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配信
中森明菜
【歌姫伝説 中森明菜の軌跡と奇跡】 中森明菜で改めて気づくのはデビュー以来、ＣＭやドラマなどのタイアップ曲が大きな話題を占めてこなかったことだ。当時を知る芸能関係者はいう。 【写真２枚】初々しいビキニ姿の中森明菜 等 「当時のアイドルは、１年目は投資で２年目に回収、３年目から利益を上げていくのが理想のスタイルでした。つまり、１、２年目はドラマ出演や主題歌、ＣＭ出演やタイアップで知名度を高めていくことが所属プロやレコード会社の考える手法でした。松田聖子もデビュー曲『裸足の季節』は資生堂の洗顔クリーム『エクボ』のＣＭ曲で話題となりました。明菜がデビューした年の『花の８２年組』も、小泉今日子は『あんみつ姫』（フジテレビ系、８３年）に出演して女優としても認知を高めたし、堀ちえみも主演した『スチュワーデス物語』（ＴＢＳ系、８３年）で決めゼリフだった『教官！』や『ドジでのろまな亀』は当時の流行語となりました。松本伊代にしても出演したドラマ『私は負けない！ ガンと闘う少女』（ＴＢＳ系）の主題歌『時に愛は』が大ヒット、早見優もコカ・コーラのＣＭ曲となった『夏色のナンシー』で大ブレークしました。つまり、新人アイドルにとってドラマやＣＭは知名度を高める基本的な手段だったのです」 そしてこう続ける。 「明菜の場合、所属事務所やレコード会社の実績もなかったこともあり、ドラマやＣＭはほぼ無縁でしたし、テレビの音楽番組への出演も限られ、もっぱらアイドル誌でのグラビア展開やラジオでの皿回し（レコード・プロモーション）、有線放送、さらには地道な全国キャンペーンで知名度をアップさせてきたのです。それが２枚目の『少女Ａ』がブレークしたことで一気に存在感を高めた。つまり、それまでのアイドルの売り方を根底から突き破ったとも言えるかもしれません」 とはいえ、「富士ヨット学生服」（明石被服興業）や「ミニコピア」（キヤノン）、「キヤノファックスミニ」（同）、「エッセンシャル キューティクル・ケアシャンプー」（花王）など何本かＣＭにも出演していた。 しかし、「リリースする作品に比べて、ＣＭのほうはインパクト的にも乏しかった」と前出の芸能関係者はいう。 ワーナー・パイオニア（現ワーナーミュージック・ジャパン）で明菜の制作と宣伝を統括していた寺林晁（現エイベックス・エンタテインメント・レーベル事業本部アドバイザー）は、デビュー３年目を明菜の転換期と考えていた。最終的な決断は当時、邦楽部部長だった折田育造氏（後にワーナーミュージック・ジャパン、ポリドール代表取締役社長＝２０２１年９月没）だったが、明菜の制作現場を一新し、ディレクターに洋楽部のエースだった藤倉克己（現フリー音楽プロデューサー）を抜擢したのも、その一つだった。 さらに、「１９８４年でしたが、ＴＢＳの単発のドラマでしたが『恋はミステリー劇場』（水曜ドラマ・スペシャル）のエンディング曲で『リ・フ・レ・イ・ン』（『北ウイング』のカップリング曲）が使われたのですが、正直ほとんど話題になりませんでした。で、明菜のボーカル、作品、さらには彼女のファッションセンスを生かしたプロモーションはできないかと考えてきた」。 そんな中、気づいたのが親会社である「パイオニア」の存在だった。 「パイオニアには『ランナウェイ』というラジカセがあったのですが、そのＣＭ曲『ランナウェイ』をシャネルズ（その後のラッツ＆スター）がやってミリオンヒットしたんです。思ったのは何でパイオニアが自社ではなく、ライバルのソニー（ＥＰＩＣソニー）のアーティストを起用するのだと…。パイオニアの社長に直訴したんですよ。『自社ブランドのレコード会社がありながら、そのアーティストを起用しないのか』と。すると『確かにそうだ』と。そこで宣伝の担当役員や担当者を集めてもらい、そこで明菜を起用できないかと言ったのです」 寺林の交渉の結果、決まったのがパイオニアのコンポステレオ「ｐｒｉｖａｔｅ Ａ５」のＣＭだった。 ＝敬称略 （芸能ジャーナリスト・渡邉裕二） ■中森明菜（なかもり・あきな） １９６５年７月１３日生まれ、東京都出身。８１年、日本テレビ系のオーディション番組「スター誕生！」で合格し、８２年５月１日、シングル「スローモーション」でデビュー。「少女Ａ」「禁区」「北ウイング」「飾りじゃないのよ涙は」「ＤＥＳＩＲＥ―情熱―」などヒット曲多数。ＮＨＫ紅白歌合戦には８回出場。８５、８６年には２年連続で日本レコード大賞を受賞している。
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