キタニタツヤ | Skream! インタビュー 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト – Skream!

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INTERVIEW
Japanese

インタビュアー:秦 理絵
現代社会への痛烈なメッセージを託した衝撃のメジャー・デビュー作『DEMAGOG』から約2年ぶり。アニメ“平穏世代の韋駄天達”のOPテーマ「聖者の行進」、ドラマ“ゴシップ #彼女が知りたい本当の〇〇”のW主題歌「冷たい渦」や「プラネテス」など、数々のタイアップ曲を手掛け、ネット・カルチャーの鬼才からお茶の間へと存在感を広げてきたキタニタツヤが3枚目のフル・アルバム『BIPOLAR』を完成させた。これまで以上にポップスとしての精度を高めた今作は、キタニが考える大衆音楽の理想とミュージシャンだからこその美学のせめぎ合いのなかで生み出されたものだという。今作を総じて、キタニは”丸くなった”と評する。その真偽はリスナーに委ねるが、今作が、今後続くキタニタツヤの音楽人生において意義深い作品であることは間違いないだろう。
-あえてわかりやすい言い方をしちゃうと、『BIPOLAR』は歌が映えるアルバムになったなと思いました。
うん、歌は意識しましたね。2020年に『DEMAGOG』を出してからはタイアップも多かったし、人に届かないといけないっていう気持ちが強くなったんですよ。メジャー・デビューしたと言っても、『DEMAGOG』は好き勝手に作らせてもらったアルバムだったので、いわゆるメジャーっぽいアルバムじゃなかったんです。でも、そこから意識が変わって。音楽としてかっこいいと思う部分だけじゃなくて、自分は歌モノとしてやってるわけだから、もっとポップスとして頑張っていきたいなって思うようになったんです。
-メジャー・デビューが音楽との向き合い方を変えるきっかけになったんですか?
まぁ、でも歌を意識してたのは前からではあるんですよね。正確に言ったら、『Seven Girls’ H(e)avens』(2019年リリースの1stミニ・アルバム)ぐらいから考えてはいたんですけど。その意識がより高くなったのかな。それは聴いてくれる人が増えたのが大きくて。テレビに出ると学校の級友たちが”頑張ってるね”って言ってくれるし、コンビニで”あ、流れてる”みたいなこともちょっとずつ増えてきたから。その相乗効果で意識が高まったんだと思います。
-アルバムの中で、特に歌を強く意識したのはどの曲でしたか? 客観的に見ると、「プラネテス」とか「ちはる」あたりだったのかなと思ったけど。
そうですね。ちゃんと自分が満足できるラインになってきたのは、「プラネテス」とか「ちはる」ぐらいからです。ようやくコツを掴んできたというか。自分がポップスを通ってないから、最初はよくわからなかったんですよ。だから「プラネテス」を作るときに、サブスクのプレイリストで00年代にドラマの主題歌で流行ったやつを聴き返したりして。初めて真面目に腰を据えて研究したんです。
-改めてポップスと向き合ってみて、どんな発見がありましたか?
ポップスって全然洗練されてないなと思いました。
-面白い分析ですね。
誤解を恐れずに言えば、ダサいんですよ。それが(リスナーとの)距離感の近さ、親しみやすさに繋がるんですよね。暑苦しくなく、カジュアルに聴けるものが大衆性のキーじゃないですか。完成された芸術品として展覧会に飾ってあったら、”あ、見なきゃ”って思うけど、ポップスってそういうものじゃない。それは歌詞も同じで。言ってることはよくあることでも、それを自分らしい言葉で言ってみようとしてしまう。洗練させようとしちゃうんですよね。それはクリエイターのスケベ心だなと思って。だから、これは陳腐でありきたりな表現だなっていうのを恐れずにやるようにしました。特に「プラネテス」のサビはきれいごとだと思われてもしょうがないぐらいの言葉なんです。
-”あなたとふたりで息をしていたい”という表現がストレートですよね。
うん。自分では陳腐だなと思ってても、こっちが思っているほど、相手は気にしてない。臆せずダサい音楽をやってもオッケーみたいなところはあるんです。
-それはキタニさんの音楽家としての美学に反しなかったんですか?
