沖縄発プログレ×ラウドロック・バンド・ulma sound junctionが … – 音楽ナタリー

ulma sound junction PR
2022年2月4日
沖縄県石垣島出身の4人組ロックバンド・ulma sound junctionが今春、メジャーデビューを飾るEP「Reignition」をキングレコードからリリースする。重厚感のあるラウドロックサウンドと、プログレッシブロックにも通ずる複雑な展開を持つバンドアレンジ、「Djent(ジェント)」と呼ばれるモダンなヘヴィメタル特有のリズムアプローチなど、前衛的な音楽性を志しつつも、そのメロディは非常にドラマチック。大作志向の長尺曲も多い彼らの楽曲はヘヴィメタルやラウドロックを愛聴するリスナーのみならず、一般的なロックファンにも十分にアピールする魅力を秘めている。
なぜ彼らのようなコアでマニアックな要素を持つバンドが、2022年にメジャーデビューの道を選んだのか。この特集ではulma sound junctionという唯一無二の個性が確立されるまでの軌跡を振り返りつつ、メンバーの言葉を交えつつ彼らの注目ポイントを紹介していきたい。
取材・文 / 西廣智一撮影 / Hidemi Otsuka
田村ヒサオ(Vo, B)、加勢本タモツ(Dr)、山里ヨシタカ(G)、福里シュン(G)の幼なじみ4人がulma sound junctionを結成したのは2005年のこと。意外にも、その歴史が長いことに驚かされる。沖縄のバンドならではというか、彼らはここからマイペースな活動を続けていく。2007年に初の自主制作盤となるミニアルバム「Fragrance of sentence」、翌2008年に2ndミニアルバム「patientaholic」を発表し、ともにソールドアウトを記録。そこから2年を経た2010年8月に、初の全国流通盤となる1stフルアルバム「LAND a SCAPE」を発表し、ほぼノープロモーションにもかかわらず用意されたCD1000枚を完売させた。イギリスのヘヴィメタルバンド・SikThなどを筆頭とするカオティックハードコアを独自に昇華させた「utopia」を筆頭に、2000年代らしいモダンメタルからの影響が強い日本人離れをした楽曲が多く含まれる中、曲が進むにつれて5拍子、6拍子、7拍子と複数の変拍子を自然に取り入れた楽曲「elem-5/6/7」、戦争を1日にたとえてストーリーを展開させていく13分超の大作「1day a suite」など、全6曲、計50分という聴き応え満点の同作は、今でも一部デジタル配信を通じて聴くことが可能だ。
ここまでの流れは非常に順調のように見えるが、続く2ndフルアルバム「Idealogy」が届けられるのは2014年1月。「LAND a SCAPE」から約3年半後のことだった。もちろん、その間もただ内にこもって制作を続けていたわけではなく、2012年には日本・中国・韓国の3国外務省主催で、韓国・ソウルにて開催されたストリートフェス「KIZUNA」に日本代表として出演。前作以上に海外を見据えてサウンドを追求した「Idealogy」を携えて、2014年には故郷・沖縄県石垣島でのワンマンライブを実現させている。メロディやアンサンブルにより深みが増した楽曲群は、ラウドロックファンのみならず、カナダのRushを筆頭とする往年のプログレッシブロックファンにも十分に訴えかける魅力を放っており、2022年の今聴いてもまったく色褪せていない。
2ndアルバムのリリースから約3年10カ月後の2017年11月、彼らは3rdフルアルバム「imagent theory」を発表。映画「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」をイメージした「Over Cure part.1」および「Over Cure part.2」、映画「月に囚われた男」から着想を得た「Shooting Testament」、RPGの世界観を下敷きに善悪を敵視点から描いた「Dzalel」など、映像作品やゲームをヒントに制作された楽曲を複数含み、現在の映像的なサウンドやアレンジのベースがここでひとつ固まる。また、前2作では10分超の大作が含まれていたが、今作は2分台のコンパクトなものから最長は9分強までと、必要に応じた肉付けで楽曲をまとめあげる域に達し、その変幻自在なスタイルに拍車がかかっている。
この意欲作を携え、2017年には東京・SHIBUYA CYCLONEでのワンマンライブを実施する。以降もコンスタントにライブ活動を続け、2019年には世界36カ国150都市以上で開催される世界最大級のインディーズバンドコンテンスト「エマージェンザ」の日本大会にて優勝。全世界からのべ4000バンドが参加したドイツ・タウバタール開催の国際決勝大会に出演し、Zebraheadの前座を務め世界3位に入賞した。さらに、同大会にてベストギタリスト賞を山里が受賞するという快挙を成し遂げた。
