが少なくまとまってしまうんじゃないかと。
藤原:時代時代で共通の話題があった方が楽しいですし。それに、そうなると年齢は関係なくなるんですよね。今40歳だろうが20歳だろうが、2020年のカルチャーをしっかり楽しんでいれば、等しく「2020年を生きていた人」同士、何十年か後に一緒に思い出話ができる。
というのもあって、僕は年下でも何かおもしろいことに詳しい人のことは先輩や先生みたいな感じで見ています。「教えて教えて」っていけるのは、自分でも得な性分だなって思います。



――今回のアルバム全体の指針になったといえるような曲はありますか?
藤原:「TERRITORY」ですね。ああいうディスコっぽいというか、シティポップっぽいコード進行の曲が流行っていますけど、僕自身そういうことをやっている若いアーティストもとても好きで、よく聴いてます。そんな中で、自分が若い頃にDJでよくかけていたディスコ・クラシックみたいなもののイメージを合わせてみたらどうだろうと思って。同じディスコっぽいニュアンスのものでも、現行のクラブでかかっているものと、僕が若い頃に聴いたものとでは醸し出す雰囲気、ムードが違う。その2つのムードをかけ合わせたらおもしろいんじゃないかというアイディアが生まれたんです。
と言っても、最初にディスコっぽいものが流行った頃の自分の感覚を再現してやろうとは思っていなくて、あくまでも今の感覚を大事にしています。そのためにも、ここ数年ずっと楽曲制作やレコーディングを手伝ってくれているシュンスケくん(渡辺シュンスケ/Schroeder-Headz)や、その他にも一緒にやっている人たちの意見を聞いて、自分の中にある感覚に固執し過ぎないようにやっています。
――歌詞の面で、世の中の情勢を反映することはどれくらい意識されていますか?
藤原:そうですね、社会で何かが起こったら、それを皮肉って表現したいなっていう思いは常にあります。直接的に「あの件のことを歌ってるんだな」と誰にでもわかるようなものではないようなアプローチですね。全員に楽しんでもらえるような作り方はしていないので。あらゆることに関してですけど、僕は「自分が楽しもう」という気持ちでやっていて、「みんなを楽しませよう」というのはあまり意識していません。ちょっとハードル高いけど、そこを超えたら楽しい、くらいのものがいいのかなと。
例えば、今回の収録曲の中には風営法によるクラブ摘発の件からインスパイアされた「みんな大好きみんな愛してる」という曲があって、一連のことを受けて僕が感じたことを<陽のあたる場所を準備されても、明るい場所では、もう、踊れない。>という歌詞にしています。

――また、アルバムとは別でMANONさんの「WORLD’S END feat.dodo」のリミックスも手がけられました。こちらはどういった経緯で?
藤原:ODDJOBがMVを作ってくれることになった流れもあり、MANONさんの楽曲をODDJOB所属のYUPPAさんがプロデュースしているという経緯もあり、リミックスのオファーを頂きました。3月くらいでしたかね、ちょうど新型コロナウイルスの影響でスタジオにいけるかいけないかみたいな感じの時期でした。

――MANONさんのことは前からご存知だったのでしょうか?
藤原:実はお話を頂くまでは全然知らなくて。でも、調べてみたら僕の大好きなKero Kero Bonitoとコラボしていたりして、興味を持ちました。
――曲の印象はいかがでしたか?
藤原:結構オーセンティックな感じのコード進行で、僕のよく使うものとも近いんです。なので、その進行のままいくこともできたんですけど、ちょうど「TERRITORY」でディスコ的なアプローチをしていたので、このリミックスも共通するテイストでやってみようと。(「TERRITORY」と)聴き比べてみると、不思議な統一感があるかもしれません。
制作に関してはMANONさんのチームから特に指示もなく、僕に任せてくれたので、とても自由にやれました。MANONさんとは一度僕の撮影現場に遊びに来てくれてお会いしたのですが、「お母さんがMAJOR FORCEのファンなんです」って言われてジェネレーション・ギャップを感じました(笑)。
※MAJOR FORCE:藤原ヒロシ、中西俊夫、工藤昌之、高木完、屋敷豪太が主宰した音楽レーベル。スチャダラパー、藤原ヒロシと高木完によるタイニー・パンクス、ECDなどを世に送り出し、世界中のディガーたちのコレクターズ・アイテムとなった作品を続々とリリース。国内外のヒップホップ・シーンに多大な影響を与えた。



