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INTERVIEW
Japanese
2021年12月号掲載
インタビュアー:山口 哲生
元Aqua Timezのヴォーカリスト、太志によるソロ・プロジェクト Little Parade。2019年10月に始動させると、今年1月には1stミニ・アルバム『止まらない風ぐるま』を発表した。収録曲「寂恋」の”きちんと、あの日を引きずりながら”という一節に表れていたように、自身の過去をすべて引き連れて進んでいくというメッセージを投げ掛けていたが、早くも2ndミニ・アルバム『藍染めの週末』を完成。太志が過ごした”藍色”の青春時代を閉じ込めた本作のこと、そして初回限定盤に封入される、自身の過去を赤裸々に綴った初の書き下ろし自伝エッセイ”ほんとうのこと”について、話を訊いた。
-1stミニ・アルバム『止まらない風ぐるま』から、10ヶ月で早くも2ndミニ・アルバム『藍染めの週末』をリリースされます(※取材は10月下旬)。太志さんとしては、この2枚はワンセットという捉え方だったのか、それとも1枚作って次に進もうと思っていたのか、どちらでしたか?
もともとは12曲のフル・アルバムを作る予定だったんですが、それを前後編に分けた感じです。やっぱりソロでフルを作るとなると、きっと大変だろうなと思って。できないことをできると言うのも違うなと思ったので、まず自分の身の丈にあった楽曲数の6曲を1枚にするというのを目標にして、2枚目も作ろうと考えていました。
-楽曲自体は同時期に作っていたんですか?
ほぼ同時期です。
-『止まらない風ぐるま』に収録されている「寂恋」には、”きちんと、あの日を引きずりながら”という一節があって。ここから自分はどうやって歩いていくのかを意思表示されていた印象もありましたが、本作『藍染めの週末』は、どんなイメージでまとめようと考えていましたか?
こうやってまとめてみると、バンドを解散してからわりと早めに作った曲を1枚目に入れたんだなって感じますね。メロディだけは作っていて、歌詞はいろいろ変更しました。今回はAqua Timezについて歌うというよりは、今自分がやりたい音楽をまとめていく感じだったと思います。

-バンドのお話がありましたけど、『止まらない風ぐるま』には、お父様との思い出を歌った「ウィスキー」という曲はありましたが、比較的、現在と過去の距離が近かったですよね。『藍染めの週末』は、それよりも過去との距離が離れているというか、ご自身の青春時代のことを歌われているイメージが強くて。
そうですね。自分にとってAqua Timezというバンドは、自分のルーツだと思うんです。自分の音楽活動の根っこはそこにあるし、ここからまた新しい種を植えて何かを始めたり、これまでのことをまったくなかったことにするわけではないし、それは自分の中にしっかりと染み込んでいて。そうやって自分のルーツを辿っていくと、自分の幼少期とか学生時代のことを思い出します。僕、おばあちゃんっ子で、自分にとっておばあちゃんの存在が大きかったので、そのことを書いてみようとか。最初からこういうテーマにしようと思っていたわけではなく、自然とこの形になったんですけど。

-自然と過去を振り返っていたと。
自分の年齢もあると思うんですけどね。20代の頃はまだ振り返るほどの距離がなかったんですけど、41歳という年齢になって、地元が恋しいし地元をこんなにも好きだったんだなって気づいたというか。やっぱり自分を育ててくれた街なんですよね。僕の地元は岐阜なんですが、遠くを見ると山があって長良川っていう有名な川があって、長良橋を渡って学校に通っていたんです。大学で上京してからはずっと東京にいるけど、やっぱり地元って東京にはない匂いがあるんですよ。そういうものに”思いを馳せる”って言葉がぴったりだと思っていて。自分という人間を形成したものがいっぱい詰まっている場所だから、地元や生い立ちを抜きにしては、今の自分の音楽活動は芯のないものになってしまうんじゃないかなって。
-昨今はコロナの問題で移動がしにくかったりしますけど、それもあって地元がより恋しくなったところもあるんでしょうか。
Googleストリートビューで見に行きました(笑)。友達とは共有できていないような自分の家族だけしか知らない小さな道を見て、ここのお店なくなっちゃったんだ……とか。そのついでというのも変だけど、大学在学中に住んでいた埼玉の家も、ストリートビューで行ってみて(笑)。見ていると、本当にその場所を歩いたような感覚になります。感じる懐かしさというもの自体が財産なんだなって、この歳になると思いますね。
-”藍染めの週末”というタイトルは、制作後半に出てきたんですか?
