【インタビュー】澤野弘之×ケンモチヒデフミ「OUTSIDERS」対談 音楽に臨む姿勢に迫る【音楽】 – MusicVoice

POP

記者:村上順一
撮影:
掲載:22年05月31日
読了時間:約16分
 作曲家・澤野弘之のボーカルプロジェクトSawanoHiroyuki[nZk] が5月25日、約1年振りのシングル「OUTSIDERS」をリリースした。表題曲「OUTSIDERS」は自身が音楽を担当しているオリジナルTVアニメ『群青のファンファーレ』エンディングテーマで、ゲストボーカルとしてグローバルボーイズグループJO1より河野純喜と與那城奨が参加。 カップリングには『OUTSIDERS(Kenmochi Hidefumi Remix)』と題し、表題曲のリミックス音源を収録。水曜日のカンパネラのケンモチヒデフミがリミキサーとして参加している。MusicVoiceでは澤野とケンモチの2人にインタビューを実施。リミックスをオファーした経緯から、JO1河野純喜と與那城奨のボーカリストとしての印象、さらに2人が音楽を続けていくモチベーションなど、気鋭の音楽家の思考に迫った。【取材=村上順一】
「OUTSIDERS」通常盤ジャケ写
――澤野さんがケンモチさんにリミックスをお願いすることになった経緯は?
澤野弘之 リミックス自体は、企画などで海外の方にお願いすることはありました。ただ、自分からシングル曲のリミックスを提案したのは今回が初めてです。リミックスを収録したいと思った経緯に、「OUTSIDERS」は、JO1の河野純喜さんと與那城奨さんにボーカルで参加して頂いているのですが、同曲のアレンジを変えることで、JO1のファンの方々にもより一層喜んで頂けるのかなと思いました。その中で自分でリアレンジするよりもリミックスを誰かにお願いしたいと思い、そこで思いついたのがケンモチさんだったんです。
ケンモチヒデフミ 僕はもともとクラブミュージック界隈にいたんですけど、リミックスを沢山やってきたという感じではなくて。なので、苦戦する時もあるんです。それで、今まで自分がやってきたリミックスを鑑みて、今年からは「これは自分には難しい曲だなと思うようなお話だったら、一回考えるようにしよう」と思っていたのですが。直後に、澤野さんから今回のお話をいただいて。もう曲も聞かずに「やります!」と即答しました(笑)。
――澤野さんがケンモチさんの存在を知ったのはいつ頃だったのでしょうか。
澤野弘之 実はケンモチさんが水曜日のカンパネラを始める前、今から10年以上前くらいにリリースしたCDを持っているんです。六本木のTSUTAYAで試聴機にあって、「六本木店がおすすめしているんだったら絶対おしゃれな作品だ」と思って、聴いてみたらすごくカッコよかったので購入して。その時からケンモチさんのサウンドがいいなと思っていたんだと、今回のことに結びつきました。
ケンモチヒデフミ カッコいい時の僕の音を知って頂いていて嬉しいです(笑)。数年に1回、僕はよくわからない方向転換をするので、知ってもらうタイミングで全然イメージが違うと思うので。
澤野弘之 いえいえ、ずっとカッコいいというイメージでしたよ。
ケンモチヒデフミ ありがとうございます。僕は澤野さんのことを一方的に知っていて、「このアニメ音楽凄いな」と思っていたものは、ほとんど澤野さんが手がけていて「この人、一体何者なんだ?」と思ってました。その中でも『機動戦士ガンダムUC』のテーマ曲は、カッコよさと組み合わせのおもしろさ、そのバランス感覚が魅力的で、その塩梅は水曜日のカンパネラでも常々意識していました。
――そうだったんですね。リミックスをお願いするにあたって澤野さんはどんなリクエストをケンモチさんに?
澤野弘之 河野さんと與那城さんの歌とメロディを使っていただければ、コード進行などは自由な方向で、という感じでした。
ケンモチヒデフミ 本当に自由にやらせていただきました。
――ケンモチさんのリミックスを聴いた時の感想は?
