おいしくるメロンパン | Skream! ライヴ・レポート 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト – Skream!

POP

JavaScript を有効にしてご利用下さい.

LIVE REPORT
Japanese
Skream! マガジン 2022年08月号掲載
2022.06.09 @LIQUIDROOM ebisu
Reported by 中尾 佳奈 Photo by 郡元菜摘
6thミニ・アルバム『cubism』を引っ提げたツアー”おいしくるメロンパン cubism tour -サンセット・フィルムショー-“。その初日公演はソールド・アウト、メンバーの”大好きな箱”だという恵比寿LIQUIDROOMで行われた。初夏の6月頭、原 駿太郎(Dr)の言葉を借りると”夏の入口”に立った彼らが、疾走感溢れる楽曲で満員のフロアに爽やかな風を吹かせたかと思えば、真夏を先取りするかのごとく熱い演奏で会場の熱気をグッと高めていく。ポップにもロックにも振れる、そのコントラストが映えるライヴであった。

爽やかなSEに乗せて登場すると、一瞬の沈黙をギターが破り、ドラムの合図から勢い良く「透明造花」がスタート。一気にアグレッシヴなロック・サウンドが会場を包み、早速観客の手が挙がっていく。続いて「epilogue」、人気曲「look at the sea」、そして代表曲「色水」と畳み掛け、幕開けからフル・スピードで駆け抜けた。一糸乱れぬ緻密な掛け合いでバシッとキメる演奏とは裏腹に、ゆるっと始まった和やかなMCにほっとひと息ついていると、話はミニ・アルバム『cubism』の話題に。”今まで以上にたくさんの人に届けたいと思って作った”とナカシマ(Vo/Gt)から本作の制作スタンスについて語られると、同作収録の「Utopia」を披露。その言葉どおりキャッチーな印象に仕上がっている本楽曲だが、メロディのポップさに反してエッジの効いたベース・ソロや間奏の暴れるようなドラムと、尖ったアレンジがライヴでより輝きを増し、感情の乗ったヴォーカルからは”届けたい”という思いがひしひしと伝わってきた。

峯岸翔雪がアップライト・ベースに持ち替え披露された「水びたしの国」では、クリーンなサウンドにコーラスワークが映え、詩的で美しい歌詞がよりダイレクトに響く。ここまでバンドの熱量に応えるように、声が出せないぶん手を挙げ盛り上がりを示してきたフロアもいったんクール・ダウン。演奏の一音一音、言葉のひと言ひと言に耳を澄まし聴き入っているようだった。そして幻想的な水の音がフロアを包み込み「亡き王女のための水域」へ。終始青で統一された照明も相まって、海の中にいるかのような夢見心地な感覚に陥った。そんな夢から一気に目覚めさせるように、「シュガーサーフ」で会場の空気は一変。幻想を切り裂くようにノイジーなサウンドが響き渡り、ドラム、ギター、ベースと圧巻のソロ回しで観客のボルテージは最高潮に達した。

ライヴ終盤のMCでは、新作に対するリスナーの反応への不安も吐露された。常に新しいことに挑戦し、進化を遂げてきたバンドだからこその不安があるのだろうと感じたが、ナカシマは”最初からずっと表現したいこと、核、信念はずっと変わっていないしこれからも貫いていくつもりなので、安心してついてきてください”と覚悟を語る。そんなMCから「憧景」で憧れの景色を歌いあげると、夕焼け色の照明に照らされ「蒲公英」がスタート。続く「トロイメライ」で”燃ゆるような夕焼けに海が涸れてゆく”という一節とともに”サンセット・フィルムショー”の本編は幕を閉じた。

陽が落ちていくように徐々に薄暗くなったステージには絶えず拍手が鳴り響き、アンコールへ。夏らしさ全開の疾走感あふれる瑞々しい新曲「マテリアル」を披露した。ミニ・アルバム『cubism』同様メロディや言葉選びの”聴きやすさ”が印象的な本楽曲で、最新版おいしくる(おいしくるメロンパン)を改めて提示。新曲ならではの緊張感や初々しさもありながら、ナカシマが曲終わりに放った”ありがとう”からは安堵が窺えた。そして「5月の呪い」で軽やかにフロアを揺らし、本公演を締めくくった。

おいしくるメロンパンの楽曲はすべてひとつの世界観の中にあり、地続きで繋がっていると言うが、そこに『cubism』の5曲、そして新曲「マテリアル」と新たな6曲が加わり行われたこの公演で、その世界はさらなる広がりを見せた。自分たちがいいと思うものと世の中がいいと思うものには多少のズレがある。そうMCで語っていたが、そのズレを埋めるようにリスナーに寄り添い、受け手側の視点も取り入れるようになった彼らの意識の変化は、ミニ・アルバム同様このライヴからも感じ取ることができる。9月から行われるツアー”トワイライト・フィルムショー”ではどんな景色を見せてくれるのか楽しみだ。
“初めて開けたこの目で/全部 全部 選び直すよ”。そんなふうに歌われる「Utopia」が象徴するように、今作『cubism』の全5曲に漂うのは、人は何度でも生まれ変わるということ、それは断絶ではなく地続きなものであるというような死生観だ。誰もが経験する”別れ”を様々な角度から――まさにタイトルが表すとおり、キュビズム的に描いた今作は、作詞作曲を手掛けるナカシマ(Vo/Gt)の人生哲学がくっきりと浮かび上がってくる。歌詞にバンドの変わらない個性を貫きつつ、これまで以上に広いリスナーに届きやすいサウンド・アプローチに振り切ったことが今作の大きな挑戦だろう。シンプルに歌を極めた「蒲公英」は珠玉。のちにバンドの分岐点がここだったと言えるような1枚になった。(秦 理絵)
“ポップに振ってもいいっていう気づきを得た意義深い作品になった”――別れをテーマに普遍的なアプローチで完成させた進化作
2022.06.09 @LIQUIDROOM ebisu
Show More
Show More
Skream! 2022年08月号

source

最新情報をチェックしよう!
広告
>すべての音楽情報をあなたに・・・

すべての音楽情報をあなたに・・・

インターネットで情報を探すとき、あなたはどうやって探しますか?いつも見ているページで情報を得る?検索エンジンで好きなアーティスト名を検索してでてきたものを見る?本当にそれであなたの欲しい情報は手に入れられていますか?

CTR IMG