マニアに“刺さる”レコード漫画『音盤紀行』はどうやって生まれたのか。作者・毛塚了一郎さんインタビュー(PHILE WEB) – Yahoo!ニュース – Yahoo!ニュース

POP


IDでもっと便利に新規取得
ログイン
現在JavaScriptが無効になっています
Yahoo!ニュースのすべての機能を利用するためには、JavaScriptの設定を有効にしてください。
JavaScriptの設定を変更する方法はこちら
配信
(写真:PHILE WEB)
音楽をテーマにした作品は多くあるが、そんな中、レコードをテーマにした漫画があることをご存知だろうか。KADOKAWAの漫画誌「青騎士」で連載中の『音盤紀行』という作品だ。 作中のレコード屋には見たことあるようなジャケがいっぱい 5月20日には待望の第1巻が刊行。レコード、そしてレコード屋愛のあふれる内容は音楽ファン・レコードファンにも刺さっているようで、作者にとって初の商業誌単行本ながら、早くも重版が決定したという。 実際に読んでみると、レコード屋独特の空気感、臭いのようなものが濃く伝わってくる。この作者、ガチだ。是非とも話を聞いてみたいということで、作者の毛塚了一郎先生にインタビューをさせていただいた。 ■60's洋楽ロックからレコードの道へ ーー毛塚先生は1990年生まれとのことなので、世代的には決してレコードに馴染みが深いわけではありませんよね。どのようなきっかけでレコードを聴くようになったのでしょうか? 毛塚了一郎先生(以下:毛塚):音楽自体が昔から好きで、家の近所にあったお店で、よく中古CDを買い漁っていたんです。江古田の「音虫」さんという、もう閉店しちゃったお店なんですけど、そこはどちらかといえばレコードがメインのお店だったんですね。 最初はCDしか見てなかったのですが、大学生になったあたりでビートルズなど昔の洋楽を聴くようになって、「こういう音楽をレコードで聴いたらどうなんだろう」とレコード棚を覗くようになったのがきっかけです。 ーー毛塚先生が大学生の頃ということは、大体10年ちょっと前くらいでしょうか。ということは、今のようにアナログレコードが流行する前ですし、なんならiPodの全盛期くらいですよね。 毛塚:中学・高校の頃は当時の邦楽ロックなどを聴いていましたけど、大学生になってからは彼らに影響を与えた、起源になった音楽を遡っていく方に夢中になっていたので、そう考えるとレコードに辿り着くのも自然な流れだったのかなと思います。 ーーなるほど。今もビートルズなどの名前が出てきましたが、好きな音楽ジャンルとなると、具体的にどのあたりなんですか? 毛塚:ジャンルは色々ではありますが……昔からロックをよく聴いていましたから、今でも中心はロックですね。洋楽だと60年代くらい、ちょうどビートルズあたりの世代を最初に好きになって、そこから70年代、80年代と上っていく感じで聴いていました。 あと、中学生くらいの頃から沖縄音楽が好きなんですが、そういった流れもあってか、民族音楽も好きなんです。 ーーなんでも一時期は南米のプログレにハマっていたとか? 毛塚:南米のロック関係は面白いですよ。ビートルズとかが入ってきた時代から始まって、そういう英米の影響を受けながらも自分達のアイデンティティのある音楽を作ろう、という精神性があって。日本のロックもそういう時代を経ての今じゃないですか。なので最近は民族音楽と英米のポップミュージックの掛け合わせ、みたいな音楽が好きだったりします。 ーー日本でいうシティポップの南米バージョン、といった感じでしょうか。かなりディープですけど面白そうですね……。 ■レコード屋ごとの“色”の違いに面白さがある ーーレコードというと、人によってはかなり強いこだわりを持っていたりもしますが、毛塚先生はなにかこだわりなどお持ちですか? 毛塚:オーディオ的にこう、というこだわりはまだあまりないのですが、「このレコードはどのお店で買ったのか」は全部覚えているようにしています。 最近は色々なレコード店、特に個人経営のお店に足を運ぶようにしていまして、これまでに130店くらいに行ったのですが、個人店ってそれぞれに傾向があるじゃないですか。