1992年に発売されたアルバム・ベスト72:30年前に生まれた名盤たちをランキング【動画付】 – https://www.udiscovermusic.com/

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1991年が数多くの最高のアルバムがリリースされた年の一つであったことに異議はほとんどないと思うが、では1992年はどうだっただろう?
依然グランジの影響力は強く、映画『シングルス』のサウンドトラック盤や、アリス・イン・チェインズのアルバムなどに顕著に残っていて、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン、PJ・ハーヴェイそしてトーリ・エイモスが素晴らしいデビュー・アルバムでシーンに登場。
しかしアルバムという意味で言うと、1992年はひょっとするとヒップホップの年だったかもしれない。ドクター・ドレー、エリック・B.&ラキム、ビースティ・ボーイズそしてファーサイド。この年はヒップホップの当たり年でもあり、それぞれ全く違ったサウンドが詰まったアルバムが多く登場した。
どのジャンルにおいても、1992年は誰でも何か気に入るアルバムがリリースされた年だ。われわれが選んだこの年のベストアルバムのリストをじっくり吟味して楽しんでもらいたい。
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ソーシャル・ディストーションの『Somewhere Between Heaven And Hell』はダイナミックなパンク・ロック曲と気の利いた歌詞が組み合わさったアルバムだ。楽曲はうまく作り込まれていて直ちに耳に残り、知的な歌詞は聴く者にいろいろと考えさせるものだ。
 
ダークスローンのアルバム『A Blaze In The Northern Sky』は徹底したファズ・ギター、デスメタル的なボーカル、そして腹に響く重たいドラムスで埋め尽くされた作品だ。このアルバムを聴くとただただその凄さに激しく打ちのめされるような経験を味わうことになる。
 
アルバム『Secret Story』はクールかつ軽々としていて世界中のいろんな国の雰囲気を持ったアルバムだ。ベテラン・ギタリストのパット・メセニーはこの作品で世界中の様々なサウンドを、心を鎮めてくれるようなコンテンポラリーなジャズ・サウンドに採り入れている。
 
「Baby’s Gone Blues」や「The Heart Won’t Lie」といった美しく心に響く曲を聴くにつけ、カントリーの大スター、リーバ・マッキンタイアは超一流のボーカリストだということを思い出さずにはいられないだろう。
 
1992年にリリースされた最高のインディー・ロック・アルバムの一つだ。このアルバム『Imperial F.F.R.R.』のハイライトが、きらめくような洗練されたギター・ポップ曲「Suki」だというのは異論のないところだろう。
 
ロリンズ・バンドによるジャズのように緻密なテクニックで演奏される強烈なハードコア・サウンドの『End Of Silence』は、情け容赦なく手加減しない迫力満点のアルバムだ。
 
圧倒的なオーケストラのアレンジとタイトなバンド演奏をバックに歌うシャーリー・ホーンの『Here’s To Life』には、この著名なベテラン・ジャズ・シンガーの優雅なパフォーマンスが詰まっている。
 
「Runaway Train」は1992年のソウル・アサイラムのアルバム『Grave Dancers Union』のハイライト曲としてやや過大な注目を集めたが、このアルバムには他にも巧みに作り込まれた楽曲が多く含まれていて、それらにも耳を傾ける価値が充分にある。
 
「Ain’t 2 Proud 2 Beg」「What About Your Friends」、そして「Baby-Baby-Baby」といった素晴らしいシングルを含むTLCのデビュー・アルバムは、彼女たちがシーンで大きくブレイクするきっかけとなった1枚だ。
 
不吉で炎が燃え上がるようなニック・ケイヴの『Henry’s Dream』は、喪失による悲しみにふけったりはしていない。むしろ悲しみの闇を使って、自らに救いをもたらすゴスペルを作り上げているのだ。
 
