Midnight Grand Orchestra「Overture」発売記念特集|星街すいせい×TAKU INOUE、先駆者が打ち鳴らす壮大な“序曲” – 音楽ナタリー 特集・インタビュー – 音楽ナタリー

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Midnight Grand Orchestra「Overture」 PR
2022年7月27日
Midnight Grand Orchestraが、1stミニアルバム「Overture」を7月27日にリリースした。
ホロライブ所属のVTuber・星街すいせいと、サウンドプロデューサー・TAKU INOUEによる“ユニバースミュージックプロジェクト”として今年3月に始動したMidnight Grand Orchestra。これまで両者はさまざまな形でタッグを組んできたが、ユニットという形で楽曲を発表するのはMidnight Grand Orchestraが初めてとなる。この記事では、SF的な世界観を持った作品の「Overture」について、そして同ユニットが音楽シーンにもたらす可能性について考察する。
文 / 柴那典
Midnight Grand Orchestra「Overture」は、4月に1stシングルとして発表された「SOS」と先行配信された「Highway」を含む全7曲入りのミニアルバム。すでに公開されている2曲のミュージックビデオやティザー映像が示唆しているように、その楽曲群は1つのコンセプチュアルな世界観に基づいている。
そこにあるのは、スペースオペラ、つまり宇宙を舞台にしたSF冒険活劇的な物語性だ。これまでダンスミュージックをベースにしながら「ALIENS EP」など“宇宙”をテーマにした作品を形にしてきたTAKU INOUE、そしてその名の通り“星”をモチーフにしたVTuberである星街すいせいだからこそ生まれたコンセプトと言える。おそらく、サウンドプロデューサーとボーカリストという立場の違いを超えて両者に共通する価値観や個性がそこにあったからこそ、Midnight Grand Orchestraというプロジェクトが始動したのだろう。
2人が初めてタッグを組んだのは2021年7月に「TAKU INOUE&星街すいせい」名義でリリースされた「3時12分」。そもそも数々のゲームサウンドの制作や楽曲を手がけコンポーザー / DJとして活躍してきたTAKU INOUEが、ソロアーティストとして活動するにあたって、デビュー曲で組むパートナーに選んだのが星街すいせいだった。
「3時12分」リリース時のインタビューで「まずボーカリストが決まって、この声を生かせる曲にしようという思いはあった」とTAKU INOUEが語っていた通り、芯が強く表現力が高い星街すいせいの歌声に惹かれたことが最初の理由だったようだ(参照:TAKU INOUE×星街すいせい「3時12分」インタビュー)。
そして2021年9月にリリースされた星街すいせいの1stアルバム「Still Still Stellar」のリード曲「Stellar Stellar」をTAKU INOUEが制作。上記のインタビューによるとオファーがあったのはほぼ同時だったそう。しっとりとエモーショナルな「3時12分」に対して、こちらはドラマティックで派手な展開を持つ1曲になっている。
この曲のポイントは星街すいせい自ら作詞を手がけていることにもある。リリース時のインタビューで星街は「イノタクさんが歌詞を書く予定だったんですけど、『私に書かせてください』と打診して、歌詞を書かせていただくことになりました」と語っている(参照:星街すいせい「Still Still Stellar」インタビュー)。
こうした経緯を経て両者のクリエイティブな面での意気投合があったことがMidnight Grand Orchestraの結成へとつながっている。「Overture」でも、いくつかの楽曲ではTAKU INOUEと星街すいせいが共同で作詞している。Twitterスペースで開催された2人のトークで明かされたことによると、TAKU INOUEが曲の核となるフレーズを用意し、それに星街すいせいが肉付けしていくような制作手法をとっているようだ。
サウンド面では、Midnight Grand Orchestraと名乗るだけに、オーケストラのような重厚感や壮麗さもイメージしたエレクトロニックポップが主体になっている。ポップスとしてのわかりやすさよりも刺激的な展開を打ち出した“攻めた”アレンジを追求しているのも特徴だ。それがもっとも表れているのが1曲目の「Never Ending Midnights」だろう。ハンドクラップと声による荘厳な始まりから「終わらない夜をあげる」と星街すいせいが歌うところで変則的なビートとシンセフレーズが絡み合い、一気にテンションを上げる。
「SOS」は爽快なフューチャーベースのビートとダイナミックなストリングスが印象的なエレクトロナンバー。歌詞に「アレグロ背負って」というフレーズがあるが、「アレグロ」というのはMidnight Grand OrchestraのアーティストビジュアルやMVで星街すいせいが持っている“武器”のことを指すようだ。
その「アレグロ」をタイトルにした「Allegro」はドラムンベースのビートを持つ1曲。やはりストリングスが強い存在感を放っている。曲後半の畳みかけるような展開とともにエネルギッシュになっていく星街すいせいのボーカルも聴きどころだ。