どんなジャンルを揃えているか、どんな雰囲気なのか、というような。そういうお店ごとの“色”の違いが面白いところだと思うんですよね。 そういうお店の色を記憶しておけば、買ったレコードを聴きながら「これを買ったお店はこうだったな」と思い出すことができますし、実際、漫画を描くときにも役に立っている部分があります。 ーー確かに『音盤紀行』を読んでいても、レコード愛と同時に“レコード屋愛”を強く感じました。ちなみにお好きな店、印象に残っている店などはありますか? 毛塚:やはり江古田の音虫さんは印象深いですね。CDやレコードの他にもクラシックカメラだったり、漫画雑誌の「ガロ」だったりとサブカル系な物を置いているところで、小さいお店でしたが原体験という意味でもよく覚えています。当時はそこと、「ココナッツディスク」さんの江古田店によく行っていました。 あと、ここも閉店しちゃいましたけど、渋谷の「レコファン」さんもよく覚えています。すごく大きなお店でしたから全部見て回るのが大変で、毎回途中で疲れて帰っちゃってましたね(笑)。 他にも荻窪にある「月光社」さんは思い出深いですね。荻窪の学校に通っていたので、ずっと横目に見ながら通学していたんですけど、レコードを聴くようになって初めて入ってみたら、レコード針の販売ケースのような昔ながらのお店にしかないようなアイテムがいっぱいあって。ああいう昭和のレコード屋の雰囲気を残している場所ってあまりないので、あれば行ってみたいなと思っています。 ーーなるほど。しかし今の時代、音楽を聴くこと自体はサブスクなどで簡単、かつ手軽にできますよね。そんな中、毛塚先生にとって“あえて”レコードを選ぶ魅力とはなんでしょうか? 毛塚:個人的には、ジャケットの印刷やレーベルのデザインなど、全部をひっくるめた製品としてのレコードに魅力を感じているのかな、と思います。僕は大学でデザインを学んでいたので、当時、それらをひとつのモノとしてパッケージしたデザイン性に興味を惹かれた部分もあったのかなと。 それに、盤をセットして針を落として……と色々な作業を経て音楽を聴く、という行為も好きですね。サブスクやCDのようにボタン押して再生、というわけにはいかないですし、管理も大変だったりしますが、そういう手間のかかるところが結構好きだったりします。 毛塚先生が語る『音盤紀行』のこだわりとは? ■楽しんでもらうためには「マニアックすぎないこと」が大事 ーーここからは作品のことについてお聞かせいただければと思います。改めて考えてみるとレコードを題材にした漫画って意外とないですが、『音盤紀行』はどのような経緯で生まれたのでしょうか。 毛塚:元々僕は同人誌でレコードの漫画を描いていたんです。2015、6年くらいから描き始めたんですが、ちょうどストーリーを描くことを意識し始めた頃だったので、好きな題材を選びたい、ということでレコード屋をテーマに描いてみたら、自分の中で感触が良かったんです。それで描き続けていたら今の担当編集さんから声をかけていただいて……。 担当編集:青騎士は昨年4月に創刊した雑誌なのですが、僕はレコード同人誌の前から毛塚先生の漫画を読んでいたので、創刊にあたって、ぜひ毛塚先生に描いてほしかったんです。それでお声がけして、何を描くかとなったとき、やっぱりレコードかな、と。僕も音楽好きなので、やるしかないなとなりまして。 毛塚:最初にお会いしたときに音楽の話もしていたのですが、この担当さんとなら音楽やレコードのこともディープなところまで突っ込んで話せるなと感じたので、商業でやってみようかとなりました。多分、担当が別の方だったら描いていなかったと思います。 ーー確かに作者ひとりが詳しかったとしても、担当編集さんがついていけなかったら商業作品としては厳しいですよね。 毛塚:担当さんとは基礎的な知識がお互いに共有できているので、「SP盤というのはつまり……」みたいなことはすっ飛ばして話をできるんですよね。逆に向こうから「○ページの×コマ目だけドーナツ盤になってますよ」みたいなツッコミが入ったことも(笑)。 ーーまさに音楽・レコード好きな2人が組んだからこその作品なわけですね。