トップガン続編で思い出すサントラブーム <さんいん洋楽愛好会> – 山陰中央新報社

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 映画「トップガン マーヴェリック」が大当たりしている。1986年に公開された「トップガン」の36年ぶりとなる続編だ。前作は主演トム・クルーズの出世作であると同時に、洋楽ファンにとっては80年代のサウンドトラックブームを象徴する作品の一つ。人気歌手が歌う映画の主題歌、挿入歌のヒットが相次いだ時代だった。続編で流れた前作の主題歌「デンジャー・ゾーン」に興奮を覚えながら、10代だったあの頃に飛んで行った。
 ブームをつくったのは83年のダンス映画「フラッシュダンス」だろう。昼は溶接工として働き、夜は酒場で踊りながらダンサーを目指す主人公を新人女優ジェニファー・ビールスが演じた。アイリーン・キャラが歌う主題歌「フラッシュダンス…ホワット・ア・フィーリング」とダンスシーンで印象的に使われたマイケル・センベロの「マニアック」の2曲が全米ヒットチャートの1位に。ほかにドナ・サマー、ローラ・ブラニガン、キム・カーンズらの挿入歌を収めたアルバムも1位に輝いた。
 怪物サントラを生み出したのが翌84年の青春映画「フットルース」。ケニー・ロギンスの主題歌とデニース・ウィリアムスの「レッツ・ヒア・イット・フォー・ザ・ボーイ」の2曲が1位を獲得し、ラヴァーボーイのマイク・レノとハートのアン・ウイルソンの豪華デュエット「パラダイス~愛のテーマ」も人気を集めた。アルバムはなんと10週連続の1位。ハスキーなボニー・タイラーの「ホールディング・アウト・フォー・ア・ヒーロー」は、麻倉未稀の日本語カバーがテレビドラマ「スクール☆ウォーズ」に使われ、日本でも売れた。
 84年はほかに、今年続編が上映されたおばけ退治の映画「ゴーストバスターズ」(レイ・パーカー・ジュニアの主題歌が1位、アルバム6位)や、エディ・マーフィ主演の刑事コメディー「ビバリーヒルズ・コップ」(元イーグルスのグレン・フライの主題歌「ヒート・イズ・オン」が2位、アルバム1位)のサントラが当たった。プリンスの自伝的主演映画のサントラであり、プリンス・アンド・ザ・レヴォリューションのオリジナルアルバムでもある「パープル・レイン」(シングル1位2曲、アルバム1位)という傑作も生まれた。
 大ヒットとはいえないが、同じ84年のロックンロール寓話「ストリート・オブ・ファイヤー」のサントラは、マイケル・パレやダイアン・レイン、まだ無名だったウィレム・デフォーらが演じる物語と音楽が一つになり、ブームの中でも忘れがたい作品。大げさなくらいにドラマチックな主題歌「今夜は青春」に心を揺さぶられ、後にローン・ジャスティスのボーカルとして活躍するマリア・マッキー、ダン・ハートマン、ライ・クーダー、フィクスなどの歌に聴き入った。
 85年はシンディ・ローパーが主題歌を歌った冒険映画「グーニーズ」、マドンナやジャーニーが参加したスポーツ青春映画「ビジョン・クエスト/青春の賭け」、記憶喪失状態で発見されてデビューした(と宣伝された)英国歌手ジョン・パーを起用した青春映画「セント・エルモス・ファイア」とブームは続き、86年の「トップガン」登場となる。「デンジャー・ゾーン」を歌ったケニー・ロギンスは「フットルース」に続くナンバー1はならず2位に終わったが、人々の記憶に深く刻まれた。ベルリンのバラード「愛は吐息のように」が1位になり、アルバムも頂点に立った。
 77年のディスコ映画「サタデー・ナイト・フィーバー」、78年のミュージカル映画「グリース」のサウンドトラック2作品の大成功(78年の年間アルバムチャート1、2位作品)を経て迎えた80年代。音楽のビデオクリップを流し続けるテレビ局MTVが81年に米国で開局し、音楽と映像がより強く結びついた。そんな流れの中で生まれたサントラブーム。相乗効果で映画もアルバムも売ろうというショービズ界の戦略だったに違いない。
 島根の少年もまんまと乗せられ、映画が公開されれば可能な限り見に行き、サントラが発売されるとレコードを買うか借りるかして耳を傾けた。時には、主人公が訪れたバーの店内で一瞬流れただけ―みたいな「こんな曲使われていたっけ?」的な曲が入ったアルバムもあったが、オムニバスの楽曲集として十分に楽しめた。映画のストーリーは置いても、人気歌手や新人歌手を集めて、売れるアルバムを目指したのだろう。
 そうやって”大量生産”された映画音楽の中から、元の映画が忘れ去られたとしても魅力を放ち続ける名曲が生まれた時代でもあった。(洋)
 ※曲名/歌手(最高位)=映画名(制作年)
■エンドレス・ラブ/ダイアナ・ロス&ライオネル・リッチー(1位)=エンドレス・ラブ(81年)
■誰かが彼女を見つめてる/ジャクソン・ブラウン(7位)=初体験リッジモントハイ(82年、フィービー・ケイツ出演)
■愛と青春の旅立ち/ジョー・コッカー&ジェニファー・ウォーンズ(1位)=愛と青春の旅立ち(82年)
■アイ・オブ・ザ・タイガー/サバイバー(1位)=ロッキー3(82年)
■ファー・フロム・オーヴァー/フランク・スタローン(10位)=ステイン・アライブ(83年)
■見つめて欲しい/フィル・コリンズ(1位)=カリブの熱い夜(84年)
■パワー・オブ・ラブ/ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース(1位)=バック・トゥ・ザ・フューチャー(84年)
■ネバーエンディング・ストーリーのテーマ/リマール(17位)=ネバーエンディング・ストーリー(84年)
■ラブ・キルズ/フレディ・マーキュリー(69位)=メトロポリス(84年、約60年前の無声映画に人気歌手の音楽をつけた作品)
■ドント・ユー?/シンプル・マインズ(1位)=ブレックファスト・クラブ(85年)
■007 美しき獲物たち/デュラン・デュラン(1位)=007/美しき獲物たち(85年)
■セパレート・ライブス/フィル・コリンズ&マリリン・マーティン(1位)=ホワイト・ナイツ/白夜(85年)
■セイ・ユー・セイ・ミー/ライオネル・リッチー(1位)=ホワイト・ナイツ/白夜(85年)
■バーニング・ハート/サバイバー(2位)=ロッキー4/炎の友情(85年)
■グローリー・オブ・ラブ/ピーター・セテラ(1位)=ベスト・キッド2(86年)
■ゲット・タフ~ナイルの宝石のテーマ/ビリー・オーシャン(2位)=ナイルの宝石(86年)
■タイム・オブ・マイライフ/ビル・メドレー&ジェニファー・ウォーンズ(1位)=ダーティ・ダンシング(87年)
■シェイクダウン/ボブ・シーガー(1位)=ビバリーヒルズ・コップ2(87年)
■ココモ/ビーチ・ボーイズ(1位)=カクテル(88年)
■ドント・ウォリー・ビー・ハッピー/ボビー・マクファーリン(1位)=カクテル(88年)
■愛はとまらない/スターシップ(1位)=マネキン(88年)
 ※順位は米ビルボードのヒットチャート
 海外のロック、ポップスの話題を記者がつづります。読者の投稿も歓迎します。オールディーズから最新ヒットまで、大好きな歌やアーティストのこと、思い出のエピソードなどを自由にどうぞ。
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