スリップノット初見参、Wackenの最も長い日! WOA2022レポート DAY 2 – Young Guitar

この日も朝から晴れ。雲が多めなので、昨日よりちょっとは暑さが和らぐだろうか? 少なくとも、昨晩はかなり冷え込んだ。明け方には8℃ぐらいまで下がったとか。いや…確かに──何時だったか憶えていないが、寒くて目が覚めて、キャリー・バッグから防寒用のアルミ・シートを引っ張り出したんだった。
ところが、朝8時に起きると、もう日差しがかなり強く、雲の隙間から太陽が顔を覗かせると、ジリジリと暑いぐらい。結局はまた猛暑モードになりそうな予感が…。天気予報では、最高気温21℃とのことだが、きっと体感的にはもっともっと暑いハズ。それでも、雨よりはずっとマシだが。いや──これだけ暑いと、大雨にならない程度に軽く降ってくれた方が助かる。午後に降雨アリという予報もあるから、ザーザー降りにはならないことを祈りつつ、ちょっと期待しておこう。
ところで、今年初めてWOAでは完全キャッシュレス化が採用された。チケットと引き換えるリストバンドにチップが内蔵されていて、そこに随時チャージして支払いする…というシステムだ。チャージはオンラインでも出来るし、会場のあちこちにチャージ・マシーンが設置されていて、そこではカードでも現金でも入金可能。それにより、ドリンク・スタンドでも、フード・ブースでも、Tシャツ&グッズ売り場でも、支払いがよりスムースになって行列緩和にひと役買っていた。WOA22 屋台コーナーWOA22 フード・エリアあと今年は、世界中から集まってくるヴァッケナー達の生命線とも言える(?)ビールにも変化が。これまでWOA会場でビールといえば、ずっとブレーメンのピルスナー:ベックスだったのだが、今年はノルトライン=ヴェストファーレン州の人気ピルスナー:クロンバッハーがオフィシャル・ビールとなっていた。毎日暑いから、きっとその消費量は凄かったろう。ただ、世界的物価高の影響により、メタル・フェスにも値上げの波が押し寄せ、Tシャツの値段が軒並み数割増しになっていて(フェスのオフィシャルTシャツは25ユーロ。バンTは安くて20ユーロ、バンドによっては35ユーロとか40ユーロも)、ビールは1杯4ユーロから4.5ユーロになり、水もコーラも同じ価格で、円安なのもあり、ちょっとお高めな印象に…。
ちなみに会場内のドリンク・スタンドでは、ビールもコーラも基本プラカップ(リユースされるため、注文時に1ユーロのデポジット料金が別途必要)で提供されるが、キャンプ・エリアなどでは缶ビールも販売されており、そのWOAのロゴ入り缶は、お土産用に買っていくオーディエンスが結構いたようだ。飲料メーカーとのコラボは他にもあり、水は日本でもよく知られているゲロルシュタイナーが、WOA仕様のペットボトルを販売。また、缶入りのアップル・ワインもあって、こちらは黒地に赤のデザインがなかなかメタルしていていた…ような?
加えて今年は、“WACKENグミ”も登場。何と、世界最大のグミ・メーカーである地元企業ハリボーとのコラボで、お馴染み熊のキャラクターがメロイック・サインをしているパッケージに、思わず笑みがこぼれてしまう。ハリボーは毎年フェスティヴァル・エリアに販売ブースを出しているが、今年はこのWACKENグミを買い求める観客が大行列を作っていたそうだ。
この日、ダブル・メイン・ステージには全12組が出演。午前11時半スタートで終演は深夜2時半という長丁場に、思わず気合いを入れ直してインフィールドへ向かうも、あまり気合いを入れ過ぎても体力が付いていかないので、ゆったり大雑把に楽しむぐらいの気構えでちょうどイイかもしれない。
FASTERステージにてトップ・バッターを務めたのは、フィンランドのブラインド・チャンネル。ツイン・ヴォーカル体制でDJ担当も擁し、’80年代ヘアー・メタルと’90年代NUメタルをミクスチャーしたような彼等は、’21年“Eurovision”のフィンランド代表だったり。ヘヴィ&ポップなサウンドと、2人のシンガーがアクティヴに動き回るステージングは、朝イチからオーディエンスのエンジンを全開にし、オープナーとして大きな仕事を果たしていたと言えよう。
続いてHARDERステージに立ったのは、地元ドイツ出身のキッシン・ダイナマイト。’80年代HR/HMを現代に甦らせたかの王道路線は、ブラインド・チャンネルに負けず劣らずの勢いがあり、時にフラッシーなプレイも飛び出すツイン・ギターに、軽く数万人の観客が楽し気に揺れる、揺れる…!!