――藤原さんのお仕事は、音楽もファッションも同様に、“コラボ”で作り上げていくものが大きな割合を占めているかと思います。そんな“コラボ”が生業ともいえる藤原さんに、誰かと何かを一緒に作っていく時に大切にしていることを教えて頂きたいです。
藤原:人の意見を尊重する。自分がそうでもないと思っても、その前に自分がその人を信じたのなら、その人を信じて任せる。自分の意見を押し付け過ぎない。という感じでしょうか。
――任せた結果、自分の思うものと全然違うという結果になることもあるのではと思います。
藤原:あります。でも、それを先方が望んでるというのはまず大事にしたいですね。確かにそれ“だけ”だと困るので、「代わりにこういう要素を」というのを交換条件で提案させてもらうことが多いです。そうやってバランスが保てればいいかなと思います。
例えば「TERRITORY」のベースはOKAMOTO’Sのハマ(・オカモト)くんなんですけど、「ここのフレーズはこう弾いてほしい」とお願いして、引き換えに「そこから先は自由にやってください」というお願いの仕方をしました。僕としてもハマくんっぽさは欲しいですから。
――そういった考え方の土台になった体験は?
藤原:それはやっぱり、18歳でロンドンにいったことだと思います。中高とすごい縦社会だったのが、ロンドンに行ったら先輩後輩の概念が全くなかったので。みんなでものごとを対等に共有できる文化・感覚は、一番影響を受けたところですね。それがまさに僕が望んでいたものだったんです。

――以前、誰かとコラボする上では「上手く僕のせいにしてほしい」というスタンスで臨んでいるという旨のことを仰っていたのが印象的でした。
藤原:僕もそうするんでね(笑)。逃げ道を作るというか。例えばですけど、「TERRITORY」でベースがイマイチって言われたら「そうなんだよね! ハマくんがさ!」って言うこともできるわけで(笑)。で、ベースがよかったって言われたら「流石ハマくんだよね、僕が選んだんだよ」って(笑)。
それくらいの方がいいと思うんですよ。逃げ道を作れないほどガチガチにやると、受け身がとれないというか。一方で、言い訳の余地を完全に排してもの作りに立ち向かっている山口(一郎)くんみたいな人のことは本当に尊敬します。心からすごいなって思いますね。
――山口さんの逃げ道を作らない姿勢を感じた出来事などはありますか?
藤原:あるとき山口くんからデモ音源が送られてきて、その時点では曲だけで歌詞がなかったんですね。で、「今からこれの歌詞書きます」って言ってから完成までものすごい時間がかかった。「忘れられないよ」だったと思うんですけど、結局2年くらいかかったんじゃないかな? あとは、僕も山口くんにデモを送ることがあるんですけど、「おもしろいけどもっと抽象的な方がいいかもしれませんね」とか、しっかりダメ出しをくれます。
――今回のアルバムにも収録されている「新宝島」は、節回しの部分で大幅にアレンジされていると思うんですが、その点はどのようなやりとりがあったんでしょうか。
藤原:そこは柔軟に許容してくれましたね。さっき言ったこととも繋がりますけど、僕からしたらサカナクションもOKAMOTO’Sも音楽に関しては先輩で。一緒にやる時は、後輩のわがままを聞いてもらってるような感じなんですよ。後輩みたいな感覚で付き合えるのは僕としてはとても心地よくてうれしいんです。



――最近注目しているミュージシャンを教えて下さい。
藤原:ここ半年くらいはタイなどアジア圏のシティ・ポップっぽい人たちをよく聴いてますね。
――Phum Viphurit(プムヴィプリット)とか?
藤原:あとNumcha、YONLAPAなんかですね。ユーミンや(山下)達郎っぽい感じで。2組ともユーミンに「こんなのあるよ」って聴かせたんですよ。
――ユーミンさんご本人に?
藤原:そうです。あとはBeabadoobeeなんかも聴いてますね。


――ありがとうございます。では、今後音楽の分野でやっていきたいと考えていることがあれば教えてください。
藤原:そうですね、僕は“再利用”みたいなことが好きなんですよ。ひとつのリズム・トラックを2度3度使って別の曲を作るとか。過去にも何度かやってるんです。『HIROSHI FUJIWARA IN DUB CONFERENCE』というレコードの「NATURAL BORN DUB」というシングルで使ったトラックを、ちょっとコード変えてUAに歌ってもらったりとか。