澤野弘之 さすがだなと思いました。今回、僕のメロディがベースにあったとしても、聴いた瞬間にケンモチさんのサウンドになるというのはやっぱり凄いと思いました。サビの後に、もう1つのリフみたいなフレーズがあるのですが、それは楽曲の新しいサビのような感じがありました。全然違ったアプローチに聴こえるところもあって面白かったです。
ケンモチヒデフミ 最初に原曲を聴かせて頂いて、そのグルーヴとは逆のアプローチでリミックスしよう、というのが最初のきっかけになっているんです。原曲はわりと頭の拍でリズムを刻むようになっていたので、僕は後ろでハウスっぽい跳ねたリズムでこの曲を再解釈してみようと思っていました。あと、原曲のサビの抜け感が凄くて、夜明けや明るく開けたイメージがあったので、僕は「OUTSIDERS」の夜バージョンみたいな感じにしようかなと思い、広がりを感じさせる高域のトーンを落として、ベースでグッと音作りを違うかたちでみせられたらなと考えました。
――テンポも変えているのでしょうか。
ケンモチヒデフミ ちょっとだけ速くしています。後ノリにするとゆったり聴こえるので、そのぶんBPMを速くして、原曲と同じくらいの感覚に聴こえるようにしています。
澤野弘之 今回、ケンモチさんのアレンジ、サウンドクリエーターとしてのセンスが好きだと改めて認識しました。僕の中でこっちが1曲目なんじゃないか、みたいな感覚もありましたから。
――澤野さんからみたケンモチさんらしさを感じる部分は?
澤野弘之 「らしさ」という部分で言うと、ちょっとエキゾチックだったりエスニックなニュアンスを感じたりします。でも、わざとエスニックな音色を選んでいるとかではなく自然で、音色はデジタルでも民族的なリズムの取り方をしているというのを感じています。それがケンモチさんらしいEDM的な作り方、特徴なのかなと思います。
ケンモチヒデフミ いつも音楽的に新しいことにチャレンジしようと思って、「けっこう変えたぞ!」と思っているんですけど、YouTubeのコメント欄などを見ると「いつも通りのケンモチ節でいいね」みたいな感じで(笑)。それをどうにかして薄めたい、色んなバリエーションを出せないかなと思って、世界各地のあまり知られていないビートや、不思議な楽器の音色を引っ張ってきて曲を作ることがよくあります。民族っぽく聴こえるのは、それがあるからかもしれないです。

――JO1の河野さんと與那城さんのボーカルはどのように写っているのでしょうか。
澤野弘之 これまで色々な男性ボーカルの方々と一緒にやってきましたが、新しい世代だからこその感性、楽曲に対する向き合い方など、またちょっと違う新鮮な感覚を持っています。エンターテイナーなので、その感性が凄く磨かれているなと思いましたし、歌のパフォーマンス、MVでの表情や動きにしても圧倒される部分があります。
ケンモチヒデフミ 僕はお2人に直接お会いしていないんですけど、JO1の「Born To Be Wild」という曲が出た時に、これはとんでもないグループが出てきたなと思って一人で熱狂していました。まさかこういったカタチで一緒にお仕事できると思っていなかったので、凄く嬉しくて。お二人は、近年のダンスミュージックを凄く研究してレッスンされていて、声のスピード感などが現代の曲に凄くマッチすると思いました。強弱のつけかた、バースとブリッジの抑えた艶やかな感じ、サビの抜け感、声の力強さなどが凄く綺麗に出ていて。通常は抑えたところで、少し遅く聴こえがちなんですけど、感情を抑えながらも声自体がダンスしているようなスピード感が維持されていて、カッコいいなと思いました。
――レコーディングでのディレクションは澤野さんが担当されたのでしょうか。
澤野弘之 普段JO1のディレクションされている方にメインでやっていただきました。なので、僕は横で彼らの歌を聴いて「カッコいいです!」としか言ってなかったです(笑)。リズムの際立った曲を歌い続けているところもあってか、そこに対するアプローチは感性が磨かれていて、発する音の勢いみたいなものをお2人から感じました。
――楽曲を作る時はどれくらいお2人のことをイメージされていたのでしょうか。
澤野弘之 僕は基本的には曲を先行して作ってからボーカリストを決めることがほとんどなんです。今回はテレビアニメ『群青のファンファーレ』の劇伴音楽をやることが決まってエンディングも、という話になったので、エンディング曲は先行して作っていました。曲自体は、アニメ作品の曲としてどういうものを作るか、というところに集中していたと思います。
ケンモチヒデフミ 最初に聴いた時に、サビのメロディと歌詞の流れがめちゃくちゃカッコいいなと思いまして。<堕落を喰らい喝采を総浚う>という部分は歌詞を見るまでずっと英語だと思っていたんです。それでリミックスしながら歌詞を改めて見た時に「ここ日本語だったんだ!」という驚きがありました。
澤野弘之 今回、歌詞をお願いしている2人にも、日本語っぽく伝えるというよりは、歌詞を見なければ英語っぽく聴こえるような感じで、とお願いしていたんです。
――澤野さんは過去の曲でもそういったニュアンスの歌詞が多いですよね。
澤野弘之 僕は子供の頃から歌詞を響きでとっています。意味はあまり考えていなくて、高校生の時に友人が「あの曲の歌詞見た?」というのを聞いて、そんなにみんな歌詞を気にして音楽を聴いているんだと知って。
ケンモチヒデフミ 僕も全く同じタイプです。歌詞を音として捉えていて、後で「そういう歌詞だったんだ」という感じです。インストや洋楽ばかり聴いていたので、歌詞に対するこだわりがあまりなくて。
――水曜日のカンパネラで、歌詞を書くようになって歌詞に対する考え方に変化も?