1992年、ビリー・レイ・サイラスは至る所で耳にし、一度聴くと耳から離れないポップ・カントリー・ソング「Achy Breaky Heart」をわれわれに届けてくれた。同じ年にリリースしたのが、よくできたポップ・カントリー曲満載のこのアルバム『Some Gave All』だ。
ブラック・サバス1992年のアルバム『Dehumanizer』は暴力的でありディストピア的な作品だ。このアルバムに収録された楽曲の重厚なリフと社会問題への熱いコメントは、このベテラン・メタル・バンドが影響を与えた数々のバンドたちに負けないほどのヘヴィな作品を未だに作れたことを証明している。
 
輝くようなスマッシュ・ヒット「Hey Jealousy」をきっかけにこのアルバムを聴いて、そこに満載されたパワー・ポップの珠玉楽曲の数々を楽しむといい。

 
アイアン・メイデンの『Fear Of The Dark』は、壮大かつ重厚なリフと、ダークな神秘主義がふんだんに詰め込まれたアルバムだ。
 
ゴスペル、カントリー、フォーク、ブルースといった様々なジャンルをソウルフルに合体させた『Joshua Judges Ruth』は聴く者の時間と空間を深い内省と活気溢れる素朴な楽しさで満たしてくれる1枚だ。
 
風変わりで滑稽で、そしてとんでもなく威嚇的なキャラで登場したレッドマンは、最初からラップ・シーンでの次の人気者になる要素を備えていた。彼のデビュー・アルバムは、その泥臭いプロダクションとレッドマンことレジー・ノーブルの奇抜な存在感たっぷりのフロウで、聴く者の期待に応えてくれる。
 
これまでになく大幅にエレクトロニック・サウンドを駆使したスザンヌ・ヴェガの『99.9 F°』は彼女の最高傑作の一つだ。
 
制作の目的がその内容で明確に表明されているのがワープ・レコードによるコンピレーション・アルバム『Artificial Intelligence』だ。ここではダンスフロア用の作品だけでなく、リスナーがリビングで聴くための作品も手がける様々なエレクトロニック音楽のプロデューサーたちが紹介されている。
 
ギャング・スターからR.E.M.のマイケル・スタイプまで様々なゲストを迎えたネナ・チェリーの『Homebrew』は多様性満点の作品だ。ネナは重厚なサンプリングをベースにしたビートに乗ってロックしながら、ビートが産み出す空間の中で歌唱とラップとの間を自由に行き来している。
 
DJ兼プロデューサーのパイオニア、Mr.フィンガーズことラリー・ヘッドは、アルバム『Introduction』でエレクトロニック・ミュージックのルーツはジャズとソウル・ミュージックであることを改めて思い出させてくれる1枚だ。
 
ベテラン・ジャズ・サックス奏者のジョー・ヘンダーソンは、かつてあのデューク・エリントンが「私の右腕であり左腕」「私が見えないところ全てを見渡してくれる目」と呼んだ有名な作曲家、ビリー・ストレイホーンによる複雑で豊潤な楽曲に対する深い敬意に満ちた、素晴らしいトリビュート作品を作り上げている。
リード・ボーカルのスコット・ウェイランドによる攻撃的でありながら耳に心地よいボーカルと、たくましいリフ満載の楽曲を収録したこのアルバムによって、ストーン・テンプル・パイロッツは90年代で最も成功したロック・バンドの一つとなった。
 
ジェイホークスの傑作アルバムの中でも、『Hollywood Town Hall』では彼ら独得の魅力に溢れたオルタナティブ・カントリー楽曲がふんだんにおさめられている。
 
80年代に人気を呼んだパンク・ロック・バンド、ハスカー・ドゥは解散後にどうなったのか? リーダーのボブ・モールドは新バンド、シュガーによる1992年に高い評価を得たアルバム『Copper Blue』でその問いに答えたのだった。
 
1992年までに、ランディ・ウェストンは先進的なジャズ・ピアノ奏者として40年近くにわたってシーンを騒がせ、自分の音楽でジャズと伝統的アフリカ音楽のつながりに光を当てていた。アルバム『The Spirits Of Our Ancestors』はこの取り組みを続けたものだが、「La Elaha-Ella Allah/Morad Allah」という美しい楽曲ではアラブ音楽の要素まで取り込んでいる。
 
