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配信
中森明菜
【歌姫伝説 中森明菜の軌跡と奇跡】 中森明菜のＣＭで大きな話題となったのがパイオニアのＣＤコンポ「ｐｒｉｖａｔｅ Ａ５」だった。女性週刊誌のベテラン芸能記者が振り返る。 【写真２枚】初々しいビキニ姿の中森明菜 等 「『ＡＬ―ＭＡＵＪ』の時ですから、１９８８年ですね。新型のコンポなので商品自体も話題になったと記憶していますが、ショッキングだったのは明菜が出演したＣＭでした。黒のストッキングにハイヒールを履いた足が映し出され、その後、黒のボディコン姿で踊る生々しい明菜が浮かび上がる…。ジョン・ウォーレンの『プライベート・モーション』に乗って、エキサイティングに踊る明菜は実にセクシーでした。振り返ると洋楽をバックにしていたことも明菜を際立たせる映像になったのかもしれませんね」 その後、「あなたがわたしの、いちばん星。」がキャッチコピーのオリエント腕時計のＣＭにも起用され、２１枚目のシングル「ＴＡＴＴＯＯ（タトゥー）」（８８年５月１８日発売）が使用された。 「腕時計に明菜が軽くキスをするシーンが話題になりました」（芸能関係者）という。 アイドルとしてデビューしたにも関わらず、意外なほどＣＭのイメージが少ないのが明菜だ。 「聖子と明菜は８０年代を代表するアイドルでしたが、聖子に比べて、明菜はいわゆるマスコット的な要素がなかったかもしれません」 とは、当時を知る芸能関係者である。 なぜか？ ワーナー・パイオニア（現ワーナーミュージック・ジャパン）で明菜の担当ディレクターだった藤倉克己（現フリー音楽プロデューサー）は開口一番、「単にＣＭ担当者が起用することを面倒臭いと思っていたのでは…」と苦笑いした。 「とにかく面倒なイメージだったのだと思いますよ。例えば、衣装一つとってもこだわりがありましたからね。ＣＭ制作側が『この衣装を着て…』と絵コンテを持ってきても、明菜が納得しないことが多かったですからね。基本的に自分が納得しないとダメでしたから…。それが結果的にワガママだとか、生意気ということになってしまうのですが。ただ、ＣＭ制作側にイメージや考えがあっても、表現するのは明菜ですから。彼女なりの衣装に対するこだわりが出てくるんです、そこで話し合いが重要になるのですが、なぜか最初から避けてしまう…そんな担当者が多かったように思います」 ワーナーでデビュー前から１年間、明菜の宣伝を担当してきた富岡信夫（現モモアンドグレープス代表取締役）も「彼女はセルフプロデュースにたけていましたから、何でも言うことを聞くアイドルと思うと意思の疎通は図れませんでしたね」と振り返る。 「デビューして間もない頃でしたが、芸能週刊誌が『お宅拝見』という企画を持ち込んできたんです。もちろん、部屋は編集部側が用意するのですが、明菜は納得しなくて、結局撮影は中止になりました。とにかく、衣装でも『（読者は）その人がお気に入りのものを着ていると思っている』『私は、そう思っていたからまねをしたことがあった』と持論を曲げませんでした。しかも当時、ワーナーに所属していた矢沢永吉の大ファンだったこともあって『矢沢さんだって気に入らない衣装は着ないはずです』と言い出したときは、ちょっと驚きましたが、明菜のいうことも確かですからね」 いわゆる「完璧主義者」の明菜ならではエピソードかもしれない。藤倉はいう。 「作品に関しては、もちろん自身のイメージや考えは発言しますが、基本的には僕に任せてくれていましたから、制作過程でもめたことはありませんでした。ただ衣装を含めた表現方法には異常なほどこだわりがありましたね。結局、自身のスタンスを持ちつつも、聖子さんは人当たりが良かったのかもしれませんが、明菜の場合、どうしても妥協は許さないという気持ちを隠し切れない。しかもそういった完璧さを他人にも求めてしまっていたところがあったように思います」 これが、あるいは明菜の「明」と「暗」になったのかもしれない。 ＝敬称略 （芸能ジャーナリスト・渡邉裕二） ■中森明菜（なかもり・あきな） １９６５年７月１３日生まれ、東京都出身。８１年、日本テレビ系のオーディション番組「スター誕生！」で合格し、８２年５月１日、シングル「スローモーション」でデビュー。「少女Ａ」「禁区」「北ウイング」「飾りじゃないのよ涙は」「ＤＥＳＩＲＥ―情熱―」などヒット曲多数。ＮＨＫ紅白歌合戦には８回出場。８５、８６年には２年連続で日本レコード大賞を受賞している。
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