ただ、ストーリー的にはレコードのうんちくを語ったり、知る人ぞ知る名盤を取り上げたりするわけでもなく、かなりマニア色は薄めな印象があります。 毛塚:マニアックにすることはできますけど、それだと伝わる相手が絞られてきちゃいますよね。やっぱり漫画として面白いと思っていただけることが1番嬉しいので、音楽ファン、レコードファン以外の方にも楽しんでいただけるような作品にする、ということは意識しています。 ーーなるほど。 毛塚:担当さんもマニアックだからこそ、「この用語はちょっと難しすぎませんか?」といった調整ができるんですよね。なので1巻の内容は、音楽への純粋な情熱みたいなものが1番感じられるようにと意識して作りました。うんちくやマニアックなネタも、限られたページの中で効果的に見せつつ、なおかつ物語も進めていくことって結構大変なので、入れるとしても1話に1ネタくらいで留めるようにしています。 ーーやろうと思えばディープでマニアックな話も描けるけど……。 毛塚:描きたいですけど……。やっぱり漫画にとってはキャラクターの魅力が大事な要素だと思いますので、レコードは共通したテーマとして据えて、キャラクターのストーリーをメインにすることが、1番たくさんの方に楽しんでいただける作品の土台になると思っています。 ーー超マニアックなのもそれはそれで読んでみたい……。おっしゃる通りストーリーは普遍的な一方、お店に並んだレコードのジャケットだったり、壁に貼られたポスターだったりに“ガチさ”を感じます。 毛塚:そういうちょっとしたディティールの部分はどんどんマニアックになっていいと思っているので、そういうところでマニアポイントを発散させています(笑)。 担当編集:ネーム(漫画の設計図)段階では特に描かれていないので、僕も途中で見に行ったり、完成原稿を見たりしながら「マニアックだな〜」と思っています(笑)。大筋には関係ないところですし、嬉しい人には嬉しいところですからね。 ーー確かにマニア的には、こういうディティールのこだわりを隅々までチェックするのが楽しかったりします。 毛塚:こだわりで言うと、実は「毎回乗り物を描く」という裏テーマがあったりします。なので本体表紙(カバーを外した表紙部分)は作中に登場した乗り物をデザインしています。 青騎士という熱量ある雑誌の中で生き残るためには、自分が熱量を持って描けるものを選ばないといけないので、レコードに加えて乗り物にこだわっています。色々な場所にどんどん動いていくようなストーリーが作りたい、という思いがあってタイトルに「紀行」とつけたので、そこのテーマとも繋がってくるんですよね。 ーージャケやポスター以外にも、至る所にマニアポイントが隠されていると。内容もさることながら、単行本のデザインもかなりこだわって作ってありますよね。 毛塚:表紙のタイトルとジャケには「UV厚盛」という、UVインクを紫外線で固めて立体感を持たせる加工を施してもらいました。紙にもこだわっていたりと、手に取って、お家の本棚に長く置いていただけるような本に仕上がっているかと思います。 内容もそうですけど、レトロに振り切って懐古趣味にはならないよう気をつけています。もっとも、最初は「単行本のデザインはすごく古い感じにしてほしい」と要望を出して、担当さんに却下されたんですが(笑)。 2巻以降ではどんなストーリーが展開される? ■1巻に出てきたキャラたち、今後も登場するかも? ーー1巻の話は現代日本、70年代東欧、70年代フィリピン、70年代北海、近未来アメリカと国も時代もバラバラでしたが、オムニバス形式になったのは何か理由があるんですか? 毛塚:同人誌のときはひとつのレコード屋を軸に話を展開していたんですが、それだとできない話も出てきていたんです。ちょうどそんなタイミングで担当さんに声をかけていただいたこともあって、同人誌ではできなかったいろんな国、いろんな場所の話を描きたい、という想いは最初の頃からありました。 バラバラな中にもレコードという共通の軸を通して、その中でストーリーを作っていくことが1巻のコンセプトでしたが、いただいた感想などを読んでいると、そこがちゃんと伝わっているようで良かったです。 