――再利用が好きなのは、何か理由が?
藤原:“もったいない”とは違うんです。どちらかというと“何かが変化していくのがおもしろい”という感覚。元々ヒップホップのトラックの元ネタを探すのも好きだし。“これがこうなるのか”っていう変化していく様子におもしろさを感じる。昔のレゲエもそんな感じで、同じトラックで別の人が歌うことも普通でしたし、そういうのを当時からずっとカッコいいなと思っていたんです。
――ファッションのお仕事(〈sacai〉と〈Fragment design〉のコラボレーション)でも以前、“わざとブートレグっぽく作る”ということをされてましたよね。“再利用”と近いスタンスを感じます。
藤原:既存のルールの中でギリギリのところをいくのが好きですね。つくづく思うのは、「さあ、なんでもやっていいですよ」って言われるとなんかできないんですよね。ちょっと例えが適切じゃないかも知れないけど、仮に風営法が見直されて夜中まで踊れるようになった途端につまらなくなる“何か”もあるんじゃないかと思っていて。あと、ダンスが中学で必修になりましたけど、ストリートで仲間と一緒にダンスするのとは全然意味合いが違ってくるよなと。



――今、“ストリート”という言葉が出たので、改めて今、藤原さんに“ストリート”について伺いたいです。ネットが普及してから、以前ほどストリートというものが果たす機能の比重が下がってきているかと思うのですが、どのように考えていらっしゃいますか。
藤原:そうですね、今はストリートのおもしろい存在であり続けるというか、アンダーグラウンドのいい位置で収まるのがすごく難しいですよね。ストリートだけでなく、YouTubeからもInstagramからも有名になれるので、ネガティブに言い換えると、おもしろいものを持ってる人を見逃してくれないというか。本人の意思に反して有名になることもあるから、自分がアンダーグラウンドでいたいなら、制御する努力をしないといけない。あんまりその辺についてこだわりがなくて、売れたら売れたで嬉しいって人も増えたと思うんですけど。
でも、同様に今は“オルタナティブ”というスタンスの位置取りも、ものすごく難しいと思います。ヒップホップがチャート上位を軒並み占めてる昨今、もはやCarpentersみたいなのが一番オルタナティブなんじゃないか? みたいな。
――なるほど。
藤原:あと、最近はトラックが今っぽいローファイなものだったり、海外の最新のラップ・シーンの影響を咀嚼したものだったりというのはよく耳に入るようになったけど、そこに乗ってる歌詞が思いっきりJ-POPというか、恋愛のことばっかりだったりして、ちぐはぐな印象を受けることが多いですね。ファッションの面でも、曲がせっかくブラック・ミュージックのテイストなのに、着てる服は全然関係ない感じだったりする。
――カルチャーの文脈が感じられない、といった感じでしょうか?
藤原:そうですね、文脈がわからないというか、全部がJ-POPというよくわからない括りに飲み込まれちゃっているような。でも、ある意味ではこういうものがあるからこそ僕らは違うことができるわけだから、反面教師として僕らがおもしろいと思うことを続けていけば、より自分たちを際立たせるために利用することもできるかなとは思います。
……とはいえ、難しいのはわかります。海外のクラブでかかってるのと同じ音楽を持ってきて、日本のクラブでかけることは簡単だけど、同じ雰囲気、ムードまでは持ってこられないんだな、というのは、アメリカから帰ってきた20代前半の頃に学んだことです。向こうで聴いたときにはめっちゃカッコいいと思ったんだけど、同じものを日本でかけても全然カッコよくないってことはよくありました。
――おっしゃるように、仮にカルチャーの文脈をきちんと掴んで、自分の表現に落とし込むところまではできたとしても、その次の段階、オーディエンスの反応や受け入れられ方、取り巻く環境のムードのような部分まで再現するのはさらに難しいことなんじゃないかと思います。
藤原:僕はその点については、同じようなものを作るのは不可能なので、同じ素材を使ってはいるけど、あくまで別物として作り上げるというスタンスです。同じカジノでもラスベガスとマカオでは全然違いますから。カジノと言えばベガスでしょ、と言われたって、ベガスじゃない場所でベガスを再現しようとしてもベガス以上のものにはならない。マカオならマカオなりの楽しさを作り上げるのがいいのかなと思います。海外から取り入れたものを日本で完全再現、というのを目指しちゃうと、たぶんそれって「ドイツ村」みたいなことになると思うんですよね。自分なりにこうかなと思うカッコよさを作っていくしかない。まぁでも、全部含めておもしろいですけどね。

【リリース情報】
『slumbers 2』初回盤
『slumbers 2』通常盤
*Deluxe Edition:2,500セット完全限定生産予定、Tシャツ付き
*CD2はDeluxe Editionのみ付属
[Digital] 01. TIME MACHINE #2
02. KAREN
03. BERLIN
04. TERRITORY(SHORT)
05. みんな大好き みんな愛してる
06. SPRINGLIKE
07. WORK THROUGH THE NIGHT
08. MAIとPAUL
09. PASTORAL ANARCHY
10. 新宝島
11. KAREN(HOME DEMO)
12. WALKING MEN (MOLMOL DUB_UNEXPECTED VER.)
『slumbers 2』スペシャル・サイト
■藤原ヒロシ:Instagram
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