夏はエア・サプライ! 透明感のあるハイトーンボイス <さんいん洋楽愛好会> – 山陰中央新報社

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 夏といえばエア・サプライ。あのペパーミント・サウンドで涼しくなりたい! 2022年の猛暑にそんなことを思っているのは私のような50代以上の洋楽ファンの一部だけだろう。直訳すると「空気供給」となるバンド名、印象的なハイトーンボイス、海と青空のレコードジャケット…。夏に清涼感を届けてくれるイメージで1980年代前半、次から次へとヒット曲を生み、日本でも人気が高かった。
 70年代後半結成のオーストラリアのソフトロック・バンド。透明感のある高音ボーカルが持ち味のラッセル・ヒッチコックと、作詞作曲も担うハスキーボーカルのグラハム・ラッセルという、一方は姓、他方は名のラッセルコンビが主要メンバーだ。80年に「ロスト・イン・ラブ」が米国で3位のヒットを記録してブレークし、82年に5位となった「さよならロンリー・ラブ」まで、米ビルボードヒットチャートで7曲連続してトップ5ヒットを放つ活躍を見せた。
 親しみやすいメロディーと2人のハーモニーが織りなす、優しく切ないラブソングが魅力。洋楽を聞き始めた中学生の頃、ヒットチャートを駆け上ってくる「ロスト・イン・ラブ」を初めて耳にしてどんなに感動したことか。これらのバラードを中心とする楽曲の良さに加えて、ペパーミント・サウンドのキャッチフレーズが表すように、「爽やかな夏の音楽」のメージを全面に打ち出した日本独自の販売戦略が国内人気に拍車をかけた。
 まずはジャケット。アルバム「ロスト・イン・ラブ」の欧米盤ジャケットはピラミッドのような高層ビルを背景に男ばかりのメンバー5人が並ぶ写真だが、日本盤ジャケットは男衆を排除して海を進むウインドサーフィンの写真に差し替えられている。続くアルバム「シーサイド・ラヴ」の欧米盤は山の上に浮かぶ気球の写真を使っているのに対し、日本盤は青空が広がる海上に浮かぶ気球の写真。その次の「ナウ・アンド・フォーエバー」も、欧米盤は夕日を背景に降下するパラシュートの写真なのに、日本盤は青い空をバックにした海上のパラセーリング風景の写真といった具合に、日本盤は徹底的に「海」。インターネットのない当時は、元のジャケットが全然違うことなど多くの人が知るよしもなく、エア・サプライといえば爽やかな海と青空というイメージが列島に定着していった。
 さらに、いくつかの曲は「邦題」という舟に乗せられて強引に波打ち際に運ばれた。例えば、彼ら唯一の全米ナンバー1ヒットの邦題は「シーサイド・ラヴ」。訳せば「浜辺の恋」くらいの意味だ。しかし原題はThe One That You Love。「君が愛する人」といった意味で、海は出てこない。題名にはなくても…と思って歌詞を一語一語調べても海を表すseaやoceanは出てこない。83年に2位になった「渚の誓い」も同様。原題はMaking Love Out Of Nothing At Allで「無から愛をつくること」といった意味になるが、やはり渚(beach)は歌詞にもない。
 もともと清涼感のある歌の魅力を増幅させるイメージ戦略の洗礼を受けた世代は、今でもエア・サプライを聴けば涼しげな海辺の風景が思い浮かび、心地よい潮風を感じてしまう。ありがたき条件反射である。日本盤を手がけた当時のレコード会社の人たちに敬意を表しながら、ベスト盤を聴いて暑い夏を乗り切ろう。
 ところで、高音と低音の2人のボーカルがいて、高音ボーカルの方はカーリーヘアという共通点のあるバンドが同じ頃、日本にいた。クリスタルキングである。考えてみれば、クリスタルというのも透明感があって涼しげな名前。大ヒットした「大都会」(79年)は別にしても、「蜃気楼」(80年)や「セシル」(82年)はエア・サプライ同様、夏や海を思い起こさせるいい曲だった。(洋)
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