いつもタイトルは全部できあがってから付けるので、この6曲を象徴するのはこれかなって。青春という言葉自体に”青”が入っているし、いい意味で自分は青臭かったし。あと、学生時代、僕は週末に友達と遊んだりしなかったんです。だから、スカッとした青色ではなくて。みんな何やってるのかな、楽しく遊んでいるのかな、好きな子は誰といるんだろうなって考えてしまって、少し憂鬱な週末が多かったんですよね。そうやっていろんなことを妄想して、どんどん藍色に染まっていくというか、色が深まっていくというか。
-今お話しされていたことは、初回限定盤に封入されている、書き下ろしの自伝エッセイ”ほんとうのこと”でも綴られていますよね。”青い春ともどこか違う藍色の週末を過ごした時期は誰にでもあるんじゃないか”という。そのくだりの前に”劣等感は教室で育つ”という一節があって。このひと言がすごく胸にきました。本当にそうだなって。
実体験としてあって。学校って、生きていくなかで最初に入る社会で、入ったらレースみたいなものが始まってしまうじゃないですか。順位づけされるというか。振り返ってみると、結構エグいなって思うんですよね。子供って知らないことがたくさんあって、残酷だったりもするので。イジメの問題も昔からあるし、僕らの時代は体罰もあったから、なんていうか、物騒でしたね(笑)。
-そうですね(笑)。体罰は今でこそみたいなところがありますけど、太志さんはギリギリあったぐらいの世代ですよね。
先生に蹴り飛ばされてましたからね。なんで今殴られたんだろうとか、そこまでされることなのかなって。あの不条理は子供なりに意味がわからなかったし。でも、体罰がいいことだとは思わないけど、あの不条理を乗り越えてきた自分には、タフさがそれなりにあるのかなって。そう思うと、教室でいろんなことを教わったというか、覚えた気がします。
-たしかに。
あとは、同級生の中でもモテる組とモテない組と、そのどちらにも属さない組と自然と棲み分けができていって。それが、アリが行列を作って何かを運んでいるように、みんなが社会の中でそれぞれの役割を持つ感じというか。そこで上のチームに入ることを目標にする子もいれば、そこからはじかれてしまう子もいて。あの頃って、”おはよう”ってひと言を言う勇気があるかないかで、結構変わっちゃったりするじゃないですか。
-ほんとそうですよね。
友達になるきっかけを掴めないまま、春から夏になっちゃって、もう急に挨拶なんてできないな、とか。自分がそうだったんですよね。シャイなほうだったので、喋り掛けることがあまりできなくて、喋り掛けられるのを待っていたら1年過ぎてしまって。そんな学生だったけど、その劣等感のおかげで今は曲が書けているというのもあるんです。当時馴染めなかったことが、今の自分にとっての武器になるっていうのは面白いなと思います。
-そうやって過ごしてきたからこそ今があるという。
あの頃充実していたら、たぶん音楽はやっていないんで(笑)。学園祭にバンドで出たりもしていなかったし、それを後ろのほうで観ていただけだったんです。そういうときのうらやましさと、嫉妬心みたいなものって似てるじゃないですか。いいなぁって思いながら、本当は俺がそこに立ちたいのにって。そうやって劣等感が育っていくというか。
-本作には「スクールカースト ~底から見た光~」という曲もありますけど、それこそ底のほうから見上げたときに、嫉妬心があったんですね。無感情というか、俺とは違う世界だなと思ったりするわけではなく。
僕はすごく気にするタイプでしたね。なんであんなにあの子たちはモテるんだろう、全然面白くないのにって(笑)。

-はははははは(笑)。
そう思いながら見ていたんです。僕らは教室の隅っこにいて、目立つほうではなかったけど、話していることも聴いている音楽も、俺らのほうが絶対に面白いのになと。ひねくれるのが半ば特技でもあったので(笑)。でも、それが大人になってからは力に変わったし、もしあのときに幸せを感じまくっていたら、地元でそのまま楽しく暮らせばいいわけだから、きっと東京に出て行こうとも思わなかったと思うんです。だけど、東京に出て自分を変えたかったところもあったし、そういう気持ちがなかったら、Aqua Timezもやれなかっただろうし、ファンのみんなにも会えていなかったから。そう思うと、あれはあれで良かったんだなって感じますね。
-”スクールカースト”というタイトルではあるけど、すごく柔らかくて優しい曲になっているのは、それこそ、今はそう思えているからなんでしょうね。未だにそのことが心残りなのであれば、もっと刺々しくて攻撃的な曲になりそうな感じもしますし。
自分の中で消化できて、ひとつの遠い思い出として見ることができているから書けたところはありますよね。学生時代に”楽曲制作”っていう授業があったら、たぶんすごくドロドロした曲を作っていたと思う(笑)。前作でお父さんのことを「ウィスキー」という曲で書いたんですけども、それも自分の中で消化できたからだったので。やっぱりお父さんのことに関しては、悲しむことしかできなかったんですよ。納得するまで悲しんだから、楽曲に落とし込めたのかなと思いますね。
-先ほど”おばあちゃんの存在が大きかった”とお話されていましたけど、「太陽と土と花水木」の中には”婆ちゃん僕できん”というワードが出てきますね。
