ヒゲダンにも影響与えたメロデスバンド Children Of Bodom ジャンルの壁を越えて挑んだ、アレキシ・ライホの音楽的功績 – リアルサウンド

 2021年1月4日、あるミュージシャンの訃報が届いた。アレキシ・ライホ、享年41歳。フィンランドのメロディック・デスメタルバンド、Children Of Bodom(チルドレン・オブ・ボドム)のフロントマンである。
 ヘヴィメタルーーとりわけメロディック・デスメタル(通称“メロデス”)を愛聴するリスナーのなかで、Children Of Bodomを知らない人はまずいないだろう。“チルボド”の略称で親しまれ、In Flames、Arch Enemyなどと並ぶメロデスの代表的なバンドとして、北欧はもちろん、日本でも高い人気を誇っている。メロデスとは、従来の荒々しいデスメタルにメロディアスなギターフレーズを組み合わせ、“攻撃的ながらも美しい”という新しい聴感をもたらしたメタルのことで、90年代に一気に活性化した。CarcassやAt The Gates、Dark Tranquillityらが黎明期のバンドで、Children Of Bodomはその少し後、90年代後半〜00年代にかけてメロデスの全盛期を支えたバンドである。
 そして数あるバンドの中でも、まずチルボドからメロデスを聴き始めた人が多いのではないだろうか。アレキシ・ライホはそんなバンドのボーカリスト、ギタリスト、メインソングライターとして活躍し、メロデスというジャンルそのものを牽引したあまりにも大きな存在だった。さらに、ヘヴィメタルの世界を飛び越えて幅広い影響を与えた人物でもあるのだ。本稿では彼の早すぎる死を悼むとともに、生み出された名曲の数々と、偉大なる活動の功績・影響まで振り返っていきたい。
 Children Of Bodomは、フィンランドのウーシマー県エスポーにて、アレキシ・ライホとヤスカ・ラーチカイネンを中心に1993年に結成された(当時はInearthedというバンド名で活動開始)。フィンランドはメタル大国であり、他にも多くのバンドを輩出しているが、ウーシマー県はその中心エリアだ。エスポーはフィンランド湾に面した美しい都市でありながら、首都ヘルシンキに次ぐ国内人口2位を誇り、ノキア本社が置かれているなど、まさに自然と共生しながら経済的発展を遂げてきたフィンランドらしい街である。とはいえ隣接するヘルシンキとエスポーを結ぶメトロが開通して、行き来が容易になったのは2017年のことで、近しいながらも首都とは異なる独自の文化が育っていったのも、エスポーの特徴なのかもしれない。ちなみに、2012年に解散したメロデスバンド、Northerもエスポー出身である。
 北欧シーンの面白いところは、当たり前のようにメタルバンドがチャートのトップにランクインすることだ。自然に根ざし、独創的な音楽を愛する北欧のリスナーたちは、クラシック音楽も教会音楽もヘヴィメタルも同じように楽しむ。メロディック・デスメタルという「美」と「暴」を組み合わせた音楽の誕生は、北欧の嗜好性を考えれば必然だったのかもしれない。アレキシ・ライホも、幼い頃からバイオリンを弾いてクラシック音楽に親しむ傍ら、一方ではスティーヴ・ヴァイを聴いてギターに夢中になるロックキッズでもあったのだ。この二面性がChildren Of Bodomのサウンドに大きく影響することになる。
 音楽性の変遷を辿ろう。Children Of Bodomに改名し、1stアルバム『Something Wild』をリリースしたのが1997年。当時はまだ、手数の多いドラムとシャウトによる荒々しい印象が強く、ブラックメタルとシンフォニックなアレンジを混ぜ合わせたスウェーデンのDissectionあたりを彷彿とさせる作風だった。だが、まだ突き抜け切ってはいないものの、すでにアレキシ・ライホのメロディには目を見張る美しさがあり、フィンランドのアルバムチャートでは20位を獲得。若手バンドへの注目度の高さが伺える結果となった。チルボドの名刺である「大釜を持った死神」もジャケットに登場し、以降もアルバムのジャケットにはこの死神が登場し続けている。2ndアルバム『Hatebreeder』(1999年)でも同様の路線を追求しつつ、よりアグレッシブな側面が強化された。先行リリースされた「Downfall」は、緩急自在でミステリアスな空気が漂うハイクオリティな楽曲となっており、フィンランドのシングルチャートで首位を獲得。さらに「Towards Dead End」の勇猛果敢なメロディ運びは、後続するEnsiferumのような、ヴァイキングメタルバンドにも影響を与えたと言えるだろう。
 転換期となったのは3rdアルバム『Follow The Reaper』(2000年)だ。今作でアレキシのメロディセンスが爆発。演奏技術の向上も相まって、バンドとして他に類を見ない個性を確立している。特に、イントロの鳴りで聴き手を一気に掴む力や、表題曲「Follow the Reaper」に顕著なように、キーボードソロとギターソロを流麗につなぎ合わせた「ソロてんこ盛り」な間奏のインパクトである。鋭さや速さだけで強引に持って行こうとしない、ソングライティングの目覚ましい開花。クラシカルな素養を持つアレキシの生い立ちと、波に乗っているバンドにしか書けない勢いある楽曲の数々は、多くのメタラーたちに衝撃を与えた。アルバムはフィンランドのチャートで3位を獲得。デビューからわずか3年で、彼らは北欧メタルシーンを揺るがす風雲児となった。同時期にKalmahをはじめとした美メロ系デスメタルが数多く生まれるが、チルボドは頭1つ抜きん出ていたと言える。そして3年後、ついに彼らは前人未到の大名盤を作り上げるのだ。

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