ケンモチヒデフミ 水曜日のカンパネラは何となくJ-POPの歌ものがやりたい、というところからスタートしたグループだったので、歌詞はもともと僕が書く予定ではなかったんです。メロディを伝える時に仮の歌詞を入れなくてはいけなかったので、そこであまり感情を乗せた歌詞を自分で書くのは恥ずかしいなと思っちゃって、意味のない言葉を羅列してました。語尾の韻だけこういう風にしたいなど、ニュアンスだけを伝えるために、感情のない歌詞を適当に書くようになったのが最初のきっかけなんです。
澤野弘之 ケンモチさんの歌詞はトリッキーに聴こえてくる言葉とメロディのリズムに凄く耳を持っていかれるところが面白いです。有名な「桃太郎」という曲を聴いた時は、<PCエンジンbyハドソン>というワードを入れるのは絶対同じくらいの歳の人だよなと思って(笑)。
ケンモチヒデフミ 「桃太郎」の歌詞はちょっと後悔しているんです。あの曲がここまでみんなの耳に届くと思っていなかったので、当時めちゃくちゃ適当に作っちゃったんですよ。しかも、「100円でみんな持っていってね」みたいな感じの凄いラフに作ったCD-Rの2曲目に入っていた曲で。今だったらもう少しちゃんと書き直したいなと思ったりもするんですけど、そういうものが、えてしてみんなには面白く聴こえたりするのかな、と思うところもあります。
澤野弘之 僕も同じ世代ですけどそういう言葉を曲に組み込むというのもひとつのセンスだと思います。その発想も凄いなと思います。
ケンモチヒデフミ あの頃は、わざと感情を消すために小さい頃によく聴いていたCMのキャッチコピーとか企業名や商品名を片っ端から入れていくという手法を取っていたんです。それが、<PCエンジン>だけ使うと、もしかしたら何か言われたりするかもしれないと思って、一緒に<ファミコン>や<メガドライブ>を入れて(笑)。本当にインディーズの頃の悪ふざけみたいなところがありました。
――言葉はダイレクトに時代を反映しますが、音にもそういったものはありますよね。
澤野弘之 何年か前から海外で80’sを感じさせるサウンドがけっこう使われていて、今もザ・ウィークエンド(カナダ・シンガーソングライター)などが使っていたりすると、影響を受けたり。80年代の洋楽のサウンドは好きだったので、あえて取り入れたりすることもあります。
ケンモチヒデフミ 劇伴は歌が入っていないし、そのシーンに合わせて作られているものなのに、不思議と澤野さんが作ったというのがわかるんです。音色、コード進行の癖やメロディなのかもしれませんが、あれは何か意識されているのでしょうか? または無意識で作っていても出てしまう“澤野色”なのか。
澤野弘之 全然意識していないか、と言ったら嘘になるかもしれないです。「新しいな」と思ってもらいたくて作っているんですけど、自分の好きな音の傾向やメロディの行き方というのに癖があって。でも…半々でしょうか。この音楽が自分が好きだと思ってやっているところと、気持ち的には新しいものにトライしたつもりではあるんですけど、結果聴いてみると、わりと今までのものと共通していたりする部分もあったりするんです。
ケンモチヒデフミ TVアニメ『進撃の巨人』で流れていた曲を最初に聴いた時、劇伴の革命児だなと思って。そのアプローチが凄くいいんです。今までの音楽を作っていた方とは違うセンスを持って「新星が現れた」とずっと思っていました。
澤野弘之 嬉しいです。僕はアニメの劇伴で言えば、菅野よう子さんの存在に影響を受けていたことがあって。菅野さんがアニメ界に出てきた時に、「こんなにセンシティブなことをやる人がいるんだ」ということに衝撃を受けました。そこに引っ張られて、自分もそういう音楽を追求していきたいなと思って、自分なりに劇伴を作るようになりました。歌ものを作るというのもそこから影響を受けていて、他にも海外のサントラからもあったりします。
「OUTSIDERS」期間生産限定盤ジャケ写
――ところで、お2人がお互いに聞いてみたいことはありますか。
澤野弘之 何かから影響を受けて「こんな曲を作りたいな」と思った時、ある程度その曲を聴きながらリズムを組んでいったりしますか? 僕はわりとそういう風にしていったりするんですけど。
ケンモチヒデフミ 僕もそうですね。完全に「こういう曲が作りたい」という曲があって、そのリファレンスを参考にします。
澤野弘之 そこで、あまりにも寄せすぎた瞬間に、ちょっとそれを調整したり?