山里ヨシタカ(G)
この成功を手に、日本でさらに活発な活動が期待された2020年、世界中を新型コロナウイルス感染拡大による未曾有の危機が襲う。ulma sound junctionは初のサーキットイベント「Diaphragment」を開始させるも、途中で中止・延期せざるを得ないという憂き目に遭う。その代わりに配信ライブ「ulma sound junction Live Stream 2020」を同年9月から4カ月連続で実施し、クオリティの高さが好評を博した。それと同時に、彼らは制作の手も止めることなく、2021年2月に3曲入りEP「primary」をリリース。“原点”を意味するタイトル通り、新たな生き方が求められる現在におけるulma sound junctionらしい新たな“原点”が詰まった力作に仕上がった。中でもミュージックビデオが制作された「Hopeless Raven」は、特別収容プロトコル・SCP-8900へのオマージュと、カラスにしか見えない色が存在することから得た着想が封じ込められており、バンドの新たなスタンダードナンバーとして現在もライブにおける重要な1曲として披露され続けている。
バンドは「ulma sound junction Live Stream 2020」の集大成として、2021年4月に「One man Live Stream 2021」を敢行。その後、SHIBUYA CYCLONでのワンマンライブを皮切りに、感染症防止対策を十分に行ったうえで2カ月に1回の頻度で有観客公演を実施している。去る12月19日、ulma sound junctionは東京・GARRET udagawaで開催された「SLOTHREAT presents『PATH OF RIGHTEOUSNESS DAY2』」に参加。当日1番手としてステージに立った彼らは、この公演中に先のメジャーデビューを観客に直接伝えている。
40分の持ち時間で、彼らはこの日初披露となる新曲を含む全6曲を演奏。「Over Cure part.1」から始まったそのステージでは、硬質ながらも流麗なメロディを持つプログレッシブな楽曲が次々と繰り出され、観る者を圧倒し続けた。ラウドでメタリックなサウンドを信条とするバンドのライブとなると、フロアがモッシュでもみくちゃになる絵が想像されるが、コロナ禍ということもあり、適度に埋まったフロアの観客はその場で複雑なリズムに体を委ね、濃厚な音世界をじっくり堪能しているように見えた。終演後メンバーに話を聞いたところ、コロナ禍以前もフロアの様子は変わらぬようで、「じっくり曲を聴き込むお客さんが多いですし、もともとモッシュやダイブが起きないタイプのバンドなので、お客さんはお客さんのノリ方、楽しみ方をしている」(田村)という。
田村ヒサオ(B, Vo)
途中、福里のギターにトラブルが生じ、山里のシングルギター体制でライブが進行するハプニングもあったが、しばらくして福里のアンプからギターの音が鳴り始めると、フロアからは自然と腕が上がる一幕も。その後披露された大作「Shooting Testament」では、ギタリスト2人の役割がはっきり分かれていることに改めて気付かされる。田村の奏でるベースラインが比較的メロディアスで手数が多いこともあり、しなやかなドラミングの加勢本とともに福里は、シンプルなコードプレイで楽曲のベーシック部分を支える。一方、山里はタッピングなど派手なプレイを多用して、楽曲の装飾部分を作り上げていく。しかも、その音色は曲のパートごとに次々と変化していき、リズムチェンジのたびにさまざまな表情を見せる。そんな煌びやかなサウンドの上で、田村は時に優しくまっすぐなクリーントーンで、時に攻撃的で厚みのあるスクリームで観る者を圧倒する。こういった演奏と歌声が織りなす音世界は非常に映像的な要素が強く、目には見えずともさまざまなイメージが脳内で次々と再生されていく……そんな感覚に陥る、不思議な時間を体験することができた。実際、メンバーの福里も「曲が長尺というのもありますし、短編映画を観ている感覚になってくれたらいいな、という気持ちで演奏しています。ぶっちゃけ、座って観てもらってもいいくらい」という姿勢でライブに臨んでいると語る。そう聞いて、非常に納得がいくステージだった。
福里シュン(G)
