▼館林市出身の旧日本軍軍人、島田豊作さん（1912～88年）は述べている。〈マレーの猛虎だとか、鬼戦車隊長だとか、剛勇無双の隊長等々のイメージを次々に冠せられ困惑したことがあった〉
▼地元で高校教師になると、戦時下に流布したイメージとの乖離（かいり）に戸惑ったのだろう。偶像視する若者に対し〈安易な勇敢らしさに心をひかれる者が意外に多いのを残念に思う〉とも記している
▼伝説の独り歩きという点ではロックスターも似ている。太田市の姉妹都市、米カリフォルニア州バーバンク市出身のギタリスト、ランディ・ローズの伝記映画が没後40年となる今年公開された。本人や関係者へのインタビューで構成したドキュメンタリーで、成功までの軌跡をたどる
▼世界中に熱狂的なファンを持つ「ヘビーメタルの帝王」、オジー・オズボーンのバンドメンバーに抜てきされアルバム制作に参加。不慮の事故により25歳で亡くなった。華麗で激しいプレーを愛するファンは今も多い
▼ともすると早世した天才というイメージが肥大化しがちだ。だが無名時代の肉声や周囲の人々の言葉からは、悩みながら前進する素朴で朗らかな実像が浮かぶ
▼人間の記憶は時として曖昧だったり不正確だったりする。それでも往時を知る人の言葉は現場の空気を生々しく伝え、人々の心に響く力がある。映画「ランディ・ローズ」は来年、県内でも上映される。
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