ーーということは、2巻からはまた別の軸に沿った話が始まるのでしょうか? 毛塚:どうでしょう(笑)。最初は1話完結でやっていこうと思っていましたけど、描いているうちにキャラクターへの愛着も出てきたので、これで終わらせるのも忍びないんですよね。なので新しいストーリーもやりつつ、再登場するキャラクターも出てくるかもしれませんね。 担当編集:単行本に付いているアンケートハガキを送ってくださる方も結構いらっしゃって、見ていると「このキャラが好きでした。続きが気になります」という感想も多いんです。それも今後の参考にさせていただけたらと。海賊ラジオの話は続きやりますよね? 毛塚:海賊ラジオはやります。「日本の話はこのキャラクター」と各国の代表選手を決めて進めていくのも良いかもしれませんね(笑)。 ーー余談なんですけど、このアンケートハガキ、オール手書きで送るのもったいないなって思っちゃうんですが……。 担当編集:そういう場合はコピーして使っていただいても大丈夫です。読者の方々のご意見を直接見られる機会ってそう多くはないので、コピーでも送っていただけますと非常に嬉しいです。 ーーそれならオリジナルは保管しつつ感想も送れますね! 是非やらせていただきます! それでは最後に、2巻以降の構想などありましたらお教えください。 毛塚:さきほども言った通り、1巻では音楽への純粋な情熱を前面に出した内容にしていましたが、2巻以降の方針としてひとつ考えているのが、もう少しキャラクターに逆境を与えるということです。音楽やレコードに関わるとなると、必ずしも良いことばかりではないと思いますから、何かしらの試練にぶつかって成長していく様は描きたいと思っています。 担当編集:音楽にまつわる大きな感情だったり、喜びだったりを描いてほしいなと思っています。毛塚先生には何千年という歴史があって、沢山の人たちの想いが積み重なった“音楽”という大きな文化を背負った漫画を描いてほしいですね。 毛塚:音楽を背負うのは難しいですけど(笑)。でも、違う場所、違う時代のキャラクターたちを描いているわけなので、それぞれの音楽に対する想いも違ってくると思うんです。 今の日本はサブスクなりレコードなりと音楽を聴くことに恵まれていますけど、その一方、レコード1枚も満足に買えない人もいるわけで、それぞれの想いを描くためには色々なことを汲まないといけない。大変なことですが、キャラクターの一人ひとりが音楽に対する想いを全うして動いてくれたら1番いいのかなと思います。 ーーありがとうございます! 今後の展開も期待しています! 音盤紀行 1巻 著者:毛塚 了一郎 定価:792円(本体720円+税) 発売日:2022年05月20日 ISBN:9784047370906
編集部:杉山康介
参院選特集2022
物価高対策や年金、あなたの考えに合うのは?「政党との相性診断」
auの通信障害、西日本は復旧作業終了。東日本は17時30分頃
au通信障害は70%程度回復
地下鉄、バスにコンビニも… サービス終了相次ぐフリーWi-Fiの「現在地」
丸一日以上続くauの通信障害、7月3日の朝に復旧へ–西日本は7時15分、東日本は9時半【追記あり】
KDDI、3日11時から「au通信障害」で記者説明会
「囲碁AI」の最強時代到来、プロ棋士の存在価値は薄れてしまうのか?
体感温度が15℃下がる!?暑い日に使いたい超快適サーモデバイス3選
KDDIの通信障害、東日本も17時30分頃に復旧予定
7カ月間充電なしで走行可能なEVが誕生 価格は“超プレミアム”に
「ガンブリア爆発」は"爆発"じゃない!? じわじわ進んだ生物多様化と生存競争
Copyright © 2022 Ongen Publishing 無断転載を禁じます。

source

最新情報をチェックしよう!
広告
>すべての音楽情報をあなたに・・・

すべての音楽情報をあなたに・・・

インターネットで情報を探すとき、あなたはどうやって探しますか?いつも見ているページで情報を得る?検索エンジンで好きなアーティスト名を検索してでてきたものを見る?本当にそれであなたの欲しい情報は手に入れられていますか?

CTR IMG