バランスがとれればいいと思いましたね。「プラネテス」で言えば、きれいごとをそのまま出すのはやっぱり嫌だったから、Bメロで完全に僕らしい言葉を入れて落としてるし。「ちはる」は、子供の頃の僕が聴いたら”キタニタツヤ、丸くなったよね。終わったな”みたいに思うようなポップスなんだけど(笑)、逆にグルーヴはよれさせて、ヒップホップとかソウルとかの文脈にあるようなシャッフルにしてバランスをとったりしてるんです。そういうふうに作った曲のほうが自分も長く楽しめる気がするんですよ。
-不思議ですね。自分を100パーセント出すよりも、聴いてくれる人のことを考えて客観的に作ったほうが、自分もその曲を愛せるようになるって。
未来の自分って他人ですからね。聴いてくれる大衆の中に未来の自分が入ってるんだと思います。作った当初の自分がめっちゃ気に入ってて、これは技術的に上手くできたと思っても、聴き返すと、拙くて恥ずかしいことのほうが多いんですよね。
-「ちはる」は”僕らの時間は/ただ散りゆく季節と共に過ぎていった”と歌っていて。悲しい春ですよね。いわゆる爽やかな春ソングとは一線を画すというか。
(タイアップしている)“アサヒスーパードライ”さんからは”爽やかな曲を”っていう注文だったんです。だから曲調は爽やかで明るいポップスなんですけど、歌詞に関しては、”普通春はこうは歌わなくない?”みたいな感じになっていて。春って季節の変わり目だし、僕の中ではずっと曇ってるイメージなんですよ。新学期とか新生活のイメージがあるから、前向きになりがちだけど、僕はそうじゃない春を突き詰めていこうと思いました。キタニタツヤがいきなり爽やかな曲をやってもおかしいですからね(笑)。
-「ちはる」もそうですけど、今作はタイアップ曲が多いなかでのアルバム制作だったと思いますが、アルバムとして成立させるために考えたことはありましたか?
最初はアルバムのために作ったわけじゃない曲が多かったから、どうやってアルバムを作っていいかわからなかったですね。だからまず、タイアップ曲を軸にアルバムのコンセプトを考えることにして。ドラマ(”ゴシップ #彼女が知りたい本当の〇〇”)、”BLEACH EX.”と、ひとつの物語に対して2パターンの曲を書くということを2連続でやったから、それが軸になったらいいなって考えたんです。
-”ゴシップ #彼女が知りたい本当の〇〇”には「プラネテス」と「冷たい渦」、”BLEACH EX.”には「タナトフォビア」と「Rapport」をそれぞれ書き下ろしましたね。
そう、ひとつのものごとにふたつの目線があるっていうことを表現してきたから、それを”BIPOLAR”っていう言葉で言い換えられるなって。



-”BIPOLAR”は日本語に訳すと?
双極性という意味ですね。自分って外からは明るい人に思われてるけど、作品に落とし込もうとしたら暗くなるところがあって。小学生ぐらいの頃から、さっきまで友達と楽しく喋ってたのに、ひとりになるとじめじめ暗いことを考えちゃうところがあったんです。”あのとき、俺、なんであんなこと言っちゃったんだろう”とか。その上下の振り幅は人それぞれ誰しもあると思うんですよね。そういうことを、”BIPOLAR”という言葉で表していて。あらゆる物事は絶対に一面的ではない。そういうことをまとめたアルバムにするために、他の曲も書いていったんです。
-キタニさん自身、作品と人間性で見られ方にギャップがあったり、人と会ってるときとひとりのときで全然違ったりする自分のことは好きですか? 嫌いですか?