明るく歓喜に溢れていてファンキーなプリンスの『The Love Symbol Album』には、彼の絶頂期である80年代のどの作品にも引けを取らないような、祝福感と先進性いっぱいの瞬間が数多く詰まっている。「Love 2 The 9’s」はジャズ・ファンクの陶酔を感じさせ、音数をそぎ落とした名曲「Sexy M.F.」はプリンス・ファンの間でも人気の一曲だ。

 
1992年にレモンヘッズをブレイクしたこのアルバムは、リーダーのイヴァン・ダンドの手慣れたソングライティングが存分に発揮された作品だ。アルバム・タイトル曲は間違いなくこの作品中のハイライトだが、後にリリースされた再発盤に収録されたサイモン&ガーファンクルの有名曲「Mrs. Robinson」のカバーは、このバンドの作品集への入門としては最適な1曲だ。
 
重厚でヒップホップ風のビートと超絶なボーカル・ハーモニーで、アルバム『Funky Divas』は90年代初頭のヒップ・ホップ・ソウル・サウンドを完璧に表現している。
 
ソニック・ユースのメジャー・レーベル・デビュー作『Goo』に続くこのアルバムで、彼らはその実験的なサウンドを更にメインストリームに近づけていった。特に「Sugar Kane」と「100%」は従来型のロックと比較すると、奇妙でありながら同時にキャッチーな楽曲だ。
メタルとプログレッシヴ・ロック、ジャズ、クラシックの要素を渾然一体としたドリーム・シアターの『Images & Words』には、このバンドのめまいを覚えるような超絶技巧と重厚なリフと見事に共存するソフトで優雅な要素も含まれている。
 
ブラインド・メロンのグルーヴ満点で楽しげな哀愁を感じさせるデビュー作は、明るい感情とダークな感情の両極端に振れる1枚。多くの人にはヒットした「No Rain」がお目当てだろうが、「I Wonder」「Dear Ol’ Dad」といった他の楽曲も同様のインスピレーションを与えてくれる。
 
ラッパーのアイス・Tがフロントマンを務め、彼らのシングル「Cop Killer」が最終的にアルバムから外されるなど、大きな物議を醸したバンド、ボディ・カウント。遺されたこのアルバムは、90年代初期の魅力にあふれたレコードで、そこに含まれた苛立つメッセージは何十年も経った今でも変わらぬ状況を言い表している。
 
Kポップの先駆者であるソテジワアイドゥルのデビュー・アルバムはエネルギーで爆発しそうな作品だ。もの悲しい歌姫のようなボーカルをアップテンポのビートに重ね、このグループはポップ、ヒップホップ、エレクトロニック・ダンス・ミュージックなどが混沌とミックスされた音楽を繰り出してくる。
 
ハードコア・ダンスホール風ナンバーの「Wicked」からこの年のロス暴動の悲惨な状況を詳細に語る「We Had To Tear This Mothafucka Up」まで、アルバム『The Predator』はアイス・キューブの作品でも最も荒々しく激しい作品だ。
 
胸を締め付けるような物語で構成された『Infamous Angel』は、美しいアレンジとアイリス・ディメントの暖かい歌声、そして洞察力ある歌詞をもとに作り上げられた作品だ。
 
素晴らしい映画のサウンドトラック盤というものは、時にある美意識を完璧にその中に封じ込めている。『Singles』は、その映画の中で描かれているシアトルの音楽シーンにいた多くのグランジ・バンドの曲を収録することで、当時の音楽的美意識を見事に捉えている。
 
1992年当時、ヒップホップリシーのエッジが研ぎ澄まされたサウンドは、パブリック・エナミーのノイジーな音像表現の次のステップとして理にかなったものだと感じられた。今にしてみれば、彼らのサウンドはほとんど他に類を見ないものだ。
 
最高のカントリー・ミュージックは、大切なものへの愛やその喪失への複雑な情感を描き出すような、細かなストーリーテリングの手法を使うものだ。このアルバム『Sweet Old World』全体を通して、ルシンダ・ウィリアムスは「Little Angel, Little Brother」のような優しい歌と「Lines Around Your Eyes」のようなアップテンポな曲をバランスさせながら、そうした手法を披露している。
 