人間って、努力すればある程度のことができるようになるところもあるけど、持って生まれた性質は変えられなくて、やっぱり自分は変わっていないんだなと思ったことがあって。俺、Aqua Timezを解散したあとにやってみたかったんでバイトしたんですよ。そこで、自分は他の人ができることができないっていうのを感じて。マルチタスクが苦手というか。天ぷらを揚げながら伝票を取って、お米をこっちからよそったり、洗い物したりしなきゃいけないとか、もう頭の中がパニクっちゃって。そしたら”もういいからどいて!”って年下の子に怒られて(苦笑)、”俺、どんくさいなぁ……”みたいな。それで帰り道にツイートした覚えがありますね。なんてつぶやいたかは忘れちゃったけど。
-自分ができないことの悲しさや悔しさが込み上げてきて。
子供の頃からそういうことがあったんだけど、おばあちゃんは自分のそういう落ち込みを理解してくれたんです。それで、今でも変わっていないんだなって、おばあちゃんのことを思い出して。そういうおばあちゃんの優しさをまだ歌にしていなかったし、そう思える相手が今もいるのは、財産だと思うんですよね。思い出の中のおばあちゃんに話し掛けられるということが。そうやって自分の思いを話せる相手がいることは幸せなんじゃないかなって思いますね。
-歌詞の流れもすごくいいなと思いました。出だしの”いつからか僕ら 楽しげな写真を撮るために苦しむ”というのは、言ってみたらこれも劣等感の話ですよね。SNSにアップされている幸せそうな写真を見て、自分もそういう写真を撮らなきゃと思ってしまったり、そこに写っている世界と自分を比べてしまって劣等感が生まれてきたり。
そうなんですよね。幸せそうな写真ってたくさん見るんですよ。自分の日常が灰色なんじゃないかって思うぐらいに。あと、今って加工アプリもたくさんあるじゃないですか。要は、自分の小さな幸せを加工し始めていて、どんな時代なんだ? って(笑)。そこにあるものなんだからそれでいいんだけど、モノクロにしてみたり、よりカラフルにしてみたり。幸せって画面の中にはたくさんあるんだけど、俺、そんな現実見たことないなって(笑)。現実とはまた違った空間を作るために、みんなあくせくしているというか。それが今の時代なんでしょうけど。
-強迫観念みたいな感じもありますよね。きれいにしておかなければいけない、よく振る舞わなければいけないっていう。
幸せでいなければいけないとか。結果、幸せになったとかだったらいいんですけどね。ただ、承認欲求って今はこういうツールがあるから炙り出されただけで、みんなの中にあると思うんです。僕にもそれがあるから、こうやってメジャーと契約させてもらって、いろんな人に、たくさんの人に聴いてもらいたいと思って音楽をやっているし。だから、承認欲求自体を否定するつもりはまったくないんですけど、行きすぎると病んでいってしまうんじゃないかなって。
-うまくコントロールしないといけないですよね。そういった歌詞の中でも、先ほどのおばあさまとのくだりがあったり、”君を生んだ人が君じゃないのは明らか 花だけで花は咲かず”と、世の中との繋がりだったり、他者との関係を温かみのあるサウンドに落とし込んでいて。
最近そういうことを考えるようになりましたね。バンドを解散してから余計に考えるようになったというか……。どうしてもそこで咲いている花に目がいっちゃうんですよね。本当はその前に種があったり、地面があったりするんです。まぁ、土の画像をわざわざ撮っても派手にならないっていうのはあるんでしょうけど(笑)。ただ、象徴として花があるだけで、それはあくまでも全体の一部というか。そうやって結果だけを見て、プロセスがあまり重視されないのは、僕は問題があると思っているんです。
-なるほど。
人生ってほとんどがプロセスなのに、結果だけ見てみんな一喜一憂するじゃないですか。そういう社会って息苦しいから、その解釈は自分の中でも変えていきたいんですよね。数字ばかりにとらわれるのも苦しいし、でもまったく気にしないのも不自然だから、チャートの上には行きたい。だけど、それだけで人生が決まるわけではないっていう心の余裕を持っていないと、生きにくい時代だと思うんです。
-たしかに。大事ですね、心の余裕。
だから、楽曲を作っていても、完成したときにまず自分が納得できればハッピーだと思っていて。アンハッピーって、”うわー、ここをこうすればよかったな……”という本当にそれだけの違いだったりするんですよね。今って再生数がどうとか、そんな社会になっちゃったけど、じゃあいったいどこまでいけば人って満足するんだろうとも思うし、上を目指すのはいいことなんだけど、やっぱり身の丈にあった生き方をしていきたいなって感じますね。
元Aqua Timezのヴォーカル、太志が立ち上げたプロジェクト Little Parade。今年1月に発表した初のCD作品から約10ヶ月で早くも2ndミニ・アルバムが到着。楽器隊が放つグルーヴや、アコギの音を押し出したアンサンブル、そして太志が響かせる伸びやかなロング・トーンが瑞々しい景色を描いていく「風の斬り方」や、シリアスでありながらも美しさを伴った「置き去りの鉛筆」、ジャズ・テイストで渋みのある「501 with oneself」など、様々なサウンドを繰り広げているが、耳心地のいいメロディと、日常の些細な場面やモヤモヤを掬い取り、気づきや彩りを与えていく言葉たちが、彼の音楽の核にあることを改めて知る全6曲。初の自伝エッセイ”ほんとうのこと”も同封。(山口 哲生)
地元や生い立ちを抜きにしては、今の自分の音楽活動は芯のないものになってしまうんじゃないかと思った
2021.11.17 @渋谷CLUB QUATTRO
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