ところが、メイン3番手のカダヴァーからムードが一変。ギミックなしのヘヴィ・ロックを響かせるこの独産トリオが運んできたサイケデリアは、お次の伊産5人組:ラクーナ・コイルの激しくもメランコリックなグルーヴに姿を変え、15時半にFASTERステージへ現れた米産ブルース・ロッカー:クラッチがマッチョな重低グルーヴを吐き出すと、再びヴィンテージな空気感がさらに強まっていく。
いや、ストーナーなノリはここまで。その間、予報通り雨がパラっと降ったが、16時45分にHARDERステージへアット・ザ・ゲイツが登場する頃にはもう止んでしまい、ここからはデス・メタル・ワールドへと突入! 元祖メロデスな名盤『SLAUGHTER OF THE SOUL』(’15年)の全曲再現を敢行したアット・ザ・ゲイツは、ヨナス・スタルハマー(g)の脱退を受け、ザ・ホーンテッド、ウィッチリーのパトリック・ヤンセンをヘルパーに迎えていたが、彼とマーティン・ラーソン(g)のコンビネーションは抜群で、トーマス・リンドバーグ(vo)のスクリームに今ひとつ迫力がなかったのが気になったものの、劇的ツイン・リードが映えまくる激音に居ても立っても居られない…とばかりに、クラウド・サーファーがひっきりなし。2曲目の「Slaughter Of The Soul」で、イントロ・リフから爆走へと移る瞬間、思わずフライング気味に「Go!」と叫んでしまったオーディエンスが続出していたのも、みんな昂ぶりを抑えられなかったからに違いない。
続くFASTERステージのヒポクリシー、HARDERステージのベヒーモスという流れも、何とも言えず強烈。特に後者の、ステージ・セットとメンバーのヴィジュアル、パイロ使用などの特殊効果も含めた邪悪過ぎるトータルな演出は、相変わらず圧倒的と言う他なく、首を振るのも忘れて、ただただ我を忘れて呪詛と冒涜が渦巻くステージを見入るのみだった…という人も少なくなかったろう。
20時45分──FASTERステージでイン・エクストレモの演奏が始まると、またまた空気が一変する。バグパイプやハープといった古楽器を駆使する彼等は、ベルリン出身の6人組。中世音楽とロック/メタルを融合させたそのサウンドは、広義のフォーク・メタル一派と見なすことも出来るかもしれない。ただ、一見キワモノのように見えて、ドイツ本国では幅広いファン層を誇るメジャー・アクトで、’00年代後半からは、アルバムを出せば国内チャートでNo.1というのが当たり前となっている。
元々2人いたバグパイパーの片割れ(ハーディガーディも担当)が去年脱退し(その後、今年初頭に心臓発作で急逝…)、後任を迎えなかったことで演奏面に違和感が?…と心配になるも、それは全くの杞憂に。観客は新旧のレパートリーをこれまでと変わらず楽しみ、腕を振り上げ共に歌い、踊り、大いに叫んでもいた。
そして、イン・エクストレモのショウが盛大な花火と共に終了すると──22時15分、HARDERステージに本日のヘッドライナーが登場。WOA初見参となるスリップノットだ…! WOAにおけるヘッドライナーとは、最後に出番を迎えるバンドではなく、最も美味しい時間に最も長く演奏するバンドを指す。よって、彼等のあとにも数バンドまだ控えており、お楽しみはまだまだ続く…のだが、午前0時を回ると、流石にみんな疲れてきて、飲み過ぎ連中はすっかり酩酊状態となり、飲んでなくても睡魔に襲われたりして、徐々に観客が減っていくから、毎年ちょうど日付が変わる前ぐらいが盛り上がりのピークとなるのだ。
ショウの幕開けを告げるBGMが、「For Those About to Rock (We Salute You)」(AC/DC)から「Get Behind Me Satan And Push」(ビリー・ジョー・スピアーズ)に変わると、この日一番…いや、今年一番の大観衆がメイン・ステージ前で大きくうねり始める。ステージの前には、バンド・ロゴを大きく染め抜いた黒い幕。やがて、「Get Behind〜」のリフレインがつんのめるようにリピートされると、そこへ「Disasterpiece」のイントロが被さってきて、幕がステージ上部に吸い込まれるや、遂に異形なるダーク・カーニヴァルの火蓋が切って落とされた!