アルバム『La Sexorcisto: Devil Music Volume 1』はホワイト・ゾンビが初めて成熟したサウンドに辿り着いたアルバムである。グルーヴ満点で、サイケデリックなヘヴィ・メタルなサウンドは、ロブ・ゾンビのB級映画的な美意識を一段高いレベルに引き上げている。
メガデスは、ヒット曲「Symphony of Destruction(狂乱のシンフォニー)」を含むアルバム『Countdown To Extinction』でそれまでにリリースしてきた傑作メタル・アルバムのリストにまた一つ素晴らしいアルバムを加えた。
 
多くの人がサブライムの天才的な才能に気付くのは、彼らの最後のスタジオ・アルバムがリリースされた後になるのだが、彼らのファースト・アルバム『40 Oz. To Freedom』は、その遙か前に彼らが何か特別なものをつかんでいたことをはっきり証明している。
 
ある意味トム・ウェイツにとってのカムバック・アルバムとなった1992年の『Bone Machine』は、その年に評論家筋から最も高い評価を受けたアルバムの一枚となり、グラミー賞の最優秀オルタナティブ・アルバム部門も受賞した。
メタルのルーツをブルースに求めたカイアスのセカンド・アルバム『Blues For The Red Sun』は、90年代初期に登場したほとんどのメタル・バンドの作品よりも遙かに生々しく直接的なサウンドで構成されている。
 
アルバム『Diva』は、ユーリズミックスのリード・シンガー、アニー・レノックスによるコンテンポラリー・ソウルの名作だ。「Why」「Little Bird」そして「Walking On Broken Glass」といった楽曲はこの素晴らしいアルバムの中でも最もインスピレーションを感じさせる瞬間を届けてくれる。

 
ロック、ブルース、ジャズ、ソウルそして伝統的メキシコ音楽を大胆にかつ軽々と組み合わせたロス・ロボス1992年のアルバム『Kiko』は様々なタイプのサウンドが饗宴とでも言うべき1枚。彼らはこうした幅広いスタイルの音楽をいろいろと試しているだけではなく、「When The Circus Comes」や「Kiko And The Lavender Moon」といった成熟した素晴らしい楽曲にそうした様々な音楽スタイルを注入している。
 
アルバム『Little Earthquakes』は注目すべき新しい才能あるソングライターの登場を告げた。このトーリ・エイモスのデビュー・アルバムには彼女の不朽の名作「Winter」が収録されている。
 
アレステッド・ディベロップメントの『3 Years, 5 Months And 2 Days In The Life Of…』は90年代のデビュー・アルバムの中でも最もエキサイティングで商業的にも成功したアルバムの一つだ。このアルバムには「Tennessee」「Mr. Wendal」「People Everyday」といった大ヒット曲が収められているが、「Raining Revolution(革命の雨が降る)」や「Washed Away(浸食)」といった楽曲も同じように評価されるだけの価値はある。
 
ヒップホップとファンクの要素を持ち、自信満々の態度とユーモアに満ちたフェイス・ノー・モアのメタル・サウンドは、アルバム『Angel Dust』全体を通して光り輝いている。
 
ガース・ブルックスの『The Chase』は、大切なものへの愛とその喪失から、幅広い社会的問題に至るまであらゆるものに触れて、記憶や感情を呼び起こす歌詞が満載だ。カントリーというジャンルの歴史と伝統にしっかりルーツを持ったコンテンポラリーなカントリー・ミュージックとなっている。
 
超高速のブレイクビーツでぶっ飛ばしていたザ・プロディジーは、他にほとんど類を見ないようなサウンドのアルバム『Experience』でメインストリームの舞台に登場した。
 
『Vulgar Display Of Power』は、怒りと攻撃が渦巻く絶叫のパーティーのようなアルバムだ。強力なリフと複雑な演奏が生々しい暴力的なパワーで聴く者を打ちのめすだけでなく、そのサウンドは刻々と素早く方向を変えて、音による暴力で聴く者をあらゆる角度から攻撃してくる。
 