とにかく、彼らの楽曲は次にどんな展開が待っているのか想像がつかないものが多い。この日披露された新曲もその1つで、ヘビーながらも流麗なメロディラインを持ち、アクセントの付け方が特徴的なこともあり、一度聴いただけで気持ちよくノることができた。加勢本は「曲作りの段階でライブのことは相当意識していて、特に長い曲は聴き手を飽きさせないように、展開をガラッと変えるなど、いろんなアクセントを入れるようにしています」と語っており、新曲を含めこの日演奏された大半の楽曲がこういった意図のもと制作されたことがよく理解できた。また、そんな楽曲をライブで披露する際、山里は「聴いているお客さんが飲食店やレストランに来たと想定して、どんな料理を出されたら一番うれしいかを考えながら、お客さん目線を第一にしてライブと向き合っています」と言い、ステージでは複雑なギタープレイの合間にオーディエンスを積極的に煽る一面も見せる。単に演奏に注力するだけでなく、こうしたライブならではのアクションも彼らのステージの見どころと言えるだろう。
加勢本タモツ(Dr)
この日、2022年春にキングレコードからデビューすることを告げる際、田村はあえて“メジャーデビュー”という言葉を使った。その裏には、今後の活動に対する彼らの覚悟のようなものが伝わってくる。終演後、その件について田村に話を聞くと、「お客さんにとってもわかりやすい言葉でもあるし、同時に我々がそういった現場に足を踏み入れるという覚悟や戒めとして使わせていただいた言葉なんです。バンドとしてもそういう意識が、今はちょっと足りていないかもしれないと思ったので……。僕ら、別に腰が重いわけではないですけど、曲作りのスパンが周りと比べて長いほうなので、もっとそれを短くして、どんどん新しい僕らを見せていければいいなと思っています。もちろん、メジャーデビューするからといって僕らの音楽が変わるわけではないので、そのあたりもお客さんには信じていてほしいと思っています」と本音を吐露。筆者が「2022年のメジャーシーンに、ulma sound junctionのような音を出すバンドが存在することに、心強さを感じる」と伝えると、田村は笑みを浮かべながら「僕らはゴールデンタイムのアニメでThe Dillinger Escape Planがかかってもいいくらいの感覚でいこうと思っているので、そういったことにも挑戦できるようにがんばっていきます」と力強く語ってくれた。
彼らの覚悟が4月13日にリリースされるメジャー1st EP「Reignition」に、どのような形で反映されるのか。きっと根本にある音楽スタイルや信念は変わることなく、より表現力に磨きがかかった、ディープな楽曲を届けてくれるはずだ。そして、彼らの生み出す映像的なサウンドがメタルやラウドシーンを超え、どこまで広まっていくのか、今から楽しみでならない。
ulma sound junction
沖縄県石垣島の幼なじみによって2005年に結成されたプログレッシブロックバンド。メンバーは田村ヒサオ(Vo, B)、加勢本タモツ(Dr)、山里ヨシタカ(G)、福里シュン(G)。ラウドロックの重厚感、映画のようなストーリー構成によるプログレッシブな楽曲展開、Djent的なリズムアプローチ、前衛的なサウンドアプローチをキャッチーな楽曲に昇華させ、ライブを中心に人気を博す。2019年にインディーズバンドコンテスト「エマージェンザ」の日本大会で優勝。ドイツで開催された世界決勝に出演し、各国から参加したのべ4000バンドの中から世界3位に入賞し、山里はベストギタリスト賞を受賞した。2020年にバンド初の音楽サーキットイベント「Diaphragment」をスタートさせるも、新型コロナウイルス感染拡大の影響により無期限延期に。その代わりに配信ライブ「ulma sound junction Livestream 2020」を4カ月連続で行った。2021年2月に3曲入り音源「primary」を発売。同年12月のライブにて2022年春にキングレコードよりメジャーデビューし、5曲入り音源「Reignition」をリリースすることを発表した。
ulma sound junction Official WebSite – Okinawa Progressive HeavyRock Band
Tamura_ulma.s.j (@Hisao_T_ulma) | Twitter
山里ヨシタカ (@ulma_yamazato) | Twitter
福里シュン (@shun_ulma) | Twitter
加勢本 全(k.tamotsu) (@ulma_drum) | Twitter
ulma sound junction official | YouTube
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