彼等のような歴戦のツワモノでも、初WOAにはテンション上がりまくりだったようで、もうのっけからメンバー全員が全開フル・スロットル。観客も1曲目からすっかり騒乱状態に。ジム・ルート&ミック・トムソンのギター・チームは、いずれも激しく首を振りまくりながら激奏。しかし両者とも、ヘヴィ・リフは勿論のこと、ノイジーなバッキング&オブリも切れ味鋭いリード/ソロも同様に安定感抜群で、それでいてライヴならではの躍動感も伴っているのだから、本当に凄まじいとしか言いようがない。フロントマン:コリィ・テイラーがオーディエンスに向かって、何度も何度も「Wackeeeeeen!! Are you with us?!」と叫びまくっていたのも、実に印象的だった。
1. Disasterpiece
2. Wait And Bleed
3. All Out Life
4. Sulfur
5. Before I Forget
6. The Dying Song (Time To Sing)
7. Dead Memories
8. Unsainted
9. The Heretic Anthem
10. Psychosocial
11. Duality
12. Custer
13. Spit It Out
[encore]
14. People = Shit
15. Surfacing
その1時間45分後──とてつもないエネルギーが渦巻いたスリップノットの爆演が幕を閉じると、メイン・ステージ前はすっかり“祭りのあと”状態に。もうこれで満足…とばかりにキャンプサイトへ戻るべく、数万の観客が一斉に大移動を開始するが、言うまでもなく宴はまだ終わらない。一部はHARDERステージから左側へスライドするように、また多くが後方から前へ前へと詰め掛け、今度はFASTERステージの前がどんどん密になっていく。そう、午前0時15分からイン・フレイムスの元メンバー達によるザ・ヘイロー・エフェクトがそこでプレイするのだ。
その時点で、彼等のデビュー・アルバム『DAYS OF THE LOST』はまだ発売前。そのため、もう時間も時間だし、もしかするとあまり集客は望めないのでは…と思っていたら、とんでもなかった…! まぁ、スリップノットの時よりは少なかったものの、それでもその次に多い…と言えるだけのオーディエンスが集まっていたことは疑うべくもない。流石はイン・フレイムス人気が高いドイツ、そしてWOAだけのことはある。
ちなみに、この日もイェスパー・ストロムブラード(g)は不在で、ニクラス・エンゲリンの相棒としてパトリック・ヤンセンがヘルプ起用。夕方にアット・ザ・ゲイツでもプレイした彼は、1日2ステージをコナすこととなったが、全く疲れを見せることなく、リフ&バッキング達人としての役割をしっかり果たし、一部楽曲ではリード・メロディーも任されていた。激しさよりも深みのある楽曲で勝負しているからか、観客の反応はやや大人しめだったものの、恐らくみんな“じっくり噛み締めていた”のだろう。往年のイン・フレイムスを彷彿とさせつつも、より円熟味のあるプレイが光っていた彼等は、ある意味“メロデスのひとつの到達点”と見なすことが出来るかもしれない。
そうして、今年のWOAで最も長い1日もあと1組で終了となるが──その前に、メイン以外を盛り上げたバンドについても触れておこう。例によってあまり沢山は観られなかったが、LOUDERステージではストラトヴァリウス、HEADBANGERSステージではフリーダム・コールとセイタン、W:E:Tステージではロスト・ソサエティ、ルシファー、トリビュレーション、マンター、WACKINGERステージではマスター・オブ・セレモニーとウィンド・ローズを、それぞれ数曲ずつ──多くて4〜5曲──ではあったものの楽しむことが出来た。