このアルバムに携わった者のほとんどが驚いたことに全英アルバムチャートの1位を記録したジ・オーブの『U.F. Orb』は、エレクトロニック・ミュージックというジャンルがアルバムという形でも充分に成功することを示した作品だ。
 
ホイットニー・ヒューストンの「I Will Always Love You」は映画『ボディガード』のサウンドトラックの最重要曲だが、このアルバムの素晴らしい楽曲リストからは他にも多くの珠玉の作品を掘り出すことができるだろう。

 
アルバム『Mecca And The Soul Brother』は、C.L.スムースの繰り出す社会問題への意識に富んだリリックと、ピート・ロックの複雑で何層にも重ねられたサウンド・プロダクションによって高い芸術性を実現している。「The Basement」「Return Of The Mecca」「Staraighten It Out」などはいずれも評価の高いトラックだが、何といっても「T.R.O.Y.」は数少ないラップ史上最高の名曲の一つに数えられる。
 
アルバム『Pure Country』を聴くと、ジョージ・ストレイトがカントリーというジャンルにおいて最高でその歌声が広く知られたシンガーである理由が判る。偉大なカントリーの伝統的スタイルを持った「When Did You Stop Loving Me?」や「Thoughts Of A Fool」などは、大切なものへの愛とその喪失を歌った胸を締め付けるような歌だ。
 
アメリカのフォーク音楽やカントリーの心を深く掘り下げたニール・ヤングの『Harvest Moon』は、豪華な楽曲を余計な音を加えずに作りあげた1枚だ。アルバム・タイトル曲は、今でもニールのキャリアの中でも最高の瞬間の一つとされる、ロマンティックで愛溢れる名曲である。
 
ブラック・クロウズは、サザン・ロックの名作アルバム『The Southern Harmony And Music Companion』で大きな商業的成功を収めることになった。
世界的に著名なエレクトリック・ギタリストの一人であるクラプトンは、このアルバムでそのアコースティック・ギターの腕前を存分に発揮し、彼にインスピレーションを与えてきたカントリー・ブルースや伝統的フォーク音楽を深く掘り下げることに成功している。
 
有名曲「Passin’ Me By」を含む90年代初期ヒップホップの名作『Bizarre Ride II The Pharcyde』は、その後このジャンルが進めていく多様化への可能性を示している。
 
ジャズとR&Bをクールに融合させたアルバム『Love Deluxe』は、シャーデーの作品の中でも彼女の最高の瞬間をとらえている。この1992年のアルバムは涼しいそよ風のようだが、ソウルフルで内容的にも充実した作品だ。
 
今日では、ヒップホップとR&Bはお互いに切っても切れない、心地よい関係となっているが1992年当時はそうでもなかった。メアリー・J.ブライジの衝撃的なデビュー作『What’s The 411?』は、90年代のどのアルバムよりも、そうした2つのジャンルの関係を強く引き寄せる役割を果たした。「Real Love」「Love No Limit」「Reminisce」などは、未だにそうした音楽スタイルの代表的な例として引き合いに出される、完全にユニークなサウンドを確立した楽曲だ。
 
同時代のボーカリストの中でも、最も豊かで様々なイメージを想起させる歌声に恵まれたk.d.ラングの『Ingénue』は、世界中の時間を止めてしまうほどのパワーを持った愛に対する讃歌だ。その優雅なソングライティングとアレンジで、一曲一曲から暖かみと愛への憧憬がにじみ出している。
 
ドッシリと重たいドラム・ブレイクと気の利いたサンプル・ワークで、ギャング・スターのアルバム『Daily Operation』は、90年代初期のラップ・アルバムの中でも最も印象的な作品の一つとなった。強力なヒット・シングル「Take It Personal」にしても、ダークでオーケストラをバックにした「Soliloquy Of Chaos」にしても、はたまた絶えず形を変える組曲「I’m The Man」にしても、『Daily Operation』の楽曲はいずれも複雑であると同時にハードコアだ。
 