ケンモチヒデフミ そのパターンもありますし、一生懸命寄せようとしているんですけど、違うものが出来るというパターンがけっこう多いです。
澤野弘之 それもありますよね! 僕は新しいサウンドというのは、1回ちゃんと聴きながらやってみないと自分の中に入らなかったりします。もちろん安易にパクるみたいなことはしないですけど、ちょっとものまねしているみたいなところから入ったり。ケンモチさんのようにキャリアを積んでくると、「それはやらない」とかあるのかなと。
ケンモチヒデフミ 僕は何の枠組みもなく、「今この気持ちをメロディと歌詞で」、みたいな情景やイメージ先行で曲を作ることはほぼないかもしれないです。好きだなと思った憧れの音楽があって、それを自分も再現してみたい、というところがそもそものスタート地点なのかもしれないです。
澤野弘之 僕も一緒です。「自然の景色や美術アートなどを見ていて楽曲に繋がるインスピレーションを受けた」ということは僕はないですから。音楽は何から影響を受けるかといったら、同じ音楽からしか影響を受けないと僕は思っているので。
ケンモチヒデフミ めちゃくちゃ突き抜けるミュージシャンはどちらかで、「音楽を沢山聴くか、全く聴かないかのどっちか」みたいな。例えば自分が人生の中で10曲しか作れない、そういう制限がある状況だったら、一つひとつ自分のオリジナルなものを作っていかなければと思うかもしれないけど、今まで自分の思いつく限りの手法を使って作ってきたので、101曲目、102曲目を考えていくような頭がもうないのかもしれないです(笑)。まず何かインプットしないと何も出てこない、という状況になっている可能性はあります。
――ケンモチさんが澤野さんに聞いてみたいことは?
ケンモチヒデフミ そうですね、音楽を作るうえで、海外の音楽やカルチャーなどの流れは意識しているかどうか、お聞きしたいです。これをお聞きしたい理由は、国内に向けていくのか海外に向けていくのかで、両方いいとこ取りのものって難しいなと思っていて。最近の自分の作る音楽は、今までと少し方向性を変えて、もう少し日本寄りの、ドメスティックな方向へ向かった方がいいのかなと考えたりしているんです。澤野さんも時代をみながら色々考えたりされているのかなと思いまして。
澤野弘之 もともと劇伴を作っている時は、基本的に自分も同じように思っています。僕は海外のサウンドがカッコいいと思って影響を受けてはいるんですけど、何だかんだ言って日本の音楽を聴いて音楽を始めたので、日本の中で、日本のリスナーの人たちに楽しんでもらいたいという意識の方が強かったんです。かと言って海外が全然夢じゃなかったかというと、どこかでは海外のことは少し意識していました。でも日本人が海外で成功した例がほとんどないのでどこか心の中で、「そんなの難しいだろう」とか思っていて。そもそも海外のアーティストに憧れて曲を作っているという時点で、そんな人は世界にもっと沢山いるだろうし、そこに自分が太刀打ちできるかわからないなと思っていました。海外に向けてどうするか、みたいな意識は強く持っていなかったんです。でも最近は、自分の音楽の曲調の感性が、日本で売れている曲を聴かれているリスナーの人とはちょっと違うのかな、とか思うところもあるのですが、それを理由にして海外に逃げるという意味の海外志向にはなりたくないなと。
――澤野さんの音楽は世界的に聴かれていると思うのですが、それとはまた感覚が違うのでしょうか。
澤野弘之 自分の中で色々ジレンマもあって、アニメの曲だから聴いてもらえている、というのが大半なんです。例えば『進撃の巨人』の音楽をYouTubeでアップしたら、再生数は凄い増えるんですけど、『進撃の巨人』と同じくらいのクオリティのオリジナル曲を上げても、海外の人が注目してくれるかというと、そこは歴然と差が出てきますから。でも、僕の音楽に興味を持ってもらえた時に、聴いた人が「結構カッコいいことやっているんだな」、と思えるような音楽を作っていたいと思うんです。そういう音楽を追求していって、僕自身たいした力は持っていないですけど、同じ志を持つ方たちと一緒にやっていけたら、という感覚の方が今は強いです。
――さて、ケンモチさんはこの前、水曜日のカンパネラのインタビューで「新しいアイデアをすぐ試せる環境にあることが音楽活動の原動力になっている」とお話しして下さいましたが、お二人がいま、原動力になっていることは? 