その中で特筆したいのは、NWOBHM残党のセイタンだ。’10年代になって本格再始動を遂げた彼等は、以降わりとコンスタントにアルバムも発表。今年4月、復活第4弾となる『EARTH INFERNAL』をリリースしたばかりだが、久々に観た生ステージは予想以上に現役感があり、セットリストには近作からのレパートリーが多く組み込まれていた。スティーヴ・ラムズィー&ラス・ティピンズによるツイン・リードの威力も全く衰えておらず、殊に前者が今も激しくヘッドバンギングしまくりながらギターを掻き鳴らしているのを見て、思わず「(年齢的に)もうちょっと控えめでも良いのでは…?」と心配になったぐらいだ。当然、長年のコンビらしく互いの息はピッタリで、ツイン・ハーモニーやユニゾン・プレイの妙も存分に堪能させてもらった。
サシャ・ピートがエイドリアン・カワン(vo)やフェリックス・ボーンケ(dr)ら、アヴァンタジアの仲間達と組んだマスター・オブ・セレモニーは、スタジオ・プロジェクトとのイメージが強いが──さにあらず。今年春にも彼等は、ドイツを中心に4ヵ国を廻るツアーを行なっており、鍵盤奏者のコーヴィン・バーンも含め、言わば職人集団だからして、演奏もパフォーマンスもしっかりまとまっていて、実に観応えがあった。ただ春の初ツアーにはエイドリアンが参加出来ず、代役としてムーンライト・ヘイズのキアラ・トリカリコが帯同していたそうなので、サシャとしては、今回エイドリアン入りのメンツでプレイ出来たことで、余計に気合いが入っていたのではないだろうか。
他のバンドも、ストラトヴァリウスはまだ発売前の新作『SURVIVE』から表題曲と「Firefly」を披露、“ハッピー・メタル”を標榜するフリーダム・コールは多くの楽曲で大合唱を引き出し、ロスト・ソサエティはすっかり脱スラッシュしてヘアー・メタルへ大接近、ルシファーはニッケ・アンダーソン(dr)加入以降、ラフなロケンロール傾向を強め、トリビュレーションは不変のゴス&ホラー風味を大解放し、共にヴォーカル兼任のギター&ドラムのデュオという変わり種:マンターは原初的ロックのパワーを叩き付け、ウィンド・ローズは完璧なコスプレでメンバー全員がドワーフ戦士に成りきり…と、それぞれ個性豊かに観客を魅了しまくり。この日もWASTELANDステージには行くことが出来なかったが、メイン・ステージ含め各出演バンドのサウンドの幅の広さがハンパなく、メタルがあらゆるロックを呑み込んでしまうWOAの懐の深さを改めて実感することが出来た。
本日のメイン・ステージ最終演奏者も、イイ意味で普通ではない。午前1時半にHARDERステージへ登場したフォイアーシュヴァンツは、まるで中世からタイムスリップしてきたかのような出で立ち(一部サイバーパンクも入ってるか)で、勇壮&牧歌的なフォーク・メタルを聴かせる大所帯バンド(ダンス&パフォーム担当メンバー含む)。日本での知名度はそこそこだが、本国ではアルバムを出せば必ずチャート上位にランク・インする人気アクトで、’21年発表の『MEMENTO MORI』は堂々チャートNo.1を獲得している。
フィドルやハーディガーディ、バグパイプやマンドーラなどが乱舞する楽曲は、その多くがキャッチーで、少なからずユーモアも孕んでいるようだ。ライヴではコスプレを活かした芝居っ気たっぷりな演出が満載で、ドイツ語によるコール&レスポンスも頻発し、オーディエンスは終始ガッツリ熱狂しっ放し。どうしても古楽器メインになりがちなので、ギターの見せ場は決して多くないが、シルクハットがトレードマークのギタリスト:ハンス・プラッツが意外や(?)フラッシーなソロを執ることもあり、ショウを通じてとにかく見せ場がいっぱい。終盤にはゲスト・シンガーにメリッサ・ボニー(アド・インフィニトゥム他)を迎え、中世アレンジによるマノウォーのカヴァー「Warriors Of The World United」が飛び出し、正に呑めや唄えやの華やかな宴は深夜2時半まで盛況に続けられた…!!
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