【辺境音楽マニア】知られざるデスメタラーの職業事情について – ロケットニュース24

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デスメタルやブラックメタルなどのエクストリームミュージシャンはどんなに売れたとしても、それだけで食べていくのは至難の業。かなり有名なバンドでも、昼間は別の仕事をしている。
ツアーやマーチャンダイズで稼ぐためにはロックスターのように振る舞わないといけないし、ある程度一般層に対しても受け入れられるよう音楽的に妥協する必要も出てくる。結果的にデスメタルというよりラウドロックみたいになってしまうのが常だ。また最終的にはバンド活動だけで稼げるようになっても、駆け出しの頃は別の仕事に就いているのがほとんど。今回はそんなデスメタラーな職業事情をお伝えしよう。
どんなに売れたところで、一生働かなくてもいいほど稼げるデスメタラーはほぼいないと言っていい。結局、引退後は別の仕事に就かざるを得ないのである。デスメタラーがどんなにステージの上でおっかない格好をしながら「悪魔だ、地獄だ、戦争だ」と叫んでいたとしても、普段は別の姿で労働に勤しんでいるのだ。
さて、そのステージでの恐ろしい姿と、日常の勤労者のギャップに萌えてしまうファンは多く、しばしば海外の掲示板では話題になるテーマである。そんなデスメタラーが普段どんな仕事に就いている(た)のか、特に印象深い例を紹介しよう。
ウォーベスチャルブラックメタルの元祖のひとつ、ブラジルの「Sarcofago」のリーダー「Wagner Antichrist」は、経済学の博士号を取得した後、ミナス・ジェライス連邦大学の経済学の教授に着任した。
このバンドは後に「コープスペイント」と呼ばれるブラックメタルの白塗りメイクを始めたことで知られており、画像を検索するとWagner氏もとてつもなく危ない格好をしている。一方、大学教授の姿の写真はビシッとスーツで決めており、素敵な笑顔でほほえんでいて、全く別人だ。
デスメタルバンドとしては世界で最も有名と言っていい「Cannibal Corpse」のオリジナルギタリスト「Bob Rusay」は、現在ゴルフのインストラクターとして活躍中である。画像で検索すると、髪の毛が後退し腹が出た、人の良いおじさんという感じ。何も知らされなければ、本人が元々超有名デスメタラーとは全く気が付かないだろう。
ケベックの人気ブルータルデスメタル「Cryptopsy」の元カリスマボーカリスト「Lord Worm」は、ESL(第2言語としての英語)の教師である。このバンドは何人ものボーカリストが所属したが、「Lord Worm」を越える者はいないとされ、デスメタルの「ガテラル」スタイルを開発した1人としてリスペクトされている。
ノルウェーのブラックメタル「Darktrone」の「Gylve Fenris Nagell」は、オスロ近郊の街『Oppegaard』の自由党所属代理議員で当選。このニュースは、昨年世界中で話題になったので知っている方も多いだろう。なお、元々バンド活動と共に郵便局で勤めていたそうだ。
「Acheron」「Death」など有名デスメタルバンドでドラムを叩いていた、「Richard Christy」は現在、コメディアンとして人気コメディ番組等に出演して活躍中。元々デスメタル界でもそこそこ知られた存在だったが、現在はTwitterのフォロワーが20万人もいるコメディアンとして有名。
ニューヨークデスメタルのスタイルを築き上げた「Internal Bleeding」のドラマー「Bill Tolley」は、普段消防士として勤務しており、一目置かれていたが、今年の4月に消火活動中に建物の屋根から落下し、死亡してしまった。新曲が発表される直前だったこともあり、全世界のブルータルデスメタラーが悲嘆に暮れた。
なお、同じ日にノルウェーのスラミングデスメタル「Kraanium」のボーカリスト「Martin Funderud」も自殺しており、2つの衝撃が世界を駆け巡った。
スウェーデンのプログレッシヴメタル「Opeth」の元ベーシスト「Johan DeFarfalla」は、学校の校長を務め、現在はキリスト教民主党所属の議員。
スウェデシュデスメタルの元祖のひとつ、「Unleashed」のベースボーカル「Johnny Hedlund」は、投資銀行に勤めるエコノミストである。
カリフォルニアのグラインドコアバンド「The County Medical Examiners」は、メンバー全員が医者及び医療関係者である。なおベースボーカルの「Dr. Guy Radcliffe, MD, PhD」は2007年の時点で63歳だった。このバンドに限って言うと、元々、医療をコンセプトにして売り出しており、「実は裏の顔は医者だった」という訳ではない。
必ずしもデスメタルやブラックメタルと関係あるとは言えないのだが、ニューヨークハードコアのカリスマバンド「Biohazard」のフロントマン「Evan Seinfeld」は、バンドを脱退した後に、ポルノ男優に転身。同氏の名前で画像検索すると、あまりの変態プレイに唖然とさせられる。マッチョでクールなルックスが売りだっただけに、ショックを受けたファンは多い。
……以上、ざっと10人のデスメタラー・ブラックメタラーを紹介した。しかし調査した限り、他にも面白い職務経歴を持つデスメタラーは沢山いた。
極悪打ち込みブルータルデスバンドのメンバーが花屋とか、インダストリアルデスの始祖とされるバンドのメンバーが介護職。悪魔主義で知られるあるバンドのフロントマンが掃除夫。超有名メタルコアバンドのボーカルがおもちゃ屋・トイザらスの店員だったという話等だ。こういった話は元々噂で聞くし、海外のサイトでもよく見かける。
しかしこれらのバンドの情報については、結局のところ本人がインタビューなどで明白に答えていない限り、確証は得られない。敵対するバンドがイメージを貶めるためにデマを流している可能性もあり、断言はできないのである。
また日本のデスメタル・ブラックメタルの場合、企業経営者や大手出版社の編集長。Google・大手通信機器のエンジニア・シンクタンク・都市銀行・共産党の地方議会議員・恋愛コンサルタント・歯科医・プロギャンブラーなど、出世していたり、変わった仕事に就いている人が意外と多くいる。シーンに携わっている人達の間ではよく話題になる。
しかし全世界的に見るとデスメタラーに多いのはタトゥーアーティスト・ウェブデザイナー・カメラマン・スタジオエンジニア・レコードショップ勤務などクリエイティブ職か、解体工・ドライバー・土建業などのガテン系である。
デスメタラー、ブラックメタラーが実際普段どんな仕事をしているのかは、プライベートな事柄でもあり、バンドのプロフィールに掲載される事は稀で、親しくならない限り、あまり直接聞く機会もなかなかない。
それにバンドマンの数だけ仕事があり、他にも変わった職業に就いている人は無数にいるだろう。下世話な興味の持ち方かもしれないが、普段おっかなそうな人達の別の顔が知ることができ、ちょっとホッとしてしまうのも事実だ。
執筆:ハマザキカク
イラスト:Rocketnews24
▼ケベックのブルータルデスメタル「Cryptopsy」のカリスマボーカルLord Wormのインタビュー。確かに理知的な人相をしている。

▼愛猫家でも知られるノルウェーのブラックメタル「Dark Throne」のFenrizが、国営放送のハイキング番組に出たとき。人が良さそう

▼「Internal Bleeding」のドラマーBill Tolleyが亡くなった時のCBSニュース

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