嫌いか、好きとかはないですね。それで生きるのが苦にはならないけど、人と比べて激しいほうだから、いつか何かしらの作品にしたいなとは思ってました。あと僕、物事の裏面を見るのが好きなんですよね。例えば、「ちはる」では桜を爽やかに描いてるけど、桜ってよく見たら、怖くない? みたいなことを思うことがあって、「PINK」っていう曲を作ったりとか。「聖者の行進」も、人の群れが力強く進んでいるのが美しいし、希望が持てる。僕はそういう想いで作ってたけど、逆に人間の群れってむしろ冷たい都市のイメージもあるから、そっちのほうに光をあてたら、「夜警」って曲になっていったりとか。

-タイアップ曲が多く収録されると、どうしても寄せ集めの作品集になりがちだけど、ちゃんとキタニタツヤという人間を象徴するコンセプトに落とし込めたんですね。
出た曲をまとめるだけだったら、それはアルバムとして面白くないじゃないですか。キュレーションする軸があったほうがいい。今までリリースした曲でまだアルバムに入ってない曲もいっぱいあるので。そのコンセプトはこっちに合うじゃんって思えたときに、引っ張ってこれたらいいなとは思ってます。
-今作はプロローグ的な「振り子の上で」で始まって、エピローグ的な「よろこびのうた」で終わることで、アルバムを通して聴いてほしいという想いも感じました。
あ、でも、”聴いてほしい”って感じじゃないかも。このアルバムは5曲目(「聖者の行進」)と6曲目(「夜警」)のあいだに線をひいて線対称になってるんですよ。1曲目(「振り子の上で」)と10曲目(「よろこびのうた」)が対(つい)。2曲目(「PINK」)と9曲目(「ちはる」)が対。3曲目(「冷たい渦」)と8曲目(「プラネテス」)が対になってるんです。
-あ、本当だ。面白いですね。
自分がきれいだなって思う順番で並べてるだけなんです。今はサブスクで音楽がカジュアルに聴けるようになったから、アルバムとして曲順で聴く人はあんまりいないと思うんですね。それこそ店の試聴機で聴く時代だったら、1曲目に勝負曲の「Rapport」を置いて、次に「プラネテス」を置かないといけなかったと思うんですけど、今は逆に、そういう音楽の本質的じゃない部分を意識しなくてもよくなったんです。だから、1曲目に”これからこういうアルバムが始まりますよ”っていう説明みたいな「振り子の上で」を置けたんですよ。「振り子の上で」は、店の試聴機で聴かれて、キタニタツヤってこういうアーティストなんだって思われたら困るぐらいの曲ですから(笑)。
-こういうスタジアム映えする壮大なロック・バラードは今までなかったですよね。
THEアルバムのオープニングみたいな曲です。
-ちょっとミスチル(Mr.Children)っぽい感じもありました。(多くの楽曲のプロデュースを手掛ける)小林武史さんっぽいと言ったほうが近いかな。
へー。俺、全然ポップスを通ってないのにそういうふうに聞こえるのは面白いですね(笑)。
-00年代のドラマ主題歌を聴いていた中に入ってたんじゃないですか?
たしかに。絶対に聴いてますよね。俺、ミスチルは有名な曲しか知らないんですよ。聴かなきゃなって思いながら、聴いてないんですよね。35歳以上のミュージシャンと話をすると、”ミスチルの『深海』を聴けよ”って絶対に言われるんですけど。
-(笑)たぶんキタニさん、『深海』は好きだと思いますよ。
うん、僕が好きな感じなんだろうなとは思ってます。
タイトルの”BIPOLAR”は双極性を意味する。”消えてしまいたいと願う朝が/生きていてよかったと咽ぶ夜に塗り潰され”と歌う、オープニングの壮大なロック・バラード「振り子の上で」が象徴するように、今作は、日々の生活の中で激しく浮き沈みする人間の心の変化や、美しさと醜さ、希望と絶望という世界の二面性を対称的な曲構成で浮き彫りにする1枚だ。キタニタツヤの真骨頂となるファンキーなロック・ナンバー「PINK」や、初めてニュー・ウェイヴのアプローチを取り入れた「夜警」など、アルバムの新録曲にエッジを残しつつ、より歌を大切にした大衆的なポップ・ミュージックとして突き詰めたところに、キタニの覚悟を感じた。ドラマ主題歌に書き下ろした「プラネテス」は普遍性の高い名曲。(秦 理絵)
7月にリリースされたn-buna(ヨルシカ/Gt/Composer)とアユニ・D(BiSH/PEDRO)を迎えたコラボ曲「初恋」に続き、フィーチャリング第2弾として、神サイがキタニタツヤとタッグを組んだ配信シングル。ファンキー且つポップなサウンドに乗せて、恋愛における醜くも美しい感情を生々しく描いた今作は、まさに2組の”らしさ”が溶け合ったコラボレーションになった。優しく包容力のある柳田周作とまろやかで鋭いキタニタツヤという、声質の異なるふたりのヴォーカリストの味が際立つほか、全プレイヤーが主役になるアレンジの展開も痛快。神サイに新たなグルーヴをもたらした今作の経験を血肉にしてゆくことで、このフィーチャリングはバンドにとってより意義深いものになっていくはず。(秦 理絵)
