再録音続けるテイラー・スウィフト <さんいん洋楽愛好会> – 山陰中央新報社

POP

 米シンガー・ソングライターのテイラー・スウィフトは、コロナ禍のためコンサートをやめて巣ごもりした2020年の1年間に「フォークロア」「エヴァーモア」と2枚ものアルバムを発表し、後者はグラミー賞最優秀アルバム賞(3度目)を受賞するなど、トップ歌手と呼ぶにふさわしい活躍を続けている。その彼女が今、前代未聞の試みを進めている。過去のアルバム6作品の再録音だ。「テイラーズ・バージョン」として、第1弾となる「フィアレス」(08年、2作目)、続いて「レッド」(12年、4作目)の再録音盤を21年に発表。なじみの曲の新バージョンに未発表曲も多く加わった魅力的な”新作”となっている。
 デビュー作「テイラー・スウィフト」(06年)から6作目「レピュテーション」(17年)までの音源の権利を所有していないため、代わりに再録音盤を作って音源の権利を自ら得るのが目的という。元の作品の権利が本人の意に沿わない形で売買されるなど複雑な事情を経て、自らの過去(の作品)を断ち切るような、重い決断に至ったようだ。出来上がった作品は多くのファンに受け入れられ、ヒットした。10代の時に発表した2作目、20代の時の4作目とも、演奏はほとんど変えずに、30代になったテイラーの声だけを「上書き」したような内容。愛聴してきた2アルバム収録の「ラヴ・ストーリー」や「私たちは絶対に絶対にヨリを戻したりしない」といった楽曲を「今」の歌声で聴けるのは新鮮だ。
 ボーナストラックが多いのもうれしい。CDの場合、2作品とも別に1枚が付いていて、それぞれ当時アルバムに収録しきれなかった曲など十数曲が入っている。佳曲ぞろいで、エド・シーランとのデュエット「ラン」(「レッド」のボーナス曲)など、「なぜ今まで世に出なかったんだろう」と思う曲がいくつもある。才能の豊かさをあらためて認識しながら、ボーナスCDも一つのニューアルバムだと思って耳を傾けている。
 アルバム丸ごと再録音といえば、カナダのロック歌手アラニス・モリセットが、爆発的に売れたデビューアルバム「ジャグド・リトル・ピル」(1995年)のアコースティックバージョンを2005年に出したことがあったが、これは発売10周年を記念した企画だった。今回のように過去の作品を一つずつ忠実に再現するような再録音企画は聞いたことがない。
 音楽業界ではストリーミング配信が広まるにつれ、楽曲所有権の価値が高まっているという。そうした状況が背景にあったのだろう。権利を巡るごたごたのことを思えば、もろ手を挙げて喜べる再録音企画ではないと思いつつ、次の「テイラーズ・バージョン」が気になる。5月に出た再録音シングルは「ディス・ラブ」。ということは、この曲を収めた5作目「1989」(14年)が第3弾か。楽しみだ。(洋)
<アルバムリスト>
■テイラー・スウィフト(06年)
■フィアレス(08年)
■スピーク・ナウ(10年)
■レッド(12年)
■1989(14年)
■レピュテーション(17年)
■ラヴァー(19年)
■フォークロア(20年)
■エヴァーモア(20年)
■フィアレス(テイラーズ・バージョン)(21年)
■レッド(テイラーズ・バージョン)(21年)
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