「Rat A Tat」はファンキーなベースラインがチャームポイントのディスコナンバーだ。フィルターハウスのテイストを持つフレーズがさまざまなポイントにちりばめられているのは「Discovery」期のDaft Punkへのオマージュといったところだろうか。オーケストラのチューニングに和音が重なっていくインストゥルメンタルの「Tuning (interlude)」を挟み、「流星群」はエレピの揺れるようなサウンドにローファイなビートを組み合わせたチルポップな1曲。吐息混じりのボーカルが生かされている。
「Highway」は8ビートとギターのアルペジオを軸にした曲。2000年代ギターロックのミディアムバラードを彷彿させるようなサウンドをMidnight Grand Orchestraなりのやり方でよみがえらせたような感もある。Twitterスペースでのトークによると、TAKU INOUEが高校生だった20年ほど前に書いた曲らしい。この曲だけでなくすべての収録曲がそうなのだが、3、4分の長さでありながらビートやアレンジのスタイルがどんどんと展開し、飽きさせない曲調になっているのもポイントだ。
ここ数年で大きく拡大してきたVTuberの音楽シーン。特に昨年あたりからはVTuber人気の拡大とともに、サウンドプロデューサーが音楽的な実験精神にあふれた野心的な楽曲を提供することが増えてきていた。先駆者となったキズナアイの影響もあり、クラブミュージックやネットレーベル、ボーカロイドなどのネットカルチャーとも接続する文脈を持ったアーティストが作り手として活躍するシーンとなってきた。
例えばホロライブに所属する宝鐘マリンにYunomiが提供した「Unison」も、そうしたタイプの楽曲として挙げられるだろう。ミニマルテクノのシンプルなビート、ボーカルのリバーブの濃淡でサイケデリックな曲展開を生み出す挑戦的な1曲だ。
高いラップスキルと迫力ある声を持つホロライブEnglish所属のMori Calliopeもシーンを牽引する1人だろう。今年4月にはDECO*27が楽曲を提供した星街すいせいとのコラボナンバー「CapSule」をリリース。ダークなヒップホップテイストの楽曲で英語と日本語が入り混じった2人のラップを聴かせる1曲だ。
また、星街すいせいは4月1日にシングル「TEMPLATE / Wicked feat. Mori Calliope」をリリースしている。「TEMPLATE」はキタニタツヤが作詞・作曲・編曲を担当、「Wicked」はGigaが作編曲を担当し、Mori Calliopeがリリックを手がけフィーチャリングに参加した1曲だ。
ほかにも、湊あくあなど歌唱力が高く評価され音楽活動に力を入れるVTuberたちがどんどん頭角を現している。こうして「シンガーとして音楽に本腰を入れるVTuber」と「ネットカルチャーから活動領域を広げるサウンドプロデューサー」の表現欲求が交わってきたことが、ここ数年のVTuberの音楽シーンの領域拡大の推進力となってきた。
そして、その一角として存在感を放ってきたのが星街すいせいとTAKU INOUEである。そう考えると、両者がユニットとして結託したMidnight Grand Orchestraは、新たなクリエイティブの形を打ち出す1つの先駆作になるのではないかと思っている。
8月20日には初のバーチャルライブ「Overture」も開催される。こちらもかなり大がかりでサイバーパンクな宇宙都市空間の演出が用意されているようだ。期待したい。
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2018年よりYouTubeを中心とした配信活動を行っているバーチャルYouTuber。2019年5月よりホロライブプロダクション内に設立されたレーベル・イノナカミュージックに所属したのち、同年12月に女性バーチャルYouTuberグループ・ホロライブに移籍。2021年7月配信リリースのTAKU INOUEのメジャーデビュー曲「3時12分 / TAKU INOUE&星街すいせい」でボーカルを担当した。9月に1stフルアルバム「Still Still Stellar」を発表し、10月には1stソロライブ「Hoshimachi Suisei 1st Solo Live “STELLAR into the GALAXY” Supported By Bushiroad」を開催した。2022年7月には1stソロライブの模様を収めたBlu-ray「Hoshimachi Suisei 1st Solo Live “STELLAR into the GALAXY”」がリリースされた。
星街すいせい | 所属タレント一覧 | hololive(ホロライブ)公式サイト
星街すいせい ホロライブ0期生 (@suisei_hosimati) | Twitter
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星街すいせいの記事まとめ
サウンドプロデューサー / コンポーザー / DJ。「アイドルマスター」シリーズや任天堂とCygamesによるアクションRPGアプリ「ドラガリアロスト」などゲームの楽曲をはじめ、DAOKO、Eve、ナナヲアカリ、STU48、月ノ美兎、HOWL BE QUIETといったアーティストのサウンドプロデュースや楽曲制作を手がけている。2021年7月にTOY’S FACTORY内のレーベル・VIAより「3時12分 / TAKU INOUE&星街すいせい」でメジャーデビュー。同年12月にはコンセプトEP「ALIENS EP」をリリースした。
TAKU INOUE オフィシャルサイト
TAKU INOUE (@ino_tac) | Twitter
TAKU INOUE | YouTube
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