「OUTSIDERS」初回生産限定盤ジャケ写
ケンモチヒデフミ そうですね。それに加えて話すと、澤野さんやJO1のお二人と一緒にお仕事が出来るというのは、普通に暮らしていたらできないことなので、こういう瞬間のために音楽やっていて良かったなといつも思っていて、今回のことも原動力に繋がっていると思います。
澤野弘之 僕は2つあります。一つはまだまだだなと思うことがすごくあって、そこに対して「悔しい、じゃあ次こそは」という気持ちがあるから続けていられると思います。もう一つはケンモチさんと同じように、こうやってケンモチさんがご一緒してくれたこととか、僕の曲を歌ってくれるボーカリストなど、信頼して一緒にやってくれる人たちがいるからこそ、自分はこんなところで止まっちゃいけない、まだまだ音楽をやっていきたい、という気持ちにさせてもらえるんです。
――そんなお二人でも音楽をやめよう、と考えたこともあるのでしょうか。
ケンモチヒデフミ 僕は3回ぐらいそう思ったことがありました。最初はスランプで才能が枯れたと感じてしまった時、その次は2011年の東日本大震災で音楽を作ってる心境じゃなくなってしまって…。でも、YouTubeでももクロさんを見たときに、その凹んでた心に沁みるものがあって、初めて歌ものに興味を持つきっかけになりました。
澤野弘之 もう一回は何があったんですか。
ケンモチヒデフミ 次は、アメリカで骨折したときです。水曜日のカンパネラでアメリカに行く機会があって、その時にホテルの2階のベランダからちょっと落ちてしまいまして…。僕は右手1本動けばマウスで仕事はできると思っていたんですけど、その右手を折ってしまいぼんやりとした日々を送ることになって。加えて、アメリカの医療費がめちゃくちゃ高くて驚きました(笑)。
――澤野さんは?
澤野弘之 音楽をやめようと思ったことは一度もないかもしれないです。ただ、自分が確信を持って出した曲の反応が微妙だった時は、ずっとこの感じなのかとちょっとテンションが下がるんですけども、やめたいと思うところまではいかなくて。それは、どうせ自分のことだから、「やめてもまた作りたくなるだろう」みたいな感じもあるからだと思います。
ケンモチヒデフミ 澤野さんはスランプはないんですか。
澤野弘之 感じたことはないですね。ただ、自分の好きなものをやっていると、自然と曲が似てきてしまうところってあるじゃないですか。それで「いつも同じじゃん」と言われたりすると、ちょっと気になりだしたりして(笑)。そうすると作れなくなってしまうと思うので、もう別にそれでもいいんじゃないかと開き直るようにしています。
ケンモチヒデフミ たまに僕もブレる時があって、新しい音楽のジャンルが出てくると自分でも作ってみたくなってしまって。全然違う音楽をやるので、今まで付いてきてくれたファンを振り切ってしまうことがあります(笑)。それでごっそりファンが1回いなくなって。また新しく水曜日のカンパネラの方にお客さんが付いてきた頃に、今度はシカゴフットワークにいきなり傾倒して、またみんなが「よくわからない」といった感じになったり。何年かに1回、自分のことを認めてくれている人たちのところを離れたくなってしまう時期が来るのかもしれないです。
澤野弘之 自分が好きなアーティストが、あまりにも新しいことに挑戦したりすると、聴かなくなってしまった時もあったりして。例えば映画音楽でもハンス・ジマーが担当しているとなったら、どこかでハンス・ジマー節みたいなものを求めているんですよね。かといって同じことをやっていいと楽観的に言っている訳ではなくて、それを純粋に自分が好きだと思っているのだったら、それをやり続けても良いのかなと思っています。
(おわり)
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