“ノイタミナ”枠のTVアニメ”平穏世代の韋駄天達”のOPテーマとして、キタニタツヤが初めてタイアップに書き下ろしたニュー・シングル。無感情に列をなす不穏なパレードを想像させるダークなサウンドにのせて、無慈悲に生かされる人間の弱さと、それでも”幸福の種”に縋りたい儚さを鋭い言葉で歌い上げる。デビューから一貫して、厭世的に世界を捉え、そこでいかに生きるかを歌い続けてきたキタニのクリエイティヴが、アニメ・タイアップという機会を得て強い訴求力を伴って結実した。カップリングには、今年配信リリースされ、ALIがアレンジを手掛けた「Ghost!?」をキタニ自身がリアレンジした、”Bad Mood Junkie ver.”などを収録。全3曲でキタニタツヤという才能を多面的に伝える1枚。(秦 理絵)
先行公開曲「ハイドアンドシーク」を含む3枚目のアルバム。前作『Seven Girls’ H(e)avens』で獲得したシンセ・ポップのアプローチを、自身の原点であるオルタナティヴ・ロックと融合させることで、新たなキタニサウンドを確立した。全曲のマスタリングに世界的エンジニア、John Greenhamを起用して完成させた統一感のある音質はコンセプチュアルな作風との相性もいい。タイトルに掲げる”デマゴーグ”とは、扇動者の意味。新型コロナの流行という先の見えない混沌の中で、祈るように光へと導いていく作品になった。相互監視社会や悪意といった人間の嫌な部分を掘り下げながら、それでも愚かで孤独な人間そのものを愛せずにはいられない、そんなキタニタツヤの思想に救われる。(秦 理絵)
ネット発のソロ・アーティストとして、高いクリエイティヴ・センスを印象づけた前作フル・アルバムから、1年ぶりにリリースされるキタニタツヤの1stミニ・アルバム。前作『I DO (NOT) LOVE YOU.』は、プログラミングからギター、ベースまでひとりで完成させたが、今回は、一部の楽曲でサポート・ミュージシャンを迎えた他、作風もオルタナティヴなロック・サウンドから一転して、メロウなポップ・ナンバーを多数収録した。歌詞のテーマは、”逃げ場所”。身体を差し出すことで孤独を満たす女性を描いた「Sad Girl」を始め、アルコールに逃げる「Stoned Child」や、銃を乱射することで恍惚を得る「トリガーハッピー」など、どこかに逃げることで心の安寧を得る人間の姿を描く。(秦 理絵)
「芥の部屋は錆色に沈む」など、自己嫌悪を滲ませた楽曲がネット・シーンで注目を集めるシンガー・ソングライター、キタニタツヤの1stフル・アルバム。左右のスピーカーに音を振る不穏なイントロに始まり、承認欲求に取り憑かれた人間の愚かさを辛辣な言葉で描いた「悪魔の踊り方」に始まり、転生や死生観をテーマにした「波に名前をつけること、僕らの呼吸に終わりがあること。」など、人間の心を抉るような筆致で綴る13曲を収録した。素晴らしいのは”I DO LOVE YOU.”と”I DO NOT LOVE YOU.”という真逆のタイトルを付けたラスト2曲。人を強く愛することと、憎むこと。その間を激しく行き来する感情の揺らぎを歌わずにはいられなかった。それが今作の衝動の源だと思う。(秦 理絵)
“あらゆる物事は絶対に一面的ではない”――双極に揺れる心と世界を暴くキタニタツヤのニュー・フェーズ
“音楽って楽しいもんやなっていうのを取り戻せた” 神サイ×キタニのタッグが生んだ”遊び”の延長にある至福の音
キタニタツヤ×ノイタミナアニメ”平穏世代の韋駄天達” 初のタイアップ作品「聖者の行進」で描いた、弱くて脆い人間たち
混沌の時代に希望へと導くアルバム『DEMAGOG』完成―― “自分の弱さを肯定しつつ、それでも立ち上がる強さを表現したかった”
“自分の音楽が「逃げ場」になればいいなと思いますね” ここではないどこかに心の安寧を求める7つの物語
“他人を大好きな自分と、それを一切否定したい自分が背中合わせにいる” 愛と憎しみの1stアルバム『I DO (NOT) LOVE YOU.』
2021.11.22 @USEN STUDIO COAST
2019.10.04 @渋谷WWW X
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