エイフェックス・ツインことリチャード・D・ジェイムスはアルバム『Selected Ambient Works 85-92』で、幸福感に満ちたアンビエント・サウンドと、ハウスやテクノ、ヒップホップといったエレクトロニックなリズムを組み合わせている。アルバム全体が魅惑的で、「Pulswidth」や「We Are The Music Makers」といった曲は、80年代レイヴ・カルチャーを彷彿とさせるような陶酔感で輝いている。
 
中心に甘いメロディを内包しながら、ノイジーで抽象的な楽曲が満載の『Slanted And Enchanted』は90年代インディー・ロック・アルバムの真髄を体現しているアルバムだ。「Summer Babe」や「Trigger Cut」といった楽曲はカレッジ・ラジオでヒットしたが、それだけでなくアルバム全体が見逃すことのできない魅力に溢れている。
 
アルバム『Check Your Head』で、ビースティ・ボーイズは80年代の伝説的ラップ・トリオ、トレチャラス3のスタイルにヒントを得て、彼ら独特のオールド・スクールなラップ・スタイルを維持しながら、それぞれの音楽的個性とそれ以外の部分を深く掘り下げている。
ただ、ファンキーなブレイクビーツ満載の「Pow」からハードコア・パンクの「Time For Livin’」、更にはスペーシーなジャズ・フュージョン・ナンバー「Namaste」など幅広いスタイルをカバーしているが、『Check Your Head』の目的はスタイルの多様性そのものではない。よく聴くと音のひねりの一つ一つが、それに彼らが純粋に熱中しているからだということがわかる。
 
ジェリー・カントレル、レイン・ステイリーとその仲間たちは、90年代初期グランジ・アルバムの傑作の一つ『Dirt』で彼ら最高のパフォーマンスを見せてくれた。
 
オープニング曲「Oh My Lover」の最初のワンコーラスを聴いただけで、PJ・ハーヴェイのデビュー・アルバムの音が激しく、歌詞が明確で感情をむき出しにしていることがわかる。「Dress」「Victory」「Happy And Bleeding」といった楽曲では、このアルバム『Dry』の生々しさと詩的なひらめきが拮抗している。
 
ラキムは間違いなく、今までにマイクを手にしたMC達の中でも最高のリリシストの一人だ。アルバム『Don’t Sweat The Technique』では、「Casualties Of War」で退役軍人のおぞましい戦争体験を語り、また「What’s On Your Mind」では女性を誘惑するフロウで、彼はそのスキルを存分に発揮している。アルバムの最後の方では「Know The Ledge」と「Don’t Sweat The Technique」という、比肩するものがないほど最高のワンツー・パンチの楽曲にわれわれは打ちのめされるのだ。
 
荒々しくも気分を高揚させるバンド、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンは重厚なリフと、とんでもないリフ、そして革命的な政治への問題意識を全米のすべての家庭に送りこんだのだ。
 
一度聴いたら耳から離れない魂に訴えるようなR.E.M.の『Automatic For The People』は問答無用の名盤だ。楽曲ごとに歓喜に満ちたエクスタシーから、深く沈み込む憂鬱まで大きく振れるこの1992年のアルバムは、最高の意味で、建物を破壊する鉄球のように聴く者の感情を揺さぶる作品だ。
 
この年のロス暴動の直後に制作されたドクター・ドレーの1992年のアルバム『The Chronic』は、LAヒップホップの持つ喜びや怒り、そして独特のカルチャーを全て捉えた作品だ。
若きスヌープ・ドッグを重要なゲストに迎えたこのアルバムは、二人のせめぎ合う衝動を完璧に結合し、「Let Me Ride」や「Nothin’ But A “G” Thang」といった曲のリリックは威嚇的であると同時に、サウンド的にはクールで気分を高揚させてくれる。
この1992年のベスト・アルバム・リストから抜けているアルバムがあると思う方は、下記にコメントしてお知らせ下さい。
Written By Sam Armstrong

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